このように飲食店を営んでおり、確定申告が必要なのか、どのように行えば良いのか分からないという方も多くいらっしゃるでしょう。
1年間(1月1日~12月31日)に生じた収益や給与などの所得をもとに、国に納める税金を計算し申告することを「確定申告」といいます。
個人事業主として飲食店を営み一定の収益が発生している場合、翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。
なお納税の義務があるにもかかわらず確定申告を行わないと、「無申告加算税」や「延滞税」などが課されることもあるため注意が必要です。
この記事では確定申告の方法や種類、帳簿の付け方や必要書類、経費など、飲食店が確定申告をする際に知っておきたい知識を幅広く解説します。
【飲食店の確定申告を効率化!おすすめの会計ソフト3選】
会計ソフト | 特長 |
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1.飲食店を開業したら確定申告が必要?
飲食店を経営している個人事業主のうち、以下の計算をして残額がある方は確定申告をする必要があります。
- (1)総収入金額-必要経費=事業所得(1月1日から12月31日の1年間分)
- (2)事業所得-所得控除(基礎控除など)=課税所得
- (3)課税所得×所得税率=所得税
- (4)所得税-税額控除(配当控除など)=最終的な納税額
簡潔にいうと「課税所得」があり、所得税を納税しなければならない場合には確定申告を行う必要があります。
課税所得がない場合またはマイナスの場合には、納税する額が0円であるため、確定申告を行う必要はありません。
なお多くの場合、以下のように事業所得の金額から所得控除の一種である「基礎控除」の48万円(※1)を差し引くと課税所得が算出されます。
確定申告は原則、翌年の2月16日から3月15日まで(期限日が土日の場合は翌営業日)に行います。
また確定申告の方法には「白色申告」と「青色申告」の2種類があり、事前の準備や必要書類、帳簿の記帳方法、節税効果などが異なります。
白色申告と青色申告のメリット・デメリットを以下にまとめました。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
白色申告 | ・単式簿記(簡易簿記)で記帳するので簡単 ・事前に申請しなくても良い |
・特別控除を受けられない ・赤字を繰り越せない |
青色申告 | ・55万円(最大65万円)の特別控除が受けられる(帳簿付けを「単式簿記(簡易簿記)」で行う場合には10万円の控除が受けられる) ・家族への給与全額を必要経費として扱える ・損失申告によって赤字を3年間繰り越しできる ・取得価格が30万円未満の減価償却資産は一括で経費として計上することが可能 |
・申請書の提出が必要 ・比較的複雑な「複式簿記」で記帳する必要がある ・所得が48万円以下でも申告しなくてはいけない |
白色申告は税制上のメリットがない分、手続きや準備にかかる手間が少ないことが利点です。
青色申告は手続きは複雑ですが、特別控除を受けられたり損失申告によって3年間赤字を繰り越せたりと、節税効果の高い方法といえます。
なお青色申告を行うには、以下の条件を満たしている必要があります。
- ・「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」を提出している
- ・青色申告をする収入のある年の3月15日まで(年の途中で開業した場合は開業から2カ月以内)に「所得税の青色申告承認申請書」を所轄税務署長へ提出する
なお確定申告を行う必要のない個人事業主でも、申告することで節税につながったり、確定申告の控えを収入証明にできたりといった利点があります。
2.飲食店の確定申告の方法
このように飲食店が確定申告する際の方法が気になる方もいらっしゃるでしょう。
主には以下の四つの方法があります。
方法1 手作業で行う
はじめに挙げられるのは、確定申告の全ての手続きを手作業で行うという方法です。
基本的な流れは以下のとおりです。
- (1)必要書類を準備する
- (2)帳簿を整理する
- (3)確定申告書を作成する
- (4)確定申告書を税務署に提出する
- (5)納税する
手作業で行う場合、必要書類・帳簿の準備や事前の申請などはもちろん、確定申告書類の作成・提出、納税までを全てご自身でする必要があります。
確定申告書の作成時には、取引データを記帳した帳簿を見ながら各項目の集計を行います。
そのため日々の会計処理や帳簿付けをしっかり行っておくことが重要ですよ。
なお白色申告と青色申告では必要書類や帳簿付けの方法などが異なります。
ご自身で確定申告を行いたいという方は、本記事の4章をご参照ください。
方法2 税理士に依頼する
税理士に確定申告を依頼するのも一つの手です。
税理士には記帳業務を含む全ての会計・経理業務はもちろん、確定申告書の作成を依頼することも可能です。
なお税理士に依頼する際の費用は、案件の内容や地域などのさまざまな要因によって異なります。
個人事業主が税理士に確定申告を依頼するときの費用の相場は、以下のようになっています。
依頼内容 | 費用相場 |
---|---|
記帳、確定申告書類の作成のみ依頼 | 数万円 |
帳簿作成から依頼 | 売り上げ500万円未満:10万円 売り上げ500万~1,000万円未満:15万円 売り上げ1,000万円以上:20万円 |
顧問契約 | 記帳代行があれば月額3万円程度 記帳代行がなければ月額1万円程度 |
確定申告に関する業務を税務の専門家に全て行ってもらえる点は大きなメリットだといえますが、他の方法よりも費用がかかる点がデメリットだといえます。
方法3 確定申告書等作成コーナーを利用する
国税庁の公式サイトで提供されている「確定申告書等作成コーナー」で確定申告書を作成する方法もあります。
確定申告書等作成コーナーでは、帳簿を見ながら項目ごとに集計を行います。
画面の案内に沿って金額などの情報を入力すると、確定申告書が作成されますよ。
各項目に解説がついているので、ご自身で一つ一つ調べて作成するよりも簡単といえるでしょう。
なお入力中のデータは途中で保存することも可能です。
隙間時間や都合の良いタイミングに少しずつ作業を進められる点もうれしいポイントですね。
ただし確定申告書等作成コーナーでできるのは書類の作成のみであり、帳簿の作成などはご自身で行う必要があります。
なお作成した確定申告書類は印刷して提出するか、「e-Tax(電子申告)」を利用してインターネットで提出します。
また確定申告書等作成コーナーを利用する際には、以下の環境が推奨されているので確認しておきましょう。
電子申告(e-Tax)での提出の場合 | 印刷して書面で提出する場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
マイナンバーカード方式 | ID・パスワード方式 | ||||
QRコード | ICカードリーダーライター | ||||
Windows 10 Windows 11 |
Microsoft Edge | ○ | ○ | ○ | ○ |
Google Chrome | ○ | ○ | ○ | ○ | |
Firefox | × | × | ○ | ○ | |
PDF閲覧ソフト | Adobe Acrobat Reader DC |
電子申告(e-Tax)での提出の場合 | 印刷して書面提出する場合 | ||||
---|---|---|---|---|---|
マイナンバーカード方式 | ID・パスワード方式 | ||||
QRコード | ICカードリーダーライター | ||||
mac OS 10.15(Catalina) | Safari 15.6 | ○ | ○ | ○ | ○ |
mac OS 11(Big Sur) mac OS 12(Monterey) mac OS 13(Ventura) |
Safari 16.1 | ○ | ○ | ○ | ○ |
PDF閲覧ソフト | Adobe Acrobat Reader DC |
方法4 会計ソフトを利用する
確定申告用の機能が付いた会計ソフトを導入するのも有効な方法です。
会計ソフトを利用すれば、不慣れな方でも確定申告書類の作成が簡単に行えます。
課税所得や税額などの複雑な計算をする必要がなく、画面の案内に沿って必要項目を入力するだけで確定申告書類が自動作成されますよ。
e-Tax(電子申告)に対応した会計ソフトも多くあり、オンラインで確定申告書類を提出することも可能です。
他にもスマホだけで完了する会計ソフトもあり、活用すればどこでも確定申告できますよ。
また会計ソフトには確定申告に関する機能だけでなく、会計処理の効率化を図る機能が多数搭載されています。
なお会計ソフトによって搭載されている機能は異なりますが、多くのソフトで以下のような機能が利用できますよ。
機能 | 機能の詳細 |
---|---|
伝票入力(仕訳入力)機能 | 振替伝票や入金伝票、出金伝票などの伝票を作成する機能。クレジットカードや銀行口座などと連携させたり、領収書やレシートをスキャンしたりして取引データを自動で取得・仕訳する。 |
書類・帳票の作成機能 | 取引データをもとに「見積書」「請求書」「確定申告書」などの書類や現金出納帳をはじめとする「簡易帳簿」、貸借対照表や損益計算書などの「残高試算表」、「仕訳帳」といった帳簿を作成する。 |
入金管理機能 | 請求書と連携し売上債権としてデータを追加したり、回収予定や遅延している債権を確認したりするなど債権を管理する。 |
支払管理機能 | 請求書と連携し仕入債務としてデータを追加したり、請求書から仕訳を作成したりするなど債務を管理する。 |
経営状況の分析機能 | POS(販売時点情報管理)レジや決済、クラウドソーシングなどと連携させて取得した売り上げデータや日々の取引データをもとに経営状況の指標を自動で計算し、レポートを作成する。 |
予実管理機能 | 売り上げの目標を立て、どのくらい達成できたかなどを把握する際に役立つ予算と実行結果を管理する。 |
3.飲食店の確定申告におすすめの会計ソフト3選
会計ソフトにはさまざまな機能があるので、飲食店の確定申告に向いている製品を見極めるのは大変ですよね。
そこでこの章では、飲食店の確定申告をする際におすすめの会計ソフトを三つ紹介します。
ブランド名 | ソフト名 | プラン | 初年度価格(税抜) | 2年目以降(税抜) | 無料期間 |
---|---|---|---|---|---|
freee | freee 確定申告 | スターター | 11,760円/年 (月額払い:1,480円) |
あり | |
スタンダード | 23,760円/年 (月額払い:2,680円) |
||||
プレミアム | 39,800円/年 | ||||
マネーフォワード | クラウド確定申告 | パーソナルミニ | 10,800円/年 (月額払い:1,280円) |
– | |
パーソナル | 15,360円/年 (月額払い:1,680円) |
1カ月間無料 | |||
パーソナルプラス | 35,760円/年 | – | |||
弥生会計 | やよいの白色申告 オンライン | フリープラン | 0円 | 0円 | ずっと無料 |
ベーシックプラン | 0円 | 11,500円/年 | 初年度無料 | ||
トータルプラン | 10,500円/年 | 21,000円/年 | – | ||
やよいの青色申告 オンライン | セルフプラン | 0円 | 10,300円/年 | 初年度無料 | |
ベーシックプラン | 0円 | 17,250円/年 | 初年度無料 | ||
トータルプラン | 15,000円/年 | 30,000円/年 | – |
おすすめ1 freee 確定申告
ソフト名 | プラン | 価格(税抜) | 無料期間 | |
---|---|---|---|---|
freee 確定申告 | スターター | 11,760円 | あり | |
スタンダード | 23,760円 | |||
プレミアム | 39,800円 |
freee 確定申告はクラウド型会計ソフトのなかでナンバーワンのシェアを誇る「freee会計」の個人事業主向け確定申告ソフトです。
三つのプランが用意されており、全てのプランで確定申告書の作成から申告まで行うことが可能で、取引データの取得や、見積書・納品書・請求書の作成機能なども利用できます。
以下の図のように○×の質問に答えるだけで、確定申告書を自動で作成できるので大変便利ですよ。
また専用アプリでスマホから確定申告を行うことも可能です。
「スタンダードプラン」には、標準搭載されている機能に加え、消費税の申告や各種レポートの作成機能などもあるので、さらなる会計業務の効率化が期待できますよ。
「インボイス制度」や「電子帳簿保存法」の改正にも対応していて、自動アップデートにより常に最新の状態で会計業務を行えるのもうれしいポイントです。
会計ソフトを利用する上で不明なことがあれば、メールやチャットでサポートを受けることも可能です。
「プレミアムプラン」ではさらに電話でのサポートや税務調査のサポート保証が付いているので、確定申告に関してトータルサポートを受けたいという方におすすめです。
会計に関する知識がなくても利用できるように設計されているので、初めて確定申告する方でも利用しやすいといえるでしょう。
おすすめ2 マネーフォワード クラウド確定申告
ソフト名 | プラン | 価格(税抜) | 無料期間 | |
---|---|---|---|---|
マネーフォワード クラウド確定申告 | パーソナルミニ | 10,800円 | 1カ月間無料 | |
パーソナル | 15,360円 | |||
パーソナルプラス | 35,760円 |
マネーフォワード クラウド確定申告は多くの利用者の満足度が高いクラウド型の確定申告ソフトです。
三つのプランがありますが、全てのプランで確定申告書の作成や銀行、クレジットカード、電子マネー、POSレジ、勤怠管理、人事労務手続きなど幅広いサービスとの連携によるデータの取り込み・仕訳を自動で行えます。
「パーソナルミニプラン」と「パーソナルプラン」は月額プランが用意されており、手頃なコストで導入することができます。
WindowsやMacではもちろん、スマホの専用アプリでも確定申告書・青色申告決算書などの作成が可能です。
また電子申告がスマホでもできるのもうれしいポイントだといえます。
さらにマネーフォワード クラウド確定申告は、給与計算や勤怠管理、マイナンバー管理などのバックオフィス業務をサポートする機能も利用できます。
インボイス制度や電子帳簿保存法の改正にも対応していますよ。
パーソナルプランではパーソナルミニプランの機能に加え、各種レポート機能や消費税の集計、消費税申告書の作成機能も搭載しています。
なお確定申告に関するサポートを受けたい方には、電話サポートが付帯している「パーソナルプラスプラン」もおすすめです。
おすすめ3 やよいの白色申告 オンライン/青色申告 オンライン
ソフト名 | プラン | 初年度価格(税抜) | 2年目以降(税抜) | 無料期間 |
---|---|---|---|---|
やよいの白色申告 オンライン | フリープラン | 0円 | 0円 | ずっと無料 |
ベーシックプラン | 0円 | 11,500円/年 | 初年度無料 | |
トータルプラン | 10,500円/年 | 21,000円/年 | – | |
やよいの青色申告 オンライン | セルフプラン | 0円 | 10,300円/年 | 初年度無料 |
ベーシックプラン | 0円 | 17,250円/年 | 初年度無料 | |
トータルプラン | 15,000円/年 | 30,000円/年 | – |
やよいの白色申告 オンライン/やよいの青色申告 オンラインは25年連続会計ソフトの売り上げトップの実績を持つ「弥生」が提供している確定申告用ソフトです。
白色申告をする場合にはやよいの白色申告 オンライン、青色申告をする場合にはやよいの青色申告 オンラインを利用しましょう。
やよいの白色申告 オンライン/やよいの青色申告 オンラインを利用すれば、簿記の知識のない人や確定申告、帳簿付けを初めて行う人でも簡単に書類を作成できます。
なおe-Tax(電子申告)にも対応しているので、確定申告書類の作成だけでなくインターネットでの提出も行えます。
やよいの白色申告 オンラインには確定申告書類の作成機能や取引データの自動取り込み機能、自動仕訳機能、自動記帳機能、経営状況の分析機能などが標準で搭載されています。
三つのプランが用意されており、なかでも「フリープラン」は永年無料なので、白色申告をする個人事業主は導入しておくべきだといえるでしょう。
「ベーシックプラン」にはメールや電話での操作サポート、「トータルプラン」にはベーシックプランのサポートに加え、確定申告や仕訳についての相談サポートが付帯します。
やよいの青色申告 オンラインにもやよいの白色申告 オンラインと同様、確定申告書類の作成機能や取引データの自動取り込み機能、自動仕訳機能、自動記帳機能、経営状況の分析機能などが基本的な機能として付帯しています。
三つのプランがあり、なかでも「セルフプラン」は初年度無料で利用可能です。
ベーシックプラン、トータルプランに付帯するサポートはやよいの白色申告 オンラインと同様なので、必要に応じて検討すると良いでしょう。
やよいの白色申告 オンラインを利用していた方が青色申告に切り替える場合、やよいの青色申告 オンラインにデータを移行することも可能ですよ。
なおインボイス制度や取引の書類を電子データで保存する際の要件が定められた電子帳簿保存法の改正にも対応しています。
飲食店の確定申告はもちろん、日々の会計業務の効率化のためにも導入しておきたいおすすめのソフトです。
4.飲食店の確定申告の流れ
不安なく確定申告を行うために、手続きの流れや事前に準備が必要なことなども押さえておきたいところですよね。
飲食店の確定申告は、以下の流れで行います。
STEP1 必要書類を準備する
確定申告を行う前に、まず必要な書類を用意しましょう。
確定申告の際には以下の書類を必ず提出します。
- ・確定申告書(第一表、第二表)
- ・収支内訳書(白色申告の場合)
- ・青色申告決算書(青色申告の場合)
確定申告書、収支内訳書、青色申告決算書は、国税庁の公式サイトや税務署、確定申告会場などで入手できますよ。
なお確定申告ソフトや国税庁の確定申告書等作成コーナーを利用して作成するのもおすすめです。
また確定申告書の作成時には、以下のものも準備しておきましょう。
- ・口座情報
- ・帳簿
- ・領収書、レシート
なお申告方法によっては以下のものも用意しておく必要があります。
申告方法 | 申告時に必要なもの |
---|---|
税務署で申告する場合 | ・マイナンバーカードまたはマイナンバーが分かる書類と身分証 ・利用者識別番号が分かる書類(確定申告会場で申告する場合) |
郵送で申告する場合 | ・本人確認書類としてマイナンバーカードの写しを添付 |
e-Taxを使って申告する場合 | ・ICカードリーダーライターでマイナンバーカードを読み込んだ電子証明書 ・書面またはオンラインで取得する利用者識別番号 |
なお控除を受ける場合には各種控除証明書の準備も必須です。
STEP2 帳簿を整理する
確定申告を行う際には日々の取引データを記帳した「帳簿」が必要になるため、帳簿の整理を行っておきましょう。
なお白色申告と青色申告のどちらを行うかで帳簿の記帳方式が異なるので注意が必要です。
白色申告の場合は、「単式簿記(簡易帳簿)」で記帳します。
対して青色申告をして55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)の青色申告特別控除を受ける場合には、「複式簿記」による正規の簿記に加え、貸借対照表および損益計算書の作成が求められます。
詳しい帳簿の付け方は5章のポイント3で解説するのでご参照ください。
なおそれぞれの申告時に必要な帳簿の種類は以下のとおりです。
申告方法 | 必要な帳簿 |
---|---|
白色申告をする場合 | ・法定帳簿(収入金額や必要経費を記した帳簿) ・任意帳簿(法定帳簿以外で業務に関して作成した帳簿) |
青色申告で55万円の青色申告特別控除を受ける場合 | ・仕訳帳 ・総勘定元帳 ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
青色申告で10万円の青色申告特別控除を受ける場合 | ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
白色申告を行う場合には記帳方法がシンプルな上、必要な帳簿が少ないので比較的簡単に準備できるでしょう。
一方、青色申告で55万円の控除を受ける場合には、用意する書類や帳簿が多く、記帳方法も複雑です。
STEP3 確定申告書を作成する
帳簿などが全て用意できたら、確定申告に必要な書類を作成しましょう。
確定申告書や収支内訳書、青色申告決算書は、前年度1年間の取引を記録した帳簿を参考に作成します。
なお確定申告書の記入は以下の手順で行います。
- (1)住所や氏名などを記入
- (2)収入や所得の金額などを記入
- (3)所得から差し引かれる所得控除の金額を計算
- (4)税金を計算
- (5)その他に該当する項目があれば記入
- (6)住民税・事業税に関する事項があれば記入
STEP4 確定申告書を税務署に提出する
確定申告書を含む提出書類の作成が終わったら、翌年の2月16日~3月15日に税務署へ提出します。
なお直接税務署に持ち込む以外にも、以下の方法で申告することができます。
- ・郵便または信書便で所轄の税務署に送付する
- ・インターネットで電子申告する(e-Tax)
- ・税務署の時間外収集箱に投函(とうかん)する
STEP5 納税する
確定申告書類を提出したら、税金を納付します。
所得税の納付期限は3月15日までとされています。
なお以下の方法のうち、ご自身に合った方法で納付しましょう。
- ・振替納税を利用する
- ・インターネットでe-Taxを利用して納付する
- ・「国税クレジットカードお支払サイト」にてクレジットカードで納付する
- ・「国税スマートフォン決済専用サイト」にてスマホアプリで納付する(納税できる金額は30万円以下)
- ・QRコードを利用しコンビニエンスストアで納付する(納税できる金額は30万円以下)
- ・金融機関または税務署の窓口で現金で納付する
5.飲食店の確定申告をスムーズに済ますためのポイント
初めてお店の確定申告を行う場合でも、滞りなく手続きを終えたいところですよね。
そこでこの章では飲食店の確定申告をスムーズに済ますために気をつけるべきポイントについて解説します。
以下の4点に注意しておけば、安心して確定申告を行えますよ。
ポイント1 白色申告と青色申告のどちらを行うか決めておく
確定申告を行う前に白色申告と青色申告のどちらを行うか決めておきましょう。
白色申告と青色申告の違いを以下の表にまとめました。
白色申告 | 青色申告 | |
---|---|---|
事前の申請・準備 | 不要 | 青色申告をする年の3月15日まで(年の途中で開業した場合は開業から2カ月以内)に「所得税の青色申告承認申請書」を所管の税務署へ提出 |
必要書類 | ・確定申告書 ・収支内訳書 |
・確定申告書 ・青色申告決算書 ・貸借対照表と損益計算書(青色申告で控除を受けない場合や10万円の控除を受ける場合には不要) |
必要な帳簿 | ・法定帳簿 ・任意帳簿 |
・仕訳帳(青色申告で控除を受けない場合や10万円の控除を受ける場合には不要) ・総勘定元帳(青色申告で控除を受けない場合や10万円の控除を受ける場合には不要) ・現金出納帳 ・売掛帳 ・買掛帳 ・経費帳 ・固定資産台帳 |
記帳方法 | 単式簿記(簡易簿記) | 複式簿記(青色申告で控除を受けない場合や10万円の控除を受ける場合には単式簿記で良い) |
特別控除 | なし | 10万円もしくは55万円(一定の条件を満たせば最大65万円)の青色申告特別控除を受けられる |
減価償却について | 少額減価償却資産の特例が認められない | 少額減価償却資産の特例が認められる(取得価格が30万円未満の減価償却資産は、一括で必要経費として計上できる) |
特別な控除を受けられるわけではありませんが、事前の申請が不要で準備する書類や帳簿が少ないため、できるだけ簡単に手続きしたい方には白色申告が向いているといえます。
一方、事前に申請が必要だったり、準備する書類が多く記帳方法が複雑だったりしますが、最大65万円の特別控除を受けたいという方は青色申告をおすすめします。
ポイント2 領収書やレシートを保管しておく
確定申告までに必要経費として利用したお金の支出を証明する領収書やレシートを保管しておきましょう。
経費の種類ごとに分類して保管しておくと後々スムーズに確認することができますよ。
なお電車や飲み物の代金など、レシートや領収書を受け取れない場合にはメモ帳や出金伝票などに支出した際の日時や内容を記録しておけば良いとされています。
また飲食店で支出があった際には、受け取ったレシートの裏などに食事をした人数や同席した人の名前をメモしておくと、万が一税務署から指摘を受けた場合の説明に便利です。
ポイント3 日々の帳簿付けや仕訳をしておく
確定申告書や青色申告決算書、収支内訳書などは、帳簿に基づき作成するため、日頃から帳簿付けしておくことが重要です。
白色申告または10万円の青色申告特別控除を受ける場合には単式簿記(簡易帳簿)、青色申告で55万円の青色申告特別控除を受ける場合には複式簿記で記帳する必要があります。
例えば、12月1日に仕入れ代金40,000円を現金で支払った場合、単式簿記(簡易帳簿)では以下のように記帳します。
日付 | 科目 | 収入 | 支出 | 摘要 |
---|---|---|---|---|
〇〇年12月1日 | 仕入 | 40,000円 | 〇〇商品 |
単式簿記(簡易帳簿)では取引を一つの科目に絞って収支を記録するので、シンプルに記帳できます。
一方で複式簿記では、以下のように記帳します。
日付 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
〇〇年12月1日 | 仕入 | 40,000円 | 現金 | 40,000円 | 〇〇商品 |
複式簿記では取引を発生した原因と結果である「借方」と「貸方」の両面に分けるため、お金の動きを網羅的に押さえることができるのです。
また帳簿付けする際には「発生主義」で記帳する必要があります。
なお作成した帳簿は税務署に提出する必要はありませんが、確定申告の提出期限の翌日以降も、一定期間保存しておく義務があることに注意しましょう。
ポイント4 会計ソフトを利用する
会計ソフトを使用すれば、確定申告書類の作成や日々の記帳などの手間のかかる準備をスムーズに済ますことが可能です。
会計ソフトを利用して準備をすると、以下のようなメリットがあります。
- ・人為的ミスを防げる
- ・万が一ミスがあった場合でも修正しやすい
- ・確定申告や会計業務に関するサポートを受けられる
会計ソフトを利用すれば、画面の指示に従って必要な項目を入力するだけで記帳や取引データの管理、帳簿付け、確定申告書類の作成などを行えます。
また入力した金額が整合しているかを都度チェックされるため、人為的なミスを防ぐことができる上、チェックする時間を短縮できますよ。
一部を修正すると、それに伴い全体の訂正を瞬時にしてくれるので、後に修正があった場合にも便利です。
さらに電話やチャットなどによって、確定申告や会計処理に関するサポートを実施している会計ソフトもあります。
会計ソフトによっては画面を共有しながら説明を受けることができるので、確定申告が初めての方にとっては大変心強いといえますよね。
6.飲食店の確定申告についてよくある質問
このような疑問をお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
そこでこの章では飲食店の確定申告についてよくある以下の四つの質問にお答えします。
Q1 飲食店を開業したのに確定申告しないとどうなるの?
納税の義務があるにもかかわらず、申告しなかった場合には「無申告加算税」や「延滞税」が課せられます。
無申告加算税の税率は、期限を過ぎてからいつまでに申告したかによって以下のように異なります。
無申告加算税の税率 | |
---|---|
税務調査の事前通知の前に自主的に申告した場合 | 納付税額に対して5% |
税務調査の事前通知を受けてから税務調査の実施までに申告した場合 | 50万円までの納付税額に対して10%、納付税額のうち50万円を超える部分に対して15% (申告期限が令和6年以降の場合、納付税額のうち300万円を超える部分に対して25%) |
税務署から調査があるまで申告しなかった場合 | 50万円までの納付税額に対して15%、納付税額のうち50万円を超える部分に対して20% (申告期限が令和6年以降の場合、納付税額のうち300万円を超える部分に対して30%) |
一方、延滞税は法定納期限(国税に関する法律の規定にて国税を納付すべきとされる期限)の翌日から納付するまでの日数に応じて自動的に課されます。
延滞税が発生する場合、以下の計算式で算出される金額を納付する必要があります。
- (1)納付すべき本税の額×延滞税の割合①×延滞した日数(法定納期限の翌日から完納の日または所定の納期限の2カ月後の日まで)÷365日=A
- (2)納付すべき本税の額×延滞税の割合②×延滞した日数(所定の納期限の2カ月後の日の翌日から完納の日まで)÷365日=B
- (3)Aの金額+Bの金額=延滞税の合計額
なお延滞税の割合は年分ごとに異なるため、詳しくは国税庁の公式サイトでご確認ください。
Q2 賄いの費用も経費として処理できる?
賄いの費用は「福利厚生費」として計上することが可能です。
ただし福利厚生費として計上するには、以下の条件を満たす必要があるので注意しましょう。
- ・従業員が賄いにかかる費用の50%以上を負担している
- ・飲食店事業主が負担する金額が毎月3,500円を超えない
なお以下の項目も経費として落とすことができますよ。
- ・仕入れの代金
- ・荷造運賃
- ・地代家賃
- ・水道光熱費
- ・サービス費
- ・広告宣伝費
- ・給与賃金
- ・福利厚生費
- ・租税公課
- ・損害保険料
- ・修繕費
- ・減価償却費 など
Q3 業務用の車や設備は減価償却費として扱える?
業務に必要な車や設備などの資産は「減価償却費」として計上します。
例えば500万円で買った設備を10年間にわたって利用する場合には、毎年50万円を減価償却費として計上する必要があります。
Q4 赤字の場合には確定申告しなくて良いの?
事業が赤字だった場合には確定申告をする義務はありませんが、行っておくことをおすすめします。
確定申告をする際、赤字であることを申告する「損失申告」を行うことで、節税効果が期待できますよ。
損失申告を行うことにより、以下のような特典が受けられます。
- ・損益通算できる
- ・最大3年間、繰越(くりこし)控除を受けられる
- ・純損失の繰戻(くりもどし)還付を受けられる(青色申告のみ)
まず損益通算とは事業などの赤字分を別の所得の黒字分と相殺することを指します。
例えば事業所得が50万円の赤字、給与所得が50万円の黒字の場合に給与所得の黒字分を事業所得の赤字分と相殺できるので、所得が0円となり、給与所得の税金がかかりません。
損益通算をしても赤字がある場合には、繰越(くりこし)控除によってその損失を翌年以降に最大3年間繰り越すことが可能です(白色申告では災害により棚卸資産や事業用固定資産に被害を受けた場合などに限られます)。
例えば事業所得50万円の赤字で損失申告をした年の翌年に事業所得100万円の黒字が出た場合には、「翌年の事業所得100万円-繰越(くりこし)損失50万円=50万円」に対してのみ税金がかかるというわけです。
また純損失の繰戻(くりもどし)還付という手続きにより、本年度の損失を前年に繰り戻して、前年度に支払った税金を還付してもらうこともできます(青色申告を行っている場合に限ります)。
7.まとめ
飲食店を開業し、一定の収益がある場合には翌年2月16日から3月15日までの間に確定申告をして納税する必要があります。
事前に課税対象となる事業所得(課税所得)を計算して確認しておきましょう。
納税の義務があるにもかかわらず確定申告をしなかった場合には、本来の納税額に加え無申告加算税や延滞税が課せられてしまいます。
なお確定申告には白色申告と青色申告の二つの方法があり、いずれかを選択して行う必要があります。
特別控除などは受けられませんが、事前の準備や手続きを簡単に終わらせたい方は白色申告が適しているでしょう。
一方で、事前の手続きや帳簿付けが複雑であったり準備する書類が多かったりと手間はかかってしまいますが、節税したい方は青色申告を選びましょう。
なお青色申告を行うには、事前に開業届を提出しており、青色申告をする収入のある年の3月15日までに所得税の青色申告承認申請書を所轄の税務署に提出することが必須です。
確定申告を行うためには日頃からお店の取引データを細かく管理し、帳簿を作成・保管しておく必要があります。
会計ソフトを活用すれば、会計データの管理はもちろん、各種帳簿・確定申告書類の作成や申告までも簡単な操作で済ますことが可能です。
取引データの取り込みや仕訳なども自動で行ってくれる会計ソフトが多いので、簿記の知識がない方でも安心して導入できますよ。
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