このように耳慣れない「管理会計」という言葉に戸惑っている会計初心者の方、企業の経理の方は多いでしょう。
「会計」のなかに種類があるなんて、急に聞いても驚いてしまいますよね。
しかし管理会計を導入することで、企業の業績改善が図れるかもしれませんよ。
この記事では管理会計の内容や管理会計にまつわる基本事項を分かりやすくご説明します。
福留 正明
1.管理会計とは?人には聞けない基礎知識
「管理会計って具体的にどういうことなんだろう……?」
「普段やっている会計と何が違うの?」
管理会計について調べていて、このような疑問を持つ方も多いでしょう。
ここでは管理会計の内容、財務会計との違いについてご説明します。
1-1.管理会計とは企業の内部管理のために行う会計処理
管理会計とは企業が内部に向けて行う会計処理のことです。
企業は管理会計で得た情報に基づいて経営意思決定を行うため、会計処理の内容は企業の実態に即した形で行われます。
管理会計は確定申告や決算と違って決められた期日はなく、月毎に行う企業もあれば年度毎に行う企業もあります。
また、管理会計は義務ではありません。
しかし、管理会計をすることで企業の業績を改善できると考えられるため、非常に重要なのです。
1-2.管理会計と財務会計の違い
会計の種類には管理会計のほかに「財務会計」があります。
管理会計と財務会計の違いについて、これからご説明します。
財務会計とは、株主や銀行、税務署といった外部に提示するために行う会計処理のことです。
決算や確定申告のために行われるものが財務会計に含まれます。
一般的に「会計」と聞いてイメージするのは管理会計ではなく財務会計かもしれませんね。
財務会計は税金の申告のために行われるため、すべての会社で一律のルールに基づいて行われるのも管理会計との違いです。
管理会計と財務会計の違いを表で見てみましょう。
管理会計 | 財務会計 | |
---|---|---|
義務 | なし | あり |
提出先 | 社内 | 社外(株主、銀行、税務署) |
作成書類 | 事業計画書、中期経営計画資料、取締役会資料など | 法定の決算書(貸借対照表、損益計算書など) |
ルール | 独自 | 法定 |
期限 | なし | あり |
2.管理会計でよく使う考え方
管理会計は財務会計と違って任意である分、見慣れない用語が多いかもしれません。
ここでは管理会計でよく使われる「限界利益」「損益分岐点」という二つの考え方についてご説明しましょう。
2-1.限界利益
限界利益とは売上高から変動費を引いた金額を指します。
売上高から変動費を引いた限界利益から、さらに固定費を引いたものが営業利益となります。
営業利益を増やすためには、限界利益が固定費を上回る必要があります。。
2-2.損益分岐点
管理会計においては、「損益分岐点」も非常に重要な概念です。
損益分岐点とは、簡単にいってしまえば「これより上がると黒字、これより下がると赤字になる境目の売上高」のことです。
より具体的には、限界利益が固定費と等しく、営業利益が0円となる売上高のことをいいます。
文字どおり損するか利益を上げるかの分岐点ということですね。
もし売上高が損益分岐点を下回っている場合は以下のような対策が考えられます。
- ・固定費を減らす
- ・変動費割合を下げる
- ・値上げして売上額を増やす
3.管理会計を導入するメリット
「説明を聞いてもやっぱり難しそう……。結局管理会計って導入した方がいいの?」
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。
ここでは管理会計を導入するメリットについてご説明します。
メリット1 経営改善を図ることができる
財務会計は全ての会社で一律のルールを採用しているため、会社ごとの経営の実態を知るためには適していません。
一方、管理会計なら財務会計とは違い自社の成長のために必要な情報を手に入れることができます。
管理会計の方法の一つが支出を固定費と変動費に分ける「固変分解」です。
経営にあたって発生する費用を固定費と変動費に分け「限界利益」や「損益分岐点」といった概念を使うことによって、会社が黒字になるための施策を考えやすくなるのです。
メリット2 部署ごとの業績を評価することができる
会社の規模が大きくなると部署ごとに業績を把握し、目標を立てる必要がありますよね。
管理会計をすべての部署で導入して損益を把握すれば、会社への貢献度が大きい部署、課題を抱えている部署が一目瞭然です。
どの部署に人員や経費を費やすべきなのかといった経営方針が立てやすくなり、さらなる業績改善へとつながるでしょう。
4.管理会計を簡単に済ませる方法はあるの?
実は、会計ソフトを使えば管理会計を簡単に済ませることができますよ。
ここでは管理会計におすすめの会計ソフトを三つご紹介します。
おすすめ1 freee
freeeは銀行等の金融機関、クレジットカード、決済サービスのデータと連動でき、簡単に日々の業務を効率化できるクラウド型会計ソフトです。
また債務・債権の管理や人事労務、経費の精算など会計以外の業務の管理や効率化をまとめて行えるのもうれしいポイントです。
さらにfreeeは、損益・現預金・資金繰りのレポートや入出金の管理レポート、収益・費用のレポートなど、経営に役立つあらゆる分析が自動で行われます。
タグを利用して「クロス分析」を行い、詳細に数字を把握できますよ。
コストと機能のバランスを考えながら管理会計を手軽に始めてみたい方にfreeeはぜひおすすめです。
なお2023年にスタートした「インボイス制度」に対応しているのもうれしいポイントといえるでしょう。
おすすめ2 マネーフォワード クラウド会計
マネーフォワード クラウド会計なら管理会計をスムーズに自動で行うことができます。
銀行・クレジットカードと連携できるのはもちろん、他の会計ソフトで作られた仕訳データであっても問題なくインポートできるので安心です。
またマネーフォワード クラウド会計は同社が提供する他のサービスと連携して業務をどんどん効率化できるのが大きな特長の一つです。
クラウド型であるためアカウント共有をすれば企業の代表がリアルタイムで会社の業績を確認できるのも魅力的ですよね。
なお随時アップデートが実施されていて、インボイス制度や改正後の電子帳簿保存法にも対応できますよ。
1カ月の無料お試し期間があるのでまずは気軽に使い勝手を試してみましょう。
おすすめ3 弥生会計シリーズ
弥生シリーズは25年連続売上ナンバーワンの実績を誇る会計ソフトです。
多くの顧客から信頼性を得ているサービスであることが分かりますよね。
弥生会計 オンラインは弥生が提供するクラウド型会計ソフトです。
弥生会計 オンラインでは経営状況が一目で把握できるさまざまなレポートを作成することができます。
また、全プラン初年度は無料で利用できるため、今がチャンスですよ。
ちなみに取引の書類を電子データで保存する際の要件を定めた「電子帳簿保存法」の改正やインボイス制度にも対応しています。
会社の規模が大きく、さらに詳細な分析を行いたい場合はインストール型の「弥生会計プロフェッショナル」の利用も検討してみてくださいね。
5.まとめ
管理会計とは会社の内部で経営意思決定のために利用することを前提に出力する経営データのことです。
財務会計とは違い義務ではないため、必ず行わなくてはいけないというものではありませんが、管理会計は企業を順調に成長させるために欠かせないものだといえるでしょう。
年に一度の決算で満足するのではなく、管理会計でしっかりと企業の現状を把握し、業績改善に向けた方針を立てましょう。
「導入してみたいけど、難しそう……」
とお悩みの方は、会計ソフトを使って自動的に管理会計をできるようにしましょう。