開業資金は何にいくら必要?資金調達の方法やお金の知識を徹底解説

「新しく事業を始めたいと思ってるんだけど、開業資金っていくら必要なのかな?」

「資金が足りなかったらどうしたらいいんだろう……。」

開業するにあたってどれくらいの金額を用意すればいいのかは気になるところですよね。

開業にかかるお金は業種や規模、法人の種類によって大きく異なります

また、半年分の固定費と生活費も開業資金として用意しておいた方が良いといえるでしょう。

「そう考えると結構お金が必要になんだな……。自分でちゃんと資金を用意できるかな?」

このように不安に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。

ご自身で開業資金を集めることが難しい場合は、いくつか利用できる資金調達の方法があります

税理士
そこで、この記事では開業資金として必要になる金額や資金調達の方法など、起業前に知っておきたいお金の知識を解説していきますよ。

この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
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1.開業資金として用意すべきお金とは?

「開業したいけど、何にどれくらいお金がかかるのかな?」

という疑問をお持ちの方は多いでしょう。

開業をするときに必要になるお金は業種や事業規模、会社をつくるかどうかによって異なります

一般的に新しく店舗を構えて開業するときに必要になるのは以下の費用です。

【開業をするときに必要になる費用】
  • ・物件取得費用
  • ・設備投資費用
  • ・仕入れ代金

物件取得費用」とは店舗となる物件を契約する際に支払う費用の総称です。

保証金や不動産仲介手数料、礼金などが物件取得費用に含まれます。

それぞれのお金の内容や相場はこちらで解説します。

契約した物件に必要な設備をそろえ、店舗として運営できる状態に整えるためのお金を「設備投資費用」といいます。

また、店舗の体裁が整っても、小売店であれば店頭に並べる商品、飲食店であれば料理の材料がなければ営業を始められませんよね。

商品を仕入れるための費用を「仕入れ代金」といいます。

注意
店舗を持たずに開業する場合、物件取得費用と設備投資費用は不要となります。
会社を設立して開業する場合は他にも費用がかかるのかな?
税理士
会社を設立する場合は役所への支払いが義務付けられている「法定費用」が必要となります。

メモ
法定費用についてはこちらで詳しく解説しています。

また、開業するために必要な資金しか用意していなかった場合、事業が軌道に乗らなかった場合すぐ破綻してしまうという事態になりかねません

売り上げが安定するまで、少なくとも半年分の固定費や生活費は確保しておきましょう。

運営を続けていくのに必要な家賃や人件費などのお金を「運転資金」、当面の生活費を「予備資金」といいます。

2.主な開業資金

開業のために必要なお金をまとめると、主に以下の6種類となります。

【主な開業資金6種類】
主な開業資金6種類
【主な開業資金6種類】
  • (1)店舗の契約に必要な「物件取得費用」
  • (2)店舗の体裁を整えるための「設備投資費用」
  • (3)商品を仕入れるための「仕入れ代金」
  • (4)会社設立の際に役所に支払う「法定費用」
  • (5)運営を続けるために必要な家賃・人件費などの「運転資金」
  • (6)運営が軌道に乗るまでの生活費を含む「予備資金」
色々あるんだなあ……。具体的にどのくらいの金額を用意したらいいんだろう?
税理士
ここからは、費用ごとの相場を詳しく解説していきますよ。

2-1.物件取得費用

物件を契約する際に支払う費用を総称して「物件取得費用」といいます。

ここでは賃貸の場合について見ていきます。

賃貸の場合、具体的には以下のような費用が物件取得費用に含まれます。

それぞれ誰に支払うのか、相場はどのくらいか、家賃25万円の物件の場合いくらになるのかもあわせて確認しましょう。

費用の内訳 誰に支払うのか 相場 家賃25万円の場合
保証金 大家 家賃10カ月分 250万円
不動産仲介手数料 不動産会社 家賃1カ月分 25万円
礼金 大家 家賃1カ月分 25万円
前家賃(翌月の家賃) 大家 家賃1カ月分 25万円
日割り家賃 大家
合計 325万円(前家賃が発生しなかった場合)
保証金とは
契約時に大家に預けるお金で、退去時の修繕費や、万が一家賃の滞納があった場合は補填費用として使われます。残ったお金は借主に返ってきます。近年では居住用の賃貸は「保証金のない物件」が多いため、馴染みのない言葉かもしれません。
家賃25万円の物件でも、325万円もかかるんだ……。

と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。

「居抜き物件」は設備費がかからず初期費用を抑えられるため人気がありますが、取得する際は前の物件の借り主に「造作譲渡費」を支払う必要があります。

居抜き物件とは
前のテナントの設備や家具、内装などが残ったままになっている物件のことです。設備や調度にかかるコストが削減でき、開業までの期間が短縮できます。反対に、設備や家具、内装が一切ない状態の物件を「スケルトン物件」といいます。
造作譲渡費とは
居抜き物件に残っている設備や内装の売買に必要なお金のことです。立地や集客力といった物件の価値に応じて金額が設定されます。

造作譲渡費の金額は前の物件の借り主との交渉次第で引き下げることも可能です。

2-2.設備投資費用

物件を取得できたら「設備投資費用」をかけて店舗としての体裁を整えましょう

飲食店であれば調理設備、美容院であればシャンプー台・カット台など揃えるべき設備は業種によって異なりますが、共通して必要な設備は以下のようなものがあります。

【どの店舗にも必要な設備】
  • ・内装・設計(床、壁、天井、照明、電気、ガス、インテリアなど)
  • ・レジ
  • ・外装(看板など)
居心地の良い店にするために内装にはこだわりたいなあ。いくらかかるんだろう?
税理士
導入する設備や物件の広さによって設備投資費用は大きく異なるため一概にはいえません。複数の工事業者から見積もりを取って比較しましょう。

工事を担当する業者によっても金額が変わるため、必ず複数社から見積もりをもらうことが費用削減のためのポイントです。

2-3.仕入れ代金

飲食店を経営するには料理の材料、小売店を経営するには店頭に並べる商品を仕入れる必要があります。

材料や商品を購入するための費用を「仕入れ代金」といいます。

仕入れ代金にはどれくらいかかるんだろう……。
税理士
仕入れ代金はどのような商品をどれだけの数扱うか、仕入れ価格はいくらなのかによって異なります。

取り扱う商品の種類と数量を決める際は、同時に販売価格を考えることも忘れないようにしましょう。

2-4.会社設立の費用

開業にあたって会社を設立したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。

多くの場合、会社を設立する際は株式会社か合同会社のどちらを設立するかを選ぶことになります。

株式会社と合同会社の他には「合名会社」と「合資会社」があります。それぞれの法人の種類や設立の流れを詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

株式会社には「高い社会的信用度が得られる」などのメリットがある一方で、「設立費用が高い」というデメリットもあります。

合同会社の場合、設立費用は安く抑えられるものの「上場できない」などのデメリットもあります。

両者のメリット・デメリットをよく見極めて、自分の事業にはどちらが適しているのかを考えましょう

株式会社と合同会社のメリット・デメリット

ここでは株式会社を設立するために必要なお金を取り上げて説明します。

株式会社を設立する際に発生する費用には、支払いを法律で定められているお金(法定費用)と必要に応じて用意しなければならないお金の2種類あります。

法定費用は手続きの際に役所に支払わなければならないお金です。

一般的には、手続きを全て自分で行うと法定費用は24万2千円かかります。(令和3年5月時点)

費用 金額
収入印紙代 4万円
(電子定款の場合は不要)
定款の認証手数料 5万円
定款の謄本手数料 2千円
設立にかかる登録免許税 15万円
(資本金の0.7%が15万円を超えた場合、その金額)

電子定款なら4万円の収入印紙代が不要となります。

「それなら電子定款の方がお得だから、電子定款にしよう!」

と思われた方もいらっしゃるでしょう。

電子定款の作成には専用の電子機器が必要なので、機器を持っている専門家や会社設立をサポートする以下のようなサービスに依頼することになります。

【おすすめ会社設立サポートサービス】

役所への支払いが義務である法定費用以外にも、資本金をはじめとしたさまざまな費用が発生します。

一般的に、合同会社の設立にかかる費用は株式会社の設立にかかる費用の半分程度で済むといわれています。

2-5.運転資金

単に開業するために必要なお金だけを用意して開業したのでは、売り上げが黒字になるまでに営業の継続が困難になってしまいかねません

例えば家賃や人件費などの固定費は、売り上げの大小に関わらず同じように毎月支払わなければいけません。

当面の間、事業が赤字であっても営業を続けるための「運転資金」を開業時に用意しておく必要があります。

2-6.予備資金

開業をしてすぐに利益が出ることは稀であり、半年から一年の間は赤字も覚悟しなければいけません。

その間の生活費である「予備資金」は開業時に確保しておく必要があります。

まずは自分の毎月の生活費を割り出し、予備資金がいくら必要かを算出します。

融資を受ける際は、予備資金も含めた金額の設定にすることを忘れないようにしましょう

3.開業資金が足りない場合の資金調達の方法

「開業資金が明らかに足りない……。どうしよう……」

と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。

自力で開業資金を集めるのが難しくても、資金調達の方法はいくつかあります。

一般的に資金調達といえば銀行など民間の金融機関から融資を受けるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。

しかし、実績のない創業間もない企業では銀行から融資を受けるのは難しいといわざるを得ません。

開業資金の調達のために融資を受ける場合は、政府の金融機関である「日本政策金融公庫(略称:日本公庫)」や自治体の制度融資を利用しましょう。

資金調達の方法について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。

日本政策金融公庫や自治体であっても審査は厳しく、必ず融資を受けられるとは限りません。

審査の通過率を上げるためには、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。

税理士
資金調達に強い税理士探しは税理士ドットコムを利用するのがおすすめです。

4.まとめ

開業資金としてどれくらいの金額を用意するべきかは、取り扱う商品の種類や数量、新しく店舗を構えるかどうか、会社を設立するかなどさまざまな要因で決まります。

また、単に開業のために必要なお金だけを用意すればいいというわけではなく、営業を開始してから利益が出るまでの固定費や生活費なども含めて準備することが大切です。

「開業資金が足りないし、資金調達の方法も分からない……」

とお困りの方は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

専門家に相談することによって、融資の手続きをミスなく進めることができ、審査の通過率も高まることが期待できますよ。

税理士
資金調達を得意とする税理士をお探しの方はまず税理士ドットコムへ相談してみてください。