会社で経理を担当しているものの、聞き慣れない「損益計算書」という言葉に戸惑っている会計初心者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
損益計算書にたくさんの数字が並んでいるのを見て嫌気が差してしまった……という経験をお持ちの方も多いかもしれませんね。
確かに一見複雑な損益計算書ですが、数字の意味を理解すれば恐れる必要はありません。
この記事では、会計に不慣れな方でも損益計算書がよく分かるよう基礎知識や用語を分かりやすく解説していきます。
福留 正明
1.初心者でもよく分かる!損益計算書の基礎知識
「損益計算書って何が書いてあるの……?」
会社を経営していると年に一度は必ず作成しなければならない損益計算書ですが、何が書いてあるのか実は知らない……という方もいらっしゃるかもしれませんね。
ここでは今更人に聞けない損益計算書の基礎知識を解説します。
1-1.損益計算書とは
損益計算書とは、一言でいえば「経営成績を明らかにする計算書」のことです。
経営成績とは、一定期間(通常1年間)にどれだけもうかったのか、ということを示すものです。
より詳しくは、ある一定期間の会社の収益と費用の損益を計算してまとめた財務諸表の一つといえます。
英語の「Profit&Loss Statement」から、「P/L」と略して呼ばれることもあります。
損益計算書は大まかにいうと以下の三つの要素から構成されています。
- ・収益(いくら稼いだか)
- ・費用(利益を得るためにいくら使ったか)
- ・利益(収益から費用を引いていくら残っているか)
一年や半年など一定の期間ごとに複式簿記という方法を用いて貸借対照表などと共に作成されます。
収支のみを記載する方法を「単式簿記」といいますが、現金の増減を記帳するだけの単式簿記で作った帳簿ではその結果としての財政状態(現金や借金などの残高)が把握できないという欠点があります。
一方複式簿記であれば、お金の出入りがあった結果、現在の資産や負債がどうなっているかということを把握することができます。
1-2.貸借対照表との違い
損益計算書と同時に作成される書類に「貸借対照表」があります。
損益計算書と貸借対照表の違いは何でしょうか。
損益計算書では「ある一定期間における経営成績」を表すのに対し、貸借対照表では「ある一定時点での財政状態」を表します。
財政状態とは一定時点における会社の財産などの状況のことです。
貸借対照表は以下の3つの要素から構成されています。
- ・資産(会社が持っているお金)
- ・負債(返済義務があるお金)
- ・純資産(返済義務がないお金)
資産は左側(借方)、負債と純資産は右側(貸方)と分けて表記され、「資産=負債+純資産」となります。
貸借対照表と損益計算書が組み合わさることによって、会社の経営状況が浮き彫りになり、外部の株主らに会社の経営状況を提示することもできるのです。
2.5分で身に付く!損益計算書に使われる利益の種類
損益計算書では利益を5段階に分類し、収益や費用が発生した原因を把握しやすいようにしてあります。
ここでは損益計算書で用いられる重要な概念である以下の五つの利益について解説します。
- ・売上総利益
- ・営業利益
- ・経常利益
- ・税引前当期利益
- ・当期純利益
2-1.売上総利益
損益計算書で最初に出てくる利益を「売上総利益」といいます。
売上総利益は「売上高-売上原価=売上総利益」で算出することができます。
売上原価とは売上高に直接対応する製品の製造コストや商品の仕入れ額のことです。
パン屋を例にとると、パンを作るのに必要な小麦や卵、牛乳の仕入れ額、パンを作る従業員の人件費などが「売上原価」に当たります。
2-2.営業利益
損益計算書で二番目に出てくる利益を「営業利益」といいます。
営業利益は「売上総利益-販売費=営業利益」という式で算出します。
販売費とは売上原価に含まれない通常の業務にかかる費用をいいます。
例えば営業部の社員の給与や、本社の光熱費などが販売費に当たります。
2-3.経常利益
損益計算書で三番目に出てくる利益を「経常利益」といいます。
経常利益を導き出す式は「営業利益+営業外収益-営業外費用=経常利益」です。
営業外収益、営業外費用とは本業以外で発生した収益と費用のことで、主に金利が相当します。
お金を貸したり、預金したりして金利を得た場合営業外収益といい、借金の金利を支払った場合営業外費用といいます。
2-4.税引前当期純利益
損益計算書で四番目に出てくる利益を「税引前当期純利益」といいます。
文字通り税金を差し引く前の、一定期間に企業が得た利益もしくは損失のことです。
「経常利益+特別収益-特別費用=税引前当期純利益」となります。
特別収益、特別費用は通常の経営には含まれない臨時の損益です。
例えば長期間保有していた株式を売却して得たお金は特別収益、台風で破損した建物の修理代は特別費用になります。
2-5.当期純利益
会社が得た利益には法人税などの税金が課せられます。
そのため、会社が一定の期間で得た利益を計算するためには法人税などを差し引いた金額を算出する必要があります。
「税引前当期純利益-法人税など=当期純利益」というわけです。
会社の存続のためには当期純利益がプラスの状態が続く必要があります。
マイナスである当期純損失の状態が続いた場合、会社の経営は傾いていきます。
3.損益計算書を簡単に作成する方法はある?
3-1.会計ソフトを利用してみよう
こんなに煩雑な書類を自分で作らなくてはならないなんて……と、気が遠くなってしまった方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし会計ソフトを導入すれば、ほとんど自動的に損益計算書を作成してもらうことができるのです。
ここでは損益計算書を作成するためにおすすめの会計ソフトを三つご紹介します。
おすすめ会計ソフト1 freee
会計業務を隙間時間に済ませてしまいたい……とお思いの方にはスマホアプリで操作ができる「freee」がおすすめです。
レシートを撮影して取り込むといった入力作業や、銀行、クレジットカードの同期がスマホで行えます。
出張が多く、パソコンで作業する時間がなかなか取れないという経理の方にぴったりですね。
freeeを使えば、損益計算書をたったの3ステップで作成することができます。
- 1.「決算」メニューで「決算書の作成」を選択
- 2.会社のフォーマットに合わせて出力設定を行い、「この年度の決算書を作成」ボタンを押す
- 3.決算書類が完成
操作がとても易しいので、会計初心者の方でも安心ですね。
また「インボイス制度」や取引の書類を電子データで保存する際の要件が定められた「電子帳簿保存法」の改正にも対応しているのも魅力の一つです。
30日の無料お試し期間があるため、まずは使い勝手を実感してみましょう。
おすすめ会計ソフト2 マネーフォワード クラウド会計
会計の知識を持っており、拡大路線の法人の経理を担当している方におすすめなのが「マネーフォワード クラウド会計」です。
銀行、電子マネー、クレジットカード、POS(販売時点情報管理)レジなどさまざまなサービスと連携することができ、決算書を自動で作成してくれます。
マネーフォワード クラウド会計の強みは同社が提供する他サービスと組み合わせることによって最大限に発揮されます。
勤怠管理システムの「マネーフォワードクラウド勤怠」、給与を計算してくれる「マネーフォワードクラウド給与」なども併せて利用すれば、業務にかかるコストを最大限にカットすることができますよ。
インボイス制度や改正後の電子帳簿保存法にも対応している点もうれしいポイントです。
まずは1カ月無料で使えるお試し期間で、使い心地を体感してみましょう。
おすすめ会計ソフト3 弥生会計 オンライン
会計初心者で、会計ソフトを導入するのも初めての方におすすめなのは「弥生会計 オンライン」です。
「弥生会計 オンライン」は25年連続売り上げナンバーワンの実績を持つ弥生が提供しているため、信頼性においては右に並ぶものはありません。
レシートや領収書、銀行の明細を撮影すれば自動で仕訳してくれるため、打ち間違いの心配もありません。
データをもとに損益計算書をはじめとする決算書類を簡単に出力できますよ。
簿記や会計の知識がない人に向けたシンプルな画面設計で直感的な作業が可能です。
なお法改正時にはバージョンが自動で更新されているので、インボイス制度や電子帳簿保存法にも安心して対応できます。
全プラン初年度の利用料が無料のため、気軽に使い勝手を試すことができます。
4.まとめ
損益計算書は会社が得た利益を売上総利益・営業利益・経常利益・税引前当期利益・当期純利益の五つに分類し、より正確な経営状況の把握に活かすことができる決算書の一種です。