企業の経理を担当していて、試算表の必要性や作り方について疑問を持っているという方は少なくないでしょう。
なんとなく作ってはいても、見方が分からず活用できていない……という場合もあるかもしれません。
しかし試算表は決算書を作成する前にミスを発見するために必要なだけでなく、経営改善にも活用できる重要な集計表です。
ここでは試算表の必要性や種類別の見方・作り方を分かりやすく解説します。
福留 正明
1.試算表とは?
企業の経理担当者にとっては作成する機会の多い試算表ですが、実は何のために作るのか分かっていない……という方も多いのではないでしょうか。
試算表は決算書類を作成する前段階の集計表です。
ここでは試算表と決算書の関係や試算表が必要になるシーンなど、試算表にまつわる基礎知識をまとめて解説します。
1-1.試算表は決算書作成前に作る集計表
試算表は日々の仕訳や総勘定元帳への転記ミスを発見するために役立つものです。
もし試算表の集計数値が合わなければ、仕訳帳か総勘定元帳のどちらかにミスがあるというわけです。
試算表を作る回数やタイミングに決まりはなく、月に1度作成する会社もあれば週に1度作成する会社もあります。
おすすめはなるべくこまめに試算表を作成することです。
試算表を作る頻度を高くすることで日々の仕訳に間違いがないかを定期的に確認することができます。
正確なデータをもとに損益計算書や貸借対照表といった決算書を作成することができるからです。
決算書は年に一度、会社が独自に決めた時期に作成するものです。決算時期は12月か3月にしている会社が多いですが、基本的に自由に設定することができます。
試算表には以下の3種類があります。
- ・合計試算表
- ・残高試算表
- ・合計残高試算表
それぞれの試算表についてはこの後詳しく解説します。
1-2.試算表が必要な3つの理由
試算表が必要な理由は主に三つあります。
- (1) 決算書を作成するため
- (2) 銀行から融資を受けるため
- (3) 経営方針の見直しをするため
理由1 決算書を作成するため
1年に1度決算書を作成する際は、定期的に作成した試算表をもとにします。
仕訳帳から総勘定元帳への転記が正しく行われているかを確認することによって、正確な数字をもとに決算書を作ることができます。
理由2 銀行から融資を受けるため
銀行に融資を申し込む際は、きちんと返済能力があるということを証明する書類が必要です。
通常数年分の決算書を提出しますが、決算期から時間がたっている場合現在の経営状態を伝えるために試算表が必要になります。
年に1度しか作成しない決算書よりも、定期的に提出する試算表の方がタイムリーに会社の経営状態を把握することができるのです。
理由3 経営方針の見直しをするため
試算表は会社の経営方針を見直す際にも役立ちます。
損益計算書や貸借対照表といった決算書は年に1度しか作成しませんが、試算表は会社で
芳しくない勘定科目があった場合、早期に対策を打つことが可能になるのです。
2.種類別・試算表の作り方とは?
試算表の作り方は一般的に「総勘定元帳から数字を転記する」と説明されます。
しかし、試算表には3種類ありそれぞれ作り方が異なります。
ここでは3種類の試算表の特長と作り方を一つ一つ解説します。
2-1.合計試算表
合計試算表は総勘定元帳の勘定科目ごとに借方・貸方の合計を集計した試算表です。
合計試算表を作成するには総勘定元帳の借方、貸方それぞれの合計額を計算し、合計試算表に転記します。
総勘定元帳からの転記が正しく行われていれば、借方合計と貸方合計は必ず一致します。
合計試算表は転記ミスや転記漏れを確認するには適していますが、残高を確認するには不向きであるというデメリットがあります。
2-2.残高試算表
残高試算表は総勘定元帳の勘定科目ごとに残高のみを一覧にしたものです。
そのため、合計試算表とは異なり借方か貸方の一方にしか数字を記入しません。
残高試算表を作成するには勘定科目ごとに借方合計、貸方合計を計算し、差し引きして残高を求め、残高試算表に転記します。
借方合計と貸方合計は必ず一致します。
残高試算表は貸借対照表や損益計算書といった決算書のもととなるというメリットがありますが、転記ミスや転記漏れは発見しにくいというデメリットもあります。
2-3.合計残高試算表
合計残高試算表は合計試算表と残高試算表が一緒になった試算表です。
合計残高試算表を作成するには勘定科目ごとに貸方合計、借方合計を計算して合計試算表部分に転記し、貸方合計と借方合計を差し引きして残高を求めて残高試算表に転記します。
合計残高試算表は合計試算表、残高試算表両方の長所を兼ね備えた試算表です。
しかし、作成に時間がかかるというデメリットもあります。
3.試算表をスムーズに作成するには?
試算表の作成は健全な経営の基本であるといえますが、会計作業に時間を奪われて根幹の仕事がおろそかになってしまっては元も子もありません。
できるだけスムーズに試算表を作成する方法があれば、ぜひ利用したいですよね。
試算表は主に以下のような方法で作成することができます。
- ・手書き
- ・Excel
- ・会計ソフト
手書きで試算表を作成する場合、仕訳した数字を一つ一つ総勘定元帳に転記した上で勘定科目ごとに集計をしなければならず、膨大な手間と時間がかかってしまいます。
Excel等の表計算ソフトを利用しても、数字を手入力する段階でミスが発生するのを避けることは難しいですよね。
会計ソフトを利用すればクレジットカードや銀行口座と連携することができ手入力という作業をカットすることができます。
会計ソフトが自動で計算を済ませてくれるため、計算ミスをする心配もありませんよ。
おすすめの会計ソフトについて詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください。
4.まとめ
試算表は決算書を作成する前に作成する集計表です。
「合計試算表」「残高試算表」「合計残高試算表」の3種類があり、それぞれ作り方や特徴が異なります。
試算表をこまめに作成して仕訳帳から総勘定元帳への転記ミスがないかをチェックすることが正しい決算書を作成するためには不可欠です。
銀行から融資を受けるため、会社の経営状況を見直すためにも試算表を作りましょう。