「税理士試験は難しいってイメージがある……」
「合格するためにはどんな対策が必要なのかな?」
税理士試験について調べているとこのような点が気になってくるのではないでしょうか。
確かに税理士試験は一般的に難関だといわれています。
近年の税理士試験の合格率も15~20%と決して高いとはいえない数字です。
しかし、自分の得意分野を活かした科目選びや効率的な勉強方法を取り入れることによって合格へ近づくことはできるでしょう。
福留 正明
1.まずは税理士試験の仕組みを確認
税理士になるためにはいくつかのルートがありますが、税理士試験を受けて税理士を目指す場合には、まず受験資格が必要になります。
受験資格を満たしていなければ税理士試験を受けることができないため注意しましょう。
また、税理士試験は「科目合格制」といい、合計5科目の試験をパスすることで初めて合格とみなされます。
また、税理士試験は「科目合格制度」を採っており、5科目の試験に全て合格して初めて「官報合格」といって税理士試験に合格した状態になるのが特徴です。
税理士試験を受けて税理士になる(税理士資格を得る)ためには、官報合格とともに、通算2年以上の租税または会計に関する事務のうち、所定の業務に従事した実務経験が必要となります。
実務経験を経て、必要な書類を揃え税理士事務所所在の区域の税理士会に提出すると税理士名簿に登録され、晴れて税理士を名乗ることができます。
税理士試験を受け税理士になるまでの流れは以下のとおりです。
1-1.税理士試験の受験資格
税理士試験によって税理士資格の取得を目指す方は、自分が受験資格を満たしているかどうかをはじめに確認しましょう。
税理士試験の受験資格には学識、資格、職歴によるものがあります。
学識による受験資格は「社会科学の科目を1科目以上履修して取得する」ことなどで得られます。
「今まで経済や法律の勉強を一切してこなかったんだけど……」
という方は、資格によって受験資格を得ることもできます。
資格による受験資格を得るための条件は「日商簿記検定1級」または「全経簿記検定上級」に合格することです。
また、職歴によって受験資格を得るという方法もあります。
職歴による受験資格は「税理士事務所や弁護士事務所で2年の実務経験を積む」ことなどで得られます。
1-2.税理士試験は科目合格制
税理士試験に合格するには合計5科目の試験に合格する必要があります。
5科目のうち2科目は必須、3科目は受験者が選択します。
会計科目である簿記論と財務諸表論は必須科目です。
税法科目である9科目のうち、所得税法と法人税法は少なくとも片方は必ず選択しなければならない選択必須科目です。
残りの2科目(あるいは1科目)は相続税法、国税徴収法、消費税法または酒税法、民税または事業税、固定資産税のなかから選択します。
消費税法と酒税法、住民税と事業税はそれぞれどちらかのみ選択可能です。
このように不安に思った方もいらっしゃるかもしれませんが、合格した科目は生涯有効です。
何年かかけて5科目に合格するのが一般的です。
2.税理士試験の難易度・合格率は?
税理士試験の難易度の目安として合格率が知りたいという方も多くいらっしゃるでしょう。
ここからは国税庁が発表する税理士試験全体の合格率、科目別の合格率を詳しく見ていきます。
2-1.税理士試験の合格率
ここ数年、税理士試験の受験者は減少傾向にあります。
合格率は15~20%の間を推移しており、決して高い合格率だとはいえません。
平成28年度から令和2年度の受験者数、合格者数、合格率は以下のとおりです。
令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 | |
---|---|---|---|---|---|
受験者数(人) | 26,673 | 29,779 | 30,850 | 32,974 | 35,589 |
合格者数(人) | 5,402 | 5,388 | 4,716 | 6,634 | 5,638 |
合格率(%) | 20.3 | 18.1 | 15.3 | 20.1 | 15.8 |
2-2.科目別の合格率
会計科目に属する簿記論と財務諸表論は必須科目ということもあり、試験科目のなかでの合格率は比較的高いといえるでしょう。
税法科目のうち選択必須科目である所得税法と法人税法の合格率は10~15%前後と低い水準です。
その他の税法科目も10~20%の間を推移しています。
平成28年度から令和2年度の全11科目の合格率は以下のとおりです。
科目合格率 | 令和2年度 | 令和元年度 | 平成30年度 | 平成29年度 | 平成28年度 |
---|---|---|---|---|---|
簿記論合格率(%) | 22.6 | 17.4 | 14.8 | 14.2 | 12.6 |
財務諸表論合格率(%) | 19.0 | 18.9 | 13.4 | 29.6 | 15.3 |
所得税法合格率(%) | 12.0 | 12.8 | 12.3 | 13.0 | 13.4 |
法人税法合格率(%) | 16.1 | 14.7 | 11.6 | 12.1 | 11.6 |
相続税法合格率(%) | 10.6 | 11.7 | 11.8 | 12.1 | 12.5 |
消費税法合格率(%) | 12.5 | 11.9 | 10.6 | 13.3 | 13.0 |
酒税法合格率(%) | 13.0 | 12.4 | 12.8 | 12.2 | 12.6 |
国税徴収法合格率(%) | 12.2 | 12.7 | 10.7 | 11.6 | 11.5 |
住民税合格率(%) | 18.1 | 19.0 | 13.5 | 14.3 | 11.7 |
事業税合格率(%) | 13.1 | 14.8 | 11.0 | 11.9 | 12.9 |
固定資産税合格率(%) | 13.5 | 13.7 | 14.9 | 13.3 | 14.6 |
公表されている合格基準点は全科目「満点の60%」です。
しかし、毎年の合格率に大きな変化がないことから、実質的には受験生の上位10~15%に入らなければならない相対評価の試験であるといわれています。
合格率が高い科目を選べば合格しやすいかといえばそうともかぎりません。
科目選びのコツは次の章で詳しくご説明します。
3.自分に合った受験プランで合格を目指そう
「こんなに合格率が低いなんて、私は合格できるのかな……」
と不安に思われた方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、例え合格率が低くても、自分の得意分野を生かせる科目を効率よく勉強すれば十分に合格を狙うことができると考えられます。
3-1.科目を賢く選ぼう
計算に自信がある方は計算問題の比重が大きい科目を、暗記が得意な方は理論問題の比重が大きい科目を選択するようにすると良いでしょう。
計算力が問われる選択科目は消費税法、酒税法、住民税、固定資産税などです。
一方、国税徴収法や事業税は理論を中心に出題され、特に国税徴収法はほぼ100パーセント問題であるという特徴があります。
また、1年で複数の科目の対策をする場合は学習ボリュームについても把握しておきましょう。
簿記論や財務諸表論、所得税法、法人税法は特に合格までの目安となる勉強時間が多い科目といわれており、組み合わせには注意が必要です。
ただし、簿記論と財務諸表論は内容的に互いに補い合う部分があるため同時に学習することをおすすめします。
3-2.効率的に勉強を進めよう
税理士試験に臨むに当たり、考えられる勉強方法には以下の3つがあります。
- 勉強方法1 独学
- 勉強方法2 予備校や専門学校に通う
- 勉強方法3 オンライン講座を利用する
勉強方法1 独学
経済的な負担が一番少ないのが、自力で勉強する方法です。
税理士の予備校や専門学校に通えば数十万円の出費がありますが、独学であれば参考書代のみの負担で済みます。
しかし、独学には参考書選びやモチベーションの維持が難しいといったデメリットがあります。
勉強方法2 予備校や専門学校に通う
予備校や専門学校のメリットは、長年にわたって蓄積された合格のためのノウハウがある点です。
大手税理士専門学校の「資格の大原」は抜群の合格実績を誇ります。
2019年度は、なんと官報合格者のうち57.9%が大原生でした。
資格の大原に次ぐ実績を持つ「TAC」では初学者向けのコースと受験経験者向けのコースが用意されています。
また、それぞれの講座で通学と通信両方の形態が選べるので、ライフスタイルに合わせて選択することができますね。
「LEC」は通信講座を基本としており、かつ比較的安価に受講できるのが特徴です。
LECの「簿財横断速習コース<全90回>」は20万円以下で受講することができます。
「東京CPA会計学院」は社会人や大学生向けのコースの他、高校を卒業した方、高卒認定試験に合格した方向けのコースを用意しています。
勉強方法3 オンライン講座を利用する
そのような方にはオンライン講座のスタディングがおすすめですよ。
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完全オンラインで、タブレットやスマホを使って学習を進めることができます。
机に向かう時間が取れないビジネスパーソンや主婦(夫)の強い味方であるといえるでしょう。
「スマート問題集」、「トレーニング」、「実力テスト」などアウトプットの機会も豊富に用意されています。
4.まとめ
税理士試験は合計5科目にパスして初めて合格となるため、根気よく勉強を続ける必要があります。
税理士試験全体の合格率は15~20%、科目ごとの合格率が10~20%と合格率が低いことからも難関であることがうかがえます。
しかし、合格率が低いからといって合格できないわけではありません。
自分の特性を活かした科目選び、勉強に割ける時間を考えて科目を組み合わせることで効率的に学習を進められます。
また、予備校や専門学校に通うか、オンライン講座の利用がおすすめですよ。
- ・資格の大原
- ・TAC
- ・LEC
- ・CPA
- ・スタディング税理士講座