ひとり親が対象の児童扶養手当の受給手続きと遺産相続したときの影響

ひとり親が対象の児童扶養手当の受給手続きと遺産相続したときの影響を解説

幼い子供を残して一家の大黒柱が亡くなってしまった場合は、特に収入の面でこれからの生活が心配になります。

配偶者が死亡してひとり親になった家庭には児童扶養手当が支給されます。
遺族年金が支給されず所得も低い場合では、生活の安定のために児童扶養手当をもらっておくようおすすめします。

この記事では、児童扶養手当の支給対象や支給額、支給を受けるための手続き方法についてご紹介します。あわせて、児童扶養手当をもらっていた人が多額の遺産を相続した場合に、引き続き児童扶養手当をもらうことができるかどうかについても解説します。

1.配偶者の死亡でひとり親になれば児童扶養手当が支給される

児童扶養手当は、配偶者の死亡などでひとり親になった家庭に対して支給される手当です。この章では、児童扶養手当がどのようなときにいくら支給されるかをご紹介します。

1-1.児童扶養手当の支給対象

児童扶養手当は、主に以下の条件を満たしている場合に支給されます。

  • 18歳になって次の3月31日を迎えるまで(障害がある場合は20歳になるまで)の児童がいる。
  • 配偶者との死別や離別でひとり親になった。または父母以外の人が児童を養育することになった。
  • 児童、受給者ともに日本国内に住所がある。

死別や離別のほか、どちらかまたは両方の親が行方不明になった場合や重度の障害を負った場合などでも、児童扶養手当をもらうことができます。

父親が児童を養育する場合は、児童と生計を共にしていることも条件に加えられます。
このほかにも条件がありますが、詳しくは市区町村の窓口などで確認してください。

児童扶養手当の支給には所得による制限があります。
受給者または受給者と生計を共にする扶養義務者の所得が以下の表に示す金額を超える場合は、手当の一部または全部の支給が止められます。

児童扶養手当の所得制限限度額(平成30年8月1日以降)

税法上の扶養親族等受給者の所得限度額(全額支給)受給者の所得限度額(一部支給)受給者と生計を共にする扶養義務者の所得限度額
0人49万円未満192万円未満236万円未満
1人87万円未満230万円未満274万円未満
2人125万円未満268万円未満312万円未満
3人163万円未満306万円未満350万円未満
4人201万円未満344万円未満388万円未満
5人239万円未満382万円未満426万円未満

(所得の金額は年間の収入から必要経費や所得控除額などを差し引いたものです。
詳しい計算方法は市区町村の担当窓口で確認してください)

児童扶養手当は、児童手当とあわせて両方もらうことができます。
このほか、自治体によっては上乗せで支給する制度もあります。

1-2.児童扶養手当の支給額

児童扶養手当の支給額は、受給者または扶養義務者の前年の所得に応じて決定されます。
1か月あたりの支給額は以下のとおりです。

児童扶養手当の支給額(月額・平成31年4月以降)

対象児童全部支給一部支給
1人目42,910円42,900円~10,120円
2人目の加算額10,140円10,130円~5,070円
3人目以降
1人ごとの加算額
6,080円6,070円~3,040円

(手当の月額は物価変動などにより改定されることがあります)

児童扶養手当はこれまで1年に3回、4月・8月・12月に4か月分まとめて支給されていました。令和元年11月からは1年に6回、奇数月に2か月分が支給されることになります。

1-3.公的年金をもらうと減額または支給停止に

配偶者が死亡した場合は、遺族年金の支給を受けられる場合があります。
また、児童扶養手当を受けている途中で受給者が障害を負った場合は障害年金がもらえます。

これらの公的年金(老齢年金、労災年金、遺族補償も含む)がもらえるようになった場合は、児童扶養手当の支給は停止されます。ただし、公的年金が児童扶養手当より少ない場合は、その差額が児童扶養手当として支給されます(以前は、公的年金をもらえる人は児童扶養手当が全くもらえませんでしたが、平成26年12月から制度が改正されました)。

2.児童扶養手当をもらう手続き

児童扶養手当をもらうには、以下のとおり市区町村に申請します。

児童扶養手当の請求手続き

請求先居住地の市区町村の担当窓口
必要なもの
  • 児童扶養手当認定請求書
  • 請求する人と対象児童の戸籍謄本
  • 請求する人と対象児童の個人番号(マイナンバー)がわかるものと本人確認書類
    (市区町村によってはこのほかにも必要なものがあります。担当の窓口で確認してください)

児童扶養手当の請求手続きをすると、審査が行われ受給額が決定されます。

児童扶養手当をもらっている間は、毎年8月に現況届を提出します。
現況届は所得などの受給要件を満たすことを確認するもので、提出しなければ8月分以降の手当の支給が停止されます。2年続けて現況届の提出を怠ると受給資格を失います。

遺族年金、障害年金などの公的年金をもらうようになった場合も届け出が必要です。

3.児童扶養手当をもらっていた人が遺産を相続したら

これまで児童扶養手当をもらっていた人が多額の遺産を相続した場合、所得制限を超えて児童扶養手当の支給が止められるのではないかということが心配されます。

相続で現金や預金をもらった場合のほか、不動産をもらっただけであれば、財産は増えますが所得にはあたりません。したがって、児童扶養手当の支給には影響がなく、遺産を相続するまでと同様に支給されます。

しかし、相続した不動産を売却した場合や、賃貸不動産を相続して賃料収入を得るようになった場合は、児童扶養手当の支給に影響する場合があります。

  • 単に遺産を相続しただけ:児童扶養手当の支給に影響なし
  • 相続財産の売却・賃貸で所得が増える:児童扶養手当の支給に影響あり

相続した不動産を売却した場合は、故人が取得した価額と売却価額との差額が譲渡所得となります。賃料収入は必要経費を差し引いた残額が不動産所得となります。これらの所得によって受給者の所得が制限限度額を超えると、児童扶養手当の支給が止められるか減額されることになります。

4.相続手続きが多い場合は専門家のサポートを受けることもできる

ここまで、配偶者が死亡してひとり親になった場合に支給される児童扶養手当の内容と、遺産相続が支給に及ぼす影響について解説しました。

児童扶養手当の支給手続きや所得制限などについて詳しい内容は、市区町村役場の担当窓口で確認すれば教えてもらうことができます。

しかし、配偶者が死亡してしまった場合、故人の銀行口座の解約や不動産の名義変更等、他にも様々な相続手続きが必要になります。

お勤め等でそれらの手続きを全てご自身で行うことが難しい場合は、専門家にサポートをお願いすると良いでしょう。

相続手続き専門の司法書士法人チェスターは、お客様のご予算や状況に合わせて全てお任せ頂いたり大変な部分のみをお手伝いしたり柔軟な対応が可能ですので、お気軽にご相談ください。

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