個人事業主に屋号は必須?付け方やメリット、注意点などを徹底解説

個人事業主の屋号って一体何なんだろう。必ず付けなければいけないの?
開業する予定なんだけど、屋号ってどんなものを付ければ良いんだろう?

開業届や確定申告書などにも記載欄がある個人事業主の「屋号」ですが、どうやって付けたら良いのか、そもそも必須なのかなど、分からないことが多いという方もいらっしゃいますよね。

特にこれから開業を予定している方であれば、届け出を出す前に屋号について詳しく知っておきたいのではないでしょうか。

結論からいうと屋号がなくても開業はできますが、屋号には多くのメリットがあるため個人事業主であれば付けるのがおすすめです。

この記事では、個人事業主の屋号についての基本的な知識、屋号を付ける際のポイントや注意点、屋号を付けたり変更したりする際の手続きなどを紹介します。

税理士
併せて、個人事業主の確定申告に便利な「会計ソフト」についても紹介しますよ。

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目次

1.個人事業主の「屋号」とは

「屋号」とは個人事業主がビジネスを行う上での名称であり、法人でいうところの会社名です。

個人事業主は会社名を名乗ることができない代わりに、自分の事業に名前を付け、屋号として名乗ることができます。

基本的に屋号にはご自身の好きな名称を付けることができますが、事務所名や商店名、事業の象徴となるブランド名など事業内容が分かりやすい名称を付けるケースが多く見られます。

注意
屋号は概ね自由に付けられますが、なかには付けない方が良い名称、法律に基づき付けられない名称があります。詳しくは「5.個人事業主が屋号を付けるときの注意点」で解説します。

なお事業ごとに異なる屋号を持つことが可能です。

そのため事業をいくつか展開する場合には、それぞれに別の屋号を付けることができますよ。

また屋号と似たものに「雅号」があり、確定申告書などには「屋号・雅号」と並んで記されています。

出典:国税庁Webサイト「確定申告書等の様式・手引き等

雅号は芸名やペンネームといった個人の名前を表すもので、芸能や芸術、作家活動などを営む場合に付けるのが一般的です。

屋号が事業名、雅号が個人名なので、ご自身のビジネスに合った方を使いましょう。

でも、屋号ってどんなところで使うのかな?
税理士
屋号は主に以下のような場面で使用されます。

【屋号を使用する場面】
  • ・開業届
  • ・確定申告書など確定申告に関する書類
  • ・契約書や見積書、納品書、請求書、領収書
  • ・銀行口座
  • ・名刺
  • ・チラシ、ポスター、看板などの宣伝材料
  • ・クラウドソーシングサイトへの登録 など

このように、個人事業において屋号は使う場面が多いといえます。

また、お客さんや取引先の目に触れる機会も多いため、適切な名称を付けることができれば事業の運営に有利にはたらくでしょう。

メモ
適切な屋号を付けるためのポイントは「4.個人事業主の屋号の付け方」で詳しく解説しています。

2.個人事業主に屋号は必要?

個人事業主にとって、屋号は絶対に必要なの?

屋号は法人でいう会社名」というと、必ず付けなければならないのかと思う方もいらっしゃるでしょう。

また開業届に屋号を記載する欄があることから、必須項目であると捉える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし屋号を付けるか付けないかは任意であり、法人の会社名のように義務付けられているわけではないのです。

開業届や確定申告書を提出する際、屋号の箇所を空欄にしたままでも受理されます。

なおブロガーなど店舗を持たない個人事業主のなかには、屋号を付けないままビジネスを続ける方もいます

もし屋号がすぐに決まらないのであれば、先に開業し、事業の方向性が固まってから付けるというのも一つの手ですよ。

税理士
しかし、ビジネスを営む上では屋号がある方が得な面が多いといえます。

必須ではないとはいえ、屋号を持つメリットは多くあるため付けるのがおすすめです。

屋号のメリットについて、次章で詳しく解説します。

3.個人事業主が屋号を付けるメリット

個人事業主が屋号を付けるメリットとして、具体的にはどんなことがあるんだろう?

屋号を付けるメリットには、主に以下の四つが挙げられます。

【個人事業主が屋号を付けるメリット】
税理士
各メリットについての詳細を解説しますよ。

メリット1 顧客に覚えてもらいやすい

屋号を付けることで顧客にご自身のビジネスを覚えてもらいやすくなります

ビジネスを営む上で、多くの人に名前を覚えてもらうことはとても重要です。

屋号を持たず本名で営業する場合、事業内容が分かりづらいこともあるでしょう。

事業の内容をイメージしやすい屋号や印象的な屋号を付けることで、顧客に覚えてもらいやすくなるのです。

メリット2 屋号入りの銀行口座を開設できる

お客さんから振り込みがあるとき、本名を知られたくない……。

ご自身の個人名を公開せずに事業を営む場合、振り込みの際にも本名は非公開にしたいという方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。

屋号を付けることで、屋号入りの口座を持つことができます

屋号入りの口座であれば、本名を開示せず屋号名だけで振り込みができますよ。

税理士
個人名を公にしたくない方でも、屋号入りの口座なら安心ですね。

メリット3 社会的な信用を得られる

屋号があることで社会的な信用を得られる場面があります。

例えば事業で使用する契約書や請求書などの書類に、事業主の氏名のみでなく屋号も記載すればお客さんから信用されやすくなると考えられます。

またクラウドソーシングサイトなどでお客さんや人手を募る際、個人の氏名で登録するよりも屋号の方が信頼されやすく、人を集めやすいといえるでしょう。

メリット4 融資を受ける際に有利

事業の運営に当たり、融資を受けたいと考える方もいらっしゃいますよね。

屋号があると融資を受ける際にも有利にはたらきます。

融資の申込書に屋号を記載すると、個人の氏名のみよりも事業として認められやすくなるのです。

また屋号があることで税務署に開業の届け出や確定申告を行っていると証明できることも、融資が認められやすくなる理由の一つです。

4.個人事業主の屋号の付け方

個人事業主には屋号がある方が良いことは分かったけど、どのように付ければ良いのかな?
「こんなふうに付けると良い」というポイントがあれば知りたいな。

個人事業主にとって屋号はメリットが多いものだということが分かっても、実際にどのような名称を付ければ良いのか悩んでしまいますよね。

屋号のメリットを活かすために、以下のようなポイントに注目してみると良いでしょう。

【個人事業主が屋号を付けるときのポイント】

ポイント1 事業内容をイメージできるか

事業内容をイメージしやすい名称を屋号にすれば、お客さんが一目で分かりやすいといえますよね。

税理士
例えば「事務所」や「オフィス」などが屋号に使われますよ。

なお「〇〇税理士事務所」「〇〇設計オフィス」などのように、併せて「事業内容」を入れるとより分かりやすくなるでしょう。

他にも「〇〇商店」「ベーカリー〇〇」「スタジオ〇〇」「〇〇印刷」など、業種に合わせてお客さんが事業をイメージしやすい名称を選ぶと良いでしょう。

自社ブランドがある場合はブランド名を屋号にするのがおすすめです。

ポイント2 覚えやすく、印象に残りやすいか

屋号として「覚えやすい」「印象に残る」ことは大切です。

例えばお客さんがいくつかのお店を比較しており、ご自身のお店を候補に入れたとします。

しかし覚えにくかったり、印象に残らなかったりする名称を付けてしまうと、「お店の名前を忘れてしまい候補から外れる」という可能性も考えられますよね。

税理士
顧客を取りこぼさないためにも、覚えやすく印象に残る屋号を付けましょう。

ポイント3 ドメインを取得できるか

インターネット上でビジネスを展開する場合や自社のホームページを作る場合などは、ドメインとしてそのまま使用できる屋号にするのがおすすめです。

メモ
ドメインとはURLのhttps://www.の後にくる「〇〇〇〇〇.com」の部分を指します。

同じドメインは使用できないため、他と差別化を図るために有効だといえますよ。

またメールアドレスを作る際に屋号と同じドメインを取得すれば、お客さんから覚えてもらいやすく、信用度も増すでしょう。

ポイント4 読み書き・発音をしやすいか

読みやすい・書きやすい・発音しやすいといったことも屋号を付ける際に重要です。

あまりに読みにくい屋号だと、お客さんが覚えられませんよね。

また書きやすいという点ですが、現代では紙に書くというよりも、メールやSNSなどでの書きやすさが重視されます。

スマホで打ちやすい、変換しやすいといったことが望まれるでしょう。

なお、お客さんがSNSでお店のことを書こうと思ったとき、あまりにも書くのが面倒な屋号であればやめてしまう可能性もあります。

SNSなどでお店の情報を広めてもらうことも考えると、読み書きがしやすい屋号の方が良いといえるでしょう。

ほかにも電話口などで口頭のやり取りになったとき、発音しやすい屋号の方が親しみやすく、好まれやすいといえますよ。

自分が良いと思って付けた屋号でも、あまりに読みにくいとお客さんには親しまれないかもしれないんですね。
SNSで広めてもらいたいから、簡単に読み書きできるものにしようかな。

ポイント5 インターネットで検索しやすいか

インターネット上でビジネスを展開している場合はもちろん、そうでなくても現在ではホームページやお店のSNSアカウントを持つことが多くなっていますよね。

インターネットで情報を得ようとするお客さんは多いため、検索しやすい屋号かどうかは重要なポイントだといえます。

検索したときに、「似た名前の同業者が表示されてややこしい」「名前が長くて検索しづらい」といったことがないように注意しましょう。

ポイント6 適切な長さか

屋号を付けるとき、一般的には長いものよりも適度に短いものの方がお客さんに覚えられやすい傾向があるといえます。

長い屋号はお客さん側からみて覚えにくく、書きにくいことが理由です。

また事業者としても、電話対応をする際などに不便を感じることもあるでしょう。

税理士
屋号を考えていたら長くなってしまったという場合には、略称を考えて屋号にするのも一つの手ですよ。

5.個人事業主が屋号を付けるときの注意点

屋号を付けるときに気を付けるべきことはある?

実は屋号には使用できない名称があります

このことを知らずに届け出を出してしまい、受理されず、屋号を考え直すことになっては困りますよね。

そこでこの章では、屋号として使用できない名称や使用を避けた方が良い名称についてなど、屋号を付ける際の注意点を解説します。

【個人事業主が屋号を付けるときの注意点】
税理士
後の面倒やトラブルを避けるためにも、屋号を決める前に注意点を理解しておきましょう。

注意点1 法律で規制されている名称は使用できない

基本的に自由に付けられる屋号ですが、法律上付けられない名称もあります。

まず「会社」ならびに会社を表す「法人」「Inc.」「LLC」「Co.」などは、個人事業主の屋号には使用できません

また「銀行」「証券」「保険会社」など、法律で定められた特定の業種の名称も使用不可です。

注意点2 商標登録されている名称は使用できない

商標登録がされている名称を屋号として付けることはできません

商標登録とは
自社で取り扱うサービス・商品などを他社のものと区別するために商標を登録することです。

会社名や屋号は商標登録されているケースが多いため、十分に注意が必要です。

万が一、商標登録されている名称を知らずに屋号に使ってしまったらどうなるの?

他者が登録済みの商標と同一または類似の屋号を使用してしまった場合、たとえ故意でなくとも商標権の侵害とみなされます

損害賠償や差し止めの請求を受けることもあるでしょう。

このような事態を避けるために、屋号を届け出る前に必ずインターネットなどで同一名称の商標登録がないか調べておきましょう

税理士
商標を検索できるサイト も存在するので、そういったサービスを利用すると便利ですよ。

注意点3 法人化の際に使用できない記号がある

原則として屋号に使えない文字はなく、漢字やひらがな、カタカナなどの他、記号も使用することができます

しかし、法人化を視野に入れている場合は記号の使用に注意しなければいけません

法人が会社名として利用できる記号には制限があり、以下のものに限られます。

【法人が会社名に使用できる記号】
  • ・「&」(アンパサンド)
  • ・「’」(アポストロフィー)
  • ・「,」(コンマ)
  • ・「‐」(ハイフン)
  • ・「.」(ピリオド)
  • ・「・」(中点)

なお、このような記号を会社名の先頭または末尾に用いることはできません

税理士
いずれ事業を法人化する予定があれば、会社名の原則にのっとって名付けましょう。

注意点4 近隣の事業者と同じ名称は避ける

近隣、同一の地域に同じ屋号を持つ事業者がいないかという点は必ず確認してください。

もし同じ名称があったら、その屋号の使用は避けましょう。

自分と異なる業種でもいけないの?

他業種であっても、同じ地域に同じ屋号があると紛らわしくなりますよね。

ご自身にとってもそうですが、相手の事業の妨げになることも考えられます。

場合によっては、元々その地域にあった同一名称の事業者から訴えられてしまうことも考えられます

このような事態を避けるために、ご自身が付けようとしているものと同じ屋号が近くにあるかどうか、必ず確認しましょう。

税理士
同一でなくても、似た名称もなるべく避けた方が無難ですよ。

6.個人事業主の屋号の手続き

屋号を付けるとき、どのような手続きをするの?
屋号を変更したくなった場合、どうすれば良いんだろう?

屋号が決まっても、手続きの方法が分からないと困りますよね。

また後から変更したくなったときに備え、屋号の変更の手続きについて知っておきたいという方もいらっしゃるでしょう。

ここからは個人事業主の屋号の届け出、変更の手続きについて解説します

【個人事業主の屋号の手続き】

手続き1 屋号を付けるとき

屋号を付けるために行う専用の手続きはありません。

開業届か確定申告の書類を提出する際に、屋号の欄にご自身が付けたい名称を記入するだけで届け出ることができます。

なお、書面で提出する前から屋号を名乗ることも可能です。

特別な手続きはないんですね。それなら簡単だなあ。

手続き2 屋号を変更するとき

屋号を変更する際に手続きは不要であり、自由に変更することができます

変更したら、毎年提出する確定申告の書類に変更後の屋号を記載しましょう。

ただし、いくら変更が自由だからといって頻繁に屋号を変えてしまうと、顧客の信頼を失うこともあります

税理士
屋号の変更は本当に必要なときだけにする方が無難です。

7.確定申告書の作成なら会計ソフトがおすすめ

個人事業主としてビジネスをスタートしたら、収入に応じて確定申告をする必要があります。

確定申告って難しそうだなあ……。
簡単にできる方法はないのかな?

個人事業主が確定申告をする際には、「会計ソフト」を使用すると便利ですよ。

会計ソフトとは
帳簿作成などの会計業務を効率化できるソフトのことです。確定申告などにおける書類の作成も可能です。

なかでもインターネット上で情報の管理・処理を行える「クラウド型」の会計ソフトが扱いやすく、個人事業主におすすめです。

税理士
会計ソフトを利用すれば、ご自身で会計業務を行うこともできますよ。

ここからは個人事業主向けの三つの会計ソフトをそれぞれ詳しく解説します。

なお、なかには開業届を作成するためのソフトを提供しているブランドもあるので、利用を視野に入れても良いでしょう。

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8.まとめ

屋号とは法人でいうところの会社名です。

個人事業主の場合、屋号がなくても法律的に問題ありません。

しかし屋号を持つことで以下のようなメリットがあるため、付けた方が良いといえます。

【屋号のメリット】
  • ・顧客に覚えてもらいやすい
  • ・屋号入りの銀行口座を開設できる
  • ・社会的な信用を得られる
  • ・融資を受ける際に有利
ビジネスを営む上で、大きなメリットですね。

基本的に屋号は自由に付けることができますが、メリットを活かすためには以下の六つのポイントを意識して名付ける必要があります。

【屋号を付ける際のポイント】
  • ・事業内容をイメージできるか
  • ・覚えやすく、印象に残りやすいか
  • ・ドメインを取得できるか
  • ・読み書き・発音をしやすいか
  • ・インターネットで検索しやすいか
  • ・適切な長さか

これらのポイントを意識しながら、お客さんに覚えてもらいやすくビジネスにおけるさまざまな面で使いやすい屋号を付けると良いでしょう。

法律で規制されていたり、商標登録されてたりする名称は使用できないため注意が必要です。

また事業を法人化する予定の方は、会社名に使用できない記号の使用を避けましょう。

なお屋号に申請手続きはなく、初めて付ける際も変更する際も名乗り始めるタイミングは自由です。

ビジネスの立ち上げ段階から屋号を決めているのであれば開業届に記載しても良いですし、届け出た後に屋号を決めたのであれば確定申告書に記載すれば問題ありません。

個人事業主がビジネスで一定以上の収入を得ている場合、確定申告は避けて通れないものです。

初めて確定申告をする方でも、「会計ソフト」を利用すれば書類の作成や手続きがスムーズにできますよ。

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また日々の会計業務をご自身で行うこともできるので、会計ソフトの導入を考えてみても良いでしょう。

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