戸籍謄本は郵送でも取り寄せられる!取り寄せ方法と必要書類を解説
タグ: #相続手続き相続ではさまざまな手続きで戸籍謄本が必要です。戸籍謄本は最寄りの市区町村役場でも取得できますが、状況によっては本籍地で取得しなければならない場合があります。
平日の日中に時間がとれない場合や本籍地が遠い場合は、戸籍謄本を郵送で取り寄せることができます。
この記事では、相続手続きで誰のどのような戸籍謄本が必要かを確認し、郵送で戸籍謄本を取り寄せる具体的な方法を解説します。平日の日中に時間がとれなかったり本籍地が遠かったりしてお困りの方は参考にしてください。
1.相続手続きには戸籍謄本が必要
相続手続きでは、あらゆる手続きで亡くなった人(被相続人)と相続人全員の戸籍謄本が必要になります。この章では、戸籍謄本が必要な相続手続きと、手続きに必要な戸籍謄本の種類について確認します。
相続手続きに必要な戸籍謄本の種類についてさらに詳しい解説は、下記のページもご覧ください。
参考:相続手続きに必要な戸籍謄本の種類と取り方から申請までを徹底解説!
1-1.戸籍謄本が必要な相続手続き
戸籍謄本が必要となる主な相続手続きは次のとおりです。
- 預貯金や証券口座の解約・名義変更
- 残高証明書の発行手続き
- 不動産の相続登記
- 相続放棄
- 相続税の申告
- 戸籍謄本の代わりに相続手続きに使用できる「法定相続情報一覧図の写し」の発行
これらの手続きでは、基本的に「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本」と「相続人全員の現在の戸籍謄本」が必要です。ただし、遺言書がある場合や相続税を納めなくてもよい場合では、「被相続人の死亡の記載のある戸籍謄本」だけでよいこともあります。
戸籍謄本の原本の提出を求められる場合もあれば、原本を呈示すればコピーの提出でよい場合もあります。詳しくは手続きをする窓口で確認してください。
1-2.被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本」からは、次のような事実を確認することができます。
- 被相続人がいつ誰と誰の間に生まれたか
- 被相続人に兄弟は何人いるか
- 被相続人は誰と結婚したか
- 被相続人に子供が何人いるか
- 被相続人はいつ亡くなったか
これらの事実から、被相続人に隠し子(非嫡出子)や養子がいる場合もその存在が明らかになります。思いもよらない人が相続人になっている可能性があるので、相続が始まったら早めに戸籍謄本を取得することが重要です。
1-2-1.改製原戸籍謄本・除籍謄本も必要
被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本は、一通で完結することはあまりありません。通常は「改製原戸籍謄本」や「除籍謄本」と呼ばれる古い戸籍謄本も含めて発行されます。
「改製原戸籍謄本」とは、戸籍の書き換えが行われたときの古い戸籍の謄本のことです。
戸籍は法改正や記録のコンピューター化などにより、これまでに何度か「改製」と呼ばれる書き換えが行われています。改製されたあとの戸籍には過去の記録が載らないため、改製原戸籍までさかのぼって被相続人の記録を確認する必要があります。なお、原戸籍を「げんこせき」と読むと現戸籍と区別できないことから、実務では「はらこせき」と読まれています。
「除籍謄本」とは、一つの戸籍に記録されていた人の全員が戸籍から除かれて、いわば「空」になった戸籍の謄本のことです。
戸籍に記録されている人は死亡、結婚、転籍によって戸籍から除籍され、全員が戸籍から除籍されると戸籍そのものも除籍されます。除籍謄本も被相続人の過去の記録を確認するために必要となります。
1-3.相続人全員の現在の戸籍謄本
「相続人全員の現在の戸籍謄本」では、相続人が現在も生存していることを確認します。「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本」のように、過去にさかのぼって戸籍謄本を取得する必要はありません。また、相続人が被相続人と同じ戸籍に入っていれば、その相続人の戸籍謄本は不要です。
1-4.戸籍謄本が多数必要になるケース
相続手続きでは通常、「被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本」と「相続人全員の現在の戸籍謄本」が必要です。ただし、被相続人と相続人の関係によっては他にも戸籍謄本が必要になることがあります。たとえば次のような場合です。
- 相続人がすでに死亡している場合:死亡した相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
- 兄弟姉妹が相続人である場合:被相続人の両親の出生から死亡まで連続した戸籍謄本
出生から死亡まで連続した戸籍謄本は何通かに分かれて発行されます。対象となる人の数が増えると、結果として多数の戸籍謄本が必要になります。
2.戸籍謄本を取得できる場所
続いて、被相続人と相続人の戸籍謄本を取得できる場所について解説します。多くの場合は最寄りの市区町村役場で取得できますが、本籍地で取得しなければならない場合もあります。
2-1.多くの場合最寄りの市区町村で取得できる
以前は、戸籍謄本は本籍地の市区町村役場で取得する必要がありました。令和6年3月1日から戸籍謄本等の広域交付が始まったため、本籍地以外の最寄りの市区町村役場でも戸籍謄本を取得できるようになりました。
相続人の現在の戸籍謄本のほか、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本も取得できます。結婚や転籍で本籍地が異動している場合も、同じ市区町村役場で取得できます。
ただし、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を取得するためには、自ら市区町村役場の窓口に行く必要があります。
2-2.戸籍謄本を本籍地で取得するケース
次のような場合は、本籍地の市区町村役場で戸籍謄本を取得する必要があります。
- 郵送で取り寄せる場合
- 代理人が取得する場合
- 兄弟姉妹、おじ・おばなど傍系の親族の戸籍謄本を取得する場合
- 戸籍抄本・戸籍の附票を取得する場合
市区町村役場が遠いとか平日の日中に時間が取れないなどの理由から郵送で取り寄せたい場合は、本籍地の市区町村役場で申請する必要があります。
また、本籍地以外の市区町村役場で戸籍謄本を取得できる人は、本人のほか、配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)に限られています。代理人が取得する場合や、兄弟姉妹、おじ・おばなど傍系の親族の戸籍謄本を取得する場合は、本籍地の市区町村役場で申請する必要があります。
このほか、戸籍抄本・戸籍の附票は本籍地以外では取得できないので、これらの書類が必要な場合は本籍地の市区町村役場で取得します。
2-2-1.本籍地がわからない場合
本籍地がわからない場合は、本籍地の記載のある住民票を取得して調べることができます。被相続人の本籍地を調べるときは、住民票の除票を取得します。
このほか本籍地を調べるには、親族に聞く、運転免許証に内蔵されているICチップの情報を読み取る(暗証番号が2つ必要)といった方法もあります。
2-2-2.被相続人の本籍地が異動している場合
戸籍謄本を本籍地で取得するケースで、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取得する場合、出生から死亡までの本籍地が同じ市区町村にあれば、申請先は1か所で済みます。しかし、結婚や転籍で本籍地が他の市区町村に異動している場合は、異動する前の本籍地でも戸籍謄本を取得する必要があります。
下の図の例では、出生から結婚までの本籍地はA市であったものの、結婚により本籍地がB市に変わり、さらに転籍によってC市に変更しています。被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本は、C市で取得するだけでは足りず、A市とB市でも取得しなければなりません。
2-3.戸籍謄本を取得できる人
戸籍謄本は、本人のほか、同一戸籍の人(配偶者など)、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)が取得できます。
上記以外の親族(兄弟姉妹、甥姪など)や代理人が取得する場合には、委任状が必要です。しかし、被相続人の戸籍謄本を取得するために、被相続人から委任状をもらうことはできません。その場合は、被相続人の直系の親族から委任状をもらうか、自身が相続人であることを証明したうえで用途や提出先を明らかにすれば取得できることが多いです。
3.戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法
戸籍謄本は窓口で申請するだけでなく郵送で取り寄せることもできます。この章では、戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法を具体的にご紹介します。
3-1.必要書類を本籍地の市区町村役場に郵送
戸籍謄本を郵送で取り寄せる場合は、次のものを本籍地の市区町村役場の担当窓口に郵送します。
- 戸籍交付申請書(各市区町村が定める様式に必要事項を記入)
- 請求者の本人確認書類のコピー(請求者の戸籍が請求先の市区町村にない場合は請求者の戸籍謄本も必要)
- 手数料に相当する定額小為替
- 返信用封筒と切手
本籍地以外の市区町村から郵送で取り寄せることはできません。
3-1-1.戸籍交付申請書
戸籍交付申請書に必要事項を記入して郵送します。申請書には戸籍の種類(戸籍謄本、改製原戸籍謄本、除籍謄本)と通数を書く必要があります。
ただし、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せる場合は、実際に発行するまで種類と通数はわかりません。この場合の申請書の種類と通数の書き方については、取り寄せ先の市区町村の窓口に電話などで確認することをおすすめします。申請書には種類と通数を書かずに、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せることを記入すればよい場合もあります。
戸籍交付申請書の様式は、各市区町村のホームページからダウンロードできます。一つの例として、次の図のような様式をご紹介します。
3-1-2.請求者の本人確認書類
請求者(戸籍謄本を取り寄せる人)の本人確認書類として、運転免許証、パスポート、マイナンバーカードなどのコピーを同封します。
被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せる場合で、請求者の戸籍が取り寄せ先の市区町村にないときは、請求者の戸籍謄本も必要になります。
3-1-3.手数料に相当する定額小為替
戸籍謄本の発行手数料は次のとおりです(いずれも1通あたりの金額)。
- 戸籍謄本:450円
- 改製原戸籍謄本:750円
- 除籍謄本:750円
手数料として定額小為替を同封します。定額小為替は比較的少ない金額を遠隔地へ送金する手段としてゆうちょ銀行が発行するもので、郵便局で購入できます。
券種は100円、500円、1,000円などのほか450円と750円もあり、戸籍謄本の発行手数料にも対応しています。なお、額面金額以外に1枚あたり200円の料金がかかるため、できるだけ枚数が少なくなるように購入することをおすすめします。
定額小為替には受取人の名前や住所などを記入する欄がありますが、それらの欄には何も記入しません。また、右側の切り取り線で切り取ってはいけません。
「戸籍交付申請書」のところでもお伝えしたように、被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せる場合は、発行するまで種類と通数がわかりません。つまり、実際に発行するまで手数料がいくらになるかもわかりません。
一般的に戸籍謄本1通分と、除籍謄本・改製原戸籍謄本4、5通分の定額小為替を送れば足りるとされています。余った場合は返してもらえますが、不足する場合は不足分を送る必要があります。
3-1-4.返信用封筒と切手
返信用封筒に返信先の宛名を記載して切手を同封します。被相続人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本を取り寄せる場合は、大きめの封筒を用意して切手を多めに入れておくとよいでしょう。返送の郵便料金が不足するときは、封筒に「不足分受取人払」とゴム印が押されて返送されるので、受け取るときに不足分の料金を負担します。
3-2.戸籍謄本の郵送取り寄せにかかる日数
戸籍謄本を郵送で取り寄せると、提出した書類に不備がなくても、戸籍謄本が届くまで1週間~10日ほどかかります。
ただし、ゴールデンウイークなど祝日が多い場合はさらに日数がかかるほか、年度初め、年末年始など、戸籍謄本等の請求が集中するときは、20日以上かかる場合もあります。
急ぐ場合は、往復ともに速達郵便を利用すれば数日は短縮できます。
4.窓口・郵送以外の取得方法
最後に、窓口での申請と郵送での取り寄せのほかに戸籍謄本を取得する方法をご紹介します。
4-1.戸籍謄本をコンビニで取得する
市区町村役場が遠い場合や、平日の日中に時間が取れない場合は、コンビニエンスストアのマルチコピー機から戸籍謄本を取得することができます。ただし、現在の戸籍謄本のみ対象で、改製原戸籍謄本・除籍謄本は取得できません。
また、すべての市区町村が対応しているわけではありません。本籍地の市区町村が対応しているかどうかは、下記のページで確認してください。
参考:コンビニ交付が利用できる市区町村
戸籍謄本をコンビニで取得するためにはマイナンバーカードが必要なほか、住所と本籍地の市区町村が異なる場合は事前申請も必要です。
具体的な取得方法など詳しいことは、本籍地の市区町村のホームページや、下記のコンビニ交付のホームページで確認してください。
参考:コンビニエンスストア等における証明書等の自動交付【コンビニ交付】
4-2.戸籍謄本の取得を専門家に依頼する
自分で戸籍謄本を取得すると、次のような問題が起こることがあります。
- 戸籍に書いてあることが読み取れない
- 過去の本籍地の市町村が合併でなくなっている
古い戸籍は手書きで書かれて句読点がなく、漢数字は難しい字体で書かれています。そのため、不慣れな人は読み間違える可能性があるほか、書かれていることの意味がわからないといったことも起こりえます。
また、過去の本籍地の市町村が合併でなくなっているケースもあります。戸籍は新しい市町村に引き継がれるため消滅することはありませんが、自身で本籍地をさかのぼって戸籍謄本を取得する場合は、どの市町村で取得すればよいかを調べる必要があります。
このように戸籍謄本の取得が難しい場合は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼することができます。数万円程度の報酬がかかりますが、戸籍謄本を取得する負担が軽減されます。
5.まとめ
相続の手続きには、被相続人と相続人全員の戸籍謄本が必要です。特に、被相続人の戸籍謄本は出生から死亡まで連続したものが必要です。
平日の日中に時間がとれない場合や本籍地が遠い場合は、戸籍謄本を郵送で取り寄せることができます。この記事では、戸籍謄本を郵送で取り寄せる方法について詳しくお伝えしました。それでも戸籍謄本を自分で取り寄せることが難しい場合は、行政書士や司法書士などの専門家に依頼するとよいでしょう。
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