株式会社と合同会社の違いとは?起業する場合のメリット・デメリット

最近よく聞く合同会社ってなんだろう?株式会社とはどう違うのかな?
起業を考えてるんだけど、株式会社と合同会社のどちらが良いのかな?

このようにお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「合同会社」は2006年に新しく登場した会社の形の一つであるため、「株式会社」に比べあまり見聞きする機会がないかもしれませんね。

しかし実はグーグルやアマゾンジャパンは合同会社です。

起業する場合も株式会社と合同会社それぞれにメリットとデメリットがあるので、より適した方を選ぶのが良いといえるでしょう。

この記事では株式会社と合同会社の違いやそれぞれのメリット・デメリットなどについてご説明します。

メモ
会社の種類には株式会社と合同会社のほかに「合名会社」と「合資会社」があります。会社の種類や設立の方法についてより詳しく知りたいという方はこちらの記事をお読みください。
税理士
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1.株式会社とは

株式会社という言葉は日常生活を送る上でもよく見聞きしますよね。

しかし株式会社が具体的にどのようなものなのか知らない、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。

まずは株式会社がどのようなものなのか簡単にご説明しましょう。

株式会社とは会社の経営権を「株式」として分割して売りに出し、その購入代金を資金として運営される会社の形態です。

税理士
株式というと投資家が売買して利益を得るためのもの、というイメージが強いかもしれませんが、実は経営権の一部を売買しているのですね。

そのため株式会社を設立する場合も、最低でも一株を所持して経営権の一部を所持している必要があります

株式を持つ人のことを「株主」といいます。

株主は「配当金」を得られると聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

株式会社は株主の出資金で事業を行っているため、利益は出資者である株主のおかげともいえます。

そのため利益が出れば持ち株の数に応じて株主に還元する仕組みになっているのです。

また株主は「持ち株比率」に応じて経営に口出しする権利を持ちます

持ち株比率とは
ある会社の発行している全ての株式に対してその株主の持ち株が占める割合のことです。

株式会社においては、役員による取締会の他に「株主総会」という意思決定の場があり、そこで株主の意向が経営に反映される場合があるのですね。

分かりやすくいえば、株式総会は株式を持っていれば持っているほど投票権を多く持つ多数決のようなものだといえるでしょう。

持ち株比率によって、株主の持つ権利は以下のように定められています。

【持ち株比率・持ち株数による株主の権利の違い】
持ち株比率・持ち株数 権利
1株以上 ・書面による事前質問
・定款、株主総会議事録、取締役会議事録、株主名簿、計算書類、監査報告書など各種書類の閲覧および謄写の請求
・(6カ月以上の継続保有で)株主代表訴訟の提起
1%以上 ・株主総会における議案提出
3%以上 ・業務および財産状況調査のための検査役選任の請求
・会計帳簿の閲覧および謄写の請求
・(6カ月以上の継続保有で)株主総会招集の請求
・(6カ月以上の継続保有で)取締役および監査役の解任請求
・整理申し立て
10%以上 ・会社の解散請求
1/3超 ・定款の変更や取締役の解任、合併や解散などの重要な意思決定の単独否決
1/2超 ・経営権の獲得
・取締役および監査役の選任、報酬額、解任の決議
・計算書類の株主総会承認
・会計監査人の選任
2/3超 ・定款変更などの特別決議の成立
・新株発行など持ち株比率を変化させる事項の決定
・合併、定款変更、会社の解散など会社の内容を変えてしまう重要事項の決定
100% ・全て自分の意思で決定可能
定款とは
会社の運営に必要な基本的な規則のことです。会社名や事業目的、本店所在地など会社設立に際して定められた事柄のほか、取締役会の設置に関する規定、取締役などの役員の人数、事業年度などが定められます。

代表取締役(いわゆる社長)は定款変更などの「特別決議」を成立させることのできる1/3超の株式を持っておく方が安心だといえます。

特別決議とは
原則議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議のことです。

持ち株比率が50%以下の場合、代表取締役であっても自ら以外の株主の意思によって解任されてしまう可能性があります。

株式会社を設立する場合は、できれば50%を超える割合の株式を所持しておくのが良いといえるでしょう。

なお株式会社の社員は皆「有限責任」を負います。

有限責任とは
出資者が出資額の範囲内で責任を負うことです。反対に無限責任の場合は、出資した額を超えて会社の債務を出資者が無制限に負うことになります。

個人事業主の場合、金融機関からの借入金や仕入れ先への未払金などの債務は個人で負う必要があり、個人の支払い能力を超えてしまっても帳消しになることはありません。

しかし有限責任の場合は会社が潰れる事態になっても、出資した額が消えてしまうことはありますがそれ以上の責任を負うことはありません。

2.合同会社とは

じゃあ、合同会社はどういうものなの?

あまり耳慣れないように感じられるかもしれませんが、実はアマゾンジャパンやグーグル、アップルジャパン、DMM.com、西友などは合同会社です。

DMM.comは2018年までは株式会社でしたがその後合同会社になりました。

合同会社は2006年に施行された通称「新会社法」により「有限会社」に代わって登場した会社の形態の一つです。

メモ
有限会社は有限責任を持つ社員のみが出資を行って運営される形の会社です。新会社法施行以降は株式会社として存続されることになりましたが商号(会社名)の変更は義務ではないため現在も有限会社と掲げる会社は存在します。

合同会社では、原則的に出資者全員が有限責任を負う社員になります。

ここでいう社員は、一般的にイメージされる従業員のことではなく、経営権を持つ人のことです。

つまり合同会社では出資者と経営者は原則として同じメンバーになります。

また合同会社では出資額と関係なく自由に利益配分を行うことができます

3.株式会社と合同会社の違い

結局株式会社と合同会社は何がどう違うんだろう?

株式会社と合同会社の主な違いは以下のような点だといえるでしょう。

【株式会社と合同会社の違い】

3-1.出資者

株式会社では株主からの出資によって運営資金を集めます

株主は出資額に応じて経営権を得られますが、社員として直接運営に携わるのではなく、意思の反映は株主総会を通じて行われることになります。

一方、合同会社では出資者は有限責任を持つ社員となり、原則として経営に直接関わることになります。

3-2.社員構成

多くの場合、株式会社において業務執行の意思決定を行うのは株主総会で任命を受けた3名以上の取締役で構成される「取締役会」です。

株式は経営権の分割譲渡であるとはいえ、株主が直接経営に関わるというわけではないのですね。

取締役会から選任された「代表取締役」は、通常「社長」として会社のトップを務めます。

メモ
代表取締役に人数の規定はないため、複数人が就くことも可能です。

また取締役会を設置する株式会社は原則的にその業務を監視する役割を担う「監査役」を置かなくてはなりません

ただし、会社法が改正され新会社法が施行されて以降、取締役会の設置は義務ではなくなっています。

そのため取締役会の存在しない株式会社も現在では少なくありません。

その場合経営に関わる重要な事柄は株主総会で決定し、取締役が日々の業務を執行することになります。

しかし株主総会は基本的に年に1度しか行われないため、株主が多くいる場合は臨機応変に対応するのが難しくなるといえるでしょう。

一方、合同会社では出資者は原則として経営に携わる社員になります。

ただし経営に参加したくない、他の人に任せたいという出資者がいた場合は、定款において業務に関わる「業務執行社員」とそれ以外の社員を定めることが可能です。

また業務執行社員が複数いる場合、そのなかから最終的な意思決定権を持つ「代表社員」を定めることができます。

代表社員は複数置くことも可能で、株式会社における代表取締役のような立場だといえるでしょう。

税理士
なお株式会社における取締役および代表取締役、合同会社における代表社員および業務執行社員は法務局に届け出て登記する必要があります。

3-3.利益配分

株式会社では、持ち株数に応じて利益を配当する必要があります。

株主からの出資で利益を上げることができたら、その分のお礼をしなければならないということです。

一方合同会社においては、出資額に関係なく利益を配分することができます

例えば出資額が多くなくとも、代表社員が利益を多くもらう、ということが可能なのです。

3-4.設立手続き

株主会社と合同会社の設立手続きを比較した場合、株式会社の方がやや手間と時間がかかるといえるでしょう。

会社を立ち上げる場合、「会社の憲法」とも呼ばれる定款の作成が必須です。

株式会社を設立する場合は定款を作成するだけでなく「公証役場」で「公証人」にその内容を認証してもらう必要があります。

公証人とは
判事や検事などを長年務めた法律の専門家が法務大臣からの任命を受けて就任する、公証事務を担う公務員のことです。公証人は公務員でありながら役所に勤めるのではなく、事務所(公証役場)を開き、国が定めた手数料を収入源としています。

株式会社の定款は専門家の認証を受けているため問題が生じることはないと考えられます。

一方で合同会社の場合は認証手続きを必要としないため、不備がないかしっかりと確認しなければならないといえるでしょう。

税理士
具体的な設立手続きについて知りたいという方はこちらの記事をご覧ください。

3-5.設立費用

設立費用は一般的に株式会社よりも合同会社の方が安く済むといえるでしょう。

株式会社の設立にかかる費用は最低約20万円だといわれています。

一方合同会社の設立にかかる費用は最低約10万円です。

メモ
定款の作成や登記手続きなどを専門家に依頼した場合、別途依頼報酬が発生します。

4.株式会社設立のメリット・デメリット

会社設立を考えているけど、株式会社を選ぶメリットにはどんなものがあるんだろう?

このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

ここでは株式会社を設立した場合のメリットとデメリットをお伝えします。

4-1.株式会社設立のメリット

株式会社を設立する第一のメリットは社会的信頼度が高いことだといえるでしょう。

会社というとまず株式会社を思い浮かべる方が多いですよね。

また株式を発行することで社外から資金を集められるのも大きな魅力ではないでしょうか。

株式会社以外の事業形態の場合は資金調達のためには金融機関などからお金を借りなければなりませんが、株式会社であれば株主から資金を得ることができます。

さらに順調に事業を拡大できれば、「上場」のチャンスもあります。

上場とは
株式市場に上がり、証券取引所で株式の売買ができるようになることです。

上場のためには証券取引所が定める厳しい基準をクリアし審査に通過する必要があります。

審査の基準は株式市場によって異なり、市場によって信頼性は異なります。

例えば日本最大の証券取引所である東京証券所(東証)には一部・二部・マザーズの3種類の株式市場があり、一部に上場できるのは一握りの大手企業だけです。

二部には中堅企業が多く、マザーズはベンチャー企業が上場する株式市場です。

上場したら何か良いことがあるの?

というのが気になるところかもしれませんね。

一言でいえば、上場のメリットは「信頼があるとみなされる」点です。

「なんだ、そんなことか」

と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、審査が厳しい株式市場に上場できればその分信頼性が高まります。

多くの取引先や株主からの信頼を得られれば、その分事業にもメリットがあると考えられますよね。

また優秀な人材も集まってくるでしょう。

4-2.株式会社設立のデメリット

株式会社を設立するデメリットはあるのかな?

株式会社は合同会社に比べて設立の際にかかる費用が高い傾向にあります。

株式会社の設立にかかる費用は法律上必要となる金額だけで約20万円ほどで、合同会社と比較すると倍近い費用が必要になります。

また株式会社には「決算公告」の義務があります。

決算公告とは
会社の決算を公にすることです。株主や債権者などに対して会社の経営状況などを明らかにすることで、取引の安全性を保つために行われます。

決算公告は会社法によって(一部を除く)株式会社に対し義務付けられているものです。

また持ち株数に応じて株主に利益還元を行わなければならないという点がデメリットになる場合もあるかもしれませんね。

社外の株主から多く出資を受けていれば、その分利益配分するお金が多くなります。

さらに役員任期がある点もデメリットといえるでしょう。

株式会社の役員任期は最大10年で、同じ人が役員に再任される場合も再度登記を行う必要があります。

そのため任期が満了するたびに都度手続きにかかる登録免許税を納めなくてはなりません。

メモ
厳密な費用は資本金の額や会社の規模により異なります。

5.合同会社設立のメリット・デメリット

じゃあ、合同会社のメリットやデメリットにはどんなものがあるんだろう?

このように疑問に思った方もいらっしゃいますよね。

次は合同会社を設立する場合のメリットとデメリットをお伝えしましょう。

5-1.合同会社設立のメリット

合同会社のメリットとしてまず挙げられるのは設立にかかる費用が安いという点です。

株式会社の設立にかかる費用の半分程度で済んでしまいます。

またランニングコストも株式会社に比べて小さいものと考えられます。

株式会社の取締役には任期があり、同じ人が再任されたとしても登記し直す必要があります。

一方合同会社の業務執行役員には任期がなく、したがって登記し直しの際にかかる15万円の登録免許税は必要ありません。

また株式会社では持ち株比率によっては社外の株主の意向を経営に反映せざるを得ませんが、合同会社では業務執行役員と代表社員のみが経営に参加する形になります。

利益配分を自由に行えるというのも大きなメリットだといえるでしょう。

5-2.合同会社設立のデメリット

合同会社のデメリットとしては合同会社という会社の形態があまり知られていないこと、それゆえに信頼度が低いことが挙げられるでしょう。

また上場できない、というのもデメリットの一つだといえるかもしれませんね。

6.株式会社と合同会社、起業するならどちらを選ぶべき?

結局どっちの会社を立ち上げるのが良いのかな?

このように迷ってしまう方も多くいらっしゃるかもしれませんが、残念ながら一概にどちらの方が良いとはいえません。

両者ともにメリット・デメリットがあるのでよく考えて選ぶべきだといえるでしょう。

その際は、ご自分が何を重視するのか、何のために会社を設立したいと考えているのかを基準にすると良いでしょう。

例えば借金をせずに資金を集めたい、という考えや将来的に知名度の高い大きな会社に育てたい、という望みを抱いている方は株式会社の方が向いていると考えられます。

一方でとにかく設立の際にかかる費用を抑えたいということであれば合同会社を検討するのも手です。

また社外の方から経営に関して口出しをされたくない、利益分配を自由に行いたいという方も合同会社の方が向いていると考えられますね。

費用はかかりますが、合同会社を立ち上げて後々株式会社に移行することも可能です。

まずはご自分の事業に向いているのはどの形態の会社なのかよく考えてみましょう。

7.まとめ

株式会社は会社の経営権を株式として売りに出し、株主からの出資で運営される会社のことです。

株主は持ち株比率によって会社の経営に口出しする権利を得ますが、株主の意思の反映は株主総会を通じて行われ、日々の業務における意思決定や執行は取締役会において行われます。

一方合同会社は出資者が経営権を持つ「社員」を担う形の会社です。

合同会社では出資を行った業務執行社員とその代表に選ばれた代表社員によって意思決定が行われ業務が執行されます。

株式会社では持ち株数に応じて株主に利益分配を行う必要があるのに対し、合同会社における利益分配は自由に行うことができます。

また設立の費用や手続きを比較した場合では、株式会社の方が合同会社に比べて設立費用が高く、設立手続きの手間もかかる傾向にあります。

株式会社・合同会社それぞれにメリットとデメリットがあるので、会社設立をお考えの方は自分のやりたい業務に合った会社の形態を選ぶのが重要だといえるでしょう。

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