サラリーマンでも確定申告をすべき人とは?知って得するお金の知識

会社員でも確定申告をしなきゃいけない場合があるって聞いたけど、本当?
確定申告をしたら税金が返ってくるって聞いたけど、どうすれば良いんだろう?

このように気になっている会社員の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

会社員であれば勤め先の企業が年末調整を行うため、会社員の方の多くは確定申告をする必要はないとされています。

しかしなかには確定申告が義務付けられている場合や、義務ではないものの確定申告を行うことによって税金が還付・控除される場合もあるのです。

この記事では、会社員でも確定申告を行わなくてはいけない・行った方が良いケースや確定申告を楽に済ませる方法について詳しくご説明します

税理士
会社員の方の確定申告には以下のようなソフトがおすすめですよ。

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この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
「税理士が教えるお金の知識」(以降、本メディア)では一部、メーカーやサービス提供事業者から広告出稿をいただいておりますが、コンテンツの内容については本メディア独自に制作しており、情報の掲載有無やコンテンツ内容の最終意思決定に事業者は関与しません。

1.そもそも確定申告とは?年末調整とは何が違うの?

そもそも、確定申告ってなんだろう?
年末調整とは何が違うの?

会社員としてお勤めの場合、確定申告というものになじみがない方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

まずは確定申告とはどのようなものなのか簡単にご説明しましょう。

1-1.確定申告とは

個人の確定申告は、税務署に所得を計算した申告書を提出し、納めるべき所得税額を確定するものです。

所得税額を確定するってどういうこと?

本来、所得税はその年の1月1日から12月31日までの所得に対して発生します。

所得とは
収入から、それを得るのにかかった費用や所得控除などを差し引いたもののことです。

例えば個人事業主の場合、収入を得るために仕入れや取引先との接待、備品の購入などさまざまな費用がかかっています。

1年間の収入から費用を差し引いた正確な所得を計算し、正しい所得税額の申告を行うのが確定申告なのです。

なお確定申告で申告を行わなくてはならない可能性のある所得は以下の10種類に分類されます。

【所得の区分】
  • 利子所得……預貯金や公社債などに利子が発生して得た所得
  • 配当所得……株や投資信託などの配当で得た所得
  • 不動産所得……不動産の権利によって得た賃料などの所得
  • 事業所得……農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業から得た所得(不動産の貸し付けや山林の譲渡などで得た所得は除く)
  • 給与所得……勤務先から給与や賞与(ボーナス)として支払われた所得
  • 退職所得……退職金など勤務先から退職に際して支払われた所得
  • 山林所得……山林を売却して得た所得
  • 譲渡所得……土地、建物、ゴルフの会員権などの資産を売却して得た所得
  • 一時所得……懸賞の賞金、競馬や競輪などの払戻金、法人から贈与された金品などで得た所得
  • 雑所得……上記の九つに該当しない公的年金や副業などから得た所得

1-2.年末調整との違い

税理士
会社員であれば、勤め先の会社が年末調整を行っていますよね。年末調整と確定申告はある意味同じような役割を果たしているといえるでしょう。

所得税はその年の1月1日〜12月31日の所得に対して課されます。

しかし年に1回まとめて徴税を行うのは安定した税収のためには得策ではないと考えられますよね。

そのため会社員の場合、毎月の給与から「源泉徴収税」として仮の税額が差し引かれています

勤め先の企業が年末に再計算を行い、1年間の正確な所得金額および所得税を決定するのが年末調整です。

税理士
年末調整を行うことで、支払い過ぎていた税金が返されたり(=還付)、不足していた分が追加徴収されたりします。

確定申告では自身で正確な所得額と所得税額を計算し申告しますが、年末調整では会社が代わりに済ませてくれるのですね。

なお会社員の場合は給与収入金額から給与額に応じて定められた給与所得控除額を差し引いたものが所得(給与所得金額)となるケースが一般的です。

給与所得控除とは
会社員など給与所得者の給与から一定額を差し引くことのできる控除のことです。

年末調整が行われるため、多くの会社員の方は確定申告の必要はありません。

しかし会社員であっても、確定申告を行わなくてはならないケースや、行った方が良いケースもあります。

メモ
所得に対してかかる税金には、所得税の他に住民税があります。住民税は会社員の場合給与から天引きされており、確定申告を行う場合には所得税の申告内容から税額が決定されるため、単独で申告を行う必要はありません。
税理士
次の章から、会社員でも確定申告が必要なケース・行った方が良いケースをご説明しましょう。

2.会社員でも確定申告が必要なケースの代表例

源泉徴収が行われている会社員の方であっても、確定申告を行わなくてはいけない場合もあります。

簡単にいってしまえば年末調整で処理することのできない所得が発生した場合には確定申告を行う必要があるのですね。

税理士
会社員でも確定申告が必要なケースについてご説明しましょう。

会社員でも確定申告が必要なケース

ケース1 給与の総額が2,000万円を超える方

一般的に会社員の方は勤め先の企業が行う年末調整が確定申告と同じ役割を果たしているため、確定申告を行う必要はありません。

しかし給与の総額が2,000万円を超える方に関しては年末調整が行われないため、自身で確定申告を行うことが必要です。

理由としては、日本では所得が多い方ほど税率が高くなる累進課税制度が採られていることがあります。

高額所得者には適用されない所得控除があり、年末調整で処理することができないのですね。

給与の総額が2,000万円を超える場合には確定申告を忘れずに行いましょう。

税理士
確定申告を行わず支払うべき所得税が未納のままだと税務署から指導が入り、延滞税などを支払わなくてはいけなくなってしまう場合もあるので注意しましょう。

ケース2 給与所得および退職所得以外の所得が20万円を超える方

副業をしているなどの理由で会社から支払われる給与所得および退職所得以外の所得が20万円を超えている方は確定申告を行う必要があります

フリーランスとしても仕事をしている方や、アフィリエイトなどで収入を得ている方、アルバイトをしている方、年金をもらっている方などは要注意ですね。

忘れずに確定申告を行いましょう。

なおどのような種類の副業をしているかによって、確定申告を行う際の所得の区分が異なります

企業やお店などと雇用関係にある場合は給与所得ですが、その他の場合には雑所得や事業所得などに該当します。

税理士
ご自身の所得がどれに該当するのか、きちんと確認しておきましょう。

ケース3 不動産を売却して利益が出た方

不動産を売却して譲渡所得が発生した方は確定申告を行う必要があります。

不動産譲渡所得とは
売却代金から取得費(購入費用)や仲介手数料などの譲渡時の費用を差し引いて残った利益のことです。

購入費用や仲介手数料を差し引くと赤字になってしまい、譲渡所得が発生しなかった場合には確定申告を行う必要はありません。

税理士
ただし赤字になってしまった場合も税金が控除される可能性があるため確定申告は行った方が良いと考えられます。詳しくはこちらでご説明します。

なお、自宅や相続した空き家などを売却し一定の条件を満たした場合には、確定申告をすることによって3,000万円の特別控除を受けることができます。

ケース4 特定口座を使わずに株取引や投資信託で利益を上げた方

株や投資信託を売って得た譲渡所得や、所有株の配当で得た利益にも所得税などの税金が発生します。

証券会社によって源泉徴収が行われる「特定口座」を利用している場合は確定申告の必要はありませんが、特定口座を利用せずに株取引で利益を得た方は確定申告を行わなくてはなりません

株の譲渡所得は他の所得と同様、売却代金から株の購入にかかったお金や諸費用を差し引いて算出します。

なお譲渡所得も配当益も同様に15%の所得税、0.315%の復興特別所得税、5%の住民税、合わせて20.315%の税金が課されます

メモ
株で得た所得には他の所得と合算されない「分離課税方式」での課税が行われるため、副業で得た所得のように他の所得と合算して所得税の再計算を行う必要はありません。そのため、源泉徴収が行われている特定口座を利用していれば確定申告の必要はありません。

3.会社員でも確定申告を行った方が良いケースの代表例

確定申告の必要はなさそうだな。面倒な手続きをする必要がなくて良かった。
税理士
実は確定申告を行う必要はなくとも、行うことで税金が控除・還付されるケースがあります。

ここでは、会社員が確定申告を行うことでお得になるケースをお伝えしましょう。

ケース1 10万円を超える医療費がかかった方

実は確定申告を行うことで医療費控除が適用される可能性があります。

総所得金額が200万円以上の方は交通費や薬代を含む医療費が年間10万円を超えた場合に医療費控除の対象となります。

控除額の上限は200万円で、以下の式で控除額を求めることができます。

【医療費控除額の計算式】
    ・(1年間に支払った医療費)−(医療保険などによる補填(ほてん))−10万円

なお、総所得金額が200万円未満の方は医療費が総所得金額の5%を超えた場合に医療費控除の対象となります。

上記の計算式では10万円のかわりに総所得金額の5%の金額を引きます。

ケース2 株取引で損をした方

特定口座を利用していなかった場合、株取引で利益が発生すると確定申告を行わなくてはなりません。

一方、株取引で損をした場合には確定申告は義務ではないものの、行うことによって損失を繰り越し、翌年以降の利益から差し引くことができるので確定申告を行っておくのがおすすめです。

損失額を繰り越せるってどういうこと?

所得税などの税金は収入から費用などを差し引いた所得に対して課されるものです。

所得が増えれば増えるほど税金が高くなるということですよね。

上場株式等の取引で発生した損失については、確定申告を行って損失額を繰り越すと、翌年以降、3年間にわたって利益から繰越した損失額を控除することができるのです。

その分節税になるということですね。

ケース3 住宅ローンを組んで自宅を購入した方

住宅ローンを自宅購入のために金融機関から借り入れた方も確定申告を行うことでメリットがある場合があります。

住宅ローンを組んだ場合、「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」によって税負担が軽減されるケースがあるのです。

住宅ローン控除に関しては細かな適用条件が設けられているため、国税庁の「マイホームの取得等と所得税の税額控除」のページをご確認ください。

税理士
控除の対象となった場合、会社員の方なら最初の年に一度確定申告を行えば、翌年以降は年末調整で引き続き控除を受けることができます

ケース4 天災・盗難などに遭った方

以下のような天災・盗難などに遭った方は確定申告を行うことで「災害減免法による所得税の軽減免除」もしくは「雑損控除」のいずれかを受けることができます。

災害減免法による所得税の軽減免除は、以下の条件を満たしていた場合に適用されます。

【災害減免法による所得税の軽減免除】
  • (1)保険金などによって補填される金額を除いた災害による損害が、損害を受けた資産の時価の1/2以上
  • (2)災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下

なお、控除額は所得の額に応じて以下のように異なります。

所得金額の合計額 軽減または免除される所得税の額
500万円以下 所得税の全額
500万円超〜750万円以下 所得税の1/2
750万円超〜1,000万円以下 所得税の1/4

参考:国税庁「No.1902 災害減免法による所得税の軽減免除」

また雑損控除の適用の対象となるのは以下のような天災や被害に遭った場合です。

【雑損控除適用の対象】

控除の金額は以下のいずれかの多い方です。

【雑損控除の控除額】
  • (1)(損害金額+災害等関連支出金額-保険金等の額)−(総所得金額等)×10%
  • (2)(災害等関連支出金額-保険金等の額)−5万円

ケース5 ワンストップ特例制度を利用せずにふるさと納税を行った方

「ワンストップ特例制度」を利用せずにふるさと納税を行った方は、メリットを享受するために確定申告を行う必要があります。

法律で定められた義務ではありませんが、確定申告を行わなければ単に高いお金を支払っただけになってしまうので注意が必要です。

ふるさと納税は、一言でいえば「自己負担2,000円で自治体から豪華な特産品などをもらうことができる制度」です。

ふるさと納税という名前ですが厳密には「寄附」に当たり、寄附金から2,000円を差し引いた金額が住民税と所得税から控除・還付されます。

控除・還付を受けるためには確定申告もしくはワンストップ特例制度の利用、いずれかの所定の手続きが必要です。

ワンストップ特例制度とは
他の要件による確定申告の必要性がない方を対象とした、確定申告を行わずに住民税の控除という形でふるさと納税のメリットが享受できる制度のことです。ただし、寄附先の自治体が5自治体を超えた場合には利用することができません。

ワンストップ特例制度を利用しなかった場合は忘れずに確定申告を行いましょう。

税理士
ふるさと納税について詳しく知りたいという方はこちらの記事をご覧ください。

ケース6 不動産を売却して損失が出た方

不動産を売却して利益が生じた場合には確定申告が必要です。

一方売却で損失が出た場合、確定申告を行う必要はないものの、確定申告を行うことで節税になると考えられるため、確定申告を行うのがおすすめです。

税理士
ここでいう損失とは、売却代金から取得費(購入費用)や仲介手数料などの譲渡時の費用を差し引いて発生した損失額のことです。

自宅の買い換えやローンが残っている自宅の売却で損失が発生した場合、不動産を売却した年のその他の所得と相殺して所得税や住民税を減らすことができるのです。

これを「損益通算」といいます。

また、損益通算をしてもなお損失が残る場合は、その損失を繰り越して、翌年以降3年間にわたり所得から控除することができます。

税理士
確定申告で損益通算や繰越控除を行うことで納税額を大幅に減らせる可能性があります。

忘れずに確定申告を行いましょう。

4.会社員の確定申告におすすめの会計ソフト

確定申告をしなきゃならないみたいだけど、初めてでどうして良いか分からない……。
確定申告をした方がお得みたいだけど、簡単に確定申告を済ませる方法はないのかな?

このように初めての確定申告に際して戸惑っている会社員の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

実は確定申告は「会計ソフト(確定申告ソフト)」を利用することで手軽に済ませることができます

所定の情報の入力を簡単に行うだけで、税額計算や確定申告書の作成はソフトが代わりに行ってくれます。

ここでは会社員の確定申告におすすめの会計ソフトをご紹介しましょう。

有料のものも少なくありませんが、会計ソフトによって手間を削減し、確定申告によって控除や還付を受けられることを考えれば非常にお手頃だといえます。

税理士
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5.まとめ

一般的に年末調整が行われる会社員の方は確定申告の必要はないとされています。

しかし場合によって確定申告が義務付けられているケースや、義務ではないものの確定申告によって税金の控除・還付を受けられるケースがあるため、自分がそのケースに当てはまっていないか十分注意しておくことが必要です。

確定申告の必要性や重要性を把握していないと、税務署から指導が入って延滞税を支払うことになってしまったり、支払う必要のない税金を支払ったままになってしまったりする可能性があります。

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