「税理士と公認会計士って何がどう違うんだろう?」
「資格を取りたいけど、どちらが良いのかな?」
税理士と公認会計士はどちらもお金に関する職業であることや、兼業している場合もあることから混同されやすい職業です。
両者の違いが分からないという方も多くいらっしゃいますよね。
資格を取得しようと考えている方でも、税理士と公認会計士どちらの資格を取るべきかと悩む方も少なくはないものです。
また会社の経営や運営に携わる方は、「この業務はどちらに相談すべきか」と悩むこともあるでしょう。
この記事では、税理士と公認会計士について、
- ・業務
- ・試験
- ・合格率
- ・年収
以上の観点から比較していきます。
福留 正明
1.業務の違い
税理士・公認会計士という職業名から漠然としたイメージはあっても、その業務の違いは明確に分からないものですよね。
兼任する方や両方を掲げている事務所があるため、「業務内容も似たものなのでは?」と考えてしまう方もいらっしゃるでしょう。
しかし税理士・公認会計士は、主たる業務の内容やメインとなるクライアント、またクライアントとの関係も異なります。
1-1.業務内容
税理士、公認会計士はそれぞれが異なる「独占業務」を持っており、請け負う仕事は異なります。
1-1-1.公認会計士の業務
公認会計士の独占業務は「監査業務」で、企業や公益法人、学校法人などを対象に行われます。
監査業務とは企業が提出する財務諸表をチェックする業務です。
企業は決算の際に財務諸表という企業の財政状況を開示する書類を作成しますが、これが適正なものであるかどうかを第三者の立場から審査します。
財務諸表に対し独立した立場から監査意見を表明することで、対象の財務情報の信頼性を担保します。
これを、監査業務といいます。
- 1.コンサルティング・アドバイザリー業務
- 2.経理
- 3.税務(税理士登録を行っている場合のみ)
公認会計士の行うコンサルティング・アドバイザリー業務は多岐にわたります。
アドバイザリーは主に会社そのものの運営や経営に関し、想定されるリスクを回避し、現時点よりも向上させるための助言を行います。
M&A(合併・買収)やIPO(新規株式公開)、会計やそのシステムや企業の経営管理に関することなど、さまざまな相談に乗り課題を解決することも業務の一つです。
また経理業務を行うこともあります。
上場企業などの大手企業には監査が義務付けられているため、監査に精通した公認会計士を経理として雇うこともあります。
税理士登録を行った公認会計士は、税理士として税務を行うことができます。
公認会計士は税理士試験に合格しなくても、税理士登録を行うことで税理士の資格を得られるのです。
こういったことから公認会計士と税理士を兼業する方もおり、両者が混同されやすい理由の一つであるともいえるでしょう。
1-1-2.税理士の業務
税理士の独占業務は「税務業務」です。
税務業務は以下の3つと規定されています。
- 1. 税務代理……納税者に代わり税務申告を行う。また税務調査に立ち会い調査の対応を行うなど。
- 2. 税務書類の作成……納税者に代わり税務書類を作成、提出する。申告書の作成などが主。
- 3. 税務相談……税金の計算や必要となる手続きについてなど、税務に関する相談業務。
納税者が税金を多寡なく納めるためのサポートすることが税理士の仕事といえます。
- 1.コンサルティング・アドバイザリー業務
- 2.経理
- 3.外部監査
税理士のクライアントは中小企業が多いため、税務以外の相談を受けることも多くあります。
税務を任されているということは、税理士は会社の状況をよく知っているということです。
発生している問題、起こり得る問題にいち早く気づくことができるため、早期解決・リスク回避に向けての提案を行います。
自社株式の相続・贈与に関してや、労務、財務などさまざまな事柄に関して、課題を見つけ解決の手助けをすることも業務の一つです。
また大手税理士法人では、国際税務やM&Aに関するアドバイザリー業務なども多くなります。
中小企業や個人事業主の場合、経理担当を雇わず税理士に経理業務を委託するケースも珍しくありません。
監査といっても、公認会計士が企業や公益法人、学校法人などを対象に行うものとは異なります。
「外部監査制度」は都道府県・政令指定都市・中核市を対象としており、総務省は外部監査制度の趣旨を以下のように述べています。
- 地方公共団体の組織に属さない外部の専門的な知識を有する者による監査を導入することにより、地方公共団体の監査機能の専門性・独立性の強化を図るとともに、地方公共団体の監査機能に対する住民の信頼を高める。
この外部監査を行える「外部監査人」に税理士も認められています。(地方自治法第252条の28)
1-2.業務対象(メインクライアント)
税理士と公認会計士では業務の対象、メインとなるクライアントが異なります。
それぞれの主な業務の違いや、業務の性質によりこの違いが生まれています。
1-2-1.公認会計士のメインクライアント
公認会計士のメインクライアントは大企業です。
これには公認会計士の独占業務である「監査」が法律により義務付けられている、つまり「法定監査」の対象となる企業の基準が関わっています。
- 1.最終事業年度の貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
- 2.最終事業年度の貸借対照表の負債の部に計上した額の合計が200億円以上
- 3.1・2のうちどちらかに当てはまる「株式会社」
- 4.有価証券報告書を提出する上場企業
以上が法定監査の対象となる主な基準ですが、この基準を満たしている企業は大企業であるといえます。
中小企業や法人であっても、自社や自団体の公正性や信頼性を保つため、といった理由で任意監査を受けることもあります。
しかしこの監査の基準を考えると、やはり公認会計士は大企業をメインに仕事をすると考えられます。
例えば経理業務の場合でも、監査が義務付けられている大企業ならば監査を熟知する公認会計士を経理として雇いたいものです。
1-2-2.税理士のメインクライアント
税理士のメインクライアントは中小企業や特定非営利活動法人NPO法人、宗教法人などです。
税理士は納税の手伝いや税に関する相談を行うのが仕事ですよね。
事業活動を行っているのであれば、個人・法人を問わず納税の義務があるため、税理士のクライアントになり得るのです。
また、中小企業から経理業務を委託されることも多くあります。
中小企業では企業内部で経理の人材育成をするよりも、税理士に委託してしまった方が経費が掛からないなどメリットが大きい場合があります。
1-3.立場
税理士と公認会計士は主にそれぞれの独占業務に関して、クライアントとの関係が異なります。
両者がどのような立場で業務を行っているのか、詳しく見ていきましょう。
1-3-1.公認会計士の立場
公認会計士は「監査」という業務の性質上、中立の立場を求められます。
監査では企業の財務諸表(決算書)をチェックし、適正なものであることを担保します。
これは誰のために行っているのかというと、企業外部のために行っているものです。
例えば株の取引を行う投資家は、この財務諸表を投資の判断材料の一つとします。
しかし誤った財務諸表で決定してしまっては、損失が生まれてしまう可能性がありますよね。
ミスであれ意図的なものであれ、このようなことは避けなければいけません。
そのためクライアントは企業であっても、公認会計士は中立で公正な立場を取らなくてはなりません。
1-3-2.税理士の立場
税理士は中立の立場を取る公認会計士とは異なり、クライアント側に寄り添うことが必要になります。
もちろん第三者として公正かつ税法にのっとった上でなければなりませんが、クライアントの利益を考えて動くことができます。
税理士は依頼される仕事(税務・税務相談)の性質上、企業の収支などの経営状態、経営者の経済的状況を知り得ます。
つまり企業側にとって税理士は「最も身近な第三者」といえるのです。
税務をこなすだけでなく、財務関係などの相談を受けるのも税理士の仕事です。
経営や財務状況の問題解決にも携わる税理士は、経営者のビジネスパートナーともなり得るのです。
混同されやすい職業の公認会計士と税理士ですが、業務内容・メインクライアント・クライアントとの立場、3つの観点から見ても大きく異なります。
【公認会計士と税理士の違い】
業務内容 | メインクライアント | クライアントとの関係 | |
---|---|---|---|
公認会計士 | 監査 他 | 大企業 | 中立 |
税理士 | 税務 他 | 中小企業 | ビジネスパートナー |
ここまで業務における公認会計士と税理士の違いをご説明してきました。
2.資格の取り方の違い
公認会計士と税理士では、資格取得の際にも大きな違いがあります。
これから試験を受けたいという方は、資格取得までにかかる時間や受験資格の有無、実務経験が必要かなども気になりますよね。
まずは資格取得までの大まかな流れをご説明した後、それぞれの受験資格・受験科目・学習時間についての違いを見ていきます。
2-1.資格取得の流れ
公認会計士と税理士では、まず資格を取得する流れに違いがあります。
以下の図を見てみましょう。
どちらも試験に合格することが必要で、公認会計士・税理士として登録することが最終段階となることは同じです。
しかしそれ以外に満たさなければならない要件が異なっていますね。
それではそれぞれの資格取得までの詳しい流れを見て違いを確認していきましょう。
2-1-1.公認会計士資格取得のための要件
公認会計士の資格取得の流れは以下のようになっていましたね。
- 1.公認会計士試験に合格する
- 2.2年以上実務経験を積む(※1と前後を問わない)
- 3.3年間の実務補習を受ける(※短縮の場合あり。2と並行しても可)
- 4.修了考査に合格する
- 5.日本公認会計士協会に名簿登録をする
試験に合格した後、日本公認会計士協会に名簿登録をするには、2・3・4の要件を満たすことが必要になります。
「2.2年以上実務経験を積む」のための方法は、「業務補助」もしくは「実務従事」です。
- ・業務補助……監査証明業務に関して公認会計士または監査法人を補助すること
- ・実務従事……財務に関する監査、分析その他の実務に従事すること
業務補助は、1年につき2以上の法人(※)の監査証明業務を対象として行わなければなりません。
(※)当該法人が金融商品取引法の規定により、公認会計士又は監査法人の監査を受けることとなっている場合又は会社法に規定する会計監査人設置会社(資本金額が1億円を超える株式会社に限る。)である場合には、1年につき1以上の法人。
また、実務従事は公認会計士法施行令第2条に規定される業務が対象となります。
試験合格者の多くは監査法人へ就職し、2年間業務補助の経験を積みます。
監査法人とは、公認会計士が集まる監査を目的とした法人のことをいいます。
- ・会計事務所…資本金5億円以上の法人についての原価計算など財務分析に関する事務、会計監査のどちらかを行っている場合、業務補助もしくは実務従事の経験が積める。
- ・一般企業の経理……資本金が5億円以上の企業の場合、実務従事の経験が積める。
- ・銀行、保険会社……「貸し付けや債務保証などの資金の運用に関する事務」を行う部署であれば、実務十字の経験が積める。
そしてもう一つ必要になるのが実務補習です。
「実務補習所」という機関に3年間通い、一定の単位を取得します。
監査法人などで働きながら週1~2回程度講義に参加するのが一般的となっています。
以上の2つを終えると、最後に修了考査という試験があります。
大変そうと感じる方も多いかもしれませんが、合格率は48.8%(令和元年度)と約半数がクリアできる試験となっています。
また再受験も可能で合格までの期限もないので、公認会計士試験と比べると難易度も低いといえるでしょう。
- ・2年以上実務経験
- ・3年間の実務補習
- ・修了考査に合格
公認会計士試験に合格し以上3つの要件を満たすことで公認会計士として登録ができ、公認会計士としての資格を得ることができるのです。
2-1-2.税理士資格取得のための要件
税理士の資格取得の流れは以下のようになっています。
- 1.受験資格を得る
- 2.税理士試験に合格する
- 3.2年以上の実務経験を積む(※1,2と前後を問わない)
- 4.税理士名簿に登録する
試験に合格する、協会(税理士の場合は税理士会)に名簿登録をする、という点は公認会計士と変わりません。
しかし税理士資格取得のためには、
- ・受験資格を得る
- ・2年以上の実務経験を積む
という2つの要件が必要になります。
受験資格に関しては「2-2.受験資格」で詳しくお話していきますが、税理士の資格を取得するためには、まず受験資格が必要ということですね。
もう1つ必要となるのが2年以上の実務経験です。
- ・法人または事業を行う個人の会計に関する事務
- ・銀行・信託会社・保険会社などにおいて、資金の貸し付け・運用に関する事務
- ・税理士・弁護士・公認会計士など業務の補助事務
2年の実務経験を証明するためには「在籍証明書」が必須となります。
また一般事業会社で実務経験を積んだ場合には、在籍証明書の他に「職務概要説明書」の提出を求められます。
実務経験は試験に合格する前であっても認められます。
このことや税理士試験は「科目合格制」であることから、実務経験を積みながら試験合格を目指す方が多くなっています。
また、以下の資格を取得している方は無条件で税理士登録をすることができます。
- ・弁護士
- ・公認会計士
税理士として活躍するには、公認会計士試験の勉強だけでは補えない部分があります。
将来どのような分野、どのような職場で働きたいかも考え、どちらを学び資格を取得するかを考えた方が良いでしょう。
2-2.受験資格
税理士と公認会計士の受験資格は大きく異なります。
まず、公認会計士試験には受験資格はありません。
年齢や学歴など問わず、誰でも受験できます。
反対に、税理士試験の受験資格には細かい規定が設けられています。
受験資格には大きく分けると「学識による受験資格」「資格による受験資格」「職歴による受験資格」の3つがあり、うちどれかを満たしている必要があります。
- ・社会科学を1科目以上履修し、大学または短大を卒業する
- ・大学3年生以上で、社会科学を1科目以上含む62単位以上を取得する
- ・社会科学を1科目以上履修し、一定の専修学校の専門課程を修了する
- ・司法試験に合格する
- ・公認会計士試験の短答式試験に合格する(平成18年度以降の合格者に限る)
- ・日商簿記検定1級に合格する
- ・全経簿記検定上級に合格する(昭和58年度以降の合格者に限る)
- ・法人または事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事する
- ・銀行・信託会社・保険会社などにおいて、資金の貸し付け・運用に関する事務に2年以上従事する
- ・税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事する
公認会計士試験には受験資格がなく、税士試験には細かい受験資格の規定があるということが分かりましたね。
このように、公認会計士試験と税理士試験とでは受験資格に大きく違いがあります。
2-3.受験科目
公認会計士試験と税理士試験では、科目数や科目選択、制度や期限などが異なります。
上図のとおり公認会計士試験は短答・論文式試験を合わせて全9科目、税理士試験は会計科目・税法科目を合わせて全5科目に合格する必要があります。
それぞれ科目単位で合格を認定する「科目合格制」が設けられていますが、税理士試験は一度合格した科目については生涯を通して有効となるのに対し、公認会計士試験は2年間の期限付きとなっています。
2-3-1.公認会計士試験の受験科目
公認会計士試験は大きく分けて「短答式試験」と「論文式試験」があります。
短答式試験と論文式試験の受験科目はそれぞれ以下の表のようになっています。
短答式の試験科目 | 財務会計論、管理会計論、監査論、企業法 |
---|---|
論文式の試験科目 | 会計学(財務会計論、管理会計論)、監査論、企業法、租税法、 選択科目(経営学、経済学、民法、統計学から1科目)から1科目 |
公認会計士試験の内容は理論と計算に分かれており、計算が入る科目は以下のとおりです。
- ・会計学(財務会計論、管理会計論)
- ・租税法
- ・経営学(選択科目)
- ・経済学(選択科目)
- ・統計学(選択科目)
短答式試験はマークシート形式で、年に2回実施されており、この短答式試験に合格することで次の論文式試験(年に1回実施)を受験できます。
論文式試験が不合格だった場合でも、再受験の際2年間は短答式試験が免除されます。
論文試験には2年の期限付きで科目合格制が導入されています。
「論文式試験一部科目免除資格通知書」の交付を受けている科目は、次回の論文式試験で免除申請を行うことにより、免除されます。
2-3-2.税理士試験の受験科目
会計科目 | 必須(2科目) | 簿記論 財務諸表論 |
---|---|---|
税法科目 | 選択必須(1or2科目) | 所得税法 法人税法 |
選択(1or2科目) | 相続税法 国税徴収法 消費税法/酒税法 住民税/事業税 固定資産税 |
会計学に属する簿記論と財務諸表論は2科目とも必須となっています。
残りの3科目は税法に属する所得税法、法人税法、相続税法、消費税法または酒税法、国税徴収法、住民税または業税、固定資産税のなかから受験生が選択することができます。
ただし、所得税法と法人税法のうち1科目は必ず選択しなければなりません。
税理士試験にも公認会計士試験と同じく「科目合格制」が導入されていますが税理士試験の場合は期限がありません。
合格した科目は生涯有効となるため5科目一度に受験する必要はなく、1科目ずつ着実に受験を進めていくことができます。
以上で公認会計士試験と税理士試験の科目に関する違いをご説明してきました。
公認会計士試験は一般的に複数の科目を同時受験します。
そのため、学習範囲は「広く浅く」なっています。
また学習の範囲が広いため、一部科目の論文試験では「法令基準集(法律集)」が配布されるといった措置が取られています。
対して税理士試験は範囲が狭い代わりに、法律の暗記が必要となるなど学習の深度が深まるのです。
それでは、次はそれぞれ学習時間がどれくらい必要かについてお話していきましょう。
2-4.学習時間
公認会計士試験、税理士試験の学習に要する時間ですが、どちらもおおよそ2,000時間を超える学習時間が必要となります。
公認会計士試験が2,500~3,500時間、税理士試験が2,000~3,000時間と、やや公認会計士の方が学習時間をとる傾向にあります。
それぞれの総学習時間の内訳を見てみましょう。
2-4-1.公認会計士試験の学習時間
2,500~3,500時間程度の学習時間が必要といわれている公認会計士試験ですが、科目ごとの勉強時間の目安はどうなっているでしょうか。
以下表でまとめていますので、見ていきましょう。
【短答式科目の勉強時間の目安】
科目 | 勉強時間の目安 | |
---|---|---|
財務会計論 | 計算 | 650時間 |
理論 | 300時間 | |
管理会計論 | 400時間 | |
企業法 | 250時間 | |
審査論 | 200時間 |
【論文式必須4科目の勉強時間の目安】
科目 | 勉強時間の目安 | ||
---|---|---|---|
会計学 | 財務会計論 | 計算 | 100時間 |
論理 | 300時間 | ||
管理会計論 | 250時間 | ||
企業法 | 200時間 | ||
審査論 | 200時間 | ||
租税法 | 300時間 |
選択科目の学習時間の目安ですが、学習時間の総計のうち8.9%ほどが目安になります。
2-4-2.税理士試験の学習時間
2,000~3,000時間程度の学習時間が必要といわれている税理士試験ですが、科目ごとの勉強時間の目安はどうなっているでしょうか。
以下に表でまとめていますので、見ていきましょう。
【会計学に属する2科目(必須科目)の勉強時間の目安】
科目 | 勉強時間の目安 |
---|---|
簿記論 | 500時間 |
財務諸表論 | 500時間 |
【税法に属する9科目(3科目選択)の勉強時間の目安】
科目 | 勉強時間の目安 | |
---|---|---|
選択必須科目 | 所得税法 | 600時間 |
法人税法 | 600時間 | |
選択科目 | 相続税法 | 500時間 |
消費税法 | 300時間 | |
酒税法 | 150時間 | |
国税徴収法 | 200時間 | |
住民税 | 200時間 | |
事業税 | 200時間 | |
固定資産税 | 200時間 |
選択必須科目である所得税法、法人税法は学習に要する時間が長めになっています。
どちらも合格水準に達するまでに必要とされる勉強時間が長いため、短期合格を狙う方は片方だけを選択するのが定石となっています。
科目ごとに結び付きやすい実務や目指す働き方に有益になる科目もあるので、ご自身に必要な知識を得られる科目かどうかも考えながら選択したいですね。
詳しくはこちらの記事でご紹介していますので、ご参考ください。
ここまで公認会計士と税理士について、資格の取り方の違いとして、
- ・資格取得の流れ
- ・受験資格
- ・受験科目
- ・学習時間
についてお話してきました。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
資格取得の流れ | 1.公認会計士試験に合格する 2.2年以上実務経験を積む(※1と前後を問わない) 3.3年間の実務補習を受ける(※短縮の場合あり。2と並行しても可) 4.修了考査に合格する 5.日本公認会計士協会に名簿登録をする |
1.受験資格を得る 2.税理士試験に合格する 3.2年以上の実務経験を積む(※1,2と前後を問わない) 4.税理士名簿に登録する |
受験資格 | 無し | 細かい規定有り |
受験科目 | 短答式試験4科目に合格した後、論文式試験5科目(内1科目は選択科目) | 11科目の中から5科目を選択 |
学習時間 | 2,500~3,500時間 | 2,000~3,000時間 |
公認会計士と税理士は双方とも会計の専門家ですが、資格の取り方にもこのような違いがあります。
3.受験者や合格率の違い
受験をするのであればやはり合格率がどのくらいなのか知りたいですよね。
またご自身の年齢や状況(就学中・在職中など)と、受験者全体の年齢層や就学、就職状況を見て、公認会計士と税理士とどちらかを決めたいという方もいらっしゃるでしょう。
ここでは、
- ・受験者数と合格率
- ・年齢別合格者
- ・学歴別合格者
の3点についてお話していきます。
3-1.受験者数と合格率
まずそれぞれの試験の合格基準は以下のとおりとなっています。
- ・短答式試験……総点数の70%を基準とし、公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率とする。(満点の40%に満たない科目がある場合、不合格となることがある。)
- ・論文式試験……総点数の60%を基準とし、公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率とする。(満点の40%に満たない科目がある場合、不合格となることがある。)
- ・論文式試験の科目合格基準……総点数の60%を基準とし、公認会計士・監査審査会が相当と認めた得点比率以上を得た場合、科目合格が認められる。(2年間再試験の際に該当科目が免除となる。)
- 全科目満点の60%を基準とする。
この基準を満たし合格となる確率はどれくらいなのでしょうか。
公認会計士、税理士、それぞれを見ていきましょう。
3-1-1.公認会計士試験の合格率
【2020年度公認会計士試験の合格率】
願書出願者(a) | 13,231 人 |
---|---|
短答式試験受験者数 | 11,598 人 |
短答式試験合格者数 | 1,861 人 |
論文式試験受験者数 | 3,719 人 |
最終合格者数(b) | 1,335 人 |
合格率(b/a) | 10.1% |
公認会計士試験の総合的な合格率は、近年では10%程度となっています。
公認会計士試験には一次試験である「短答式試験」と、二次試験である「論文式試験」があります。
短答式試験の合格率は20~25%、論文式試験は35~40%となっており、こうして見るとより具体的にイメージがしやすいでしょう。
3-1-2.税理士試験の合格率
【2020年度税理士試験の合格率】
受験者数 | 26,673 |
---|---|
一部科目受験者数 | 4,754 |
官報合格者数 | 648 |
合格者合計 | 5,402 |
合格率 | 20.3% |
税理士試験の合格率は、近年では15~20%となっています。
受験者のうち、官報合格者は毎年2~3%程度となっています。
つまり毎年税理士の資格を得られているのは受験者のうちの2~3%ということですね。
また税理士試験は科目ごとに合格を認定する「科目合格制」ですので、科目ごとの合格率というのも気になりますよね。
以下、2020年度の科目別合格率を表にまとめました。
【2020年度税理士試験科目別合格率】
科目 | 合格率 | |
---|---|---|
必須科目 | 簿記論 | 22.6% |
財務諸表論 | 19.0% | |
選択必須科目 | 所得税法 | 12.0% |
法人税法 | 16.1% | |
選択科目 | 相続税法 | 10.6% |
消費税法 | 12.5% | |
酒税法 | 13.9% | |
国税徴収徴収法 | 12.2% | |
住民税 | 18.1% | |
事業税 | 13.1% | |
固定資産税 | 13.5% |
次は受験者を年齢別で見ていきましょう。
3-2.年齢別受験者
どのような年齢層の受験者が多いのか、ご自身の年齢と近い受験者がどのくらいいるのか、というのは受験を考えている方にとっては気になりますよね。
また受験者の年齢層を知ることにより、公認会計士試験、税理士試験それぞれの特徴も見えてきます。
【公認会計士試験・税理士試験の年齢別受験者の割合】
受験者の年齢 | 公認会計士 | 税理士 |
---|---|---|
25歳以下 | 42.0% | 12.4% |
26~30歳 | 21.2% | 14.8% |
31~35歳 | 13.9% | 18.0% |
36~40歳 | 9.3% | 16.8% |
41歳以上 | 13.5% | 38.0% |
公認会計士はおおよそ年齢が低いほど受験者の割合が大きく、税理士はおおよそ年齢が高いほど受験者の割合が大きくなっていることが分かりますね。
まず、公認会計士試験は一般的に全科目を一度に受験します。
科目合格制度はありますが2年間という期限付きなので、税理士試験のように1科目ずつ試験を受けていくというわけにはいきません。
つまり、受験勉強のためにまとまった時間が必要になります。
ここから、比較的まとまった時間の取りやすい学生の受験者が多くなるということです。
次に税理士試験ですが、1科目ずつ合格が認められる科目合格制度があり、一度合格した科目は生涯有効となります。
つまり5科目合格までに何年かかっても良いのです。
そして税理士登録をするために2年以上の実務経験が必要なことから、税理士事務所などで実務経験を積みながら官報合格を目指す方が多くなるのです。
試験の特徴の違いから、受験者・合格者の年齢に違いが出るのですね。
3-3.学歴別合格者
「大学に行っていないけれど、公認会計士や税理士の資格はとれるのかな?」
「大学在学中に資格を取りたいけれど、今までどれくらいの人が在学中に合格できたのだろう?」
このように、ご自身と同じ学歴を持つ方がどのような割合で合格しているのかも知りたいですよね。
公認会計士、税理士試験の合格者を学歴別で見てみましょう。
3-3-1.公認会計士試験の学歴別合格者
公認会計士試験の学歴別合格者割合を以下表にまとめてみました。
【令和元年公認会計士試験合格者の学歴別割合】
学歴 | 合格者(人) | 構成比 |
---|---|---|
大学院終了 | 56 | 4.2% |
会計専門職 大学院終了 |
64 | 4.8% |
大学院在学 | 12 | 0.9% |
会計専門職 大学院在学 |
14 | 1.0% |
大学卒業 (短大含む) |
552 | 41.3% |
大学在学 (短大含む) |
530 | 39.6% |
高校卒業 | 85 | 6.4% |
その他 | 24 | 1.8% |
グラフにするとこのようになります。
大多数を占めるのが「大学卒」「大学在学中」で、それぞれが41%、40%となっていますね。
高校卒業の割合が6%、その他が2%となっており、合わせると約1割です。
合格者の10人にひとりが大学進学をしていないと考えると、少なくはない割合です。
3-3-2.税理士試験の学歴別合格者
税理士試験の学歴別合格者割合を以下表にまとめてみました。
【平成30年税理士試験合格者の学歴別割合】
学歴 | 合格者数(人) | 構成比 |
---|---|---|
大学卒 | 535 | 79.6% |
大学在学中 | 1 | 0.1% |
短大・旧専卒 | 16 | 2.4% |
専門学校卒 | 66 | 9.8% |
高校・旧中卒 | 46 | 6.8% |
その他 | 8 | 1.2% |
グラフにすると以下のようになります。
公認会計士試験と比べると、大学在学中に資格を取得する割合が大幅に減っているところに税理士試験の特徴が出ています。
税理士試験の受験資格には以下の項目が含まれています。
- ・社会科学を1科目以上履修し、大学または短大を卒業する
- ・大学3年生以上で、社会科学を1科目以上含む62単位以上を取得する
- ・社会科学を1科目以上履修し、一定の専修学校の専門課程を修了する
他の方法で受験資格を得ることもできますが、税理士試験は官報合格までに長い期間を要するため、基本的に大学在学中に合格するということは難しくなります。
高校卒と専門学校卒を合わせると合計で16.6%になります。
公認会計士以上に高い割合なので、こちらも大学を卒業しなくても目指せる資格といえます。
ここまで受験者や合格率の違いについて、受験者数と合格率、年齢、学歴についてお話してきました。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
合格率 | 短答式試験の合格率……20~25% 論文式試験の合格率……35~40% |
15~20% |
年齢層 | 25歳以下の受験者が多く、比較的学生の受験者も多い。 | 社会人の受験者が多い |
学歴 | 大学卒、大学在学中が多数 | 大学卒が多数。在学中の合格者は稀。 |
公認会計士試験、税理士試験それぞれに違いがあるので、ご自身が受験なさる際には参考にしてみてくださいね。
次章からは就職先や年収など、資格取得後の働き方についてお話していきます。
4.就職先と年収の違い
公認会計士や税理士の資格を取る前に、それぞれがどのような場で活躍しているか知っておきたいですよね。
また、就職を考えるなら年収は気になるところです。
公認会計士、税理士共に年収は働き方(就職先など)によります。
ここでは公認会計士と税理士にはどのような就職先があるか、その場合年収はどれくらいになるのかをお話ししていきます。
4-1.公認会計士
公認会計士の多くは「監査法人」に就職します。
監査法人の組織規模は大小あり、通称ではありますが大手監査法人、準大手監査法人、中小監査法人と分けられています。
公認会計士の活躍できる場は監査法人に留まりませんが、資格取得後の実務をこなすためにも、まずは監査法人に就職し監査業務に携わるという方が9割です。
【監査法人で働く場合の年収(大手監査法人)】
役職 | 給与 |
---|---|
スタッフ | 450万円~600万円程度 (残業や業績賞与込みの場合500万円~700万円程度) |
シニアスタッフ | 650万円~800万円程度 (残業や業績賞与込みの場合750万円~1,000万円程度) |
マネージャー | 800万円~1200万円程度(残業なしで業績賞与別途有り) |
シニアマネージャー | 1,100万円~1,400万円程度 (残業なしで業績賞与別途有り) |
パートナー | 1,500万円以上 |
上記の表はあくまでも大手監査法人の目安ですので、準大手、中小監査法人ではこれよりもやや下がると考えてください。
・新日本有限責任監査法人
・有限責任監査法人トーマツ
・有限責任あずさ監査法人
・あらた監査法人
の4法人が該当します。
公認会計士は約36,000名おり、そのうち約15,000名が4大監査法人に在籍しています。
この数字を見ると、大手法人に勤めることはそう無理なことではありませんよね。
監査法人以外では、主に以下のような就職先、働き方が考えられます。
- ・一般企業(組織内会計士)
- ・コンサルティング会社
- ・会計事務所
一般企業で会計士として勤務する場合は、その勤務する企業や採用される部署やポジションによって給与は変わるため一概に年収がいくらとはいえません。
コンサルティング会社の平均年収は他業界よりも高いとされており600万円前後といわれていますが、これは監査法人で働く場合の初期の年収と同程度となります。
また会計事務所の場合ですと、平均年収は正社員で473万円というデータが出ています。
監査法人の年収だけを見れば高い、良い、といえますが、実は福利厚生が中小企業並みであることがほとんどです。
また退職金も少ないケースが多く、このようなことを踏まえると大手企業の方が待遇が良いということも考えられます。
また、個人で会計事務所を開くという選択肢もありますし、コンサルタントとして独立することなども可能です。
その場合の年収はまちまちとなりますが、ご自身に合った働き方ができますね。
4-2.税理士
税理士の働き方は主に以下の4種類です。
- ・開業税理士……自身で税理士事務所を開業する
- ・社員税理士……税理士法人で働く
- ・所属税理士……税理士事務所や税理士事務所に雇用され働く
- ・企業内税理士……一般企業の社員として働く
4-2-1.開業税理士
開業税理士は、独立し自分の税理士事務所を持つ税理士のことです。
自身が所長となって税理士業務に当たります。
公認会計士に比べ、税理士は独立を目指す人が多いのが特徴です。
年収は実力によって大きく変動し、500万円未満~3億円以上となっています。
【開業税理士の年収の割合】
年収 | 割合 |
---|---|
3憶円以上 | 0.1% |
2憶円以上 | 0.4% |
1憶円以上 | 3% |
7,000万円以上 | 5% |
5,000万円以上 | 6% |
4,000万円以上 | 6% |
3,000万円以上 | 8% |
2,000万円以上 | 12% |
1,000万円以上 | 17% |
500万円以上 | 14% |
500万円未満 | 26% |
500万円未満が26%と一番多くなっています。
しかし実力次第で高収入を目指せるということが、多くの税理士が開業税理士を目指す理由となっています。
次は所属税理士についてお話ししていきます。
4-2-2. 社員税理士
社員税理士は税理士法人の役員として働きます。
国税庁では、
・税理士法人制度は、納税者利便の向上に資する等の観点から設けられたものです。
・税理士法人は、社員を税理士に限定した、商法上の合名会社に準ずる特別法人です。
とされています。
個人事務所に対し税理士法人は「会社」のような形態をとっており、個人ではなく組織で顧客対応を行います。
個人事務所のように代表が個人事業主になるのではなく、税理士法人は共同経営という形になっています。
また「社員」と付いていますが、後にご紹介する所属税理士と違い「役員」の位置づけとなっています。
社員税理士の年収の割合ですが、内訳は以下の表のようになっています。
【社員税理士の年収の割合】
年収 | 割合 |
---|---|
1憶円以下 | 0.10% |
5,000万円以下 | 0.29% |
3,000万円以下 | 1.67% |
2,000万円以下 | 6.57% |
1,500万円以下 | 21.18% |
1,000万円以下 | 27.06% |
700万円以下 | 20.20% |
500万円以下 | 16.76% |
無記入 | 6.18% |
大手税理士法人であれば初任給で500万円前後を望めますし、そのままキャリアを重ねていけば1,000万円~1,500万円程度となることも十分にあります。
・PwC税理士法人
・デロイト トーマツ税理士法人
・KPMG税理士法人
・EY税理士法人
以上が最大手の税理士法人といわれています。
また、公認会計士が設立した税理士法人は比較的給与水準が高くなるとされています。
これは公認会計士の給与水準に引っ張られることで、勤務する社員税理士の給与引き上げられているからです。
公認会計士が設立した税理士法人は大規模なクライアントが多いのが特徴です。
大規模なクライアントになると1件当たりの単価が税務にしては高くなり、これも給与が高水準となる理由です。
それでは次に「所属税理士」について見ていきましょう。
4-2-3.所属税理士
所属税理士は個人の税理士事務所や税理士法人、会計事務所などで雇われている税理士のことをいいます。
同じ税理士法人働いていても「役員」である社員税理士とは違い、所属税理士に役職はありません。
主に勤務先の事務所、法人が受注した仕事を行います。
直接クライアントから仕事を受注することも可能ですが、その際には都度勤務先のトップの承諾を書面で得ることが必要になるといった縛りがあります。
【社員税理士の年収の割合】
年収 | 割合 |
---|---|
5,000万円超 | 0.02% |
5,000万円以下 | 0.02% |
3,000万円以下 | 0.57% |
2,000万円以下 | 0.78% |
1,500万円以下 | 6.00% |
1,000万円以下 | 18.81% |
700万円以下 | 31.69% |
500万円以下 | 28.09% |
300万円以下 | 12.03% |
無記入 | 1.98% |
役職がつかないため、どうしても年収は社員税理士を下回ります。
所属税理士としてキャリアを積んでから独立し開業するというコースが一般的なので、独立までの修業の場ともいえます。
また、より高水準の年収を狙うのであれば、規模の大きい事務所に勤務しキャリアアップを目指しましょう。
4-2-4.企業内税理士
企業内税理士とは一般企業の従業員として働く税理士のことで、これまで紹介してきた「開業税理士」「社員税理士」「所属税理士の」3つとは異なる少し特殊な働き方をしています。
税理士登録をする際には、開業税理士、所属税理士、社員税理士の3つのうちどれかで登録することになり、「企業内税理士」という登録はありません。
多くの場合、企業内税理士は自宅などを事務所とし、開業税理士として登録します。
「企業内税理士は正式名称ではなく俗称で、他に「社内税理士」とも呼ばれます。開業税理士、所属税理士、社員税理士とは違い、ワークスタイルを指す言葉なのです。」
企業税理士はその資格を活かして経理業務や経理の中での税務担当、社内の税務アドバイザー職に就くことが多いです。
年収は勤務先の企業に準ずるため、一概にいくらとはいえません。
税理士資格保有者を評価する人事制度があれば給与のアップを期待できますが、一般企業にそのような特別手当があることは多くありません。
但し就職・転職市場において税理士資格を持っている人は少なく、一般企業からの需要が高いものです。
売り手市場となるため、希望する企業や好条件の企業に採用される確率が高くなるといえます。
また一般企業に勤めた方が福利厚生が整っているという場合もあります。
以下に開業税理士、社員税理士、所属税理士、企業内税理士の年収と特徴をまとめました。
働き方 | 年収 | 特徴 |
---|---|---|
開業税理士 | 500万円未満~3億円以上 | 年収は実力によって大きく変動。実力があれば高い年収を目指せる。 |
社員税理士 | 平均年収888万円 | 大規模なクライアントを抱える法人ほど年収の水準が上がる。 |
所属税理士 | 300万円以下~5,000万円 | 役職がつかないため年収は社員税理士を下回る。 規模が大きい事務所でキャリアアップを図れば高い水準の年収を狙える。 |
企業内税理士 | 勤務先の企業に準ずる | 売り手市場のため好条件の企業や希望の企業を狙いやすい。 会計、税理士事務所(または法人)よりも福利厚生が整った企業を選べる。 |
公認会計士と税理士の働き方や年収の違いもまとめてみましょう。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
働き方 | 公認会計士試験合格者の9割が監査法人に就職する。 | ・開業税理士 ・社員税理士 ・所属税理士 のうちどれかで税理士登録をし、働く。 また企業内税理士として一般企業の社員として働くという選択もある。 |
平均年収 | 992万円 | 636.5万円 |
特徴 | 給与の水準が高い大手監査法人に勤める割合は公認会計士のうち4割。そのため年収1000万円超を目指すことは難しくない。 | ・独立開業を目指す税理士が多い ・年収の開きが大きく、実力があれば高収入を狙える |
次章は試験勉強の方法についてお話していきます。
5.試験勉強は独学?予備校?
1~4章の中で公認会計士と税理士の違いについてお話してきました。
そこで公認会計士、また税理士試験を受けようと思った方もいらっしゃるでしょう。
試験を受けるとなると、試験勉強が必要になります。
しかし、どうやって試験勉強をしたら良いかわからない、と悩んでしまいますよね。
試験勉強には「独学で学ぶ」方法と「予備校に通う」方法があります。
ここでは「独学」と「予備校」どちらが良いのかをお話しした上で、おすすめの予備校の紹介をしていきます。
5-1.独学より予備校がおすすめ
「まずは気軽に独学ではじめてみようかな」
という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、独学よりも予備校で試験勉強をすることをおすすめします。
独学で試験勉強を行うデメリットは、以下の二点が挙げられます。
- 1.モチベーションの維持が難しい
- 2.独学用の教材が乏しい
始めはモチベーションを高く持てていたとしても、学習スケジュールを全てご自身で組まなくてはならない独学ではいずれ不安が生じてくるものです。
勉強の仕方が合っているのかもわからないまま試験勉強を続けるのは辛いですよね。
そういった不安を抱えてしまうと、心身ともに大きな負担となり段々とモチベーションが下がってしまいます。
また独学用の教材が乏しいということが非常に大きなデメリットとなっています。
実は公認会計士試験、税理士試験のための教材というのはそれほど充実していません。
教材が不足している状態で合格圏内まで実力を高めるのは難しいといえます。
経済面や時間の都合で予備校に通えない、という方は「スタディング」というオンライン講座を受講してみることをおすすめします。
ビデオ講座と音声講座が豊富に用意されており、予備校に通わなくてもしっかりとした対策を行うことができます。
トレーニング、実力テストなどアウトプット用の教材も充実しているため、学んだ知識の定着も図れます。
5-2.公認会計士、税理士試験対策でおすすめの予備校5選
予備校に通おうとしても、このように悩んでしまう方もいらっしゃいますよね。
ここからは公認会計士、税理士試験対策におすすめの予備校を厳選してご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
5-2-1.おすすめ1 資格の大原
「資格の大原」は知名度もあり、高い合格率を誇ります。
2019年度の税理士試験では、合格者のうち57.9%が大原の受講生という業績を出しています。
また、同年の公認会計士試験でも合格者のうち26%は大原の受講生であり、これも高い数字といえ、資格の大原の授業の充実ぶりが伺えます。
資格の大原は幅広い層を対象としており、「社会人講座」「専門学校」「集中資格取得コース(全日・夜間)」など様々なコースを用意しています。
また北海道から沖縄まで全国各地に校舎があるため、地方にお住まいの方も通うことができますね。
受講料は比較的高めに設定されていますが、信頼のおける予備校の一つであるといえるでしょう。
5-2-2.おすすめ2 TAC
TACは資格の大原に次ぐ実績を持つ大手の予備校で、資格の大原と並ぶ人気を持っています。
TACは社会人と大学2、3年生用の初学者向けと受験経験者向けの2つのレベルの講座を用意しており、それぞれに通学講座と通信講座が用意されています。
通学講座への通信講座への変更も可能で、ライフスタイル合わせた選び方をしやすい予備校といえるでしょう。
5-2-3.おすすめ3 LEC
LECはリーズナブルな価格で受講したい方におすすめです。
基本の受講料も安価ですが、さらに各種割引も充実しています。
他社からLECの講座に移った場合に20%の割引がある、所定の資格を取得している方は20%の割引があるなど、さまざまな割引があるので一度チェックしてみましょう。
校舎は全国に2校で、通信制を基本としています。
「経済面、時間などの面で予備校に通うことはできないけれど独学は難しい」
という方にもおすすめしたい予備校です。
5-2-4.おすすめ4 東京CPA会計学院
東京CPA会計学院では、高卒者や高認試験合格者を対象とした講座を用意しています。
この特色のためか、東京CPA会計学院では最年少合格者を含む短期合格者を多数輩出していることを強みとしています。
大学を卒業していない方でも安心して合格を目指すことができる予備校ともいえますね。
もちろん社会人・大学生向けの講座も用意されています。
それぞれに通学講座と通信講座があり自分で選択することができるので、通学が難しい方にもおすすめできる予備校の一つです。
5-2-5.おすすめ5 クレアール
クレアールは短期合格を目指す「非常識合格法」という学習方法を採用しています。
「非常識合格法」とは、学習範囲を極限まで絞り最小限の学習で合格を可能にする勉強法のことです。
特待生になれば受講料が割り引かれるのが嬉しいポイントです。
なかなか勉強時間が取れない方、短期合格を目指す方におすすめです。
6.まとめ
公認会計士と税理士は混同されがちな職業ですが、大きな違いがあるということをそれぞれの業務、資格試験、資格試験の合格率、年収や働き方で見てきました。
- ・公認会計士は「監査」、税理士は「税務」というそれぞれの独占業務を持つ
- ・公認会計士のメインクライアントは「大企業」、税理士は「中小企業」
- ・公認会計士はクライアントとに対して「中立」の対場をとるが、税理士はクライアントの「ビジネスパートナー」である
このように業務も異なればクライアントも、クライアントとの関係も異なるものでした。
資格試験に関しては、以下のような違いが見られました。
- ・公認会計士試験に受験資格はなく、税理士試験は細かい規定がある
- ・公認会計士試験は一般的に短答式、論文式試験それぞれ全科目を一度に受験するが、税理士試験は1科目ずつ合格を目指す
- ・公認会計士試験の科目合格制度は2年の期限付きだが、公認会計士は期限が無く一度合格した科目は生涯有効
- ・公認会計士試験の学習時間の目安は2,500~3,500時間、税理士試験は2,000~3,000時間
公認会計士試験は短期集中、税理士試験は長期間に渡るというように、試験への取り組み方も大きく違いましたね。
その試験の合格率や年齢層、学歴は以下の表のようになっていました。
公認会計士 | 税理士 | |
---|---|---|
合格率 | 短答式試験の合格率……20~25% 論文式試験の合格率……35~40% |
15~20% |
年齢層 | 25歳以下の受験者が多く、比較的学生の受験者も多い。 | 社会人の受験者が多い |
学歴 | 大学卒、大学在学中が多数 | 大学卒が多数。在学中の合格者は稀。 |
「公認会計士試験は短期、税理士試験は長期」という特徴から、公認会計士試験は比較的若年層の受験者や合格者が多く、税理士試験は社会人の比率が多くなっていましたね。
年収、働き方も異なるものでした。
- ・公認会計士の9割は「監査法人」に就職するのに対し、税理士は「開業税理士」、「社員税理士」、「所属税理士」、そして正式な登録名称ではないが「企業内税理士」として働くという主に4つの選択肢がある
- ・平均年収は公認会計士の方が300万円程高い
- ・税理士は公認会計士に比べ独立開業を目指す場合が多いため年収の開きが大きい。実力次第で高収入を狙える
公認会計士の多くは安定して働く、税理士の多くは開業を目指すという大きな違いが見られました。
このように、公認会計士と税理士は全く異なる職業といえます。