個人事業主の決算月はいつ?決算書や確定申告書類の作成方法を解説

個人事業主の決算月っていつなんだろう?
個人事業主の決算期は自由に決められるのかな?

このように1年間の会計の締め月である「決算月」について気になっている個人事業主もいらっしゃるでしょう。

個人事業における決算月は法律によって定められており、期間内に書類・帳簿の整理や決算書類を作成する必要があります

事業を健全に運営していくためにも決算は不可欠であるため、あらかじめ手続きについて確認しておきましょう。

この記事では個人事業主の決算月や、決算月に準備する書類の作成方法、確定申告までに行う手続きなどを詳しく解説します。

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この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
「税理士が教えるお金の知識」(以降、本メディア)では一部、メーカーやサービス提供事業者から広告出稿をいただいておりますが、コンテンツの内容については本メディア独自に制作しており、情報の掲載有無やコンテンツ内容の最終意思決定に事業者は関与しません。

1.個人事業主の決算月はいつ?

個人事業における決算月はいつなのかな?
概要は知っているけど、そもそも決算って何?

決算とは1年間の収益と費用から損益を算出し、決算日時点の資産や負債、純資産などの財務状況を確定する手続きです。

個人事業における会計期間は税法によって1月~12月と定められており、その締め月である12月を決算月、事業年度の最終日である12月31日を決算日といいます。

決算を行うことは、事業主自身だけでなく取引先や株主、金融機関などが事業の経営状況を把握するためにも重要です。

また決算をした年の翌年2月16日から3月15日までに「確定申告」を行う必要があります

確定申告とは
毎年1月1日から12月31日までの1年間の所得に対して生ずる税額を確定し、税務署に申告する手続きです。

なお確定申告の方法によって、決算で作成する書類や必要な帳簿は異なります

税理士
次章で個人事業主における確定申告の方法や控除などについて詳しく解説します。

2.個人事業主の確定申告の方法

個人事業主の確定申告には、どのような方法があるの?
確定申告の方法によって作成する決算書が異なるみたいだけど、どうすれば良いんだろう?

このように個人事業主の確定申告の方法や決算書の作成について、知りたいという方も多くいらっしゃるでしょう。

個人事業主の確定申告の方法には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。

手続きや記帳の方法、税制上の特典の有無、決算時に準備する書類などがそれぞれ異なるため、事前に概要を把握して確定申告の方法を決めておきましょう。

税理士
この章では白色申告と青色申告におけるメリットやデメリット、手続きや書類の作成などについて紹介します。

方法1 白色申告

白色申告は税制上の特典がない分、比較的簡単にできる確定申告の方法です。

白色申告のメリットとデメリットは以下のとおりです。

【白色申告のメリット・デメリット】
メリット デメリット
・単式簿記(簡易簿記)で記帳するため準備が簡単
・提出書類が少ない
・事前の申請が不要
特別控除や赤字の繰り越しなど、税制上の特典がない

確定申告における記帳の方式は申告方法によって異なり、白色申告の場合には単式簿記(簡易簿記)で行います

単式簿記(簡易簿記)とは
取引を一つの勘定項目に絞り、日付と金額のみ記帳する方法です。

また青色申告のように事前に承認を受ける必要もなく、誰でも比較的簡単に手続きできる点もメリットです。

一方、特別控除や赤字の繰り越しなど税制上の優遇を受けられない点がデメリットといえます。

白色申告を行う方は、決算月に以下の書類を用意しておきましょう。

【白色申告で提出する書類】
  • ・確定申告書
  • ・収支内訳書
税理士
白色申告には青色申告のような節税効果はありません。しかし書類の作成や帳簿付けが簡単にできるため、手続きにできるだけ手間をかけたくない方に向いているといえます。

方法2 青色申告

青色申告は書類の作成や手続きに手間がかかる分、特別控除をはじめとする税制上の優遇が多い確定申告の方法です。

青色申告の主なメリットとデメリットは以下のとおりです。

【青色申告のメリット・デメリット】
メリット デメリット
・最大65万円・55万円・10万円のいずれかの特別控除が受けられる
・家族への給与全額を必要経費として計上できる
・損失申告をすることで赤字を翌年以降3年間繰り越しできる
・取得価格が30万円未満の減価償却資産(平成30年3月31日までに購入したもの)は一括で経費として計上することができる
・事前に承認申請が必要
・複式簿記で記帳する必要がある
・所得が48万円以下でも申告が必要
損失申告とは
確定申告で赤字の状態(課税対象となる所得がない状態)を申告することをいいます。他の事業の所得の黒字を相殺(損益通算)できたり、同じ事業の翌年以降3年間の所得の黒字と相殺(繰越控除)できたりといったメリットがあります。
複式簿記とは
お金の収支を「借方」と「貸方」と呼ばれる要素に仕訳し、取引を二つの側面に分けて記録する記帳方法です。

青色申告を行う最大のメリットは、青色申告特別控除が受けられることだといえるでしょう。

なお最大65万円の特別控除を受けるためには記帳を複式簿記で行い、電子申告するか電子帳簿を保存しておく必要があります。

注意
青色申告でも最大65万円・55万円の特別控除を受けない場合は、単式簿記(簡易帳簿)による記帳で良いとされています。単式簿記の場合には10万円の青色申告特別控除を受けることができます。なお複式簿記で記帳しても、電子申告または電子帳簿の保存を行わない場合、控除額は最大55万円となります。

青色申告をすれば家族への給与を全額経費として計上できたり、赤字を翌年以降3年間繰り越しできたりと、さまざまな税制上の優遇が受けられます

節税効果の高い方法で確定申告をしたいという個人事業主には、青色申告がおすすめですよ。

ただし青色申告を行うためには以下の条件を満たしている必要があります

【青色申告を行う条件】
  • ・「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出している
  • ・「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署長に提出する(青色申告をする収入のある年の3月15日まで、1月16日以後に新規に業務を開始した場合は2カ月以内)

なお青色申告を行う方は、以下の書類を準備しましょう。

【青色申告で提出する書類】
  • ・確定申告書
  • ・青色申告決算書(損益計算書、貸借対照表含む)
税理士
青色申告は作成する書類が多かったり承認申請が必要であったりと手間がかかりますが、高い節税効果が期待できます。

3.決算月に準備する書類の作成方法

決算月にはどういった書類を準備しないといけないの?

個人事業主が決算月に作成する書類は、白色申告と青色申告のどちらを行うかによって異なります

以下のような書類を作成することになるため、事前に確認しておきましょう。

【個人事業主が確定申告に向けて準備する書類】
確定申告に向けて準備する書類
白色申告 ・確定申告書
・収支内訳書
青色申告 ・確定申告書
・青色申告決算書(損益計算書と貸借対照表)
税理士
この章ではそれぞれの書類の作成方法をお伝えするので、参考にしてくださいね。

書類1 確定申告書

白色申告と青色申告のどちらの方法であっても、確定申告を行う際には確定申告書を作成します。

注意
確定申告書には申告書Aと申告書Bの2種類があり、本章では令和3年時点の法令などに基づいた申告書Bの記載方法を説明しています。

所得の種類が「事業所得」の場合には、確定申告書の「第一表」と「第二表」を作成しましょう。

まず帳簿や控除証明書などの書類を参考に、確定申告書第一表の以下のような内容を記入します。

【確定申告書第一表の記載項目】
  • ・収入金額
  • ・所得金額
  • ・所得控除の金額
  • ・税額控除の金額
  • ・最終的な納税額 など

確定申告書第一表の記入例は以下のとおりです。

【確定申告書第一表の記入例】
確定申告書第一表の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」一部加工して作成

また確定申告書第二表には、以下のうち該当する項目を記入します。

【確定申告書第二表の記載項目】
  • ・住所、屋号、氏名などの事業者の情報
  • ・所得の内訳
  • ・社会保険料控除などの詳細
  • ・配偶者や親族に関する事項
  • ・事業専従者に関する事項
  • ・住民税や個人事業税に関する事項 など

以下は確定申告書第二表の記入例です。

【確定申告書第二表の記入例】
確定申告書第二表の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」一部加工して作成

なお確定申告書の作成時には、帳簿などのデータをもとに所得金額や各種控除を差し引いた金額などを計算する必要があります

税理士
初めて確定申告をする方や会計の知識がない方には会計ソフトの利用がおすすめです。自動で複雑な計算をしてくれるので、迅速にミスなく書類を作成できますよ。

メモ
確定申告書には第三表(分離課税の対象となる所得などを別で申告する際に提出する書類)や第四表(事業の損失額を翌年に繰り越す際に提出する書類)もありますが、事業所得のみの場合には提出する必要はありません。

書類2 収支内訳書

白色申告を行う方は、収支内訳書を作成しましょう。

収支内訳書では、1月1日~12月31日の間に発生した売り上げや仕入れ、収入を得るためにかかった必要経費などを勘定科目ごとに集計します。

メモ
収支内訳書には「一般用」「不動産所得用」「農業所得用」の3種類があり、本章では令和3年10月1日時点の法令などに基づいた一般用の記載方法を説明しています。

収支内訳書は2ページで構成されており、1ページ目には以下の項目で該当する事項などを記載します。

【収支内訳書1ページ目の記載項目】
  • ・住所、屋号、氏名などの事業者の情報
  • ・収入金額
  • ・売上原価
  • ・必要経費
  • ・専従者控除の金額
  • ・給料賃金や税理士、弁護士などの報酬・料金の内訳 など

以下は収支内訳書1ページ目の記入例です。

【収支内訳書1ページ目の記入例】
収支内訳書1ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等

収支内訳書の2ページ目には、以下のように詳細な内容を記入します。

【収支内訳書2ページ目の記載項目】
  • ・売上(収入)金額の詳細
  • ・仕入金額の詳細
  • ・減価償却費の計算
  • ・地代家賃の内訳 など

収支内訳書2ページ目の記入例は以下のとおりです。

【収支内訳書2ページ目の記入例】
収支内訳書2ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等

なお「減価償却費」の対象となる資産(減価償却資産)を購入した場合には、定められた計算方法によって「いくらで計上できるのか」を算出する必要があります

減価償却費とは
長年使用する資産(建物や機械装置、船舶、車両運搬具、工具、器具備品、漁業権、特許権、営業権など)の取得価格を耐用年数に応じて配分し、年分に相当する金額をその年の必要経費として計上する際に使う勘定科目です。
注意
減価償却費の算出方法には定額法、定率法、生産高比例法などがあり、減価償却資産の取得時期や種類によって異なります。詳細は国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」でご確認いただけます。
税理士
収支内訳書は青色申告時に作成する決算書よりも記入項目が少なく、比較的作成しやすいといえます。ただし減価償却費の計算は複雑なので注意が必要です。

書類3 青色申告決算書

青色申告を行う方は、青色申告決算書を作成する必要があります。

注意
青色申告決算書には「一般用」「不動産所得用」「農業所得用」「現金主義用」の四つの様式があり、本章では令和3年時点の法令などに基づいた一般用の記載方法を説明しています。

なお青色申告決算書は4ページで構成されています。

1ページ目には会社の1年間の収支を示す「損益計算書」の内容、2~3ページ目には1ページ目の内訳と詳細、4ページ目には財政状態を表す「貸借対照表」の内容を記入します。

メモ
損益計算書の作成方法は「書類4 損益計算書」、貸借対照表の作成方法は「書類5 貸借対照表」にて詳しく解説しています。

まず1ページ目に損益計算書の内容を記載しましょう。

【青色申告決算書1ページ目の記入例】
青色申告決算書1ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等

続いて2ページ目には以下のうち該当する項目を記入しましょう。

【青色申告決算書2ページ目の記載項目】
  • ・月別の売上(収入)金額と仕入金額
  • ・給料賃金や専従者給与の内訳
  • ・貸倒引当金繰入額の計算
  • ・青色申告特別控除額の計算 など

青色申告決算書2ページ目の記入例は以下のとおりです。

【青色申告決算書2ページ目の記入例】
青色申告決算書2ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等

青色申告決算書3ページ目には以下のような事項を記載します。

【青色申告決算書3ページ目の記載項目】
  • ・減価償却費の計算
  • ・利子割引料の内訳
  • ・税理士、弁護士などの報酬・料金の内訳
  • ・地代家賃の内訳 など

以下は青色申告決算書3ページ目の記入例です。

【青色申告決算書3ページ目の記入例】
青色申告決算書3ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等

白色申告で提出する収支内訳書と同様に、青色申告決算書でも、減価償却資産がある場合には減価償却費の計算を行う必要があります

メモ
取得金額を耐用年数に応じて配分して計上する「減価償却資産」の計算方法は、資産の種類や取得時期によって異なります。詳細は国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」でご確認ください。

青色申告決算書4ページ目には、以下のように貸借対照表の内容を記入しましょう。

【青色申告決算書4ページ目の記入例】
青色申告決算書4ページ目の記入例
出典:国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等
税理士
青色申告決算書は白色申告で提出する収支内訳書よりも計算や記載する内容が細かく、作成に手間と時間がかかるため、会計ソフトの利用をおすすめします。

書類4 損益計算書

青色申告を行う方は損益計算書を作成しておきましょう。

税理士
損益計算書は青色申告決算書を作成する際にも必要な書類です。

注意
青色申告をする方のなかで、最大65万円・55万円の青色申告特別控除を受ける場合には青色申告決算書と別に損益計算書を添付する必要があります。

損益計算書(P/L)は財務諸表の1種であり、「収益」「費用」「利益」の三つから、1年間の会社の経営成績を表す決算書類です。

メモ
損益計算書には「勘定式」と「報告式」の2通りの形式があり、本章では勘定式の構造を説明しています。

勘定式の損益計算書では、どれだけ稼いだのかを示す「収益」から、どれだけ費用を支出したかを示す「費用」を差し引き、残った利益「純利益」を求めます

【損益計算書の例】
損益計算書の例

なお損益計算書は「試算表」を参考にして記入する必要があります。

試算表とは
借方と貸方の項目に分け、記載された金額が一致するかどうかによって、仕訳や帳簿への転記にミスがないかを確認する表です。

試算表は「総勘定元帳」の内容を転記して作成します。

そのため、まずは日々の取引を複式簿記で記帳した「仕訳帳」の内容を参考に、売り上げ、仕入れ、現金など科目別にまとめた総勘定元帳を作成する必要があります

試算表ができたら、勘定科目のうち「収益」と「費用」に当たる部分を抽出して損益計算書を作成します。

書類5 貸借対照表

青色申告者は、青色申告決算書の記入時にも必要な貸借対照表を作成する必要があります。

注意
青色申告をする方のなかで、最大65万円・55万円の青色申告特別控除を受ける場合には青色申告決算書と別に損益計算書を添付する必要があります。

貸借対照表(B/S)は、「資産」「負債」「純資産」の三つから一定の会計期間における財政状態を示す決算書類です。

メモ
貸借対照表は損益計算書と同様に「勘定式」と「報告式」の2通りの形式があり、本章では勘定式の構造を説明しています。

損益計算書と同じく、貸借対照表も試算表の勘定科目から資産、負債、純資産(資本)に当たる項目を抜き出して作成します。

【貸借対照表の例】
貸借対照表の例
税理士
貸借対照表では借方の資産と貸方の負債と純資産(資本)の合計金額が一致します。

4.個人事業主の決算から確定申告までの流れ

決算から確定申告まで、どのような手順で行うの?

このように確定申告までに行う手続きの流れを知りたいという方もいらっしゃるでしょう。

個人事業主の決算から確定申告までの流れは以下のとおりです。

【個人事業主の決算から確定申告までの流れ】
個人事業主の決算から確定申告までの流れ
税理士
ここからは三つのステップに分けて詳しく説明するので、ぜひ参考にしてくださいね。

STEP1 棚卸表を作成する

決算日である12月31日に棚卸しを行い、棚卸表を作成しましょう。

棚卸しとは
商品などの在庫の数量を確認し、会計上の期末棚卸資産の金額を確定させる作業を指します。なお期末時点での商品の在庫の額を棚卸高といいます。
メモ
12月31日に棚卸しが行えない場合には、決算日の前後のできるだけ近い日に行えば良いとされています。ただし12月31日と棚卸し日の間の売り上げや仕入れなどから12月31日時点の棚卸高を計算し、計算方法を明確にする必要があります。

まずは棚卸しの対象となる「棚卸資産」を種類や品質、型などによって分類し、それぞれの数量や金額を記入します。

税理士
棚卸資産とは、以下のような資産を指します。

【棚卸資産】
商品など 商品、製品、半製品、仕掛品、原材料、副産物、仕損じ品、作業くずなど
消耗品など ・包装材料、ガソリン、事務用品などの消耗品
・使用可能期間が1年未満または取得価格が10万円未満の工具、器具、備品などの少額な減価償却資産

次に棚卸資産の棚卸高を調べます。

なお棚卸高の評価はあらかじめ税務署へ届け出ている方法で行います

届け出ていない場合には、「最終仕入原価法」で以下のように計算しましょう。

【最終仕入原価法の計算方法】
  • 直近に仕入れた棚卸資産の仕入単価×棚卸資産の数量=棚卸高

続いて必要経費である売上原価や消耗品費を求めます

税理士
売上原価や消耗品費は仕入高や購入高ではなく、以下の計算式で算出した金額を指します。

【売上原価と消耗品費の計算式】
  • 売上原価=年初(期首)の棚卸高+年間の仕入高-年末(期末)の棚卸高
  • 消耗品費=年初(期首)の棚卸高+年間の購入高-年末(期末)の棚卸高

棚卸しが終わったら棚卸表を以下のように作成します。

【棚卸表の作成例】
棚卸表の作成例

STEP2 帳簿を整理して決算書を作成する

棚卸表ができたら、決算書を作成するために必要な帳簿の整理を行います

帳簿に記載されている内容と納品書や請求書、領収書などの記録が合っているか確認し、間違いがある場合には訂正しましょう。

帳簿に誤りがないことを確認できたら、1月から12月までの1年間の合計額を科目ごとに計算して以下のように記載します。

【決算書の作成例】
決算書の作成例
メモ
日々の取引を記帳する際には、税率ごとに分けておく必要があります。区分の仕方を詳しく知りたい方は国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」をご参照ください。

続いて仕入金額と必要経費の整理を行いましょう

帳簿にはその年分の収入金額や必要経費にならない「前受金」や「前払経費」が含まれていることがあります。

またその年分の収入金額や必要経費と判断されるものでも、まだ記帳されていない「未収入金」や「未払経費」などもあるため注意が必要です。

税理士
収入金額は前受金や前払経費などを区別して計上し、必要経費は未収入金や未払経費などを合計して計上しましょう。

メモ
その他損害保険金、補償金、雑収入、減価償却資産の売却代金などの収入や、未使用の消耗品代金、研修費用、接待交際費などの経費などの詳しい取り扱い方法は、国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」でご確認ください。

また「減価償却費」の対象となる資産を購入した場合には、資産の種類や取得時期などによって異なる計算方法に基づき算出しましょう。

メモ
減価償却費の計算方法の詳細は国税庁サイト「確定申告書等の様式・手引き等」でご確認いただけます。

帳簿が全て整理できたら、内容を収支内訳書または青色申告決算書に記載しましょう。

STEP3 作成した決算書類をもとに確定申告する

決算書を作成したら、記載内容をもとに確定申告書を作成し、所得税を算出して確定申告を行います

なお確定申告が終わった後も、帳簿や棚卸表、納品書、請求書、領収書などの決算書類は、住所地か居所地、事務所・事業所の所在地に一定期間保管する必要があるので注意しましょう。

帳簿や書類の保存期間は、確定申告の方法によって以下のように異なります。

【帳簿や書類の保存期間】

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保存が必要な帳簿や書類 保存期間
白色申告 帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) 7年
業務に関して作成した法定帳簿以外の帳簿(任意帳簿) 5年
書類 棚卸表などの決算に関して作成したその他の書類 5年
受領した請求書、納品書、送り状、領収書などや業務に関して作成した書類
青色申告 帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など 7年
その他の書類 受領した請求書、見積書、契約書、納品書、送り状などや取引に関して作成した書類 5年
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税理士
個人事業主の決算や確定申告の準備には、会計ソフトを利用するのがおすすめですよ。

会計ソフトを活用すれば、決算書類の作成だけでなく確定申告の手続きまでも手軽に行える上、自動入力機能などで日頃の会計処理を効率化できるのでおすすめですよ。

5.個人事業主の決算・確定申告におすすめの会計ソフト3選

会計ソフトはいろいろなサービスがあるみたいだけど、決算や確定申告を簡単に行えるのはどのソフトだろう?
個人事業主が利用しやすい会計ソフトはどれかな?

このように決算や確定申告を簡単に済ますことができる個人事業主向けの会計ソフトを知りたいという方もいらっしゃるでしょう。

この章で紹介する三つのブランドの会計ソフトであれば、初めて導入する方でも利用しやすくおすすめです。

個人事業主が確定申告を行う際の強い味方となってくれるでしょう。

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また機能が豊富なだけでなく、簿記の知識のない人でも簡単に会計業務や決算の手続きを行えるように設計されている点も特徴です。

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白色申告をする場合にはやよいの白色申告 オンライン、青色申告をする場合にはやよいの青色申告 オンラインを利用しましょう。

やよいの白色申告 オンラインには三つのプランが用意されており、なかでも「フリープラン」は1年目だけでなく2年目以降もコストが0円に設定されています

コストをかけずに利用できるため、白色申告をする個人事業主は導入しておくべきだといえるでしょう。

なお「ベーシックプラン」にはフリープランの機能に加え、メールや電話での操作サポート、「トータルプラン」にはベーシックプランの機能・サポートと確定申告や仕訳についての相談サポートがあります。

やよいの青色申告 オンラインにもやよいの白色申告 オンラインと同様に取引データの自動取り込み機能、自動仕訳機能、自動記帳機能、経営状況の分析機能などが搭載されています。

三つのプランがあり、なかでも「セルフプラン」は初年度無料で利用可能です。

ベーシックプラン、トータルプランのサポートはやよいの白色申告 オンラインと同様です。

やよいの白色申告 オンラインやよいの青色申告 オンラインを活用すれば、収支内訳書や青色申告決算書、確定申告書などの決算書類を簡単に作成できますよ。

おすすめ3 マネーフォワード

マネーフォワード
メリット
クラウド確定申告ソフトのなかで満足度ナンバーワン
基本搭載されている機能が多い
インボイス制度、電子帳簿保存法の改正に対応
デメリット
簿記の知識がない方にはやや不向き
こんな人におすすめ!
スマホで確定申告をしたい方
会計業務だけでなくバックオフィス業務も効率化したい方
ソフト名 プラン 初年度価格(税抜) 2年目以降(税抜) 無料期間
マネーフォワード クラウド確定申告 パーソナルミニ 10,800円 1カ月間無料
パーソナル 15,360円
パーソナルプラス 35,760円

マネーフォワード クラウド確定申告は利用者満足度が高く、99%の継続率を誇る個人事業主向けのクラウド型会計ソフトです。

PCではもちろん、スマホでも確定申告の書類作成から申告の手続きまで行える点が特徴です。

三つのプランがあり、全てのプランで銀行やクレジットカード、電子マネー、POS(販売時点情報管理)レジなどとの連携によるデータの自動取り込み・仕訳や確定申告書の作成・提出ができます

さらにマネーフォワード クラウド確定申告では、給与計算や勤怠管理、マイナンバー管理などのバックオフィス業務をサポートする機能を利用できます。

パーソナルプランではパーソナルミニプランの機能に加え、経営分析のレポート機能や消費税の集計、消費税申告書の作成機能も搭載されます。

パーソナルプラスプランには電話サポートがあるので、決算や確定申告に関するサポートを受けたい方におすすめですよ。

なおインボイス制度や電子帳簿保存の改正にも対応しており、最新の状態で会計業務を行うことが可能です。

6.個人事業主の決算に関してよくある疑問

決算書はそもそも何のために必要なんだろう?
法人の決算期は自由に決められるみたいだけど、個人事業の決算月も変えられるの?

決算に関することでこのような疑問のある方もいらっしゃるかもしれませんね。

そこで本章では、個人事業の決算に関してよくある以下の三つの疑問にお答えします

Q1 個人事業主の決算月は変更できる?

個人事業主の決算月は自由に決められるの?

法人の場合には自社の判断で決算月を変更できますが、個人事業主の場合には自由に変えることはできません

個人事業主の決算月は12月、会計期間は1月1日から12月31日までと法律で定められています。

法人の会計期間も同様に1年間と決められているものの、決算期については決まりがありません。

なお公的機関の決算月が4月から翌年3月に決められていることや、税制の改正が4月1日に適用されることが多いなどの理由から、多くの企業は決算月を3月に設定しています。

Q2 個人事業主が払う税金にはどういったものがある?

個人事業主はどういった税金を支払う必要があるの?

個人事業主に関連する税金には、主に以下の四つがあります。

【個人事業主に関連する税金】
税金 概要 対象の個人事業主
所得税 1月1日から12月31日までの1年間で得た利益(所得)に生ずる税金 課税対象となる所得のある個人事業主
住民税 居住する都道府県、市区町村に納付する税金 全ての個人事業主
個人事業税 個人事業主が各市区町村に納付する地方税 指定の業種の個人事業主
消費税 商品などを販売するときにかかる税金 ・基準期間(前々年)の課税売上金額が1,000万円を上回る個人事業主
・基準期間の課税売上金額が1,000万円以下であっても、特定期間における課税売上金額が1,000万円を上回る個人事業主
・消費税課税事業者選択届出の手続きを行った個人事業主

個人事業主であれば全て支払う必要があるわけではなく、事業の状況や業種によっては納めなくて良い税金もあります。

例えば事業で一定以上の利益が出ておらず、課税対象となる所得がない場合には所得税を支払う必要がありません

また個人事業税は以下に当てはまる業種の個人事業主のみが納税します

【個人事業税の課税対象の業者】
業種 税率
第1種事業 物品販売業や料理店業、出版業などを含む37業種 5%
第2種事業 畜産業、水産業、薪炭製造業 4%
第3種事業 医業や弁護士業、理美容業などを含む28業種 5%
はり、マッサージ指圧、装蹄(そうてい)師業など 3%

消費税については「小規模事業者の納税義務の免除」という制度により、基準期間の課税売上金額が1,000万円以下の場合に納付が免除されます。

なお開業して2年間であれば、売上金額が1,000万円を上回った場合でも免税事業者と判断され、消費税の納付を免れることができます。

Q3 決算書はなぜ必要?

決算書を作成する目的は何だろう?

確定申告の際に提出するため、個人事業主は必ず決算書を作成しておく必要があります

また決算書は取引先や金融機関、株主などに事業の財務・経営状況を示す役割を担っている書類であり、取引を安心して行えるかの判断材料にもなります。

多くの金融機関では融資を行う際に、決算書の内容を審査して融資の可否を決定します。

取引先なども決算書の内容を参考にして、契約の可否を判断するケースが多いといえますよ。

なお決算書によって事業の経営状況を可視化できるため、外部に対してだけでなく内部の経営分析にも役立つでしょう。

7.まとめ

個人事業主の決算月は税法により12月と決められており、決算月には決算を行い1月1日から12月31日までの会計期間の財務状況を確定する必要があります。

なお決算月には決算書類の作成を行わなければなりません。

白色申告を行う場合には確定申告書と収支内訳書、青色申告を行う場合には確定申告書と青色申告決算書(損益計算書と貸借対照表)を準備しましょう。

棚卸表を作成して帳簿の整理と決算書ができたら、確定申告書に該当の項目を記載します。

なお白色申告を行う場合と青色申告を行う場合とでは、必要な帳簿の種類や保存期間などが異なるため注意が必要です。

決算や確定申告をスムーズに済ませるために、日頃から会計処理や帳簿付けを細かく正確に行っておくことが重要です。

会計ソフトを利用すれば帳簿や決算書、確定申告書の作成だけでなく、日々の取引内容や仕訳などのデータを自動で入力・管理することもできますよ。

会計の専門的な知識がなくても利用できるため、決算や確定申告をする個人事業主であれば導入すべきサービスだといえるでしょう。

税理士
なお以下の会計ソフトは便利な機能が豊富なので、活用すれば決算・確定申告をスムーズに行えますよ。

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