【税理士監修】青色申告に必要な帳簿の種類と作成方法を簡単解説!

青色申告で税金を控除してもらいたいけど、帳簿がたくさん必要って聞いたから大変そうで手が出せない……。
青色申告の帳簿はどうやって作ったら良いんだろう?

青色申告に関心はあっても複雑そうだからと躊躇してしまっている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。

確かに青色申告のメリットを最大限に享受するためには複式簿記で帳簿を作成する必要がありますが、その分税金の控除が受けられるなどの利点があります。

この記事では青色申告に必要な帳簿の種類や、それらを簡単に作成する方法を分かりやすく解説します。

税理士
青色申告の帳簿作成には以下のような会計ソフトがおすすめです。

【青色申告におすすめの会計ソフト】
この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
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1.まずは確認!青色申告とは?

青色申告って、白色申告と何が違うの?
実際のところ、青色申告をするとどれくらいお得になるの?

このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。

ここでは青色申告についての基礎的な知識を確認しましょう。

基本事項は押さえているから、早く帳簿の種類について知りたい!という方はこちらからお読みください。

1-1.青色申告と白色申告との違い

青色申告は確定申告の一種で、他には白色申告があります。

青色申告を行えるのは、不動産所得・事業所得・山林所得のいずれかを得ている方のうち、事前に税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出した方です。

メモ
不動産所得とは土地や不動産の貸付、航空機や船舶の貸付によって得た所得をいいます。事業所得はサービス業、製造業、小売業、農業や漁業などの事業を営んで得た所得です。山林所得は山林の伐採や譲渡によって得た所得のことです。

一般的な個人事業主の方などは事業所得を得ているケースに該当しますね。

事前の届け出が必要な青色申告には、白色申告にはない税金の控除や赤字の繰り越しが可能という優遇措置が設けられています。

そのため大きな節税効果が期待できるのです。

また青色申告と白色申告では日々の帳簿の付け方や、確定申告時に必要な決算書が異なります。

税理士
帳簿の付け方については、次の章で詳しく解説します。

1-2.65万円控除と10万円控除の2種類がある

青色申告には65万円の控除を受けられるものと10万円の控除が受けられるものがあります。

これらの二つの控除はいずれか一方を任意で選ぶものではなく、65万円控除を受けるための条件を満たせなかった場合10万円控除となる仕組みになっています。

65万円控除を受けたいけど、どんな条件が必要なんだろう?

65万円控除を受けるためには少し複雑な帳簿をつける必要があります。

65万円控除を受けるためには「複式簿記」という方法で帳簿を付けることが必須条件となります。

複式簿記とは
取引を複数の科目で記録する方式のことです。例えば電子マネーに10,000円をチャージした場合、現金10,000円という資産の減少と10,000円分の電子マネーという資産の増加が同時に起こります。複式簿記では、これらを貸方と借方に仕訳して記載します。

10万円控除の場合は「単式簿記」という複式簿記よりも簡素な方法で帳簿をつけることができます。

また、同じ取引をしたとしても、帳簿に記載する日付が65万円控除と10万円控除では変わる場合があります。

どうしてそこまで帳簿の付け方が違うんですか?

単式簿記と複式簿記では、大本となる考え方が異なるのです。

青色申告は「発生主義」という考え方で帳簿を付けることが必要になりますが、場合によっては白色申告は「現金主義」という考え方でも帳簿をつけることが許されています。

発生主義/現金主義とは
現金の出入に関係なく、支出や収入の経済的事実が発生するたびにその日付で帳簿付けをする方法を発生主義といいます。一方、現金主義では現金が動いた日付で帳簿付けを行います。発生主義について詳しくはこちらの記事、現金主義の詳細はこちらの記事でご説明しています。

例えば5月15日にクレジットカード決済で100,000円のパソコンを購入し、6月20日に口座から引き落とされるとします。

このとき発生主義では5月15日の段階で帳簿付けをし、6月20日に実際のお金の動きも帳簿付けします。

つまり、発生主義では二度帳簿付けすることになります。

一方、現金主義では実際にお金の動きがあった6月20日だけ帳簿付けをします。

原則的には青色申告、白色申告ともに「発生主義」で帳簿を付けるように定められています。

ただし青色申告における10万円控除の場合、以下の一定の条件を満たせば「現金主義」で帳簿を付けることが認められています。

【10万円控除で現金主義での記帳が認められる場合】
  • ・前々年の合計所得が300万円以下の小規模事業者であること
  • ・期限内に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出していること

2.青色申告65万円控除に必要な帳簿の種類

せっかくなら青色申告をして65万円控除を受けたいけれど、帳簿の種類が多すぎてよく分からない……。

青色申告の帳簿作成にお悩みの方も多いのではないでしょうか。

確かに、聞き慣れない帳簿がたくさんあって初心者の方は戸惑ってしまいますよね。

ここでは65万円控除を受けるために必要な帳簿を一つ一つ確認していきましょう。

10万円控除の場合も同じ帳簿が必要なのかな?
税理士
10万円控除の場合、作成しなくていい書類があります。詳しくはこちらをお読みください。

65万円控除のために作成する帳簿には2種類の「主要簿」と必要に応じて作成する5種類の「補助簿」があります。

【二つの主要簿】
  • ・仕訳帳
  • ・総勘定元帳
【五つの補助簿】
  • ・現金出納帳
  • ・売掛帳
  • ・買掛帳
  • ・経費帳
  • ・固定資産台帳

なお「主要簿」と呼ばれる仕訳帳と総勘定元帳の二つは、10万円控除の場合作成する必要はありません。

2-1.仕訳帳

主要簿のうちの一つが「仕訳帳」です。

すべての勘定項目を決め、複式簿記の方法に基づいて「貸方」と「借方」に仕訳をして記帳します。

面倒に思われるかもしれませんが、毎日取引が発生するごとに記入しなければなりません。

仕訳帳は、これからご紹介するほかの帳簿のもとにもなる非常に重要なものです。

取引が発生した日付順に年月日、勘定科目、金額などを記載します。

必要事項を正しく記入した仕訳帳は以下のようになります。

仕訳帳
メモ
ここでいう取引とは一般的な「取引」とは意味が異なり、財産などが増減することを指します。

例えば賃貸契約を交わすことは一般的には取引といいますが、簿記や会計においては財産の増減が起こっていないため取引には当たりません。

また天災によって損害が生じた場合を一般的に取引ということはありませんが、財産が減っているため、簿記においては取引として扱います。

2-2.総勘定元帳

もう一つの主要簿が「総勘定元帳」です。

総勘定元帳では、すべての取引を勘定項目の種類に分類・整理して計算します。

勘定項目は以下の五つのうちどれかに分類されます。

【勘定項目の分類】
  • ・収益
  • ・費用
  • ・資産
  • ・負債
  • ・資本(純資産)

総勘定元帳のうち、収益・費用のページでは一定期間の売上や経費がどれくらいであったかを集計できます。

また資産・負債・資本のページではある時点での現金や売掛金を集計し、残高を確認できます。

勘定項目ごとに取引が発生した年月日、対応する相手方勘定項目、金額を記載します。

必要事項を記入した総勘定元帳は以下のようになります。

総勘定元帳

2-3.現金出納帳

現金出納帳は現金の動きを取引順に記載し、残高を記録する帳簿です。

帳簿上の現金残高と実際の現金残高が一致しているかどうかを毎日の締めで必ず確認します。

どこかでずれてしまわないか不安だなあ……。
税理士
帳簿上の残高と実際の残高を確認する作業は大変ですよね。現金出納帳にまつわる作業をスムーズに済ませたい方はこちらの記事も参考にしてください。

売上や仕入、売掛金の回収、掛売金の支払い、経費などを記録します。

現金出納帳を正しく記入すると以下のようになります。

現金出納帳

2-4.売掛帳

売掛帳は掛売での売上があった際に記帳する帳簿です。

掛売とは
代金を後から支払う約束で商品を売ることです。

売掛帳を記帳することで、総勘定元帳や現金出納帳だけでは把握できなかった「未回収の売上代金」を把握できるようになるのです。

取引先ごとに記帳し、回収状況をきちんと確認できるようにします。

必要事項を正しく記入した売掛帳は以下のようになります。

売掛帳

2-5.買掛帳

買掛帳は買掛での仕入れをした際に記帳する帳簿です。

買掛とは
代金を後から支払う約束で商品を買うことです。

売掛帳同様、買掛帳を記帳することで総勘定元帳や現金出納帳だけでは把握できなかった「未払いの仕入れ代金」の把握が可能になります

得意先ごとに記帳し、支払い状況をきちんと確認できるようにします。

買掛帳

2-6.経費帳

経費帳は仕入れ代を除いた水道代、光熱費、消耗品費、給与賃金などの経費を記帳する帳簿です。

経費帳の目的はある時点まででいくら使っているかの合計を把握することにあります。

勘定項目別に取引が発生した日付・内容・金額を記載します。

必要事項を記入した経費帳は以下のようになります。

経費帳

2-7.固定資産台帳

現在使用している固定資産の価値を記録する帳簿です。

固定資産には車や機械、備品などが該当します。

記帳の機会は今まで紹介した帳簿の中で一番少ないですが、保有する資産の管理のためには欠かせない帳簿です。

名称・購入金額・購入した年月日を資産ごとに記録します。

固定資産台帳
メモ
今回は軽自動車を例にあげていますが、購入した物品によって耐用年数は異なります。詳しくは国税庁のサイトをご確認ください。

3.青色申告10万円控除のために必要な帳簿

10万円控除の場合は仕訳帳、総勘定元帳を作る必要はありません。

原則的に以下の五つの帳簿で青色申告ができます

【10万円控除に必要な帳簿】
  • ・現金出納帳
  • ・売掛帳
  • ・買掛帳
  • ・経費帳
  • ・固定資産台帳

もちろん掛売、買掛での取引が発生していない場合は売掛帳、買掛帳を作成する必要はありません。

その他、業種別に必要とされる帳簿を適宜作成することになります。

4.青色申告に必要な帳簿を作成する方法

「青色申告に必要な帳簿はどのように作成したらいいんだろう?」

とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

青色申告に必要な帳簿を作成する方法には以下のようなものがあります。

【青色申告に必要な帳簿を作成する方法】
  • ・手書き
  • ・Excel
  • ・会計ソフト

今まで手書きやExcelで確定申告を行っていた方もいらっしゃるでしょう。

しかし、日頃の帳簿付けを忘れてしまったり、確定申告の作業に手間取ったりしてしまった経験はありませんか?

地道な作業の連続でつい会計処理って後回しにしちゃうんだよなあ……。
税理士
これまで申告作業に苦戦していた方にぜひおすすめしたいのが会計ソフトの導入です。

5.青色申告におすすめの会計ソフト

いくらExcelのような表計算ソフトを利用しても、銀行の明細やクレジットカードの履歴を手入力している限り打ち間違いなどのミスが発生してしまうリスクはゼロにできませんよね。

会計ソフトを使えばかなりの作業を自動化できるため、時間的・経済的コストを大幅にカットできる上、手作業を減らしてミスをするリスクを減らすことも可能だといえます。

いずれも無料お試し期間が設けられているので、使い勝手を試してみてから導入を決めるというのも一つの手ですよ。

税理士
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おすすめ会計ソフト1 freee

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メリット
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こんな人におすすめ!
初めて青色申告を行う方
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定期的にバージョンが更新されるので、「インボイス制度」や改正された「電子帳簿保存法」にも対応していますよ。

インボイス制度とは
事業者の仕入税額控除に関して2023年10月1日に始まった制度です。取引で売り手がインボイスと呼ばれる適格請求書を発行・保存し、それを買い手が保存することで仕入税額控除が適用されます。詳細はこちらの記事で解説しています。
電子帳簿保存法とは
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メリット
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クラウド申告ソフトシェアNo.1
インボイス制度、電子帳簿保存法の改正に対応
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iPadは未対応
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トータルプラン 初年度 12,000円(税抜)
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パーソナル 年額プラン 1,280円(税抜) / 月(年額15,360円)
月額プラン 1,680円(税抜) / 月
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6.まとめ

青色申告の帳簿なんて自分には作れないと思っていたけれど、自動で作ってくれるソフトがあるなんて驚きです。
税理士
会計ソフトを使えば、確定申告にかかる労力の大部分をカットすることができますよ。

青色申告に必要な仕訳帳、総勘定元帳をはじめとする複数の帳簿の作成を自力で行うのは会計の知識がある方にとっても楽な作業ではありません。

会計の知識がない方にとっては尚更ですよね。

いずれも無料で試せる期間が設定されているため、実際にどれくらい使いやすいのかを試してみるだけでもおすすめですよ。

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