農業の確定申告におすすめの会計ソフト5選!選び方のポイントも解説

農業の確定申告が楽になる会計ソフトを知りたいなあ。
農業専用の会計ソフトを使った方がいいのかな?

農業を営む上で、会計や決算の作業の効率化を図りたいとお考えの方は多くいらっしゃるでしょう。

農業用の会計ソフトに必須の条件は農業簿記に対応しており、農業所得の確定申告ができるという2点です。

これらの条件を満たしていれば、必ずしも農業専用の会計ソフトである必要はありません

さらにクラウド型で自動取り込み、自動仕訳ができるソフトを使うことで農業経営はさらに楽になります。

税理士
この記事では農業の確定申告におすすめの会計ソフトを厳選してご紹介しますよ。

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この記事の監修税理士
監修税理士の税理士法人チェスター代表 福留正明
税理士法人チェスター代表
福留 正明
税理士・公認会計士・行政書士・登録政治資金監査人・ファイナンシャルプランナー。富裕層の資産税コンサルティングに強みを持つ税理士法人チェスターの代表社員。 相続税申告実績は税理士業界でもトップクラスの年間1,700件以上(累計9,000件以上)を取り扱う。相続税申告サービスやオーダーメイドの生前対策、相続税還付業務等を行う。 資産税関連書籍の執筆や各種メディアから取材実績多数有り。
税理士法人チェスターは、グループ総勢200名以上の税理士事務所です
「税理士が教えるお金の知識」(以降、本メディア)では一部、メーカーやサービス提供事業者から広告出稿をいただいておりますが、コンテンツの内容については本メディア独自に制作しており、情報の掲載有無やコンテンツ内容の最終意思決定に事業者は関与しません。

1.まずは農業経理に関する疑問を解決

そもそも自分は確定申告をする必要があるのかな?
手続きが面倒なイメージがあるけど、青色申告をするべき?

農業の確定申告についてこのような疑問をお持ちの方は多くいらっしゃるでしょう。

まずは自分が確定申告をする必要があるのか、確定申告をするとしたら青色申告と白色申告のどちらを行うべきなのかを正しく把握することが大切です。

また、農業の確定申告の際は専用の会計ソフトを使うべきかどうかについても解説します。

疑問1 兼業農家でも確定申告が必要?

農作物を生産できる夏場は農業に従事し、農閑期は会社員などで収入を得ている兼業農家は、確定申告が不要であるケースもあります

確定申告をする必要がないのは、具体的には以下のような場合です。

【1カ所から給与所得をもらっている場合】
  • ・給与所得が年末調整されている
  • ・農業所得が20万円以下である
【2カ所以上から給与所得をもらっている場合】
  • ・メインの給与所得が年末調整されている
  • ・年末調整をしなかった給与所得と農業所得の所得金額の合計が20万円以下である
  • または

  • ・給与所得の合計から雑損控除、寄付金控除、医療費控除、基礎控除を除いた給与所得を差し引いた残りが150万円以下、かつ農業所得が20万円以下である

ただし、農業所得が20万円以下であっても、給与所得が年末調整されていない場合は確定申告が必要であることに注意しましょう。

疑問2 青色申告をするべき?

青色申告をする最大のメリットは「青色申告特別控除」が受けられることです。

合計所得から最大65万円の控除が受けられ、課税所得が減るため節税につながります。

また、農林水産省が用意している農業を営む方限定の青色申告のメリットもあります。

青色申告の実績が1年分あれば、販売収入が基準収入の9割を下回った場合、下回った額の9割が補填(ほてん)される「収入保険」に加入できるのです。

天候などの不確定要素の多い農業という分野において、収入保険の存在はたいへん心強いですよね。

その他にも農業に専従の家族への報酬を必要経費に算入できる、損失の繰り越しができるなどのメリットがあります。

上記の理由から、農業を営む方には青色申告を行うことを強くおすすめします。

疑問3 農業専用の会計ソフトを使うべき?

「農業専用の会計ソフトじゃないと、農業の確定申告はできないのかな?」

このような心配をされている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は農業専用の会計ソフトを使わずとも、農業を営む方が確定申告をすることは可能です。

農業専用の会計ソフトだけが農業の確定申告に必要な機能をそろえているというわけではありません。

また、農業の確定申告に役立つ機能が農業専用ではない会計ソフトに付帯している場合もあります。

ここからは、農業用会計ソフトに必須の条件と農業経理が楽になる会計ソフトの選び方のポイントを解説します。

2.農業用会計ソフトに必須の条件

農業会計には、一般の会計とは異なる点がいくつかあります

まず、一般的な簿記とは異なる「農業簿記」と呼ばれる専用の会計知識が必要になります。

また、農業によって得た所得は「農業所得」といい、それ以外の所得とは区別して帳簿を付けます。

そのため、農業用の会計ソフトは以下の二つの条件が必須となります。

【農業用会計ソフトに必須の条件】
お金のプロ
これら二つの条件を満たしていれば、必ずしも農業専用の会計ソフトを利用する必要はありませんよ。

条件1 農業簿記に対応している

農業簿記には一般の簿記と異なる特殊な勘定科目を数多く用います

勘定科目とは
会社や個人が日々の取引を仕訳し、帳簿に記入する時に使われる分類項目の総称です。取引の内容を分かりやすく分類する「見出し」のようなもので、「お金を何に使ったのか」「なぜ入金があったのか」を誰が見ても理解できるようにすることに役立ちます。

例えば稲作用の苗や果物を育てるための種を購入した際に用いる「種苗費」という項目では、どの種をどれだけの数買ったかを正確に記入します。

その他にも子牛や子豚、ひななどの購入費用および種付料を指す「素畜費」、農薬の購入費用などを指す「農薬衛生費」などの勘定科目があります。

一般的な簿記では営業にかかったお金をすべて「必要経費」として一括できることと比べて、農業の勘定科目は細かく分類されているといえるでしょう。

「棚卸」の際にも農業に特有の勘定科目を利用します。

棚卸とは
年度末に手元に残っている商品や資材の在庫について、その金額を計算し、帳簿付けを行う作業のことです。

農業簿記の棚卸では、一般的に以下の四つの分類で帳簿付けを行います。

【農業簿記の棚卸で利用する勘定科目】
  • ・農産物
  • ・仕掛品
  • ・原材料
  • ・貯蔵品

この際、特に注意が必要なのは「仕掛品」という項目の計算です。

栽培中・収穫前の農作物や、販売目的で飼育中の動物などを「仕掛品」に計上します。

「原材料」に計上すると会計ミスとなってしまうため気を付けましょう。

他にも生物資産の管理などに農業簿記特有の考え方が見られます。

条件2 農業所得の確定申告ができる

農業所得の申告の際は、専用の様式にのっとって書類を作成する必要があります。

青色申告の場合、提出すべき書類は以下の6枚です。

【農業所得の確定申告の際に作成する書類】
  • ・確定申告書Bの第一表と第二表
  • ・4枚1組の青色申告決算書(農業所得用)

確定申告書B第一表には農業収入と農業所得を書き込みます。

農業所得は「事業所得」に分類されますが、「事業所得」は営業等と農業の二つに区分されています。

このうち「農業」の部分に農業所得を記入します。

通常の確定申告と同様に、青色申告決算書には貸借対照表や損益計算書が含まれます。

しかし、それらの表示科目は農業所得用に特化しており、一般用とは異なります

そのため、農業所得の確定申告に対応している会計ソフトを利用する必要があるのです。

3.農業経理が楽になる選び方のポイント

ここまでは農業用の会計ソフトに必須の条件を確認しました。

次に、農業の経理がさらに楽になる会計ソフトの選び方のポイントを解説します。

お金のプロ
以上2点の機能を備えた会計ソフトを利用することで、経理にかかる労力を大幅にカットすることができますよ。

条件1 クラウド型である

会計ソフトには「インストール型」と「クラウド型」の2種類あります。

インストール型の会計ソフトは、パソコンにソフトをインストールして使います。

一方、クラウド型のソフトはインストールが不要で、データの記録はそれぞれのサービスが提供するクラウド上で行われます。

このうち農業用会計ソフトにおすすめなのはクラウド型のソフトです。

クラウド型の会計ソフトには以下のようなメリットがあります。

【クラウド型会計ソフトのメリット】
  • ・ネット環境さえあればスマホ・タブレット・パソコンなど異なる端末から同じデータにアクセスすることができる
  • ・毎年の税制改正の際に自動でアップデートしてくれる

クラウド型の会計ソフトでは、例えば家のパソコンで入力したデータを出先からタブレットで確認することができます。

また、帳簿付けが必要な買い物をした直後に手元のスマホから入力することもできます。

家計簿アプリのような手軽さで帳簿付けができるのは大きな利点ですね。

条件2 自動取り込み、自動仕訳ができる

自動取り込み、自動仕訳ってどういうこと?

このような疑問をお持ちになった方もいらっしゃるでしょう。

自動取り込み、自動仕訳とは、銀行口座やクレジットカードと情報を連携させることで出入金や取引の明細を会計ソフトに自動で取り込み、仕訳を自動化する機能のことです。

紙の領収書を保管し、一つ一つソフトに手入力する作業と比べて手間が少ないのは歴然です。

これらの機能を搭載した会計ソフトを利用することで、経理に割いていた時間・人材をカットし、より本業に集中できる環境を整えることが可能になります。

4.おすすめ会計ソフト5選

ここからは「農業簿記に対応」しており、かつ「農業所得の確定申告ができる」会計ソフトをご紹介します。

以下の表はご紹介する五つのソフトについて「クラウド型かどうか」、「自動取り込み、自動仕訳に対応しているかどうか」、個人事業主・法人のどちらを対象としているか、利用料金をまとめたものです。

【農業用会計ソフト5サービスの特徴】

※横にスクロールできます
サービス名 クラウド型 自動取り込み・自動仕訳 個人事業主 法人 料金
freee スターター(個人事業主向け):1,480円/月(税抜)
ひとり法人(法人向け):3,980円/月(税抜)
マネーフォワード クラウド会計 パーソナル(個人事業主向け)年額プラン:月980円(税抜)(11,760円(税抜)/年)
ビジネス(法人向け):月4,980円(税抜)(59,760円(税抜)/年)
弥生会計 × 〇(あんしん保守サポートへの加入が必要) フリープラン(個人事業主向け):ずっと無料
セルフプラン(法人向け):初年度無料(2年目以降27,800円(税抜)/年)
農業簿記12 × 66,000円(税込)
らくらく青色申告農業版 × 記載なし × 新規ご購入8,800円(税込)
更新版4,400円(税込)

おすすめ1 freee

freee

freeeはクラウド型の会計ソフトです。

農業専用の勘定科目について初期設定でまとめて登録するだけで、農業簿記、農業申告に対応した会計ソフトとして利用することができますよ。

会計に不慣れな方にも優しい設計で、画面の指示に従って質問に答えるだけで簡単に確定申告に必要な書類を作成することができますよ。

もちろんネットバンクやクレジットカードと連携することができ、自動取り込み、自動仕訳の機能も搭載しています。

さらに「インボイス制度」や取引の書類を電子データで保存する際の要件が定められた「電子帳簿保存法」の改正に対応している点もうれしいポイントです。

インボイス制度とは
2023年10月1日にスタートした、事業者の仕入税額控除に関する制度です。制度の導入により、売り手はインボイスと呼ばれる適格請求書を発行・保存し、買い手はそれを保存しなければ仕入税額控除を適用できなくなりました。詳しくはこちらの記事で解説しています。

freeeが提供する個人事業主向けスタータープランは月額1,480円、スタンダードプランは月額2,680円です。

月額払いも受け付けているので、確定申告の必要があるときに少額で利用を開始できるのもうれしいポイントです。

おすすめ2 マネーフォワード クラウド会計

マネーフォワード

マネーフォワード クラウド会計はその名のとおりクラウド型の会計ソフトです。

金融口座の取引の明細が自動で取り込まれ、勘定科目の仕訳も自動で行ってくれる機能が日々の会計作業を格段に楽にしてくれますよ。

また、同じデータを遠隔地にいる人と共有しながら指示を出せるのはクラウド型ならではの利点です。

より良い農業経営の助けになるソフトであるといえるでしょう。

なお法改正やサービスの改善があると自動でバージョンが更新されるため、インボイス制度や改正後の電子帳簿保存法にも対応しています。

個人事業主向けのパーソナルプランなら月1,280円(年額プラン)でこれらの機能を活用することができますよ。

中小企業向けのビジネスプランでも月4,980円です。

メモ
マネーフォワード クラウド会計では最大65,736円分のAmazonギフトカードがプレゼントされるキャンペーンが2024年9月30日(月)まで実施されています。詳細はこちらをご覧ください。

おすすめ3 弥生会計

弥生会計はインストール型の会計ソフトです。

「インストール型ということは、クラウド型のような利便性はないのか……」

このようにお思いになった方もいらっしゃるかもしれませんね。

しかし弥生会計が提供する「あんしん保守サポート」に加入すればクラウドでデータを保存・共有、AIによる自動取り込み・自動仕訳というクラウド型と変わらないサービスが受けられます。

インストール型の利点である処理速度の速さとクラウド型の利点をどちらも備えているといえます。

また、インストール型でありながら初心者でも迷うことなく使える優れた操作性を備えています。

弥生会計で青色申告決算書(農業所得用)を作成する際の設定項目についても公式サイトの製品サポートページに明記されています。

個人事業主向けの弥生会計スタンダードはあんしん保守サポートのベーシックプランが付帯して48,000円(税抜)、中小企業向けの弥生会計プロフェッショナルは同じくあんしん保守サポートのベーシックプラン付きで80,000円(税抜)です。

インボイス制度や電子帳簿保存法にも対応しているので、安心して使い続けられるソフトですよ。

おすすめ4 農業簿記12

農業簿記12はその名のとおり農業専用のインストール型会計ソフトです。

銀行の明細の自動取り込み、勘定科目の自動仕訳の機能を搭載しています。

通信速度の影響を受けず、常に安定した動作を保っている点はインストール型のメリットです。

ただし、入力したパソコンからしかデータを閲覧できないのはインストール型のデメリットといえるでしょう。

価格は66,000円(税込)です。

おすすめ5 らくらく青色申告農業版

らくらく青色申告農業版は農業所得の青色申告に特化したインストール型の会計ソフトです。

新規ご購入8,800円(税込)という手頃な価格で購入できるのがうれしいポイントです。

2年目以降の更新版は4,400円(税込)とさらに価格が下がります。

ただし、法人は利用できないため気を付けましょう。

また、電子帳簿の保存、確定申告には対応していない点にも注意しましょう。

メモ
65万円控除を希望する場合は国税庁の提供する「e-Taxソフト」または国税庁サイトの「確定申告書等作成コーナー」から電子申告を利用しましょう。

5.まとめ

農業簿記、農業所得の確定申告には一般の簿記とは異なる点がいくつもあります。

そのため、農業用の会計ソフトは必ず農業簿記、農業申告に対応している必要があります。

ただし、必ずしも農業専用の会計ソフトを利用する必要はありません。

むしろクラウド型かつ自動取り込み、自動仕訳の機能が付帯している農業専用ではないソフトを使った方が経理に割く労力をカットできる場合もあります。

税理士
会計ソフトを導入して、面倒な確定申告に関する作業を効率化しましょう。

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