使用貸借と相続の関係を法律・税金面から解説

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親が所有している土地を子供が無償で借りて使用するケースがあります。このように無償で貸し借りすることを「使用貸借」といいます。

土地を親子で使用貸借しているとき、借主あるいは貸主が亡くなったときの相続は、法律上または税務上どのように扱われるのでしょうか。この記事では、土地の使用貸借で借主あるいは貸主が死亡した場合の相続の考え方を解説します。

1.使用貸借になるケースとは

使用貸借は無償で貸し借りが行われることをいいます。親が所有する土地に子供が家を建てて住む場合は賃料のやり取りをすることは珍しく、使用貸借となることがほとんどです。

土地の使用貸借は民法が適用され、借地借家法の適用を受けません。つまり、借地借家法に定められる借主保護のルールはなく、通常の賃貸借に比べて簡単に契約が終了できる傾向があります。

借主が貸主に地代ではなく固定資産税にあたる金額を支払う場合も使用貸借とみなされます。これは、使用貸借について民法第595条で「借主は、借用物の通常の必要費を負担する」と規定されているためです。

2.【借主が死亡】使用貸借は相続の対象外

民法第599条では「使用貸借は、借主の死亡によって、その効力を失う」と規定しており、使用貸借は相続の対象外です。したがって、不動産の使用貸借で借主が死亡した場合は、原則では借主の相続人はその不動産を借りることができません。

使用貸借は、親子あるいは兄弟姉妹というように個人的な人間関係や信頼関係に基づくもので、使用貸借の借主の地位はその人自身のみのものであると考えられます。したがって、借主が死亡すれば借主の地位は相続されることなく消滅します。

ただし、例外もあります。契約で借主の地位の相続を認めている場合は、使用貸借は相続の対象になります。相続を認める契約がないとしても、借主と貸主の人間関係や信頼関係が相続人にも引き継がれるのであれば、新たな使用貸借契約があったと判断される場合があります。

3.【貸主が死亡】使用貸借の土地の相続税評価は自用地評価に

使用貸借の貸主が死亡したときは、その財産を相続人が相続します。借主が死亡した場合とは異なり、契約が終了することはありません。

賃貸している土地を相続するときの相続税評価額は、自用地価格(賃貸せずに自分自身で使用する場合の評価額)から借主が持つ借地権を差し引いて計算します。

一方、使用貸借の場合は自用地と同じ評価になります。土地の使用貸借では借主保護のルールはなく、借主の権利が弱いと考えられているためです。

賃貸借の場合:相続税評価額=自用地価格-借主が持つ借地権
             =自用地価格×(1-借地権割合)
使用貸借の場合:相続税評価額=自用地価格(借地権は差し引かない)

なお、借主が貸主に地代ではなく固定資産税にあたる金額を支払う場合は、税務上も使用貸借とみなされます。

4.相続税節税のため使用貸借から通常の賃貸借契約に変更

相続税を計算するもととなる土地の相続税評価額は、使用貸借では自用地価格と同額であり、通常の賃貸借では自用地価格から借地権を差し引きます。つまり、借主が貸主に地代を支払う通常の賃貸借契約にする方が相続税評価額は低くなり、相続税が節税できます。

次の例で、同じ土地を使用貸借として評価した場合と通常の賃貸借として評価した場合の相続税評価額を比較します。

【例】
父が所有する土地に長男が家を建てて居住している場合、この土地の相続税評価額を求めます。
この土地の自用地価格(賃貸せずに自分自身で使用する場合の評価額)は5,000万円とし、借地権割合は70%とします。

使用貸借:この土地の相続税評価額は自用地価格と同じ5,000万円です。
賃貸借:自用地価格から借主が持つ借地権を差し引きます。
    相続税評価額=5,000万円×(1-70%)=1,500万円

上記の例では、通常の賃貸借にすることで評価額を70%引き下げることができます。

なお、通常の賃貸借契約にする場合は、相場より安い賃料にならないように注意が必要です。たとえば、賃料が固定資産税にあたる程度の金額であれば使用貸借とみなされます。

使用貸借から通常の賃貸借契約に変更したい場合は、相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

5.まとめ

ここまで、土地の使用貸借で借主あるいは貸主が死亡した場合の相続の考え方についてお伝えしました。

借主が亡くなった場合は、使用貸借は相続の対象とはなりません。しかし、例外も認められていて、ただちに貸主に土地を返さなければならないわけではありません。貸主が亡くなった場合は、使用貸借は継続します。

使用貸借している土地の相続税評価額は自用地価格と同額であり、通常の賃貸借で借地権相当額が差し引かれるのとは異なります。相続税評価額を引き下げるために使用貸借をやめて通常の賃貸借にすることもできますが、その場合は相続税に詳しい税理士に相談することをおすすめします。

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