日頃見聞きする機会はあっても、「出納」が具体的にどんな作業を差しているのかは分からない方もいらっしゃるでしょう。
「出納」とは経理の仕事上で重要となるお金の出し入れ全般を指す概念です。
この記事では「出納」という言葉の意味や、「出納」に関する業務内容を分かりやすく解説していきます。
経理が初めての方や、これから経理について勉強したいという方におすすめの内容ですよ。
福留 正明
1.「出納」とは?今さら聞けない経理の基礎知識
経理の仕事をしていると「出納」という言葉は当たり前のように登場しますよね。
人には意味を聞きにくく、「なんとなく分かったつもりになってしまっている……」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、「出納」の意味を正しく理解していないままでは大変なことになりかねません。
なぜなら出納業務は経理業務の3つの基本的な業務のうちの1つであり、非常に重要度が高いといえるからです。
- ・出納業務……日々生じる現金や預金の出し入れや、残高を管理すること
- ・記帳業務……入金や出金の履歴を帳簿や伝票に正確に記帳すること
- ・集計業務……記帳された内容を集計し、適切な時期に決算書類の作成を行うこと
1-1.出納とはお金の出し入れのこと
「出納」とは本来ものを出し入れすることをいいます。
ただし、経理用語としては「お金の出し入れ」という意味で使われるのが一般的です。
1-2.出納業務とはお金の出し入れを記録・管理すること
「じゃあ出納業務っていうのは具体的にどういう作業をすることなの?」
と疑問にお思いかもしれませんね。
出納業務とは現金や預金の入金や出金を正確に記録・管理することです。
日々取引によって現金や預金の出し入れが発生するため、毎営業日ごとに記録しなければなりませんよね。
出納業務を行うことでお金の流れが把握できるようになります。
出納業務は商売の根本を支えるものであり、経営の方針を決める上でも重要な役割を果たしているのです。
2.出納業務に欠かせない!2つの出納帳
出納業務にはお金の流れを記録する二つの出納帳が必須となります。
それぞれ「現金出納帳」と「預金出納帳」と呼ばれ、重要な役割を担っています。
2-1.現金出納帳
現金出納帳は現金の出入金を記録し、実際の現金残高と帳簿の金額が一致しているかどうかを確かめるための帳簿です。
企業のお金のやり取りは銀行口座を介して行うことが多いですが、事務用品の購入や出張費の仮払いなどで現金のやり取りが発生することもあります。
こういった場合に備えて、経理部では一定の金額の現金を常に用意しているケースが一般的です。
現金出納帳には以下の内容を記録します。
- ・日付
- ・勘定科目
- ・摘要
- ・収入・支出金額
- ・差引残高
日付の欄には現金が動いた日付を上から順番に記載します。
勘定科目とは何について現金の出入金があったのか分類するものです。
例えば「旅費交通費」、「光熱費」などです。
摘要には取引の内容を記入します。
収入・支出金額には出入金の金額を税込で記入します。
差引残高には前日(先月・前年)から繰り越した金額+当日(今月・今年)の収入金額-当日(今月・今年)の支出金額を記載します。
必要事項を正しく記入した現金出納帳は以下のようになります。
2-2.預金出納帳
現金出納帳では現金の出入金を記録するのに対し、預金出納帳では銀行口座への出入金を記録します。
預金出納帳でも、現金出納帳と同じ要領で「日付」「勘定科目」「摘要」「収入・支出金額」「差引残高」を記載します。
必要事項を正しく記入した預金出納帳は以下のようになります。
銀行口座を複数持っている場合、銀行口座ごとに預金出納帳をつけましょう。口座ごとの残高を把握でき、管理が分かりやすくなります。
3.出納業務を楽に済ませる方法とは?
ここでは出納業務にかかる労力をできるだけ減らすための2つの方法をご紹介します。
方法1 キャッシュレス化を進める
出納業務を楽に済ませるための1つ目の方法は「キャッシュレス化」です。
現金を取り扱うことをやめれば現金出納帳を作成する手間がなくなり、実際の残高と出納帳の金額が一致するかどうかに神経を尖らせる必要もありません。
さらに両替や現金の補充、金庫管理の手間も省ける上、不正や現金の紛失といったリスク回避にもなるのであれば、いかにキャッシュレス化にメリットが多いか分かりますよね。
法人カードを導入したり、経費精算を振込にしたりすることによってキャッシュレス化が行えます。
法人カードとは、個人事業主や法人経営者に向けて発行されている事業費を決済するためのクレジットカードのことです。
社員に追加カードを発行すれば、経費を一括で管理することも可能です。
方法2 会計ソフトを利用する
出納業務を楽に済ませるための方法の2つ目は、「会計ソフトの導入」です。
会計ソフトを利用すれば銀行口座、クレジットカードと連携することで自動的にお金の出入りが記録できます。
このように思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、スマホアプリのある会計ソフトを利用すればレシートや領収書、銀行の明細を撮影するだけで自動的に記録されるので、キャッシュレス化が行われていなくとも時間と手間を削減できるはずですよ。
4.まとめ
出納業務は「いつ・どのくらいのお金が・何のために・入ってきた/出た」のかを把握するために必要な作業です。
お金の流れを正確に知ることは商売の基本中の基本といえるでしょう。
このように不安に思っていらっしゃる方や業務の効率化を図りたい方にはキャッシュレス化と会計ソフトの導入がおすすめです。
手作業だと時間がかかる上に、ミスも発生してしまいがちな出納作業は、できるだけ自動化したいですよね。
浮いた時間・人員を他の業務にあてることで、さらなる事業の成長につながるかもしれませんよ。