確定申告は記帳や帳簿・確定申告書の作成など多くの業務が発生するため、代行してもらいたいと考える方もいらっしゃるでしょう。
税理士に依頼することで煩雑な決算処理から逃れることができます。
一方で税理士に支払う費用がかる上、依頼するタイミングによっては確定申告までに間に合わない恐れもあります。
そのため全ての人が税理士に頼むべきとはいい切れません。
そこで本記事では、税理士に確定申告を頼む費用相場やメリット・デメリット、流れ、コストを抑える方法などをご紹介します。
税理士に依頼するかどうか判断する際の参考にしてくださいね。
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福留 正明
1.確定申告は税理士に頼むべき?
このように悩んでいる方もいらっしゃるかもしれませんね。
確定申告を税理士に依頼するかどうかは、予算や業務量などを考慮して検討しましょう。
依頼すると少なからず費用が発生するため、ご自身・社内で確定申告を行う場合よりも多くのコストがかかることは確かです。
確定申告にかけられる時間がなく税理士への報酬の金額が予算内であれば、業務を代行してもらうのも手だといえますよ。
なお確定申告を税理士に頼む場合は、依頼するタイミングに要注意です。
せっかく依頼しても、タイミングによっては確定申告までに間に合わない可能性があるためです。
確定申告を税理士に頼む際は、以下のタイミングを目安に依頼しましょう。
【確定申告を税理士に依頼する際のスケジュールの目安】
状況 | 依頼すべきタイミングの目安 |
---|---|
確定申告に関する業務を丸投げする場合 | 遅くとも~1月あたり |
必要書類を準備している場合 | 遅くとも~2月初旬あたり |
必要書類の準備・記帳を行っている場合 | 遅くとも~2月中旬あたり |
依頼すべきタイミングを逃してしまった方は、ご自身で確定申告を行う必要があります。
確定申告の手間を少しでも減らすには「会計ソフト」を利用することをおすすめしますよ。
会計ソフトを活用すれば、確定申告が初めてでも簡単な操作で記帳や確定申告書の作成を行えます。
おすすめのソフトは7章でご紹介しているので、チェックしてくださいね。
2.確定申告を税理士に頼む費用の相場
確定申告を税理士に依頼する場合、費用について気になる方が多くいらっしゃるのではないでしょうか。
税理士への報酬の金額は状況に応じて大きく異なります。
主に次の三つの要素によって、税理士への報酬の価格が変動するといえるでしょう。
- ・契約の種類
- ・依頼主の売上高
- ・依頼する業務の範囲
税理士との契約は、記帳代行や帳簿・確定申告書の作成など業務ごとに依頼する「スポット契約」と、税務指導や経営サポートなどを継続的に依頼する「顧問契約」の2種類に大別できます。
また依頼主の売上高によって税理士の業務量や取り扱う税金が大きく異なります。
そのため依頼主の売上高が大きくなればなるほど、支払う費用が高くなる傾向にあります。
さらに依頼する業務の範囲によっても報酬は大きく異なります。
例えば税理士に確定申告を依頼する場合であれば、日頃の帳簿付けが済んでいて確定申告書の作成だけを税理士に頼むケースと、仕訳や帳簿の作成から税理士に任せる「記帳代行」のケースが考えられます。
当然のことながら、確定申告書の作成だけでなく記帳から丸ごと頼んだケースがより費用が高くなりますよ。
2-1.個人事業主・フリーランスの場合
個人事業主・フリーランスが税理士に確定申告を頼んだ場合、費用の目安は次のとおりです。
【個人事業主・フリーランスが税理士に確定申告を頼んだ場合の費用の目安】
依頼内容 | 年間売り上げ | 費用相場 |
---|---|---|
記帳代行 | – | 1万5,000円程度~ (1仕訳当たり50〜100円程度) |
帳簿・確定申告書の作成 | 〜500万円 | 7万〜10万円程度 |
500万〜1,000万円 | 10万~15万円程度 | |
1,000万〜3,000万円 | 15万~20万円程度 |
なお一度限りでなく、税理士と顧問契約を結んで毎年の確定申告を依頼すれば、より高い節税効果が見込めるでしょう。
顧問契約を結んだ場合の顧問料の相場は月2万円程度、記帳も頼めば月3万円程度~です。
確定申告書の作成も依頼するとなると、顧問料の4~6カ月ほどの料金が別途でかかるケースが多いといえます。
なお以上の数値はあくまで目安なので、正確な値段は各税理士事務所に確認しましょう。
2-2.会社員・サラリーマンの場合
会社員やサラリーマンの方も、以下のケースで確定申告が必要とされます。
- ・年間の給料(給与所得)が2,000万円を超える
- ・本業の他に副業をしていて年間の所得が20万円を超える
なお会社員やサラリーマンの方が税理士に確定申告を代行してもらう費用は、以下の目安を参考にしてください。
【会社員・サラリーマンが税理士に確定申告を頼んだ場合の費用の目安】
依頼内容 | 年間売り上げ | 費用相場 |
---|---|---|
記帳代行 | – | 1万5,000円程度~ (1仕訳当たり50〜100円程度) |
帳簿・確定申告書の作成 | 〜100万円 | 5万円程度〜 |
100万〜500万円 | 7万〜10万円程度 | |
500万〜1,000万円 | 10万~15万円程度 |
2-3.不動産所得・不動産売却による譲渡所得の場合
「不動産所得」や「譲渡所得」のある方も所得の額が48万円以上の場合、確定申告が必要です。
不動産所得・譲渡所得のある方が税理士に確定申告を依頼する場合、税理士への報酬は10万円~が相場といわれています。
なお譲渡所得については、以下のように不動産を売却した金額によって依頼費用の目安が異なります。
【譲渡所得のある人が税理士に確定申告を頼んだ場合の費用の目安】
譲渡所得の金額 | 費用相場 |
---|---|
〜5,000万円 | 10万円程度 |
5,000万~1億円 | 15万円程度 |
1億円~ | 20万円程度 |
3.確定申告を税理士に頼む5つのメリット
確定申告を税理士に頼むには少なからずコストがかかるため、メリットを知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
具体的には以下のようなメリットがあります。
【確定申告を税理士に頼む5つのメリット】
メリット1 手間を省けてコア業務に集中できる
確定申告を税理士に代行してもらうことで、業務の手間や時間を削減できることが大きなメリットといえるでしょう。
確定申告をご自身で行う場合、事前の準備から帳簿・書類の作成、申告まで全て行わなければならず、他の業務の時間が減ってしまいます。
本来、時間を割くべきコア業務の進行が遅れる可能性もありますよね。
税理士に代行してもらえば、確定申告に関する業務を丸投げできるため本業に集中できます。
メリット2 正確な申告ができる
税理士に確定申告を任せることで、正確な申告をできることもメリットの一つです。
確定申告は「白色申告」と「青色申告」という二つの申告方式があり、どちらで申告するのかによって提出する書類や保存する帳簿、記帳方法などが異なります。
また受ける控除によっても必要な要件が違うため、申告者はご自身の状況に合わせて正確な申告を行わなければなりません。
しかし確定申告に不慣れな方や忙しい方などは、手続きに不備が生じることもあるでしょう。
申告内容に誤りがあった場合には修正や更正の請求などを行う必要があり、二度手間になってしまいます。
税理士であれば税務に関する専門知識を持っているため、依頼することで正確性の高い確定申告を期待できますよ。
メリット3 最善の節税対策を期待できる
税理士に頼むと、より節税効果の高い方法で確定申告ができることも大きなメリットです。
税理士は税金に関する正しい知識を持っているだけでなく、節税のテクニックを知っています。
また定期的に変わる税制や、それに伴う節税のポイントを押さえているのも専門家ならではだといえるでしょう。
税制はややこしいので、制度を正確に理解していなければ支払う必要のない税金を支払ってしまうケースも起こり得ます。
税理士に依頼しておけば、安心して節税対策できますよ。
メリット4 税務調査への対応も別途依頼できる
税理士と顧問契約を結べば、万一税務調査の対象となっても税理士に対応してもらえるので心強いといえるでしょう。
税務調査では経費の割合や領収書などが細かく確認されるので、ご自身で対応する場合は時間や手間がかかります。
税理士に代行してもらえば、本業への支障も少なくできますよね。
また税理士に確定申告を代行してもらった場合、確定申告書に税理士の署名が入ります。
税理士の署名が入ると確定申告書の信頼性が上がり、税務調査の対象となりにくくなりますよ。
メリット5 相談やアドバイスを受けられる可能性がある
税理士によっては税金だけでなく、経営に関しても熟知しています。
会計や税務上の見地から、経営に関するアドバイスを受けることができますよ。
確定申告の効率化のみならず経営改善を目指している方は、専門知識を持った税理士に相談してみると良いでしょう。
税理士による経営のアドバイスを受けてしっかり役立てたいという方には、継続的な顧問契約を結ぶことをおすすめします。
4.確定申告を税理士に頼む3つのデメリット
このように税理士に確定申告を依頼するデメリットが知りたいという方もいらっしゃるかもしれませんね。
確定申告を税理士に頼む際には、以下三つのデメリットを押さえておきましょう。
【確定申告を税理士に頼む3つのデメリット】
デメリット1 コストがかかる
確定申告を税理士に頼む大きなデメリットは、報酬を支払う必要がある点だといえるでしょう。
どんなに費用を抑えても確定申告のために数万円の出費が生じてしまいます。
そのため少しでも費用を抑えたいという方には、税理士への依頼はおすすめできません。
コストを抑えて確定申告に関する業務を効率化したいという方には、会計ソフトの利用がおすすめです。
会計ソフトは1カ月当たり数百円から数千円程度の利用代金で、会計業務を自動化してくれるので、税理士に依頼するよりも安価だといえるでしょう。
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デメリット2 情報の共有や密なコミュニケーションが必要
確定申告を税理士に代行してもらう場合は、税理士とコミュニケーションを密に取る必要があります。
税理士は確定申告書をはじめとする必要書類を、依頼主が提供する情報をもとに作成するためです。
打ち合わせを行ったり連絡したりする機会が増えるため、コミュニケーションが苦手な方にとってはデメリットだといえるでしょう。
デメリット3 会計の知識を構築しにくい
確定申告の業務を税理士に任せた場合、知識が増えないことも懸念点だといえます。
依頼する業務の範囲が大きいほど、その分会計に関する知識が磨かれません。
しかしいざというときのために、ご自身または社内の会計知識を構築しておくことも重要です。
税理士に確定申告を依頼した場合でも、ある程度申告の状況を説明してもらったり、普段から自発的に勉強したりしておくことをおすすめします。
5.確定申告を税理士に依頼・相談した方が良いケース
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるでしょう。
状況によってはご自身で確定申告を行うよりも、税理士に依頼する方が良いケースがあります。
特に以下の状況にある方は、確定申告を税理士に依頼した方が良いといえるでしょう。
【確定申告を税理士に依頼・相談した方が良いケース】
ケース1 売り上げが1,000万円を超えている
年間の売り上げの額が1,000万円を超えた場合には、税理士に依頼することをおすすめします。
年間の売り上げの額が1,000万円を超えると「課税事業者」に切り替わり、消費税の申告が必要になります。
売り上げが1,000万円を超えた2年後から消費税の申告義務が発生し、消費税の申告手続きを行わなければなりません。
消費税の申告をご自身で行うとなると多くの手間がかかるので、税理士と顧問契約を結び、丸ごと業務を代行してもらうと良いでしょう。
ケース2 インボイス制度に対応している
2023年10月にスタートした「インボイス制度」に対応している事業者の方にも、税理士に確定申告を頼むことをおすすめします。
売り上げの額が1,000万円以下の場合、免税事業者として消費税の納付義務が免除されていましたが、制度の開始に伴いインボイス事業者になった方は消費税の納付義務が発生します。
消費税の申告手続きではただでさえ専門知識が問われる上、インボイス制度が開始したことにより従来の形式が使えなかったり、新しいルールが増えていたりします。
そのためより幅広い知識が求められるといえるでしょう。
税務のプロフェッショナルである税理士に任せておくと、インボイス制度に対応した事業者も安心して確定申告できるでしょう。
ケース3 法人化(法人成り)する予定である
個人事業主は法人化する場合、税理士への依頼を検討しましょう。
法人化を行うと個人事業主だった期間と法人の期間に分類し、収入や支出について二つのの確定申告を行わなければなりません。
法人化した年の確定申告時には、通常の確定申告時とは異なり以下のような注意点が多くあります。
- ・個人事業主の期間の経費であっても、法人設立のための費用は法人の経費になる
- ・個人事業主の期間に使用していた資産を法人化した後も使用する場合、引き継ぎ方法によっては消費税が発生する
- ・法人化した後に受け取った役員報酬を確定申告する必要がある など
法人化した際の確定申告は複雑な手続きが必要なため、税理士に依頼しておくと安心ですよ。
6.確定申告を税理士に丸投げする流れ
初めて税理士に依頼する場合、手続きの流れをあらかじめ知っておきたいという方もいらっしゃるでしょう。
大まかには以下の流れで税理士に確定申告を依頼します。
【確定申告を税理士に丸投げする流れ】
STEP1 見積もりを依頼して税理士を選ぶ
まずは依頼する税理士を探すところから始めましょう。
依頼したい税理士事務所に問い合わせて見積もりを出してもらい、費用を確認する必要があります。
同じ価格でも、税理士によって対象とする業務の範囲は異なります。
そのため複数の税理士の見積もりを確認し、業務内容や価格を比較して選ぶことをおすすめします。
税理士ドットコムは利用者実績トップの税理士紹介サービスであり、24時間無料で相談を受け付けています。
豊富な実績を活かして全国各地の税理士のなかから、利用者の状況に適した税理士を見つけてくれますよ。
エリア別、依頼内容や業種ごとに税理士を検索したり、人気税理士のランキングを確認したりすることも可能です。
STEP2 契約を締結する
依頼する税理士を選んだら、続いて契約手続きに進みます。
依頼したい業務内容や年間売り上げ、領収書の枚数、従業員数などのデータを明確にして全て伝えておくようにしましょう。
伝えていない業務があって後々追加で料金が発生するといった事態になると当初の予算をオーバーしてしまう可能性もあります。
提示された見積もり金額に納得がいかない場合は、税理士に交渉するのも手ですよ。
契約書を確認して内容に同意したら署名し、契約を締結しましょう。
STEP3 必要書類を渡す
契約を結んだら、確定申告を代行してもらうために必要な書類を税理士に提出します。
記帳代行から依頼する場合に提出が求められることの多い書類を以下にまとめました。
【税理士に確定申告を依頼する場合の必要書類】
書類 | 具体的な書類の例 |
---|---|
現金収支にまつわる書類 | 現金出納帳、領収書など |
預金収支にまつわる書類 | 通帳のコピー、振り込みの明細など |
売り上げにまつわる書類 | 売上管理表、請求書の控えなど |
支払いにまつわる書類 | 支払管理表、請求書の控えなど |
控除にまつわる書類 | 各種控除の証明書類 |
給与にまつわる書類 | 賃金台帳、給与明細など |
依頼する税理士によって提出書類は異なるため、契約時に確認しておきましょう。
STEP4 確定申告書を作成してもらう
書類を提出すると、その書類をもとに税理士が確定申告書の作成を行います。
確定申告書を作成してもらったら、書類の内容に誤りがないかをチェックします。
STEP5 確定申告を行ってもらう
確定申告書が完成したら、税理士に申告を行ってもらいます。
税務署に直接書類を提出したり「e-Tax」というシステムを用いたりして、確定申告を行うケースが一般的ですよ。
確定申告書の提出が完了したら、期限内に所得税を納付しましょう。
基本的に所得税の納付期限は、3月15日までと決められています。
納める所得税よりも控除の額が大きい場合は納税が不要であったり、源泉徴収や予定納税で税金を払いすぎていた場合は税金の還付を受けられたりする可能性があります。
なお所得税の納付方法には「口座からの引き落とし」「クレジットカード」「スマホアプリ」など、複数あります。
納税方法について詳しく知りたい方は国税庁サイトをご確認ください。
7.低コストで確定申告を効率化!おすすめ会計ソフト3選
確定申告の業務を効率化したくても、予算をかけられないという方もいらっしゃるでしょう。
そんな方には会計ソフトの導入がおすすめです。
会計ソフトを導入すれば、税理士に依頼するよりも費用を抑えながら、確定申告に関する業務を大幅に削減できます。
簡単な操作で記帳や帳簿の作成が完了し、取り込んだ情報をもとに確定申告に必要な書類が自動で作成されるソフトも多くありますよ。
【コストを抑えて確定申告を効率化したい方におすすめの会計ソフト3選】
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– | |
パーソナル | 15,360円/年 (月額払い:1,680円) |
1カ月間無料 | |||
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8.まとめ
確定申告を税理士に依頼する場合、帳簿の作成から依頼する記帳代行のケースと、確定申告書の作成だけを依頼するケースに分けられます。
依頼する業務の範囲が大きければ大きいほど、税理士への報酬の金額も高くなりますよ。
どんなに安価でも数万円の出費が生じるケースがほとんどだといえるでしょう。
また確定申告書の作成だけを依頼する場合、ご自身で作成した帳簿を税理士に渡す必要があるため、事前に帳簿付けを行っておく必要がある点に注意しましょう。
「コストを抑えて確定申告を効率化したい」「確定申告書の作成だけを依頼したい」といった場合には、会計ソフトの導入がおすすめです。
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