「税理士試験を受けるためにはどんな準備が必要なのかな?」
「税理士試験って難しいって聞くけど、どうやって勉強すればいいんだろう」
税理士試験は受験資格を満たしていなければ受けられなかったり、合格率が低かったりと難易度の高い試験として知られています。
そのため受験前には入念な準備が必要となります。
せっかく受けるなら、税理士試験の特性を理解した上で万全の対策を講じ、着実に合格を目指したいですよね。
そこで今回は税理士試験の特徴やおすすめの予備校などを詳しく解説していきます。
1.税理士試験とは?
税理士試験の受験は、税理士資格を取得するための方法の一つです。
しかし、税理士試験は誰にでも受けられる試験ではありません。
税理士を受けるためには受験資格を満たす必要があります。
また、税理士試験は自分で受験科目を選ぶことも大きな特徴です。
1-1.受験資格が設定されている
税理士試験は受験資格を満たしている人だけが受けられる試験です。
受験資格には大きく分けると「学識による受験資格」「資格による受験資格」「職歴による受験資格」の3つがあります。
ここからはそれぞれの受験資格について詳しく確認していきましょう。
1-1-1.学識による受験資格
社会科学に属する科目を1つ以上履修したうえで大学や短大を卒業した方は税理士試験を受験することができます。
社会科学に属する科目を1つ以上履修したうえで62単位以上を取得していれば、在学中でも税理士試験は受験可能です。
学識による受験資格の詳細は以下のとおりとなります。
- ・社会科学を1科目以上履修し、大学または短大を卒業する
- ・大学3年生以上で、社会科学を1科目以上含む62単位以上を取得する
- ・社会科学を1科目以上履修し、一定の専修学校の専門課程を修了する
- ・司法試験に合格する
- ・公認会計士試験の短答式試験に合格する(平成18年度以降の合格者に限る)
司法試験や公認会計士の短答式試験へ合格している方も税理士試験を受けることができます。
1-1-2.資格による受験資格
「大学で社会科学を勉強してこなかったんだけど、自分は税理士試験を受けられないのかな?」
と疑問に思った方もいらっしゃるでしょう。
学識による受験資格を満たすことができなくても、「日商簿記検定1級」または「全経簿記検定上級」に合格していれば税理士試験を受験できます。
- ・日商簿記検定1級に合格する
- ・全経簿記検定上級に合格する(昭和58年度以降の合格者に限る)
日商簿記検定、全経簿記検定上級はどちらも簡単な試験ではありません。
日商簿記検定1級の合格率は毎年10%程度、全経簿記検定上級の合格率は20%前後で推移しています。
資格による受験資格を得るのは諦めようかな……と不安になってしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、日商簿記検定や全経簿記検定上級で出題されるのは税理士試験において基礎となる内容です。
そのため、これらの検定の勉強をすれば税理士試験を受けるために必要となる土台の知識が身につくでしょう。
1-1-3.職歴による受験資格
ここまで「学識」「資格」による受験資格を紹介してきましたが、特定の職務を経験して受験資格を得ることも可能です。
例えば税理士事務所などで2年以上の実務経験を積んだ方が対象となります。
職歴による受験資格の詳細は以下のとおりです。
- ・法人または事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事する
- ・銀行・信託会社・保険会社などにおいて、資金の貸し付け・運用に関する事務に2年以上従事する
- ・税理士・弁護士・公認会計士などの業務の補助事務に2年以上従事する
電卓を使った単純な作業などは受験資格として認められないことに注意が必要です。
あくまでも資金調達・運用や会計に関する業務の経験が求められるのですね。
職歴による受験資格を満たすことができれば、税理士資格を得るために必要な「通算2年以上の実務経験」もクリアできます。
そのため、試験に合格した後スムーズに税理士資格を得ることができるでしょう。
1-2.受験科目の一部を自分で選択する
税理士試験は全11科目のうち5科目にパスして初めて合格とみなされる科目合格制の試験です。
税理士試験では「会計科目」と「税法科目」の合計11科目が出題されます。
そのなかから受験科目を一部自分で選択するのです。
5科目のうち、会計学に属する簿記論と財務諸表論の2科目は必須科目のため必ず受験します。
残りの3科目が税法に属する9科目のなかから受験者自身が選びます。
ただし所得税法と法人税法は選択必須科目のため、どちらか1科目は必ず受けなければいけません。
残りの2科目(選択必須科目を両方選択した場合は1科目)を相続税法、国税徴収法、消費税法、酒税法、住民税、事業税、固定資産税のなかから選択します。
1-3.合格者が少なく難易度が高い
税理士試験の受験を検討していて情報収集をしていると、「税理士試験は難しい」という話を見聞きする機会も多いのではないでしょうか。
確かに税理士試験は難関であるとよくいわれます。
「実際どれくらいの人が合格しているんだろう?」
というのが気になるところですよね。
そこで、国税庁が発表している平成28年度~令和2年度の税理士件の受験者数と合格者数のデータを確認してみましょう。
令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | |
---|---|---|---|---|---|
受験者数(人) | 26,663 | 29,779 | 30,850 | 32,974 | 35,589 |
合格者数(人) | 5,402 | 5,338 | 4,716 | 6,634 | 5,638 |
合格率(%) | 20.3 | 18.1 | 15.3 | 20.1 | 15.8 |
年度によってばらつきはありますが、合格者数は全体の15~20%程度です。
難関といわれるだけあって、決して高いとはいえない合格率になっていますね。
計画的に対策をしなければ合格することは難しいといえるでしょう。
2.合格までの4ステップ!税理士試験の流れを解説
ここからは税理士試験を受験して合格するまでの流れをご説明します。
合格までの流れは大まかに以下の4ステップに分けられます。
ステップ1 受験科目を選択
税理士試験では会計科目に属する2科目が必須であるのに対し、税法科目に属する3科目は受験者が自分で選択します。
科目選びは税理士試験に挑戦するうえで非常に重要なポイントです。
科目の難易度によって合格しやすさが異なるだけではありません。
全部で9つの税法科目のなかからどの3科目を選ぶかが合格後のキャリアに大きく影響します。
例えば、「所得税法」に合格していれば個人事業主や中小企業の経営者の確定申告を代理で行う税理士事務所などで高く評価されます。
科目選びのコツについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
税理士試験では合格した科目は一生有効です。
そのため、ほとんどの受験生は数年単位で試験のスケジュールを立てています。
1年で複数の科目を受験する場合はその組み合わせや、試験を受ける科目の順番も戦略的に決めたいですね。
ステップ2 選択した科目を勉強
税理士試験に合格するために必要な勉強時間の目安は4,000時間といわれています。
根気強さと集中力に加え、いかに効率的な勉強法を実践するかが合格の鍵となるでしょう。
税理士試験の勉強方法には主に以下の3種類があります。
- 勉強方法1 独学
- 勉強方法2 予備校に通う
- 勉強方法3 オンライン講座
このなかで最も経済的な負担が少ない方法が「独学」です。
予備校の受講料が数十万円かかるのに対し、独学なら参考書を揃えるための費用のみで済ませることができます。
しかし、独学用の参考書が充実していないこと、モチベーションの維持が困難であることから独学はあまりおすすめできません。
予備校は高額な受講料がかかるのがデメリットですが、それを上回るメリットがあります。
数多くの合格者を輩出してきた予備校には長年にわたって蓄積されたノウハウがあります。
また、初学者にも理解しやすい良質な教材を提供してもらえるのも大きな魅力です。
おすすめの予備校は後ほど詳しくご紹介します。
「スタディング税理士講座」は完全オンライン講座です。
簿記論と財務諸表論の2科目の対策が54,980円という破格の値段で提供されています。
教室に通う必要がないため、仕事や家事が忙しい方でもこつこつと学習を進められる点が強みです。
スマホやタブレットを使ってビデオ講座を視聴したり、問題演習に取り組んだりすれば少しの空き時間も活用することができますね。
ステップ3 税理士試験に申し込む
自分が受験資格を持っていることを確認した上で、税理士試験に申し込みましょう。
最初に各地の国税局(沖縄の場合は国税事務所)へ行き、受験案内や受験願書を入手する必要があります。
直接取りに行けない場合は郵送してもらうこともできますよ。
申し込み書類は受験地を管轄する国税局(国税事務所)に郵送します。
直接持参しても受け付けてもらえないため気を付けましょう。
申し込みの際に必要な書類は以下の4点です。
- ・税理士試験受験願書
- ・税理士試験受験申込書
- ・受験票及び写真票
- ・受験資格を有することを証する書面
申し込み期間は5月半ばの2週間弱と短いため、忘れないように気を付けたいですね。
詳しい申し込みの方法は国税庁のサイトを確認してください。
ステップ4 選択した5科目に合格
会計学に属する2科目、税法に属する3科目の合計5科目に受かると晴れて税理士試験に合格となります。
ただし、税理士試験に合格してもただちに税理士資格を取得できるわけではありません。
「職歴による受験資格」を満たして税理士試験に臨んだ方以外は通算2年以上の実務経験が必要です。
3.税理士試験対策におすすめの予備校を紹介!
「予備校に通いたいけど、どこがいいのか分からない……」
とお悩みの方もいらっしゃるでしょう。
予備校を選ぶ際は自分のライフスタイルや何年で合格を目指すのか、予算などを考えましょう。
ここではおすすめの予備校を4つご紹介します。
予備校名 | 特徴 |
---|---|
資格の大原 | 合格者に占める割合が57.5%(2020年度税理士試験) |
TAC | 初学者向けコースと上級者向けコースを用意している |
東京CPA会計学院 | 最年少合格者を含む短期合格者を輩出 |
LEC | 税理士予備校のなかではリーズナブルな価格設定 |
おすすめ1 資格の大原
「資格の大原」は突き抜けた合格者数を誇ります。
2020年度の税理士試験では資格の大原の受講生が税理士試験の合格者に占める割合はなんと57.5%でした。
社会人、フリーター、主婦など幅広い層を対象とした「社会人講座」のほか、高卒生や大学生がメインの「専門学校」もあります。
社会人学校は全国に47校、専門学校は41校あるため地方にお住まいの方も通学できます。
他にも大学生や社会人が対象の「集中資格取得コース(全日・夜間)」もあります。
ライフスタイルや合格目標時期に合わせて選択できるのがうれしいポイントですね。
合格者数だけではなく、公認会計士・税理士の就職率が99.2%と合格後のサポートも申し分ありません。
おすすめ2 TAC
「TAC」は資格の大原に次ぐ実績を持つ大手税理士予備校です。
社会人と大学2・3年生の初学者に向けたコースのほか、受験経験者に向けた上級コースも用意されています。
提携校を含め全国に33校展開しているため、首都圏にお住まいでない方も通いやすいですね。
それぞれのコースで通学と通信講座の2通り用意されているため、校舎が近くにない方でも安心です。
おすすめ3 東京CPA会計学院
「東京CPA会計学院」は高卒の方、高卒認定試験を合格された方向けの「教育コース(会計プロフェッション科)税理士コース」を用意しているのが大きな特徴です。
短期合格のためのカリキュラムも完備しており、東京CPA会計学院は継続的に最年少合格者を含む短期合格者を輩出しています。
もちろん社会人や大学生を対象とした通学講座・通信講座もあります。
おすすめ4 LEC
LECは基本的に通信制の税理士予備校です。
初学者向けのコースと学習経験者向けのコースが用意されています。
税理士予備校のなかではリーズナブルな価格設定である点が強みです。
全90回の「簿財速習横断コース」がWebでは税込145,200円、DVDでは税込196,900円で提供されています。
4.まとめ
税理士試験を受験するには学識、資格、職歴のいずれかの受験資格を満たしている必要があります。
科目合格制をとっており、合計5科目に受かって初めて税理士試験に合格したことになります。
5科目のうち会計学に属する2科目は必須、税法に属する3科目は9科目のなかから受験者が自分で選びます。
合格のしやすさと合格後に目指すキャリアの兼ね合いを考えながら試験科目を選択したいですね。
税理士試験の科目ごとの合格率は10~20%、税理士試験全体の合格率は15~20%と難関です。
しかし、自分に合った受験プランを立て、効率的な勉強法を実践できれば合格の可能性は高まります。
長年にわたって培われた受験のノウハウや、洗練された教材が学習の助けとなってくれるはずですよ。
- ・資格の大原
- ・TAC
- ・LEC
- ・東京CPA会計学院
- ・スタディング税理士講座