青色申告に関心はあっても複雑そうだからと躊躇してしまっている個人事業主の方は多いのではないでしょうか。
確かに青色申告のメリットを最大限に享受するためには複式簿記で帳簿を作成する必要がありますが、その分税金の控除が受けられるなどの利点があります。
この記事では青色申告に必要な帳簿の種類や、それらを簡単に作成する方法を分かりやすく解説します。
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- ・膨大な会計処理に追われている方におすすめ「マネーフォワード クラウド確定申告」
- ・初心者の方から経験者の方まで幅広くおすすめ「やよいの青色申告オンライン」
福留 正明
1.まずは確認!青色申告とは?
このような疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
ここでは青色申告についての基礎的な知識を確認しましょう。
基本事項は押さえているから、早く帳簿の種類について知りたい!という方はこちらからお読みください。
1-1.青色申告と白色申告との違い
青色申告は確定申告の一種で、他には白色申告があります。
青色申告を行えるのは、不動産所得・事業所得・山林所得のいずれかを得ている方のうち、事前に税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出した方です。
一般的な個人事業主の方などは事業所得を得ているケースに該当しますね。
事前の届け出が必要な青色申告には、白色申告にはない税金の控除や赤字の繰り越しが可能という優遇措置が設けられています。
そのため大きな節税効果が期待できるのです。
また青色申告と白色申告では日々の帳簿の付け方や、確定申告時に必要な決算書が異なります。
1-2.65万円控除と10万円控除の2種類がある
青色申告には65万円の控除を受けられるものと10万円の控除が受けられるものがあります。
これらの二つの控除はいずれか一方を任意で選ぶものではなく、65万円控除を受けるための条件を満たせなかった場合10万円控除となる仕組みになっています。
65万円控除を受けるためには少し複雑な帳簿をつける必要があります。
65万円控除を受けるためには「複式簿記」という方法で帳簿を付けることが必須条件となります。
10万円控除の場合は「単式簿記」という複式簿記よりも簡素な方法で帳簿をつけることができます。
また、同じ取引をしたとしても、帳簿に記載する日付が65万円控除と10万円控除では変わる場合があります。
単式簿記と複式簿記では、大本となる考え方が異なるのです。
青色申告は「発生主義」という考え方で帳簿を付けることが必要になりますが、場合によっては白色申告は「現金主義」という考え方でも帳簿をつけることが許されています。
例えば5月15日にクレジットカード決済で100,000円のパソコンを購入し、6月20日に口座から引き落とされるとします。
このとき発生主義では5月15日の段階で帳簿付けをし、6月20日に実際のお金の動きも帳簿付けします。
つまり、発生主義では二度帳簿付けすることになります。
一方、現金主義では実際にお金の動きがあった6月20日だけ帳簿付けをします。
原則的には青色申告、白色申告ともに「発生主義」で帳簿を付けるように定められています。
ただし青色申告における10万円控除の場合、以下の一定の条件を満たせば「現金主義」で帳簿を付けることが認められています。
- ・前々年の合計所得が300万円以下の小規模事業者であること
- ・期限内に「現金主義による所得計算の特例を受けることの届出書」を税務署に提出していること
2.青色申告65万円控除に必要な帳簿の種類
青色申告の帳簿作成にお悩みの方も多いのではないでしょうか。
確かに、聞き慣れない帳簿がたくさんあって初心者の方は戸惑ってしまいますよね。
ここでは65万円控除を受けるために必要な帳簿を一つ一つ確認していきましょう。
65万円控除のために作成する帳簿には2種類の「主要簿」と必要に応じて作成する5種類の「補助簿」があります。
- ・仕訳帳
- ・総勘定元帳
- ・現金出納帳
- ・売掛帳
- ・買掛帳
- ・経費帳
- ・固定資産台帳
なお「主要簿」と呼ばれる仕訳帳と総勘定元帳の二つは、10万円控除の場合作成する必要はありません。
2-1.仕訳帳
主要簿のうちの一つが「仕訳帳」です。
すべての勘定項目を決め、複式簿記の方法に基づいて「貸方」と「借方」に仕訳をして記帳します。
面倒に思われるかもしれませんが、毎日取引が発生するごとに記入しなければなりません。
仕訳帳は、これからご紹介するほかの帳簿のもとにもなる非常に重要なものです。
取引が発生した日付順に年月日、勘定科目、金額などを記載します。
必要事項を正しく記入した仕訳帳は以下のようになります。
例えば賃貸契約を交わすことは一般的には取引といいますが、簿記や会計においては財産の増減が起こっていないため取引には当たりません。
また天災によって損害が生じた場合を一般的に取引ということはありませんが、財産が減っているため、簿記においては取引として扱います。
2-2.総勘定元帳
もう一つの主要簿が「総勘定元帳」です。
総勘定元帳では、すべての取引を勘定項目の種類に分類・整理して計算します。
勘定項目は以下の五つのうちどれかに分類されます。
- ・収益
- ・費用
- ・資産
- ・負債
- ・資本(純資産)
総勘定元帳のうち、収益・費用のページでは一定期間の売上や経費がどれくらいであったかを集計できます。
また資産・負債・資本のページではある時点での現金や売掛金を集計し、残高を確認できます。
勘定項目ごとに取引が発生した年月日、対応する相手方勘定項目、金額を記載します。
必要事項を記入した総勘定元帳は以下のようになります。
2-3.現金出納帳
現金出納帳は現金の動きを取引順に記載し、残高を記録する帳簿です。
帳簿上の現金残高と実際の現金残高が一致しているかどうかを毎日の締めで必ず確認します。
売上や仕入、売掛金の回収、掛売金の支払い、経費などを記録します。
現金出納帳を正しく記入すると以下のようになります。
2-4.売掛帳
売掛帳は掛売での売上があった際に記帳する帳簿です。
売掛帳を記帳することで、総勘定元帳や現金出納帳だけでは把握できなかった「未回収の売上代金」を把握できるようになるのです。
取引先ごとに記帳し、回収状況をきちんと確認できるようにします。
必要事項を正しく記入した売掛帳は以下のようになります。
2-5.買掛帳
買掛帳は買掛での仕入れをした際に記帳する帳簿です。
売掛帳同様、買掛帳を記帳することで総勘定元帳や現金出納帳だけでは把握できなかった「未払いの仕入れ代金」の把握が可能になります。
得意先ごとに記帳し、支払い状況をきちんと確認できるようにします。
2-6.経費帳
経費帳は仕入れ代を除いた水道代、光熱費、消耗品費、給与賃金などの経費を記帳する帳簿です。
経費帳の目的はある時点まででいくら使っているかの合計を把握することにあります。
勘定項目別に取引が発生した日付・内容・金額を記載します。
必要事項を記入した経費帳は以下のようになります。
2-7.固定資産台帳
現在使用している固定資産の価値を記録する帳簿です。
固定資産には車や機械、備品などが該当します。
記帳の機会は今まで紹介した帳簿の中で一番少ないですが、保有する資産の管理のためには欠かせない帳簿です。
名称・購入金額・購入した年月日を資産ごとに記録します。
3.青色申告10万円控除のために必要な帳簿
10万円控除の場合は仕訳帳、総勘定元帳を作る必要はありません。
原則的に以下の五つの帳簿で青色申告ができます。
- ・現金出納帳
- ・売掛帳
- ・買掛帳
- ・経費帳
- ・固定資産台帳
もちろん掛売、買掛での取引が発生していない場合は売掛帳、買掛帳を作成する必要はありません。
その他、業種別に必要とされる帳簿を適宜作成することになります。
4.青色申告に必要な帳簿を作成する方法
「青色申告に必要な帳簿はどのように作成したらいいんだろう?」
とお困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
青色申告に必要な帳簿を作成する方法には以下のようなものがあります。
- ・手書き
- ・Excel
- ・会計ソフト
今まで手書きやExcelで確定申告を行っていた方もいらっしゃるでしょう。
しかし、日頃の帳簿付けを忘れてしまったり、確定申告の作業に手間取ったりしてしまった経験はありませんか?
5.青色申告におすすめの会計ソフト
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6.まとめ
青色申告に必要な仕訳帳、総勘定元帳をはじめとする複数の帳簿の作成を自力で行うのは会計の知識がある方にとっても楽な作業ではありません。
会計の知識がない方にとっては尚更ですよね。
いずれも無料で試せる期間が設定されているため、実際にどれくらい使いやすいのかを試してみるだけでもおすすめですよ。