確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日までの1カ月間です。
確定申告が必要であるにもかかわらず申告の期間を過ぎてしまった場合、どのようなペナルティーが科されるのか分からず不安だという方もいらっしゃるでしょう。
確定申告の期間を過ぎてから手続きをすると、本来納めるべき税金に加えて延滞税や無申告加算税などが発生するリスクがあります。
また申告の期間が過ぎてしまったからといって放置すると、さらに重いペナルティーが科されるケースもあるため注意が必要です。
申告の期限が迫って慌てたり、間に合わずペナルティーを科されたりすることがないように、早めに準備を進めておくことが大切ですよ。
この記事では確定申告の期間を過ぎた場合のペナルティーや、過ぎてしまった場合の対処法などについて詳しく解説します。
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福留 正明
1.確定申告の期間を過ぎたらどうなる?
このように確定申告の期間が過ぎた場合にどうすれば良いか分からず、不安だという方もいらっしゃるでしょう。
結論からいってしまえば、期間を過ぎても確定申告をすることは可能です。
ただし確定申告の期間は原則として毎年2月16日から3月15日までの1カ月間であり、1日でも過ぎた場合には期限後申告として扱われてしまいます。
期限後申告として扱われる場合、課税などのペナルティーが発生する可能性があります。
ペナルティーを科されたくないからといって放置すると、刑事事件に発展することもあり得るため、できるだけ早く申告することが大切です。
2.確定申告の期間を過ぎた場合と無申告の場合のペナルティー
確定申告の期間を過ぎてから申告することを「期限後申告」、期限を過ぎても申告しないことを「無申告」といい、状況に応じて以下のようなペナルティーが科されます。
なお期限後申告をした場合と無申告の場合とで、科されるペナルティーの内容や重さは異なります。
ペナルティー1 延滞税がかかる
確定申告の期限は所得税の納付期限と同じであり、期間が過ぎても申告しない場合には納税が遅れるため「延滞税」が課されます。
課される延滞税の割合は、納期限の翌日から2カ月以内と2カ月以上とで変わります。
遅れてしまった場合には、できるだけ早く申告すると良いでしょう。
なお延滞税の額は、国税庁サイトの計算シミュレーターで確認できますよ。
ペナルティー2 無申告加算税が上乗せされる
期間内に確定申告をしなければ、無申告と見なされ「無申告加算税」が課されます。
ただし税務署の調査を受ける前や調査の事前通知を受ける前に自主的に期限後申告をした場合には税率が軽減され、要件を満たせば無申告加算税は課されません。
ペナルティー3 青色申告特別控除が10万円になる
青色申告者が期限後申告をする場合、その年の「青色申告特別控除」は10万円に減額されます。
また青色申告決算書の修正や修正申告書の作成もしなければならないため注意が必要です。
ペナルティー4 重加算税が課される/刑事罰に処される
納税の義務があるにもかかわらず、確定申告をせずに放置した場合、税務署による調査が入り「ほ脱」を疑われます。
税務署は銀行口座の預貯金や取引先の会計帳簿、請求書、領収書などを調査し、無申告や不正を発見します。
故意によるものだと判断された場合は、税率40%の重加算税が課されたり、刑事罰を受けたりする可能性があります。
また脱税と見なされなくても、正当な理由なく申告しなかった場合には、「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が科されることがあります。
3.確定申告の期間を過ぎたら?過ぎそうな場合は?対処法を解説
期間を過ぎてから確定申告をする場合、できるだけペナルティーを軽くしたいと思う方も多くいらっしゃるでしょう。
また期日に書類の提出が間に合いそうにない場合、できることがあれば事前に対処しておきたいところですよね。
対処法1 期限後申告をする
確定申告の期間が過ぎてしまっても自ら期限後申告をすることで、ペナルティーが軽減されたり、免除されたりするケースがあります。
納税の義務があるにもかかわらず確定申告を行わなかった場合、無申告加算税が課されます。
ただし確定申告の期限後1カ月以内に申告した場合でも、以下の要件を全て満たせば無申告加算税が免除されますよ。
- ・期限後申告が法定申告期限から1カ月以内に自主的に行われている
- ・期限後申告にかかる納付すべき税額の全額を法定納期限(口座振替納付の手続きをした場合は期限後申告書を提出した日)までに納付している
- ・期限後申告日の前日から過去5年間に、「無申告加算税」または「重加算税」を課されたことがなく、かつ、期限内申告をする意思があったと認められる場合の無申告加算税の不適用を受けていない
無申告加算税が免除される要件について、詳細は国税庁サイト「No.2024 確定申告を忘れたとき」をご確認ください。
また税務署の調査が入る前や調査の事前通知を受ける前に自主的に申告すれば、無申告加算税の税率が軽減されます。
対処法2 期限延長申請をする
災害などのやむを得ない事情により、確定申告や所得税の納付が期間内にできない場合は、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を所轄の税務署に提出しましょう。
期限延長申請が認められると、「やむを得ない事情」がなくなった日から2カ月以内に、申告または納付することで期間内と同様の扱いがされます。
申告ができない事情が解決した後、できるだけ早く必要書類を提出しましょう。
対処法3 延納制度を利用する
確定申告の期間内に納税することが難しいと判明した際は、「延納制度」を利用することで納税期限の延長が可能です。
延納を申請するには、確定申告書にある「延納の届出」の欄に「申告期限までに納付する金額」と「延納届出額」を記入します。
4.確定申告の内容を間違えてしまったら
このように確定申告で申告する内容を間違えた場合にどうすれば良いか知りたいという方もいらっしゃるでしょう。
誤った内容を申告してしまった場合には、訂正が必要です。
確定申告の訂正の方法は3種類あり、期間内に行うか期間後に行うかなど、条件によって手続きが異なります。
以下は確定申告の内容の訂正方法をまとめた表です。
訂正のタイミング | 訂正方法 | 状況 |
---|---|---|
確定申告の期間内 | 訂正申告 | – |
確定申告の期間後 | 修正申告 | ・納税額を少なく申告した場合 ・還付金を多く申告した場合 |
更正の請求 | ・納税額を多く申告した場合 ・還付金を少なく申告した場合 |
4-1.確定申告の期間内の場合
確定申告の期間内に内容を訂正する場合、「訂正申告」が必要です。
訂正申告後、最初に確定申告したときよりも納税額が多くなる場合は不足分を追加で納税する必要があり、逆に納め過ぎた場合には還付を受けることができます。
正しい内容の確定申告書を改めて作成し、期間内に再提出しましょう。
なお訂正申告をした場合、期間内に2部以上の確定申告書を提出することになりますが、最後に提出したものが正式な書類として取り扱われます。
またe-Tax(電子申告)の場合、正しい申告書を作成して送信すると最新のデータに上書きされるため、税務署へ連絡などは必要ありません。
4-2.確定申告の期間を過ぎている場合
確定申告の期間を過ぎてからも訂正は可能です。
ただし期間後の訂正の手続きには「修正申告」と「更正の請求」の二つがあり、どちらの方法で行うかは状況によって以下のように異なります。
修正の方法 | 状況 |
---|---|
修正申告 | ・納税額を少なく申告した場合 ・還付金を多く申告した場合 |
更正の請求 | ・納税額を多く申告した場合 ・還付金を少なく申告した場合 |
納税額を少なく申告した場合、もしくは還付金を多く申告した場合は「修正申告」の手続きを、納税額を多く申告した場合、もしくは還付金を少なく申告した場合は「更正の請求」の手続きを行います。
4-2-1.納税額を少なく申告した場合
確定申告の期間を過ぎていて納税額を少なく申告した場合、もしくは還付金を多く申告した場合、税務署から更正が行われる前であれば修正申告が可能です。
ただし、納税額を少なく申告した場合は、修正申告書を提出して差額を納税する日までの延滞税が加算されるため、速やかに手続きしましょう。
令和4年分以降の訂正の場合、「申告書第一表」と「申告書第二表」を所轄の税務署に提出します。
令和3年分以前の訂正をする場合は、「申告書B第一表」と「申告書第五表」を提出しましょう。
また新たに必要な書類が発生した場合は、忘れずに添付するよう注意が必要です。
なお税務署の調査や更正を受けると、「過少申告加算税」などの税金が課される場合があります。
4-2-2.納税額を多く申告した場合
納税額を多く申告もしくは還付金を少なく申告しており、確定申告の期間を過ぎている場合、「更正の請求」をして納め過ぎた税金の還付を受けることができます。
「更正の請求書」を作成し、事実を証明する書類を添付して所轄の税務署に提出しましょう。
なお更正の請求の対象となるのは、以下のようなケースです。
- ・二重計上により売上を過大に申告して納税した
- ・事業に関する経費関係の計上が漏れており、計算されていなかった
- ・医療費控除や住宅ローン控除などの申告漏れがあった など
更正の請求ができる期間は、原則として確定申告の期限から5年以内とされていますが、修正申告とは異なり、手続きをしなくてもペナルティーは発生しません。
5.確定申告を簡単に終わらせるには会計ソフトが便利
確定申告はできるだけスムーズに時間をかけずに終わらせたいものですよね。
専門的な簿記の知識がない方が確定申告を行うなら、「会計ソフト」の利用がおすすめです。
会計ソフトは「クラウド型」と「インストール型」の2種類に大別できます。
小規模な法人や個人で確定申告を行う場合は、クラウド型の会計ソフトがおすすめです。
クラウド型の会計ソフトにはインターネット環境さえあれば複数の端末で利用でき、スマートフォンの専用アプリで簡単に確定申告書を作成・提出できるものもありますよ。
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6.還付申告は確定申告の期限後も可能
還付申告は確定申告の期間とは関係なく、その年の翌年1月1日から5年間まで行うことができます。
例えば令和4年分の還付申告が可能な期間は、令和5年1月1日から令和9年12月31日までです。
期限を過ぎてもペナルティーはありませんが、税金の還付は受けられなくなるため注意しましょう。
- ・年の途中で退職し、年末調整を受けていない
- ・一定の要件のマイホームの取得などをして、住宅ローンがある
- ・マイホームに特定の改修工事をした
- ・認定住宅の新築または取得をした
- ・災害や盗難などで資産に損害を受けた
- ・特定支出控除の適用を受ける
- ・多額の医療費を支出した
- ・特定の寄附をした など
7.まとめ
確定申告の期間は原則として毎年2月16日〜3月15日であり、期間内に書類を提出する必要があります。
期間を過ぎてしまった場合でも、後から確定申告書類の提出をすることは可能ですが、延滞税が課されたり、青色申告特別控除の金額が10万円になったりといったペナルティーが発生します。
さらに無申告と見なされた場合には無申告加算税が課され、「ほ脱」を疑われた場合には重加算税が課されたり刑事罰に処されたりするケースもあるため注意しましょう。
なお確定申告後、提出書類の内容に誤りが発覚した場合にも、状況によっては延滞税などが課されるリスクがあります。
ただし確定申告の期間を過ぎてしまった場合でも、すぐに対処することでペナルティーを減免できるケースもあるため、できるだけ早く手続きを済ませましょう。
「期間中に書類の準備や手続きが間に合わなかった……。」ということがないように、できるだけ早めに確定申告の準備をしておくのがおすすめです。
初めて確定申告を行う方や簿記の知識がないという方であれば、会計ソフトを利用するのが便利ですよ。
会計ソフトを利用すれば、日々の帳簿付けや確定申告書類の作成・提出を簡単に済ますことができます。
会計ソフトによっては金融機関などの取引データを自動で仕訳してくれる機能や、領収書の写真を撮影することでデータを取得してくれる機能もあります。
手作業よりも正確に、時間や手間をかけずに確定申告の準備ができますよ。
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