子供の頃、私はよく自宅の裏庭に広がる林で弟と一緒に遊んでいた。
傾斜になっていて、まるで山を貸し切って冒険しているような
気持ちになって日が暮れるまで裏庭を駆け回っていた。
しかしその広大な裏庭にある林が父の死後、私たち兄弟に相続税という
負担としてのしかかってきたのだ。
税理士が作成した土地の評価明細書を見たときに、にわかには
信じられなかった。
裏庭の林に1億円という相続税評価額がついていたのだ。
税理士がいうには、見た目は林のようになっているが、
住宅地にあり木を伐採すれば宅地として利用できるため
高い相続税評価額になるという話であった。
専門家である税理士の言葉を信じて渋々ではあるが
申告書に捺印した。
~7年後~
相続税申告から7年が経ち偶然近くの不動産屋と話しをしていた
ところ、私が相続した裏庭の林を仮に売却しても傾斜度が強いため
ほとんど価値が出ない1億円なんて高すぎるという話を聞いた。
その不動産屋の話を聞いて私は慌てて別の相続税専門の税理士に
当初の相続税申告書をもう一度見てもらった。
すると信じられない事実が分かった。
これは傾斜度が強く宅地転用が難しいと思われる
いわゆる市街地山林という土地に該当する可能性があります。不動産鑑定士の
意見を参考にしながら評価を行うことで数百万円の評価になる可能性がありますよ。
しかしもう当初の申告から5年以上経過していますので今からの修正はできないですね。
もう修正できない、私は無駄に過大な相続税を支払っていたのだ。
当初の税理士から1億円という評価を聞いたときに、高いと感じたのであれば
違う税理士にも意見を聞いておけばよかったのだ。
幼い頃に誰よりも裏庭を駆け回っていて、急傾斜の部分があることだって
分かっていたのに。もっと土地の評価に詳しい税理士に相談していれば。。。
このような失敗をしないために専門家からのアドバイス
相続税申告業務において、土地の評価は税額に大きなインパクトを与えます。
土地の相続税評価は、個々の土地により非常に個別性が高く単純に路線価×地積で求められるものではありません。様々な個別事情に基づく減額要因の検討を行う必要があります。
今回のケースでは、当初申告した税理士が「宅地転用が見込めない市街地山林の評価」という論点を知らなかったために生じた悲劇と言えます。
税理士なら当然知っておくべき規程ですが、ただ、このようなことが起こる理由には、相続税申告業務の特殊性があります。税理士は全国に約8万人以上おり、相続税の申告は全国で年間約15万件程度です。すべての税理士が相続税の申告経験があるわけではなく、法人税や顧問税理士などをメイン事業として行っているところも多くあります。そのため、ベテランの税理士でも相続税の申告をほとんど経験したことのない方が多く存在するのが実情です。いわば通常の税理士にとって相続税申告は特殊業務なのです。
相続税の申告は依頼する税理士によって納税額が異なります。
相続税の計算は専門性が高く、税金のプロである税理士が計算しても担当する税理士によって大きく納税額が異なることも珍しくありません。
この失敗事例のようにならないように、相続税の申告を依頼する税理士は慎重に選びましょう。まずは、相続税申告件数の実績を確認すると良いでしょう。税理士法人チェスターのように相続税申告を専門とする税理士事務所は日本では数少ないですが、相続税を得意にする税理士事務所に申告を依頼することが重要です。