「税理士の資格を取るために必要な条件ってどんなものがあるんだろう?」
「税理士試験って誰でも受けられるものなのかな?」
これから税理士になりたい!と思っていてこうした疑問をお持ちの方は多くいらっしゃるでしょう。
税理士になるための勉強を始める前に、まずは試験の受験条件や税理士の資格取得までの流れについて確認しておきたいですよね。
税理士試験には学識、資格、職歴といった複数の資格が定められており、そのうちどれか一つを満たしている必要があります。
また、他の資格などをお持ちの場合は税理士試験を受験しなくても税理士の資格を取得できる可能性もあります。
福留 正明
1.税理士資格を取る前に知っておきたい基礎知識
「税理士がどんな資格でどんな仕事をしているのか、実は知らないことも多いんだよなあ……。」
税理士になりたいと思っていても、まだ具体的なイメージを掴めていないという方もいらっしゃるでしょう。
1-1.税理士となる資格があるのはどんな人?
実は税理士の資格を得られる人は税理士試験に合格した人とは限りません。
税理士資格を取得するためには、以下のいずれかの条件に当てはまっている必要があります。
- (1)税理士試験に合格した人※
- (2)税理士試験を免除された人※
- (3)弁護士(弁護士となる資格を持つ人を含む)
- (4)公認会計士(公認会計士となる資格を持つ人を含む)
※(1)と(2)に該当する場合は租税や会計に関する実務経験が通算2年以上必要
(1)の税理士試験に合格という条件は多くの方がイメージする税理士になるための方法でしょう。
一方、弁護士や公認会計士の資格を持っている人が税理士資格を取得できることはあまり知られていないかもしれませんね。
また(2)の条件に関しては、「税理士試験を免除されるのはどういう人なんだろう」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
税理士試験を免除されるのは修士号または博士号を持っている方、国税に関する業務に一定年数以上従事していた方などです。
詳しい条件は日本税理士会連合会のサイトにて紹介されています。
1-2.税理士とは何をする人?
税理士を目指すにあたって、税理士が普段どんな業務をしているかは知っておきたいところですよね。
税理士は主に顧客の代わりに税務などの業務を行っています。
具体的な作業としては、確定申告や相続税申告に関する業務、税務調査の立ち会い、税務署への不服申し立てなど多岐にわたっています。
また、顧客の税務などに関する相談に乗るコンサルティング業務も税理士の仕事の一つです。
- ・税務代理
- ・税理書類作成
- ・税務相談
- ・e-Tax代理送信
法人税や消費税は規模の大小を問わず全ての企業に課せられています。
また、相続税や所得税の申告は個人の義務です。
こうした納税の義務は全ての国民に課せられているため、クライアントの多さが税理士の大きな特徴といえるでしょう。
2.税理士試験の受験資格を確認!
ここからは、税理士資格を取得するために多くの方が挑戦する「税理士試験」の受験資格について確認していきましょう。
「試験を受けるためにも資格が必要なの?」
と驚かれた方も多いのではないでしょうか。
税理士試験を受けるためには、学識、資格、職歴などいずれかの受験資格を満たしている必要があります。
2-1.学識による受験資格
社会科学の科目を履修した上で大学や短大を卒業すると、税理士試験の受験資格を得ることができます。
その他、司法試験などに合格している人も受験することが可能です。
- ・社会科学を1科目以上履修し、大学、短大または高等専門学校を卒業する
- ・大学3年生以上で、社会科学を1科目以上含む62単位以上を取得する
- ・社会科学を1科目以上履修し、一定の専修学校の専門課程を修了する
- ・司法試験に合格する
- ・公認会計士試験の短答式試験に合格する(平成18年度以降の合格者に限る)
例えば大学生の場合、3年生の時点で社会科学を含む必要な単位を取得していれば在学中に税理士試験を受験できるということですね。
2-2.資格による受験資格
日商簿記検定1級もしくは全経簿記検定上級に合格している人も税理士試験を受験することができます。
- 日商簿記検定1級に合格する
- 全経簿記検定上級に合格する(昭和58年度以降の合格者に限る)
日商簿記検定1級の合格率は毎回約10%、全経簿記検定上級の合格率は時期にもよりますが15~20%といわれています。
出題内容が重複する部分もあるため、税理士試験の受験資格を得るために両方の検定を受験するという手もあります。
どちらにしても簡単に合格できる内容ではないため、日々計画的に勉強を進めていきましょうね。
2-3.職歴による受験資格
学識や資格のほか、税理士事務所などで会計などの実務経験を積んだ方も税理士試験を受けられます。
税理士資格の取得には試験に合格するだけではなく2年の実務経験が必要です。
そのため実際に働きながら受験資格を満たせば、合格後はスムーズに税理士の資格を得ることができるでしょう。
- ・法人又は事業を行う個人の会計に関する事務に2年以上従事する
- ・銀行・信託会社・保険会社等において、資金の貸付・運用に関する事務に2年以上従事する
- ・税理士・弁護士・公認会計士等の業務の補助事務に2年以上従事する
ただし、簿記会計の知識が必要ない電卓を用いた入出力などの業務は税理士試験の受験資格として認められません。
3.税理士試験の流れを解説!
「実際に税理士試験はどんな流れで進んでいくんだろう?」
という点も気になりますよね。
ここからは、税理士の資格を得るために多くの方が受験をする税理士試験の流れを分かりやすく解説していきます。
ステップ1 受験科目を選択する
資格や実務経験がない方が税理士資格を取得するためには税理士試験に合格する必要があります。
税理士試験は自分で受験する科目を一部選ぶことができます。
会計学に属する簿記論と財務諸表論は2科目とも必修ですが、残りの3科目は税法に属する所得税法、法人税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法、住民税、事業税、固定資産税のなかから受験生が選択します。
ただし、所得税法と法人税法のうち1科目は必ず選択しなければなりません。
ステップ2 選択した科目を勉強する
受験科目を決めたら、いよいよ試験に向けて勉強を始めましょう。
税理士試験合格のための勉強時間はおよそ2,500~6,000時間と個人差がありますが、平均すると4,000時間程度だといわれています。
科目 | 勉強時間の目安 | |
---|---|---|
必修科目 | 簿記論 | 500時間 |
財務諸表論 | 500時間 | |
選択必須科目 | 所得税法 | 600時間 |
法人税法 | 600時間 | |
選択科目 | 相続税法 | 500時間 |
消費税法 | 300時間 | |
酒税法 | 150時間 | |
国税徴収法 | 200時間 |
これだけ見ると途方もない道のりのように思えてしまうかもしれませんね。
税理士試験の勉強方法については、後ほど解説していきます。
ステップ3 税理士試験に申し込む
受験資格を取得し、勉強の成果が出てきたら実際に税理士試験への申し込みを行いましょう。
税理士試験の受験案内や願書は毎年4月半ばから5月半ばにかけて各地の国税局と沖縄国税事務局にて交付されます。
実際に取りに行くのが難しい場合は郵送で請求することも可能です。
申し込み期間は例年5月中旬の10日ほどと短い期間のため、忘れないように注意しましょう。
申し込みに必要な書類は以下の三点です。
- ・税理士試験受験願書・税理士試験受験申込書
- ・受験票及び写真票
- ・受験資格を有することを証する書面
申し込み書類を国税局等へ直接持参して提出することはできないため、必ず郵送しましょう。
詳しい申し込み方法は国税庁のサイトを参考にしてください。
ステップ4 選択した5科目に合格する
税理士試験のゴールは合計5科目に合格することです。
会計学に属する2科目、税法に属する3科目の合計5科目に合格して初めて税理士試験合格となります。
税理士試験は毎年8月の平日3日間にわたって行われます。
合格基準点は、各科目で満点の60%と公表されています。
税理士試験の勉強は長期間にわたり、日々の努力の積み重ねがとても重要です。
一年に5科目全てを合格することができなくても諦めることはありません。
また、税理士試験に合格しただけで税理士の資格を取得できるわけではなく、未経験の方は2年以上実務にあたる必要もあります。
税理士試験の合格をスタートととらえ、新しい一歩を踏み出していきましょう。
4.税理士試験の勉強方法は?
「税理士試験は難しそう……。実際にどうやって勉強すれば良いんだろう?」
「やっぱり予備校に通った方が良いのかなあ。みんなどうやって勉強しているんだろう?」
税理士試験にどうやって対策をするべきかお悩みの方も多いでしょう。
税理士試験の主な勉強方法には「独学」「予備校や専門学校に通う」というものがあります。
方法1 独学
予備校や通信講座を利用せず、教材を購入して独学で勉強し合格を目指す方もいます。
独学のメリットは金銭的・時間的に余裕がない方でも自分のペースで始められるところです。
予備校に通うにはコストがかかり、授業を受けるためには時間を確保しなければなりません。
「お金に余裕がなかったり、アルバイトや仕事で時間の制約があったりする方には独学のメリットは大きいでしょう。
しかし、税法に関する科目は独学のための教材を探すのが難しいといわれています。
また、最も難しいのはモチベーションの維持かもしれません。
教材選びから勉強の方法まですべてを自分で決める必要があるため、不安や悩みを抱えてしまう場面も多いでしょう。
方法2 予備校や専門学校に通う
予備校などに通うメリットは長年にわたって培われたノウハウと洗練された教材があることです。
特にこれから勉強を始める方にとっては、勉強方法のアドバイスなど予備校で得られるサポートは大きな魅力でしょう。
通学するための費用がかかるのがデメリットです。
しかし、難易度の高い税理士試験に合格するために予備校に通いたいという方は多くいらっしゃいます。
まず、高い合格率で知られるのが「資格の大原」です。
2023年度の税理士試験合格者のうち、なんと53.3%を大原の受講生が占めています。
TACでは受講者のライフスタイルに合わせた豊富なカリキュラムを用意しているうえに、合格後の就職についても万全のサポートを受けられるのです。
短期で合格したい方には「東京CPA会計学院」の税理士コースがおすすめです。
一般的な予備校では一年間の学習科目が2、3科目であるのに対し、東京CPA会計学院では3、4科目同時に学習するカリキュラムが組まれています。
また、「LEC」ではオンライン授業や、講座内容の音声をダウンロードできたり、模擬試験の内容が充実していたり、試験対策を万全にできる状況が整えられています。
5.まとめ
実務経験のある方や公認会計士などの資格を持っている方は試験を受けずに税理士の資格を取得することができますが、税理士になりたいと思っている多くの方が税理士試験の合格を目指しているでしょう。
税理士試験を受験して税理士を目指す場合、会計に属する2科目、税法に属する3科目の合計5科目に合格する必要があります。
税理士試験を受けるためには学識による資格、資格による資格、職歴による資格のいずれかを満たしていなければならないため、自分がいずれかの要件を満たしていることを確認しておきましょう。
また、税理士試験の各科目の合格率は10~15%で、大変厳しい試験ということができます。
そのため金銭的、時間的な余裕がある方は予備校に通って勉強をすることがおすすめですよ。