「新しく事業を始めたいと思ってるんだけど、開業資金っていくら必要なのかな?」
「資金が足りなかったらどうしたらいいんだろう……。」
開業するにあたってどれくらいの金額を用意すればいいのかは気になるところですよね。
開業にかかるお金は業種や規模、法人の種類によって大きく異なります。
また、半年分の固定費と生活費も開業資金として用意しておいた方が良いといえるでしょう。
「そう考えると結構お金が必要になんだな……。自分でちゃんと資金を用意できるかな?」
このように不安に思っている方もいらっしゃるかもしれませんね。
ご自身で開業資金を集めることが難しい場合は、いくつか利用できる資金調達の方法があります。
福留 正明
1.開業資金として用意すべきお金とは?
「開業したいけど、何にどれくらいお金がかかるのかな?」
という疑問をお持ちの方は多いでしょう。
開業をするときに必要になるお金は業種や事業規模、会社をつくるかどうかによって異なります。
一般的に新しく店舗を構えて開業するときに必要になるのは以下の費用です。
- ・物件取得費用
- ・設備投資費用
- ・仕入れ代金
「物件取得費用」とは店舗となる物件を契約する際に支払う費用の総称です。
保証金や不動産仲介手数料、礼金などが物件取得費用に含まれます。
それぞれのお金の内容や相場はこちらで解説します。
契約した物件に必要な設備をそろえ、店舗として運営できる状態に整えるためのお金を「設備投資費用」といいます。
また、店舗の体裁が整っても、小売店であれば店頭に並べる商品、飲食店であれば料理の材料がなければ営業を始められませんよね。
商品を仕入れるための費用を「仕入れ代金」といいます。
また、開業するために必要な資金しか用意していなかった場合、事業が軌道に乗らなかった場合すぐ破綻してしまうという事態になりかねません。
売り上げが安定するまで、少なくとも半年分の固定費や生活費は確保しておきましょう。
運営を続けていくのに必要な家賃や人件費などのお金を「運転資金」、当面の生活費を「予備資金」といいます。
2.主な開業資金
開業のために必要なお金をまとめると、主に以下の6種類となります。
- (1)店舗の契約に必要な「物件取得費用」
- (2)店舗の体裁を整えるための「設備投資費用」
- (3)商品を仕入れるための「仕入れ代金」
- (4)会社設立の際に役所に支払う「法定費用」
- (5)運営を続けるために必要な家賃・人件費などの「運転資金」
- (6)運営が軌道に乗るまでの生活費を含む「予備資金」
2-1.物件取得費用
物件を契約する際に支払う費用を総称して「物件取得費用」といいます。
ここでは賃貸の場合について見ていきます。
賃貸の場合、具体的には以下のような費用が物件取得費用に含まれます。
それぞれ誰に支払うのか、相場はどのくらいか、家賃25万円の物件の場合いくらになるのかもあわせて確認しましょう。
費用の内訳 | 誰に支払うのか | 相場 | 家賃25万円の場合 |
---|---|---|---|
保証金 | 大家 | 家賃10カ月分 | 250万円 |
不動産仲介手数料 | 不動産会社 | 家賃1カ月分 | 25万円 |
礼金 | 大家 | 家賃1カ月分 | 25万円 |
前家賃(翌月の家賃) | 大家 | 家賃1カ月分 | 25万円 |
日割り家賃 | 大家 | – | – |
合計 | 325万円(前家賃が発生しなかった場合) |
と驚かれた方もいらっしゃるかもしれませんね。
「居抜き物件」は設備費がかからず初期費用を抑えられるため人気がありますが、取得する際は前の物件の借り主に「造作譲渡費」を支払う必要があります。
造作譲渡費の金額は前の物件の借り主との交渉次第で引き下げることも可能です。
2-2.設備投資費用
物件を取得できたら「設備投資費用」をかけて店舗としての体裁を整えましょう。
飲食店であれば調理設備、美容院であればシャンプー台・カット台など揃えるべき設備は業種によって異なりますが、共通して必要な設備は以下のようなものがあります。
- ・内装・設計(床、壁、天井、照明、電気、ガス、インテリアなど)
- ・レジ
- ・外装(看板など)
工事を担当する業者によっても金額が変わるため、必ず複数社から見積もりをもらうことが費用削減のためのポイントです。
2-3.仕入れ代金
飲食店を経営するには料理の材料、小売店を経営するには店頭に並べる商品を仕入れる必要があります。
材料や商品を購入するための費用を「仕入れ代金」といいます。
取り扱う商品の種類と数量を決める際は、同時に販売価格を考えることも忘れないようにしましょう。
2-4.会社設立の費用
開業にあたって会社を設立したいとお考えの方もいらっしゃるでしょう。
多くの場合、会社を設立する際は株式会社か合同会社のどちらを設立するかを選ぶことになります。
株式会社と合同会社の他には「合名会社」と「合資会社」があります。それぞれの法人の種類や設立の流れを詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
株式会社には「高い社会的信用度が得られる」などのメリットがある一方で、「設立費用が高い」というデメリットもあります。
合同会社の場合、設立費用は安く抑えられるものの「上場できない」などのデメリットもあります。
両者のメリット・デメリットをよく見極めて、自分の事業にはどちらが適しているのかを考えましょう。
ここでは株式会社を設立するために必要なお金を取り上げて説明します。
株式会社を設立する際に発生する費用には、支払いを法律で定められているお金(法定費用)と必要に応じて用意しなければならないお金の2種類あります。
法定費用は手続きの際に役所に支払わなければならないお金です。
一般的には、手続きを全て自分で行うと法定費用は24万2千円かかります。(令和3年5月時点)
費用 | 金額 |
---|---|
収入印紙代 | 4万円 (電子定款の場合は不要) |
定款の認証手数料 | 5万円 |
定款の謄本手数料 | 2千円 |
設立にかかる登録免許税 | 15万円 (資本金の0.7%が15万円を超えた場合、その金額) |
電子定款なら4万円の収入印紙代が不要となります。
「それなら電子定款の方がお得だから、電子定款にしよう!」
と思われた方もいらっしゃるでしょう。
電子定款の作成には専用の電子機器が必要なので、機器を持っている専門家や会社設立をサポートする以下のようなサービスに依頼することになります。
役所への支払いが義務である法定費用以外にも、資本金をはじめとしたさまざまな費用が発生します。
一般的に、合同会社の設立にかかる費用は株式会社の設立にかかる費用の半分程度で済むといわれています。
2-5.運転資金
単に開業するために必要なお金だけを用意して開業したのでは、売り上げが黒字になるまでに営業の継続が困難になってしまいかねません。
例えば家賃や人件費などの固定費は、売り上げの大小に関わらず同じように毎月支払わなければいけません。
当面の間、事業が赤字であっても営業を続けるための「運転資金」を開業時に用意しておく必要があります。
2-6.予備資金
開業をしてすぐに利益が出ることは稀であり、半年から一年の間は赤字も覚悟しなければいけません。
その間の生活費である「予備資金」は開業時に確保しておく必要があります。
まずは自分の毎月の生活費を割り出し、予備資金がいくら必要かを算出します。
融資を受ける際は、予備資金も含めた金額の設定にすることを忘れないようにしましょう。
3.開業資金が足りない場合の資金調達の方法
「開業資金が明らかに足りない……。どうしよう……」
と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
自力で開業資金を集めるのが難しくても、資金調達の方法はいくつかあります。
一般的に資金調達といえば銀行など民間の金融機関から融資を受けるというイメージをお持ちの方も多いでしょう。
しかし、実績のない創業間もない企業では銀行から融資を受けるのは難しいといわざるを得ません。
開業資金の調達のために融資を受ける場合は、政府の金融機関である「日本政策金融公庫(略称:日本公庫)」や自治体の制度融資を利用しましょう。
資金調達の方法について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてください。
日本政策金融公庫や自治体であっても審査は厳しく、必ず融資を受けられるとは限りません。
審査の通過率を上げるためには、税理士やファイナンシャルプランナーなどの専門家に相談することをおすすめします。
4.まとめ
開業資金としてどれくらいの金額を用意するべきかは、取り扱う商品の種類や数量、新しく店舗を構えるかどうか、会社を設立するかなどさまざまな要因で決まります。
また、単に開業のために必要なお金だけを用意すればいいというわけではなく、営業を開始してから利益が出るまでの固定費や生活費なども含めて準備することが大切です。
「開業資金が足りないし、資金調達の方法も分からない……」
とお困りの方は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
専門家に相談することによって、融資の手続きをミスなく進めることができ、審査の通過率も高まることが期待できますよ。