【2023年10月開始】インボイス制度とは?図でわかりやすく解説

インボイス制度が始まるみたいだけど、わかりやすくいうとどういった制度なの?
インボイス制度がなぜ導入されるのか、自分に関係があるのかなど説明を聞いたけどわかりづらい……。

このようにインボイス制度について、簡単に理解したいという方もいらっしゃるでしょう。

インボイス制度とは、2023年10月1日に開始される「仕入税額控除」の新方式です。

制度の開始後、事業者が仕入れを行う際にかかる消費税を控除するために、適格請求書(インボイス)と呼ばれる新たな形式の請求書が必要となります

そのため請求書を発行する事業者(売り手)は買い手から、適格請求書の発行を求められるケースがあります。

事業を行う方は買い手であっても売り手であっても、制度の仕組みを理解し、必要な準備をしておかなければなりません

そこでこの記事では図やイラストを用いながら、インボイス制度についてわかりやすく解説します。

なお法人だけでなく、個人事業主やフリーランスの方にも影響があるので必見ですよ。

税理士
本記事は「消費税についての知識も曖昧だから心配……。」といった方でも、安心してお読みいただけます。

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この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
「税理士が教えるお金の知識」(以降、本メディア)では一部、メーカーやサービス提供事業者から広告出稿をいただいておりますが、コンテンツの内容については本メディア独自に制作しており、情報の掲載有無やコンテンツ内容の最終意思決定に事業者は関与しません。
目次

1.インボイス制度をわかりやすく図解!

インボイス制度は簡単にいうとどのような制度なの?
インボイス制度が始まることでどうなるのか、わかりやすい説明があると助かるんだけど……。

2023年10月1日から新たに導入されるインボイス制度について、専門的な用語が使われることもあって難しいイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

そこでまずインボイス制度の概要についてわかりやすくご説明します。

税理士
取引先に迷惑が掛かったり今後の仕事に支障が出たりする恐れもあるため、インボイス制度の概要をしっかり確認しましょう。

1-1.インボイス制度とは

インボイス制度とは2023年10月1日開始の消費税に関する制度で、正式名称を「適格請求書等保存方式」といいます。

「仕入税額控除」を適用させるために、新たな形式の請求書「適格請求書(インボイス)」の発行・保存を行うことが定められています。

仕入税額控除とは
仕入れにかかる消費税を控除することです。具体的には消費税の納付義務のある「課税事業者」が納付する税金の金額を算出する際に、売り上げにかかる消費税から、仕入れにかかった消費税を差し引くことを指します。
メモ
課税期間(個人事業主は1~12月、法人は事業年度)の基準期間(個人事業者は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円超で納税義務がある事業者を「課税事業者」、基準期間および特定期間(個人事業主は前年の1月~6月、法人は前事業年度の開始日から6カ月間)の課税売上高が1,000万円以下で納税義務のない事業者を「免税事業者」といいます。買い手が免税事業者である場合、そもそも消費税の納付義務がないため、仕入税額控除の適用を受ける必要がありません。
国税庁サイト「消費税のしくみ」を参照
何だか難しいなあ……。わかりやすくいうと、どういうこと?
税理士
スーパーなど、仕入れ先から商品を仕入れ、消費者に商品・サービスを販売して売り上げを得ている事業者を例に解説します。

事業者に消費税の納付義務がある場合、以下のように売り上げにかかる消費税(消費者から受け取った消費税)から、仕入れにかかった消費税を引いて納付する消費税額を算出します。

【仕入税額控除の仕組み】
仕入税額控除の仕組み

図の例の場合、売り上げにかかる消費税5,000円から、仕入れにかかった消費税3,000円を引いた金額2,000円が事業者の納付する消費税額ということです。

税理士
このように仕入れにかかる消費税を差し引くことを仕入税額控除といい、控除の適用によって消費税の二重課税を解消できます。

インボイス制度開始後、仕入税額控除を適用するためには適格請求書(インボイス)が必要になります。

メモ
インボイス制度の導入前までは事業者の負担を軽減する国の特例などにより仕入税額控除が適用されていましたが、制度の開始後は適格請求書がないと仕入税額控除を適用できなくなります。

売り手は適格請求書を発行し、買い手は適格請求書を発行してもらって保存する必要があります。

注意
適格請求書を発行できるのは、「適格請求書発行事業者」の登録を行った事業者のみです。詳しい登録方法はこちらの記事で紹介しているのでご参照ください。

売り手から適格請求書が発行されない場合、買い手は仕入税額控除を受けることができません

インボイス制度開始後に適格請求書が発行された場合とされなかった場合の取引の違いを図で確認してみましょう。

以下は、売り手から適格請求書が発行される取引をわかりやすくまとめた図です。

【売り手から適格請求書が発行される取引】
売り手から適格請求書が発行される取引

売り手から適格請求書が発行されるため、仕入税額控除を適用できます

図のように売り上げにかかる消費税が5,000円で、仕入れにかかった消費税が3,000円だった場合、買い手は差額の2,000円のみを納税すれば良いということです。

なお適格請求書が発行された取引で控除された仕入れの消費税額は、適格請求書発行事業者である売り手が納付する必要があります

税理士
適格請求書を発行することにより売り手に消費税の納付義務が発生しますが、買い手の税負担を軽減できるため、取引の継続や獲得を円滑に行えるというメリットがあります。

続いて売り手から適格請求書が発行されない取引についても、以下の図で簡単に確認しましょう。

【売り手から適格請求書が発行されない取引】
売り手から適格請求書が発行されない取引

適格請求書が売り手から発行されない場合は、買い手が仕入れにかかる消費税を控除できません

売り上げにかかる消費税が5,000円だった場合、買い手はそのまま5,000円を納付します。

買い手としては、仕入税額控除を受けるために適格請求書を発行してくれる売り手と取引したいところだね。
売り手としては適格請求書を発行すると税負担が増えるし、手間もかかりそうだから、発行しない方が良さそうだけど……。
税理士
売り手が適格請求書を発行できない場合、買い手の税負担が増えるため、取引を打ち切られたり、値下げを求められたりするケースが考えられます。

インボイス制度の開始後も、円滑な取引を継続するために売り手となる場合にも適切な対応を検討する必要がありますよ。

なおインボイス制度の導入でどのような影響があるのか、どのような対策をすべきかは、事業者が売り手か買い手か、免税事業者か課税事業者かによって異なります

インボイス制度が始まるまでに、ご自身・会社の立場が以下のうちどれに当てはまるのかを確認し、対応を行っておきましょう。

【インボイス制度で事業者が行うべき対応】
売り手(請求書を発行する側) 免税事業者(消費税の納付義務がない事業者) 3-1
課税事業者(消費税の納付義務がある事業者) 3-2
買い手(請求書を受け取る側) 免税事業者(消費税の納付義務がない事業者) 4-1
課税事業者(消費税の納付義務がある事業者) 4-2

1-2.インボイス(適格請求書)とは

インボイスとは一体何のことなんだろう?

インボイス(適格請求書)とは
商品やサービスなどの売り手が買い手に対してより正確な消費税額や適用税率などを伝えるための手段です。具体的には、適格請求書発行事業者の登録番号を含む一定の事項が記載された書類やデータを指します。

2019年10月1日からインボイス制度開始前までは、一般的に「区分記載請求書」という請求書が使用されてきました。

インボイス制度が開始されると、区分記載請求書に三つの項目が追記された、インボイスと呼ばれる適格請求書を取り扱うことになります。

区分記載請求書と適格請求書の書式の違いについては、2章で詳しくお伝えしますね。

なお基本的にインボイス制度では適格請求書を扱いますが、一定の要件を満たす場合は簡易的な「簡易インボイス(適格簡易請求書)」の取り扱いが認められるケースもあります。

簡易インボイスの詳しい内容はこちらをご参照ください。

メモ
インボイスという言葉は、もともと輸出者から輸入者宛てに送られる貨物の送り状(明細書)を指すものでした。貨物の送り状としてのインボイスは、商品名や内容物の数量、価格、輸出者の情報などが記載されており、請求書や納品書としての機能も果たすことから貿易取引に必須の書類とされています。インボイス制度における適格請求書と名称は同じであるものの、全く別の書類なので注意しましょう。

1-3.インボイス制度の目的

ところでインボイス制度は何のために導入されるの?

インボイス制度が開始される主な目的は、「複数税率」に対応した正確な納税額を把握することだといわれています。

複数税率とは
消費税の税率が、標準税率10%と軽減税率8%の複数あることを指します。2019年に消費税が10%に引き上げられた際に、飲食料品(外食、酒類を除く)や新聞に対して軽減税率8%が適用されたことにより、2種類の消費税率が混在しています。

適格請求書では、商品・サービスにかかる消費税が8%と10%のどちらであるかを明確に記載します。

そのため適格請求書を発行することで、売り手が買い手に複数税率に応じた正確な納税額を伝えることができるのです。

2.インボイス制度で何が変わる?2つの変更点を解説

インボイス制度が始まったら、何が変わるんだろう?

このようにインボイス制度開始後の影響が気になる方もいらっしゃるでしょう。

主に以下の2点が変わるといわれています。

【インボイス制度開始後の変更点】
インボイス制度開始後の変更点
税理士
では二つの変更点について、詳しくご説明しますね。

変更点1 仕入税額控除の適用要件

2023年10月1日のインボイス制度開始以降は、適格請求書の発行・保存のある取引のみが仕入税額控除の適用対象になります。

売り手から適格請求書が発行された取引では、買い手が請求書を保存することによって、仕入れにかかる消費税を控除できます。

一方、適格請求書が発行されなかった取引では、仕入税額控除を適用できません

適格請求書の発行・保存がない取引では、買い手の税負担が増えるんだね。

変更点2 請求書の書式

インボイス制度が始まると、これまで使用していた区分記載請求書から適格請求書の取り扱いに移行します。

適格請求書は、区分記載請求書の記載事項に「登録番号」「税率ごとの取引内容の合計金額および適用税率」「税率ごとの消費税額」が追記されたものです。

適格請求書として扱うには、三つの追記項目を含め、以下の一定の内容が記載されている必要があります。

【適格請求書に記載が必要な事項】
  • ①適格請求書発行事業者の登録番号、および氏名または名称
  • ②取引年月日
  • ③取引内容(軽減税率の対象のものがある場合はその旨を記載)
  • ④税率ごとの取引内容の合計金額(税抜または税込価額)、および適用税率
  • ⑤税率ごとの消費税額
  • ⑥交付を受ける事業者の氏名または名称

実際に適格請求書を作成する際には、以下のように記載します。

【適格請求書の記載例】
適格請求書の記載例

なお適格請求書は、電子インボイスと呼ばれる電子データ(電磁的記録)で交付することも可能ですよ。

注意
適格請求書発行事業者の登録を行っていない事業者が、適格請求書と思われる請求書を発行することは禁止されています。万一違反した場合には罰則を科される恐れがあります。

3.インボイス制度で売り手(請求書を発行する側)がすべき対応

請求書を発行する立場なんだけど、インボイス制度に向けてどう対応をすれば良いの?

このようにインボイス制度開始前後の対応を知りたいという売り手の方もいらっしゃるでしょう。

商品・サービスを納入し、請求書を発行している売り手の方は、免税事業者か課税事業者かによって必要な対応が異なります

ご自身・会社がどちらに当てはまるかを確認し、適切な対応を行っておきましょう。

【インボイス制度で売り手がすべき対応】
免税事業者(消費税の納付義務がない事業者)の対応 3-1
課税事業者(消費税の納付義務がある事業者)の対応 3-2
税理士
この章ではインボイス制度で売り手がすべき対応について、免税事業者・課税事業者別にわかりやすく解説します。

3-1.免税事業者の場合

免税事業者の売り手の方はまず、商品・サービスの納入先に課税事業者が含まれるかを確認しましょう。

主な取引先が課税事業者の場合は、インボイス制度開始後に適格請求書の発行を求められる可能性が高いといえます。

取引先の方針にもよりますが、適格請求書の発行がないと取引の継続を打ち切られたり、値下げを要求されたりすることが考えられます

適格請求書の発行が予想される取引の数や、発行しなかった場合の取引への影響を考え、適格請求書発行事業者に登録するかを検討しましょう。

なお適格請求書発行事業者になる免税事業者の売り手は、以下の対応が必要です。

【適格請求書発行事業者になる免税事業者の売り手の対応】
制度開始前 ・適格請求書登録事業者の登録手続きをする(課税事業者に切り替わる)
制度開始後 ・適格請求書の発行、写しの保存をする
・インボイス制度に応じた帳簿の作成、保存をする
・納税方法を検討する
・確定申告を行う
メモ
適格請求書発行事業者の登録申請を2029年9月30日の属する課税期間(特例期間)までに行った免税事業者は課税事業者に自動的に切り替えられ、納税義務が発生します。

なお制度開始後は、適格請求書の発行がある取引とない取引を分けて請求書の管理、帳簿付けなどを行う必要があるため、会計処理が煩雑する恐れがあります。

税理士
新方式に対応する会計ソフトや請求書システムの活用が便利でおすすめですよ。

メモ
インボイス制度への対応が可能で適格請求書の保存もできるおすすめの会計ソフトについて、個人事業主向けのソフトを7章、法人向けのソフトを8章でご紹介しています。

一方適格請求書の登録を行わない場合は、以下のように対応しましょう。

【適格請求書発行事業者にならない免税事業者の売り手の対応】
制度開始前 ・取引の打ち切りや値下げなどの価格改定がないか確認する
制度開始後

なお取引先に課税事業者が含まれない場合は、適格請求書の発行を求められないため、特別な対応は必要ありません

メモ
インボイス制度開始後でも適格請求書発行事業者の登録は可能です。今後課税事業者と取引を行う可能性がある場合は、後から適格請求書発行事業者に切り替えることもできます。

3-2.課税事業者の場合

課税事業者の売り手の方もまずは、主な取引先が課税事業者であるかを確かめましょう

取引先に課税事業者が多い場合には、適格請求書の発行を要請される可能性が高いため、適格請求書発行事業者の登録をおすすめします。

なお適格請求書発行事業者になる場合・ならない場合の課税事業主の売り手の対応は以下のとおりです。

【適格請求書発行事業者になる場合・ならない場合の課税事業者の売り手の対応】
※横にスクロールできます
適格請求書発行事業者になる場合 制度開始前 ・適格請求書登録事業者の登録手続きをする
制度開始後 ・適格請求書の発行、写しの保存をする
・インボイス制度に応じた帳簿の作成、保存をする
適格請求書発行事業者にならない場合 制度開始前 ・取引の打ち切りや値下げなどの価格改定がないか確認する
制度開始後

なお取引先が全て免税事業者の場合は、インボイス制度に向けた対応は特にありません

4.インボイス制度で買い手(請求書を受け取る側)がすべき対応

仕入れ先から請求書が発行される立場なんだけど、インボイス制度の開始までに何か準備しておく必要はあるの?

このように疑問に思っている方もいらっしゃるでしょう。

請求書を受け取る事業者、つまり買い手の方も免税事業者か課税事業者かによって、インボイス制度開始前後の対応が異なります

免税事業者・課税事業者のうち、ご自身・会社が該当する方の対応を確認しておきましょう。

【インボイス制度で買い手がすべき対応】
免税事業者(消費税の納付義務がない事業者)の対応 4-1
課税事業者(消費税の納付義務がある事業者)の対応 4-2
税理士
ここからはインボイス制度で買い手が行う対応について、免税事業者・課税事業者別に詳しくお伝えしますよ。

4-1.免税事業者の場合

免税事業者の買い手の方は、インボイス制度の導入に向けた対応が不要です。

インボイス制度は、課税事業者の買い手が仕入税額控除を適用させるために売り手から適格請求書を発行してもらうものです。

税理士
免税事業者の買い手の方は納税義務がないため、仕入税額控除を行う必要もありません。

4-2.課税事業者の場合

課税事業者の買い手の方は、インボイス制度の開始後、仕入れ先から適格請求書を発行してもらわなければ、仕入税額控除を適用できません

そのためまずは仕入れ先である取引先が適格請求書発行事業者であるかの確認を取りましょう

メモ
本記事で紹介している会計ソフトブランドfreeeの関連サービス「freee請求書」では、取引先のインボイス制度への対応状況を簡単に確認・管理できます。

取引先が適格請求書発行事業者か、適格請求書発行事業者でないかを確認したら、伝票上で色分けをするなどして区別しておきます。

なお取引先から適格請求書が発行される取引・されない取引では、以下のように異なる対応を行う必要があります。

【適格請求書が発行される取引・されない取引の対応】
適格請求書が発行される取引 ・適格請求書の保存をする(適格請求書とそれ以外の請求書と区別して管理が必要)
・インボイス制度に応じた帳簿の作成、保存をする
適格請求書が発行されない取引 ・必要に応じて取引の継続や価格改定を検討する
・必要に応じて「簡易課税制度」の利用を検討する
簡易課税制度とは
売り上げにかかる消費税にみなし仕入れ率といわれる一定の割合を乗じて算出した額を、売り上げにかかる消費税額から控除できる制度です。事前に所轄の税務署に「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した課税事業者のうち、基準期間における課税売上高が5,000万円以下の場合に利用できます。

みなし仕入れ率は事業の種類ごとに異なり、業種によっては仕入税額控除を適用するよりも、消費税の納税額を軽減できる可能性がありますよ。

メモ
インボイス制度の導入に伴い、2029年9月30日までは適格請求書のない取引であっても、一定額の仕入税額控除を適用できる「経過措置」が用意されています。詳しくはQ5 インボイス制度の経過措置とは?をご参照ください。
税理士
適格請求書を扱う予定の買い手の方は、適格請求書やインボイス制度に応じた帳簿の管理方法を検討しておくことも重要です。

5.インボイス制度の負担を軽減!6つの支援措置

インボイス制度に対応するには、いろんな手間や負担がかかりそうだけど……。

このようにインボイス制度への対応が必要であるものの、業務や納税額の増加などを懸念している方もいらっしゃるでしょう。

税理士
インボイス制度に対応する事業者向けに、以下の支援措置が用意されているので活用するのがおすすめですよ。

【インボイス制度の支援措置】
税理士
ではそれぞれの措置について、詳しくご説明しますね。

措置1 納税額を売上税額の2割にできる(2割特例)

インボイス制度の導入に伴い、免税事業者から適格請求書発行事業者になった方は消費税の納付額を一定期間、売上税額の2割にできる特例制度「2割特例」を活用できます

2割特例では以下の計算式によって算出された消費税額を納めます。

【2割特例による納付する消費税額の計算方法】
  • 納付する消費税額=売り上げにかかる消費税額×20%

仮に売り上げにかかる消費税が10万円だった場合は、2万円のみを納付すれば良いというものです。

なお2割特例の対象者と対象期間は以下のとおりです。

【2割特例の対象者と対象期間】
対象者 免税事業者から適格請求書発行事業者になった方
対象期間 2023年10月1日~2026年9月30日を含む課税期間(個人事業者は2023年10~12月の申告から2026年分の申告まで)
メモ
2割特例の措置は届け出の提出が不要で、措置を受ける旨を消費税の確定申告書に記入するだけで適用されます。

措置2 適格請求書発行事業者になると補助金が出る

免税事業者が適格請求書発行事業者に登録をすると、小規模事業者の場合「持続化補助金」の上限額が一律50万円上乗せされます

持続化補助金とは
正式名称を小規模事業者持続化補助金といい、販路開拓や販路開拓に伴い行う業務効率化を目指して取り組む小規模事業者を支援する補助金です。

持続化補助金の対象者と対象となる費用は以下のとおりです。

【持続化補助金の対象者・対象となる費用】
対象者 小規模事業者
補助金の対象 税理士への相談費用、機械装置の導入費、広報費、展示会出展費、開発費、委託費など

なお持続化補助金は補助上限額が50~200万円の複数の申請枠があり、インボイス特例の一定の要件を満たすと、上限額に50万円が上乗せされる仕組みです。

税理士
最大で250万円の補助金を受け取れる可能性もあるので、ぜひ活用してください。

措置3 会計ソフトの導入で補助金が出る

インボイス制度に対応するため会計ソフトを導入する方は、「IT導入補助金」を利用できます

IT導入補助金とは
会社のニーズや課題解決に適したITツールの導入を検討する中小企業・小規模事業者を支援する補助金です。

なおIT導入補助金では、対象者と対象となる費用が以下のように決められています。

【IT導入補助金の対象者・対象となる費用】
対象者 中小企業・小規模事業者など
補助金の対象 ソフトウェア購入費、クラウド利用費(最大2年間分)、ハードウェア購入費など

もともと会計ソフトの購入費用はIT導入補助金の対象でしたが、インボイス制度の導入に伴い補助金の下限額が撤廃されます。

税理士
値段の低い会計ソフトの導入も補助金の対象になりますよ。

措置4 少額の取引にはインボイスが不要

税込1万円未満の少額の仕入れであれば、インボイスがなくても仕入税額控除を適用できる措置もあります。

対象となる方の要件と費用は以下のとおりです。

【少額の取引にインボイスが不要になる措置の対象者と対象期間】
対象者 基準期間の売上高が1億円以下あるいは特定期間の課税売上高が5,000万円以下の方
対象期間 2023年10月1日~2029年9月30日

上記の要件を満たす場合であれば、値段の低い商品などを仕入れるときに帳簿の保存だけで仕入れにかかる消費税を控除できますよ。

事業者としては、手間が減るからうれしい措置だね。

措置5 少額の値引き・返品には返還インボイスが不要

インボイス制度の開始後、取引に値引きや返品などがあった場合、適格請求書発行事業者には返還インボイス(適格返還請求書)の交付が義務付けられています。

返還インボイスとは
売り手の適格請求書発行事業者が、値引きや返品などの理由で返金処理を行う場合、または類することを行う場合に交付する請求書などの書類です。

しかし税込1万円未満の値引きや返品などであれば、返還インボイスを交付する必要がありません

なお全ての方が措置の対象で、対象となる期間も設けられていません。

事務処理の負担や振込手数料などを削減できるから助かるね。

措置6 適格請求書発行事業者の登録申請期間を延長

インボイス制度に向けた準備状況が事業者ごとにばらつきがあることもあり、適格請求書発行事業者の登録申請期間が延長されました。

2023年4月以降に「3月末までの申請が困難な事情」の記載をせずに申請する場合でも、インボイス制度の開始日から適格請求書発行事業者の登録を受けることが可能です。

メモ
もともとインボイス制度の開始日から適格請求書を発行するためには、2023年3月末までに適格請求書発行事業者の登録を行うか、4月以降に「3月末までの申請が困難な事情」を申請書に記載して登録することとされていました。
税理士
2023年9月30日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を提出すれば、制度の開始日から適格請求書発行事業者の登録を受けられますよ。

なお登録申請書の提出は「所轄の税務署に直接持ち込む」「インボイス登録センターに郵送する」「国税庁運営のオンライン申請システムであるe-Taxを利用する」といった方法があります。

適格請求書発行事業者の登録を行う方は、国税庁サイトを確認しましょう。

6.インボイス制度開始後の請求書の保存には会計ソフトがおすすめ!

インボイス制度の開始により会計業務の内容が大きく変わり煩雑化が予想されるため、事業者の方は会計業務や会計ソフト・請求書発行システムの見直しが必要です。

制度の導入に伴い事業者は具体的に以下のような対応を求められますよ。

【インボイス制度で事業者が求められる業務の例】
  • ・適格請求書および写しの保存
  • ・「電子帳簿保存法」への対応
  • ・適格請求書が発行される取引とされない取引の区分管理 など

インボイス制度に対応する買い手は受け取った適格請求書を、売り手は発行する適格請求書の写しを一定期間、保存する必要があります。

メモ
適格請求書および写しの保存期間は、受け取った日または交付した日を含む課税期間の末日の翌日から2カ月を経過した日を起点に7年間です。なお個人事業主の課税期間は原則1月1日~12月31日、法人の課税期間は原則事業年度です。

また適格請求書を電子データ化した電子インボイスを保存する場合には「電子帳簿保存法」にのっとり、電子取引に関する保存要件を満たしておかなければなりません。

電子帳簿保存法とは
税務関係の帳簿や書類をデータ化して保存することを可能とした法律です。1998年の施行以降、複数回内容が改正されています。

さらに会計処理を行う際には、適格請求書が発行される取引とされない取引を区分して管理する点にも注意しましょう。

なおインボイス制度開始後の複雑な会計業務を適切に行うには、制度に対応した会計ソフトの利用を推奨します。

会計ソフトは自動で取引内容を読み込んだり、仕訳したりしてくれる他、請求書や確定申告書の作成をしてくれるものもあります。

税理士
インボイス制度を機に会計ソフトを導入する場合は、IT導入補助金を受け取れる可能性があるので活用するのがおすすめですよ。

7.【インボイス制度対応】個人事業主向け会計ソフト3選

インボイス制度に対応した会計ソフトを利用しようと思うんだけど、個人事業主はどのソフトを選べば良いの?

このように会計ソフト選びに迷っている個人事業主の方もいらっしゃるかもしれませんね。

インボイス制度に対応したい個人事業主の方には、業界シェア上位の以下3ブランドの会計ソフトがおすすめです。

【インボイス制度対応の個人事業主向け会計ソフト3選】
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税理士
会計ソフトの操作が初めてでも、簡単にインボイス制度に対応できるソフトを厳選していますよ。

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クラウド型会計ソフトとは
オンラインでデータの保存・管理を行いながら記帳をはじめとする会計処理ができる会計ソフトです。法改正や新制度に対応するアップデートが自動で行われます。

制度や法令の改正があるたび自動でバージョンがアップデートされるため、インボイス制度にも安心して対応できます

また無料で利用できる関連サービスのfreee請求書との連携利用がおすすめです。

freee請求書は仕入れ先の適格請求書の準備状況を確認・管理できたり、適格請求書の発行を依頼・支援できたりと、インボイス制度に対応する買い手の方にぴったりですよ。

なおfreee 確定申告はスマートフォンのアプリから記帳ができる上、レシートの撮影で取引情報を取り込めるので手軽に会計処理を行いたい方にも向いています。

まずは無料で使用することも可能なので、気軽に確認してみましょう。

おすすめ2 マネーフォワード クラウド確定申告

マネーフォワード
メリット
スマホで確定申告が可能
関連サービスと連携すれば、バックオフィス業務の効率化も可能
デメリット
簿記の知識がない方にはやや不向き
こんな人におすすめ!
会計業務だけでなくバックオフィス業務も効率化したい方
ある程度の簿記の知識がある方
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ソフト名 プラン 価格(税抜) 無料期間
マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミニ 10,800円 1カ月間無料
パーソナル 15,360円
パーソナルプラス 35,760円

マネーフォワード クラウド確定申告は、マネーフォワードクラウド請求書やマネーフォワードクラウド経費など業務の効率化に関するサービスを多く提供している株式会社マネーフォワードの個人事業主向けクラウド型会計ソフトです。

クレジットカードや銀行口座の取引明細の自動取得、確定申告書の作成、キャッシュフローのレポート作成、見積書・納品書・領収書・請求書の作成などが可能です。

またバックオフィス業務をサポートする多数の関連サービスと連携できる点が大きな特徴といえるでしょう。

経費計算や給与計算など、会計以外の業務も簡単に効率アップできますよ。

なお法令の改正やサービスの改善に関するアップデートも随時自動で行っているため、インボイス制度・電子帳簿保存法にも対応可能です。

三つのプラン全てに1カ月の無料トライアル期間があるので、気軽に申し込んでみましょう。

おすすめ3 やよいの白色申告 オンライン/青色申告 オンライン

メリット
白色申告 オンラインはずっと無料で利用できる
クラウド型会計ソフトのシェアナンバーワン
デメリット
有料プランの料金が初年度と2年目以降で大きく異なる
こんな人におすすめ!
簿記の知識があまりない方
安心できる老舗サービスを利用したい方
※横にスクロールできます
ソフト名 プラン 初年度価格(税抜) 2年目以降(税抜) 無料期間
やよいの白色申告 オンライン フリープラン 0円 0円 ずっと無料
ベーシックプラン 0円 11,500円/年 初年度無料
トータルプラン 10,500円/年 21,000円/年
やよいの青色申告 オンライン セルフプラン 0円 10,300円/年 初年度無料
ベーシックプラン 0円 17,250円/年 初年度無料
トータルプラン 15,000円/年 30,000円/年

やよいの白色申告 オンラインやよいの青色申告 オンラインは登録ユーザー数が310万人を超える人気の会計ソフトシリーズ「弥生シリーズ」の個人事業主向けクラウド型会計ソフトです。

申告方法別で専用のソフトがあり、白色申告の場合はやよいの白色申告 オンライン、青色申告の場合はやよいの青色申告 オンラインを利用するように設計されています。

やよいの白色申告 オンラインやよいの青色申告 オンラインの大きな特徴は操作性の良さだといえるでしょう。

簿記の知識がなくても日々の取引の入力から仕訳、帳簿の作成、確定申告までを簡単に行えますよ。

さらに電子帳簿保存法やインボイス制度に対応しているので、制度開始後も安心です。

なお全てのプランで、クラウド上で領収書や請求書などの証憑(しょうひょう)を保存・管理できる関連サービス「スマート証憑管理」を無料で利用することも可能です。

やよいの白色申告 オンラインはずっと無料、やよいの青色申告 オンライン1年間無料で利用できるので、ぜひ使用感を試してください。

8.【インボイス制度対応】法人向け会計ソフト3選

インボイス制度に対応する企業はどの会計ソフトを導入したら良いのかな?

このようにインボイス制度対応の会計ソフトのうち、法人におすすめの製品をお探しの方もいらっしゃるでしょう。

税理士
インボイス制度を機に会社に会計ソフトを導入する場合は、以下の三つの会計ソフトがおすすめです。

【インボイス制度対応の法人向け会計ソフト3選】
※横にスクロールできます
ブランド名 ソフト名 プラン 価格(税抜) 無料期間
freee freee会計 ひとり法人 35,760円/年 30日間無料
スターター 65,760円/年+従量課金 30日間無料
スタンダード 107,760円/年+従量課金 30日間無料
アドバンス 477,360円/年+従量課金 30日間無料
マネーフォワード クラウド マネーフォワード クラウド会計 スモールビジネスプラン 35,760円/年 1カ月間無料
ビジネスプラン 59,760円/年 1カ月間無料
弥生会計 弥生会計オンライン セルフプラン 27,800円/年 初年度無料
ベーシックプラン 37,600円/年 初年度無料
税理士
ではインボイス制度対応の法人向け会計ソフト3選について詳しくご説明します。

おすすめ1 freee 会計

freee
メリット
初心者に親切な設計
スマホからでも使いやすい操作性の高さ
デメリット
価格がやや高い
こんな人におすすめ!
初めて会計ソフトを導入する方
スマホで空き時間に会計業務を済ませたい方
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ソフト名 プラン 価格(税抜) 無料期間 備考
freee会計 ひとり法人 35,760円/年 30日間無料
スターター 65,760円/年+従量課金 30日間無料
スタンダード 107,760円/年+従量課金 30日間無料
アドバンス 477,360円/年+従量課金 30日間無料

freee 会計は上場企業であるfreee株式会社が提供する法人向けクラウド型会計ソフトです。

会計業務が初めての方でも利用できるように設計されているので、業務効率のアップが見込めますよ。

またインボイス制度をはじめとする法改正があると、自動でアップデートを行ってくれるので安心です。

なお四つのプランは全て年払い・月払いに対応しており、月々2,980円(税抜)から利用することもできます。

四つのうち最も機能が充実しているアドバンスプランでは、従業員の経費精算、経営数字のレポート、予算実績管理、ワークフローの効率化に関する機能なども付いていますよ。

30日間の無料トライアル期間があるので、使用感を確認してから導入するのも手です。

おすすめ2 マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード
メリット
リアルタイムで経営状況を把握できる
他のソフトと連携してさらに業務を効率化できる
デメリット
価格がやや高い
こんな人におすすめ!
経営状況の分析機能も利用したい方
バックオフィス業務の効率化も図りたい方
※横にスクロールできます
ソフト名 プラン 価格(税抜) 無料期間 備考
マネーフォワード クラウド会計 スモールビジネス 35,760円 1カ月間無料
ビジネス 59,760円 1カ月間無料

マネーフォワード クラウド会計多数の大手企業も導入している利用満足度の高い法人向けクラウド型会計ソフトです。

3,000を超えるサービスと連携しており、取引データの取得のしやすさは群を抜いています。

取引情報の取得や仕訳、決算書の作成などが自動化されるので、会計業務の効率アップに大変役立ちますよ。

また勤怠給与や経費清算などのバックオフィス業務をサポートする関連サービスを無料で利用できるので、会計だけでなく会社の業務効率の向上が見込めます。

なお1カ月間の無料トライアル期間やソフト導入前の無料のオンライン相談があるので、活用するのがおすすめですよ。

メモ
マネーフォワード クラウド会計では最大65,736円分のAmazonギフトカードがプレゼントされるキャンペーンが2024年9月30日(月)まで実施されています。詳細はこちらをご覧ください。

おすすめ3 弥生会計 オンライン

メリット
初心者に親切な設計
0円で利用開始できる
デメリット
月払いに対応していない
こんな人におすすめ!
初めて会計ソフトを利用する方
実績あるメーカーのソフトを利用したい方
※横にスクロールできます
ソフト名 プラン 初年度価格(税抜) 2年目以降(税抜) 無料期間 備考
弥生会計 オンライン セルフプラン 0円 27,800円 初年度無料 最大2カ月の無料サポートあり
ベーシックプラン 0円 37,600円 初年度無料 通年サポート対応

弥生会計 オンライン25年連続売り上げトップの実績がある老舗ブランド「弥生会計」の法人向けクラウド型会計ソフトです。

取引の自動入力や領収書・レシートなどの自動仕訳、経営数字に関するレポートの作成、POS(販売時点情報管理)レジ・請求書などとの連携といった豊富な機能があります。

インボイス制度に対応したアップデートや情報提供を行っているので、制度導入後も安心して利用できますよ。

また簿記に不慣れな方や経理業務が初めての方でも使用できるように設計されている点もうれしいポイントです。

なお初年度の利用料が無料な上、2年目以降も月々2,000円ほどから利用できるため、コストパフォーマンスが良いといえますよ。

使いやすさやコストを重視したい法人の方にぴったりです。

9.インボイス制度についてよくある疑問

インボイス制度の開始に向けて、個人事業主やフリーランスも何か準備しないといけないの?
レシートも適格請求書として扱うことはできるのかな?

インボイス制度の導入に当たり新しく決められたルールも多いため、疑問に思うことがあるかもしれませんね。

この章ではインボイス制度に関する以下の六つの疑問についてご説明しますよ。

Q1 インボイス制度はいつから始まる?

インボイス制度の開始日はいつなんだろう?

インボイス制度は2023年10月1日からスタートします。

2023年10月1日以降は、適格請求書の発行・保存がない取引の仕入税額控除が行えないので注意しましょう。

制度の開始日から適格請求書を発行したい事業者は、2023年9月30日までに適格請求書発行事業者の登録申請書を所轄の税務署に提出する必要がありますよ。

メモ
適格請求書発行事業者の登録申請書を2023年9月30日までに提出すれば、制度の開始日までに登録通知が来なかった場合でも、同日から登録されたものとして取り扱うことが可能です。

なお消費税の納付義務のある買い手は、制度開始後に仕入れ先が適格請求書の発行を行ってくれるかを確認しておきましょう。

Q2 インボイス制度の導入で個人事業主・フリーランスにどのような影響がある?

インボイス制度の影響は個人事業主・フリーランスにもあるの?

インボイス制度は企業だけでなく個人事業主やフリーランスの方にも影響があります

商品・サービスを納品している個人事業主・フリーランスの方は、制度が開始されると適格請求書を発行しなければ取引の継続や獲得が困難になる可能性が高いといえます。

適格請求書の発行がない取引では仕入税額控除をできずに買い手の税負担が増えてしまうためです。

個人事業主・フリーランスの方も今後の取引への影響を考え、適格請求書発行事業者に登録するかを判断しましょう。

Q3 領収書やレシートもインボイスとして認められる?

領収書やレシートを適格請求書として扱うことはできるのかな?

適格請求書の代わりに、簡易インボイスとして領収書やレシートの交付が認められるケースもあります。

簡易インボイスとは
適格請求書の必要事項よりも簡易的に記載されている書類を指します。不特定かつ多数の人に課税資産の譲渡などを行う特定の業種のみ発行が可能です。

簡易インボイスでは、適格請求書で記載が義務付けられている「交付を受ける事業者の氏名または名称」の記載が必要ありません。

なお簡易インボイスの交付が認められているのは以下の事業です。

【簡易インボイスの発行が可能な事業者の業種】
  • ・小売業
  • ・飲食店業
  • ・写真業
  • ・旅行業
  • ・タクシー業
  • ・不特定かつ多数に対する駐車場業
  • ・その他上記に準ずる事業であり、不特定かつ多数を対象に資産の譲渡などを行う事業

Q4 インボイス制度の経過措置とは?

インボイス制度の経過措置があるって聞いたんだけど、どういった内容なんだろう?

インボイス制度の導入に当たり事業者の金銭的な負担や業務の煩雑化が懸念されるため、制度の開始から2029年9月30日までの6年間、経過措置が設けられています

経過措置が取られている間は、適格請求書のない取引の仕入れでも一定額の仕入税額控除を受けられますよ。

なお経過措置の内容は以下のとおり期間ごとに異なります。

【経過措置の期間と内容】
経過措置の期間 経過措置の内容
2023年10月1日~2026年9月30日 仕入れにかかる消費税の相当額の80%が控除
2026年10月1日~2029年9月30日 仕入れにかかる消費税の相当額の50%が控除

インボイス制度が開始してから3年間は仕入れにかかる消費税の80%、その後の3年間は仕入れにかかる消費税の50%の控除を受けることが可能です。

メモ
経過措置の仕入税額控除を適用するには、区分記載請求書の必要事項が記載された請求書などを受領・保存し、経過措置を受ける旨を記載した帳簿を保管する必要があります。

Q5 適格請求書がなくても仕入税額控除を適用できる場合はある?

適格請求書を受け取らなくても仕入税額控除が適用される場合はあるのかな?

インボイス制度の開始以降でも帳簿の保存のみで仕入税額控除を受けられるケースがあります

以下のような取引を行う場合は、適格請求書の保存がなくても良いとされています。

【適格請求書の保存なしで仕入税額控除が適用される場合】
  • ・自動販売機で商品を購入した場合(3万円未満)
  • ・公共交通機関を利用した場合(3万円未満)
  • ・郵便ポストに投函をした場合
  • ・回収される入場券を購入した場合
  • ・古物営業を行っていて適格請求者発行事業者でない相手から古物を購入した場合
  • ・適格請求書発行事業者でない相手から再生資源などを購入した場合
  • ・従業員に通勤手当、日当、宿泊費などを支給する場合 など
業務の手間を省けるから助かるね。

Q6 適格請求書の記入漏れ・ミスがあると仕入税額控除を適用できない?

適格請求書が発行されたとしても記載内容に間違いがあると、仕入税額控除ができないのかな?

適格請求書の記載項目に記載漏れや間違いがあった場合は、仕入税額控除を適用できません

そのため買い手の方は適格請求書を受け取ったら、必要事項が全て記載されているかをチェックしましょう。

特に以下の三つの項目は、従来使用していた区分記載請求書の記載事項に追記された内容なので、入念に確認しておくと安心です。

【区分記載請求書の記載事項に追記された適格請求書の内容】
  • ・適格請求書発行事業者の登録番号
  • ・税率ごとの取引内容の合計金額(税抜または税込価額)、および適用税率
  • ・税率ごとの消費税額

登録番号が正しいかどうかは、国税庁のインボイス制度適格請求書発行事業者公表サイトで確かめることができますよ。

注意
適格請求書の交付を受けた買い手が請求書の内容を修正することは認められていません。適格請求書を発行した売り手に修正を要請し、再度交付してもらう必要があります。

10.まとめ

インボイス制度とは、2023年10月1日からスタートする仕入税額控除の新方式です。

制度の開始後は仕入れを行う買い手の仕入税額控除を適用するために、適格請求書の発行・保存が必要になります。

請求書を発行している売り手の方は、取引先から適格請求書の発行を求められる可能性があるため、適格請求書発行事業者に登録をして新方式に対応するかを判断しましょう。

ただし免税事業者の方は、適格請求書発行事業者になったと同時に課税事業者に切り替わり、納税義務が生じる点に注意です。

また請求書を受け取る買い手のうち、消費税の納付を行っている課税事業者の方は、仕入れを行う際に適格請求書を交付してもらわなければ、納税額が増えてしまいます

取引先が適格請求書発行事業者であるかを事前に確認し、適格請求書が発行されない取引があれば、必要に応じて価格の見直しなどを行いましょう。

なお免税事業者の買い手の方は、インボイス制度による大きな影響がないため、特に対応を行う必要はありません。

適格請求書を扱う場合は売り手・買い手共に、新方式に対応した会計処理が求められるため、会計ソフトや請求書システムを見直しておくことが重要ですよ。

税理士
以下の三つの人気ブランドの会計ソフトは、インボイス制度に対応しているので安心です。

【インボイス制度に対応!会計ソフトおすすめ3選】

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