起業をするためには、商品を用意したり、営業や宣伝をしたりと多くの準備が必要になりますよね。
また営業や宣伝、商品にかかった費用などを記録する業務、つまり会計に関する業務も考慮しなければなりません。
しかし起業時点では会計業務の担当が不在という企業は珍しくないでしょう。
経営者自ら会計業務を行おうと考えても、会計の知識や経験がない場合は不安になりますよね。
「業務を委託してしまった方が良いのでは?」と検討している方もいらっしゃるかもしれません。
この記事では専門知識なしでも安心して会計業務が行える方法と、おすすめの会計ソフトについてご紹介していきます。
福留 正明
1.起業をしたら会計業務はどうする?自分でするか委託するか
事業経営の上で会計に関する業務は必須となります。
しかし、起業したてでスタッフが少ないと「社外に委託する」か「自分で行う」かお悩みの方も多くいらっしゃるでしょう。
社外委託(アウトソーシング)で税理士に依頼するのは当然大きな費用がかかりますが、ご自身に会計の知識や経験がない場合は安心できる方法といえます。
一方、自分で会計業務を行うのは一見難しそうな上に手間がかかるように感じますが、費用は委託する場合よりも抑えられます。
1-1.会計業務を「自計化」している企業が増加
このところ中小企業の間では会計業務の自計化を行っている割合が高くなっています。
会計ソフトとは会計業務にかかわるさまざまな情報を処理することができるツールのことです。
会計ソフトを用いて自社で会計業務を行っている企業は全体の4割を超えているともいわれています。
多くの企業が内部で会計業務を処理していることを考えると、「なんだか難しそうだしやめておこうかなあ……」というイメージも薄れるのではないでしょうか?
「でも、会計ソフトの操作自体が複雑ってことはないの?」
と気になる方もいらっしゃるかもしれませんね。
会計ソフトを利用するのにあたって必要な知識はごくごく基礎的なものです。
1-2.知っておきたい最低限の会計知識
会計ソフトは会計業務を非常に簡単にしてくれるものです。
多くのソフトが専門知識なしでも使えるように設計されていますが、会計の基礎的な概念を理解しておくとさらにスムーズに利用することができるでしょう。
ここでは、特に重要な「複式簿記」「勘定科目」という二つの考え方についてわかりやすく解説していきます。
1-2-1.複式簿記
複式簿記とは、取引を「貸方」と「借方」の二面で捉えて記録する簿記の方法です。
多くの場合、家計簿などでは「〇〇を買ったため××円の出費があった」「△△によって□□円収入があった」というように、お金の出入りのみを記録しますよね。
このお金の出入りのみを記録するのが「単式簿記(簡易簿記)」という方式です。
一方、複式簿記では「△△によって□□円収入があった」ことを、□□円が手に入ったという「結果」と△△という「原因」の二つに分けて帳簿に記録します。
また、この一連の作業を「仕訳」といいます。
1-2-2.勘定科目
勘定科目とは、複式簿記を用いて取引を帳簿に記録するときに用いる、「カテゴリ」のようなものです。
お金に動きがあったとき、それが何に対するお金の出入りなのかを表す「ラベル」の役割を持っています。
例えば事業で使用するパソコンが壊れ修理に出したとしたら、このときかかった費用は「修繕費」という勘定科目に振り分けられるのです。
取引を勘定科目に振り分けること(=仕訳をすること)で、どのようなことにそれぞれどれくらいのお金が動いているかが見えるようになります。
>>【税理士が教える】個人事業主の経費にできるものとは?賢く節税!
>>勘定科目とは?何のために必要なの?役割と仕訳方法について徹底解説
2.会計の経験がなくても会計ソフトなら簡単!
多くの会計ソフトは会計の実務経験がなくても使いやすいように作られています。
例えば仕訳の入力は、おおよそ取引の「日付」「勘定科目」「金額」を入力することができれば完了します。
また、よくある勘定科目であれば初めから登録されているソフトもあるため、会計業務に触れたことがない方でも安心して始められますよ。
さらにソフトによってはクレジットカードやネットバンキング、クラウド請求書発行サービスと連動させることができ、取引を自動的に仕訳してくれるものもあります。
2-1.会計ソフトを使ってできること
帳簿付けのみでなく、確定申告の書類作成など会計業務は多岐にわたるものですよね。
ここからは会計ソフトを使ってどのようなことができるのか詳しく確認していきましょう。
(1) 日々の経理業務
日々の経理業務とは、主に取引を仕訳することです。
いわゆる帳簿付けのことですね。
基本的な業務ですが、とても重要な作業の一つです。
日々の帳簿付けから最終的に「決算書」という書類が作成されます。
会計ソフトとクレジットカードやネットバンキング、クラウド請求書発行サービスなどを連動させることで、作業をほぼ自動化することが可能です。
(2) 決算書の作成
決算書は年に一度、会社が独自に決めた時期に作成するものです。
決算時期は12月か3月にしている会社が多いといわれていますが、基本的に自由に設定することができます。
企業の経営成績や財務状況を表す書類で、社外に公表するための書類でもあり、また社内では経営判断の指標として役立ちます。
日々の帳簿付けから決算書の完成に至るまでには、以下のような書類が必要となります。
- ・取引を勘定科目別に集計するための「総勘定元帳」
- ・仕訳や計算、転記のミスがないかを確認するための「試算表」
- ・試算表に決算整理仕訳を加えて作成する「貸借対照表」と「損益計算書」
これらの書類も会計ソフトがあれば簡単に作成することができますよ。
(3) 確定申告書類の作成
個人で事業を営んでいる方は必ず確定申告が必要になります。
確定申告には「白色」と「青色」の二種類がありますが、一定程度所得がある方には特別控除などの特典がある青色申告をおすすめします。
以下が青色申告に必要な帳簿の種類です。
- ・仕訳帳
- ・総勘定元帳
- ・現金出納帳
- ・売掛帳
- ・買掛帳
- ・経費帳
- ・固定資産台帳
青色申告のなかにも「10万円の控除」と「65万円の控除」があります。
65万円の控除を受ける場合には以上の全ての帳簿が必要になりますが、10万円の控除を受ける場合には、「二つの主要簿」の提出は義務ではありません。
青色申告について、詳しくはこちらの記事をご覧くださいね。
(4) 年末調整手続き
年末調整には以下4種類の書類が必要です。
- (1)給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
- (2)給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
- (3)給与所得者の保険料控除申告書
- (4)住宅借入金等特別控除申告書
年末調整について、詳しくはこちらをご参考になさってくださいね。
3.専門知識がなくても簡単に使える!おすすめ会計ソフト
ここまで起業に際しご自身で会計を行う場合に会計ソフトの使用をおすすめしてきましたが、実際にどのようなソフトを導入するべきかお悩みの方もいらっしゃいますよね。
ここでは、会計の専門知識がなくても簡単に使えるおすすめの会計ソフトをご紹介します。
おすすめ1 freee
freeeは近年利用者数を拡大している会計ソフトです。
簿記の知識がなくてもスムーズに操作を行えるよう、工夫されたサイトデザインが特長となっています。
初めての方でも操作に戸惑うことなく、簡単に日頃の帳簿付けから確定申告書の作成までを済ませることができます。
領収書やレシートはスマホで撮影してアップロードするだけで自動で読み込み・仕訳を行ってくれるので出先からでも作業が行えるのもうれしいポイントですよね。
確定申告書は質問に◯か×で答えるだけで自動で作成してくれるため、初めて青色確定申告を行う方でも簡単に確定申告書類が作成できます。
電子申告を使えば自宅からでも確定申告書の提出までを行うことができます。
またプレミアムプランには税務調査サポートも付いているので、個人事業主の方の心強い味方になってくれますよ。
おすすめ2 マネーフォワード クラウド確定申告
マネーフォワード クラウド確定申告なら、1カ月無料で使い勝手を試すことができます。
「会計ソフトを利用するのは初めてだからとりあえずどんなものか試してみたい!」という方にはぴったりですよね。
もちろん無料期間を終えた後は有料プランに移行すればそのままデータを引き継ぐことができますよ。
3種類のプランが用意されており、操作が不安という方には「パーソナルプラス」がおすすめです。
電話サポートを受けることができるので操作に迷ったときも安心ですね。
またマネーフォワード クラウド確定申告は株式会社マネーフォワードが提供する他のさまざまなサービスと連携することができるのも大きな特長です。
経費精算や給与の計算、勤怠管理、マイナンバー管理など、お金にまつわる業務を効率化してくれるさまざまなソフト、サービスが取りそろえられています。
併せて導入することで、煩雑な作業がよりスムーズになると考えられますね。
なお法改正やサービスの改善があるたびに自動でアップデートが行われているので、時代の流れに応じた会計業務を行うことができます。
インボイス制度や改正後の電子帳簿保存にも対応していますよ。
おすすめ3 弥生会計シリーズ
弥生会計シリーズは個人事業主向けの会計ソフトでは1位、法人向け会計ソフトで3位のシェアを誇る人気の会計ソフトです。
弥生会計の強みは何といっても初心者にやさしい設計にあります。
シンプルな操作と機能で簡単に操作できるのがうれしいですね。
ユーザー側の作業はクレジットカードや銀行口座とデータ連携し、日々のレシートや領収書をスマホカメラやスキャンで取り込み、画面の指示に従って入力するだけです。
登録した取引から会計帳簿が自動で作成され、経営状況を把握できるレポートも確認することができます。
決算書の作成も自動で行われるので会計業務は初めてという方にはぴったりですよね。
なお随時バージョンがアップデートされており、インボイス制度や改正後の電子帳簿保存法にも対応しているので安心です。
現在弥生会計オンラインは全プラン初年度0円で利用することができるのでこの機会に利用してみましょう。
4.まとめ
近年では起業してからご自身で会計業務を行うということは珍しくありません。
会計ソフトを使用することで、会計に関する専門知識がなくても業務をこなすことができるためです。
ただし、会計に関する基礎知識(簿記3級程度)を理解していた方がよりスムーズに会計ソフトを使いこなすことができるので、テキストや専門書などに目を通しておくことをおすすめします。
会計ソフトを使用することで日々の経理業務から決算書や確定申告書類の作成、年末調整手続きなど会計に関する全ての業務が簡単に行えるようになります。