経営者の方や経理担当の方で、このような悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。
実は経理は会計の一部であり、「会計ソフト」と呼ばれるソフトを導入することで業務を大幅に効率化できる可能性があります。
まずは経理と会計の関係についてご説明しましょう。
経理業務を効率化する三つの方法と、合わせて経理業務にぴったりの会計ソフトをご紹介するので要チェックです。
福留 正明
1.経理と会計の違いは?経理業務ってどんな位置づけ?
「経理」や「会計」といった言葉は普段から何気なく使っているものですよね。
しかしよく考えてみると二つの違いを知らない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
「経理ソフトを探していたら「会計ソフト」というものが出てきたんだけど、何が違うの?」
などと気になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
まずは経理と会計の違いについてご説明しましょう。
1-1.経理とは
実は「経理」という言葉は正式名称ではなく、「経営管理」の略であることを皆さんご存知でしょうか。
その言葉どおり、企業の日々のお金の流れを記録し、管理するのが経理の業務です。
企業のお金の流れを数値として可視化することは、経営側はもちろん、株主などの利害関係者にとっても先を決めるための重要な判断要素になりますよね。
なお、経理の業務の一つである「財務諸表(決算書)」の作成は、会計のなかの「財務会計」と呼ばれるものに当たります。
そのため経理は会計の一部ということができるのですね。
1-2.会計とは
「管理」が経理の業務であるとすれば、「報告」が会計の業務であるといえます。
会計と聞くと、ショッピングや飲食でのお会計、つまりは「支払い」のイメージが浮かぶ方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでの会計は支払いを意味するわけではありません。
会計というのは「企業会計」のことであり、企業内部と企業外部(利害関係者)に対し、企業の財務状況を報告することを意味します。
1-2-1.管理会計
まずは管理会計についてご説明しましょう。
管理会計とは、経営者側が経営状況の把握や経営判断を行うための資料を作成することです。
管理会計で作成されるものは企業内部の資料であるため、決まった形式など基準はありません。
1-2-2.財務会計
財務会計の業務は管理会計とは逆に、対外的な目的のために行われます。
財務会計の目的は、利害関係者(株主・税務署・債権者など)に企業の情報を開示することにあります。
財務会計は企業であれば行う義務があるため、管理会計とは違い、形式や基準が決まっています。
「企業会計」の基準に従い、「決算書」を作成しなければなりません。
まず有価証券報告書の提出義務がない企業が作成する決算書は計算書類です。
- ・貸借対照表
- ・損益計算書
- ・株主資本等変動計算書
- ・個別注記表
一方、有価証券報告書の提出義務がある企業では、財務諸表を作成します。
財務諸表には以下のような書類が必要となります。
- ・貸借対照表
- ・損益計算書
- ・キャッシュフロー計算書
- ・株主資本等変動計算書
- ・附属明細表
- (1)情報提供機能
- (2)利害調整機能
まず情報提供の機能です。
これは文字どおり、利害関係者に企業の経営状況を開示し、情報を提供することを意味します。
例えば株主にとって企業の財務状況は今後の投資活動の参考になります。
すでに出資をしている株主であれば、出資金がどのように運用されているか、成果が上がっているかを確認し、出資を続行するか撤退するか決める指標にできますよね。
また出資を考えている投資家にとっても安全な投資先かどうかを見極めるための材料になります。
さらに財務会計は「利害調節」という機能も担っています。
例えば株式会社においては、株主などの利害関係者が企業に出資し、その出資金で上げた利益を企業が利害関係者に分配します。
この分配をめぐって、利害関係者と企業間、利害関係者と利害関係者間で、利害の対立が起こる可能性があります。
それを未然に防ぐために情報開示を行うのが、財務会計の二つ目の利害調整機能です。
2.経理業務を効率化する方法
業務の効率化に最も重要なのはミスや手間を減らすことだと考えられます。
具体的には、以下の六つの方法でミスや手間を減らし、業務を効率化することができると考えられます。
方法1 日々の業務を見直す
まず一つ目に挙げられるのが、日々の業務を見直すということです。
これから紹介するのは、小さなことでも日々の積み重ねとなれば作業時間を大幅に削減できる、という方法です。
2-1-1.ショートカットキーを駆使する
基本的なことですが見落としがちなのが「ショートカットキーの駆使」です。
全てのショートカットキーを覚える必要はありませんが、自分のよく行う動作のショートカットキーは覚えておいて損はないでしょう。
「いちから覚えるくらいなら今のままやった方が速いのでは……?」
とお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、覚える時間は意外と短いものです。
2-1-2.部署間でフォーマットを統一する
「部署ごとにさまざまなフォーマットの報告書を貰うから、処理が大変……」
経理側から見ると、フォーマットの統一されていない書類は仕訳からしなければならず、とても面倒ですよね。
今まで部署ごとに異なっていた書類のフォーマットを統一させれば、チェックに割く時間を削ることが可能です。
2-1-3.デュアルモニターを導入する
経理業務は複数の画面を見ながら作業することが多いものですよね。
例えば二つのエクセルのシートを見比べながら、また会計ソフトとエクセルの両方を見ながら作業したいという場面で、パソコンの画面が一つしかなかったらどうでしょうか。
画面の切り換えが非常に面倒ですよね。
1回や2回なら良いですが、業務では何度もこの画面の切り替え作業を行うことになります。
意外と時間を取られていますし、何より集中しづらいのではないでしょうか。
デュアルモニターを導入すれば、二つの画面をそのまま見ながら作業ができるので切り換えの手間が無く作業がスムーズです。
業務に集中できるので、ミスの発生も防げますね。
方法2 キャッシュレス化を推進する
経理業務の効率化において、小口現金のキャッシュレス化も有効だと考えられます。
少額の経費の支払いや、従業員が立て替えた経費の精算を現金で行っているという企業もあるかもしれません。
しかし現金を取り扱うことによって余分なルーチンワークやミス、リスクが発生していると考えられます。
- ・現金出納帳の記入・作成
- ・金庫管理
- ・両替
- ・現金の補填 など
キャッシュレス決済を導入すれば不要になるはずのこのような業務に人員や時間を裂かなければならないのは非効率的ですよね。
手作業となればミスの発生率もグンと上がり、例えば小口現金残高と現金出納帳に相違があった場合には調査を行うという手間も増えてしまいます。
さらにはお金の紛失や盗難といったリスクを常に抱えなければいけません。
2-2-1.法人クレジットカードを活用する
法人カード(ビジネスカード)とは、法人経営者や個人事業主向けに発行されている事業費決済用のクレジットカードのことです。
社員に追加カードを発行し利用してもらうことで、経費を一括管理することができます。
法人カードは会計ソフトと連携しているものを選べば、仕訳を自動化することができ、より効果的です。
2-2-2.ネットバンキングを利用する
少額の精算でもネットバンキングからの振り込みを利用すれば、小口現金がいりませんよね。
PCやスマートフォンからでも振り込みができるため、銀行までの移動時間を取られないのも効率的です。
また振り込み作業ですが、請求書が来るごとに行うのではなくある程度まとめて行うのが良いでしょう。
振り込みのための確認業務や、支払一覧の作成業務などが毎日発生することがありません。
方法3 ペーパーレス化に努める
ペーパーレス化も経理業務の効率化に有効です。
領収書や請求書、経費精算書など、経理業務でたくさんの紙を扱っているという方も多くいらっしゃるかもしれません。
しかし紙は誰もがいつでもデータを見られるという環境になく、非効率的であるといえます。
また2022年に「電子帳簿保存法」の改正版が施行され、2024年1月から電子取引の情報を電子データで保存することが義務化されました。
これまでデータでやり取りをした書類などを出力し、紙で保存していた場合は2023年12月末まででにデータ保存に移行させる必要があります。
電子データであればオンラインで共有してしまえばいつでもどこでも見られるため、例えば確認や承認が必要な書類もすぐに目を通してもらうことができます。
待ち時間が生まれず、非常にスピーディーに業務を回すことができますね。
また、紛失の恐れがない、保管場所を取らない、必要なデータを探すのに手間取らないといった点からもペーパーレス化はおすすめです。
方法4 経費精算システムを取り入れる
経費精算はほぼどの社員にもかかわってくることですが、手間が多く負担に感じている方が多いのではないでしょうか。
申請書を処理する経理側の手間もありますが、紙やエクセルでの経費精算は申請する側にとっても煩雑なプロセスを経ているものです。
簡単にご説明しますと、経費精算システムとは経費の申請と承認をデジタルで行うシステムのことです。
領収書やレシートを撮影してスマホやタブレットから送るだけで簡単に経費の申請ができるので、申請する側の負担が大幅に減りますし、経理側に回ってくるまでの時間が短縮されます。
ICカードの読取り機能を使えば、交通費を自動で計算することも可能ですし、クレジットカードや電子マネーと連携可能なものであれば、経費の情報を自動で取得してくれます。
また会計ソフトと連携させれば、項目の手入力や品目選択などが必要なくなり、よりスムーズに経理業務を行うこともできますよ。
方法5 アウトソーシングを利用する
アウトソーシングを利用するというのも、経理を効率化させるための方法の一つです。
経理の業務を外部に委託してしまうということですね。
特に小中規模の企業では、経理業務と別の業務を兼任しているという方も多いでしょう。
「経理に時間を取られて仕事に手が回らない……」
というお悩みもあるかもしれませんね。
- ・年末調整代行
- ・請求書発行
- ・記帳代行
- ・給与計算代行 など
経理業務を全てアウトソーシングしてしまうことも可能ですし、年末調整代行のみをお願いする、といったことも可能です。
現状や予算に合わせて導入できますね。
本来の業務が疎かにならないので本来の業務に注力できる上、経理担当を採用するためのコストの削減にも繋がります。
アウトソーシングには社内の情報が流出してしまうリスクがあります。
経理業務で使用する情報を外部企業に渡すことになるため、このリスクをゼロにすることは残念ながらできません。
代行先のセキュリティ体制がどうなっているかを事前によく確認し、複数社を比較し信頼できる代行先を探すことが必要です。
方法6 会計ソフトを導入する
経理業務を効率化する六つ目の方法は、会計ソフトの導入です。
会計ソフトとは一言でいえば会計業務にかかわる全ての情報を処理することができるシステムのことです。
経理業務は会計の一部にあたるため、当然会計ソフトがあれば経理の業務はスムーズに済ませることができます。
また2023年10月1日に始まった「インボイス制度」に対応するためにも、会計ソフトは有効だといえるでしょう。
インボイス制度では適格請求書が発行された取引とされなかった取引を区分して管理しなければなりません。
請求書の様式も変更されたため、新たに追加された記載事項の処理への対応も求められます。
クラウド型会計ソフトとは、ソフトをパソコンにインストールする必要なく、オンラインでデータの保存・管理ができる会計ソフトのことです。
クラウド型会計ソフトには以下のようなメリットがあります。
- ・導入コストが低い
- ・初心者でも直感的に操作しやすい仕様のものが多い
- ・インストール不要で手軽に始められる
- ・データがウェブ上のクラウドに保存されるのでバックアップが不要
- ・常に最新のソフトが使用できるので法改正にも対応
- ・クレジットカードや口座と連携して計算ミスを予防、作業を効率化できる
仕訳や確定申告が面倒だと感じている個人事業主の方や経理業務に余計な時間を取られたくない中小の法人には特にクラウド会計のメリットが際立ちます。
3.経理業務の効率化にぴったり!おすすめ会計ソフト
このように気になっている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、経理業務の効率化にぴったりのおすすめ会計ソフトをご紹介します。
おすすめ1 freee
freeeは近年利用者数を拡大している会計ソフトです。
日々の経理業務から決算書の作成までをとにかく手軽にスムーズに済ませることができる会計ソフトです。
freeeはスマホからも簡単に操作できるのが大きな魅力だといえます。
隙間時間にレシートや領収書をスマホで撮影するだけで自動で記帳・仕訳を行ってくれるため、さまざまな業務を任されている忙しい方でも簡単に経理作業を済ませることができるのです。
わかりやすい操作画面のため、簿記や会計の複雑な知識も不要なのがうれしいポイントですね。
なお法改正があるとバージョンが自動で更新されるため、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正にも対応可能です。
おすすめ2 マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計は、「月3,980円で雇える経理」というキャッチコピーを掲げる会計ソフトです。
マネーフォワード クラウド会計の導入で会計にまつわる業務が半分以下になったというアンケート結果も出ています。
マネーフォワード クラウド会計は、同社が提供する「マネーフォワードクラウド請求書」「マネーフォワードクラウド給与」等のサービスと連携したときに真価を発揮するサービスです。
経理だけでなく、時間を奪われがちなさまざまな業務をマネーフォワードクラウドでまとめて管理できるのです。
小規模法人向けのスモールビジネスプラン(年額35,760円)でもこれらのサービスの一部の機能を利用することができますよ。
なおインボイス制度や改正後の電子帳簿保存法にも対応しています。
おすすめ3 弥生会計シリーズ
弥生会計シリーズは個人事業主向けの会計ソフトでは1位、法人向け会計ソフトで3位のシェアを誇る人気の会計ソフトです。
弥生会計の強みは何といっても初心者にやさしい設計にあります。
シンプルな操作と機能で、簡単に経理業務を効率化できるのがうれしいですね。
ユーザー側の作業はクレジットカードや銀行口座とデータ連携し、日々のレシートや領収書をスマホカメラやスキャンで取り込み、画面の指示に従って入力するだけです。
登録した取引から会計帳簿が自動で作成され、経営状況を把握できるレポートも確認することができます。
決算書の作成も自動で行われるので経理業務を効率化したい方にはぴったりですよね。
また法人の方は全プラン初年度の利用料が無料です。
コストパフォーマンスが高い上、インボイス制度や電子帳簿保存法の改正に対応している点も魅力ですよ。
4.まとめ
経理とは「経営管理」の略でその言葉どおり、企業の日々のお金の流れを記録し、管理するために行う業務です。
非常に重要な業務の一つといえますね。
実は経理業務の一つである決算書の作成は会計のうちの「財務会計」に当たるため、経理は会計の一部であるということができます。
経理業務をより効率化したい、という方には会計業務のために開発された「会計ソフト」の利用やキャッシュレス化、ペーパーレス化がおすすめですよ。
- ・出先からでも手軽に経理業務を済ませられるfreee
- ・他サービスとも連携して業務を効率化できるマネーフォワード クラウド会計
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