親の会社を継ぐメリットとデメリットを解説。必要な準備や相続対策も

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親の会社を継ぐ場合、社内や取引先など周囲の納得を得やすいでしょう。自分の方針に合わせた経営ができるのも魅力です。ただしデメリットもあります。メリットとデメリットを比較し、適切に判断しましょう。事前準備や相続についても解説します。

1.親族内承継とは

親族内承継とは

 

親の会社を継ぐのは親族内承継の一つです。長年親の仕事を見ているからといって、すぐに承継できるわけではありません。時間をかけて入念に準備することで、スムーズに承継できます。

1-1.親族内の1人または複数人への事業承継

親族内承継は親族の誰か1人、もしくは複数人へ事業を承継することです。複数人で承継するには、会社を分けて引き継ぐのが一般的です。例えば事業AとBで会社を分け、子ども2人がそれぞれ引き継ぐケースがあります。

後継者は『経営権』を引き継ぎます。具体的には機械設備や店舗などの有形資産のほか、従業員との雇用契約、経営ノウハウ、販路などの無形資産も含む、経営に必要なあらゆる資産です。

中でも株式の承継は、会社を経営する上で欠かせません。会社にとって重要な事項は、株主総会の決議が必要です。後継者が経営者となった場合、決議に必要な2/3以上の議決権を持てるよう、株式を保有するのが目安です。

1-2.親の会社を継ぐのに適した時期は?

『中小企業白書』によると、会社を継ぐのに適した時期として、後継者である子どもが回答したのは『40~49歳』が最多です。親の会社である程度の経験を積み、社内の状況も把握できる年齢といえるでしょう。

体力や気力と経験値とのバランスが取れた年代ともいえるかもしれません。一方、経営者が後継者について考え始めるのは『60歳』が目安といわれています。

60歳頃から承継を意識した教育を始め、約10年経過後に引き継ぐと、子どもが40代というケースが多いのではないでしょうか。

参考:中小企業白書(2013年版)|中小企業庁

1-3.早めに準備を進める

『事業承継税制』の特例措置を利用すると、事業承継に関わる贈与税や相続税が10年間猶予されます。さらに後継者の死亡といった条件を満たすと、納付が免除される仕組みです。活用することで後継者の負担を軽減できます。

ただしこの特例措置は『2027年12月31日』までが適用期限と定められている制度です。一方、事業承継は一朝一夕に終えられるものではありません。

後継者への事業承継には、5年以上かかるケースもあります。株式移転・事業用の財産移転・社内への周知・教育・経営権の移譲まで、多岐にわたるプロセスが必要です。

適用を受け最小限の負担で事業承継をするためには、早めに準備を進めましょう。

2.親の会社を継ぐことと相続の関係

親の会社を継ぐことと相続の関係

中小企業の経営者の場合、事業に必要な資産を個人で保有しているケースがあります。その場合に発生する可能性があるのが、相続人の間のトラブルです。トラブルに発展する可能性や、事前にできる対策について確認しておきましょう。

2-1.相続人とトラブルになる可能性がある

経営者が個人名義で株式や事業所の不動産を持っている場合、経営者が死亡すると、これらの資産は法定相続分に従って承継されます。法定相続人が後継者1人のみであれば、問題はありません。

トラブルが発生する可能性があるのは、後継者以外にも法定相続人がいる場合です。後継者1人へ事業に関わる財産を集中させると、不公平感から相続トラブルに発展するかもしれません。

だからといって、経営に携わらない相続人が事業に関する資産を引き継ぐと、事業の運営に支障をきたす可能性があります。例えば事業所の不動産を引き継いだ相続人が、第三者へ売却してしまうといったケースです。

このようなトラブルを避けるためにも、経営者の生前に十分な準備をしておかなければいけません。

2-2.遺留分減殺請求の可能性とは

後継者へ事業用資産を全て引き継がせるという内容の遺言書があれば、経営に必要な資産を後継者へ集中させられます。ただしこの場合にも、他の相続人から『遺留分減殺請求』をされるかもしれません。

遺留分は、一定の範囲の相続人が最低限の遺産を受け取れる権利です。正式な遺言書を作成していたとしても、遺留分を請求される可能性はあります。これにより事業に支障をきたすかもしれません。

生前贈与で資産を引き継ぐ場合も同様です。経営者から後継者へ無償で資産を譲り渡す生前贈与なら、後継者に資金がなくても実現できます。しかし遺留分減殺請求の対象となる部分です。

確実に後継者に引き継がせるには、時価で後継者へ売却する方法があります。

2-3.遺言書の作成、十分な説明などで対策を

後継者が決まっていたとしても、すぐに事業承継できるわけではありません。実際に引き継ぐまでには、10年ほどかかるケースもあります。それだけの期間があれば、経営者に万が一の事態が起こる可能性もあるでしょう。

資産の相続について何も対策をしていなければ、後継者を含む相続人の間にトラブルが発生するかもしれません。そこで事前に『遺言書』を作成しておくのが有効です。

家族間で相続について話す機会も設けておくとよいでしょう。あらかじめ今後の方向性について、経営者の口からじかに話しておけば、相続人も納得しやすくなるはずです。

遺言書の作成には専門家への相談も必要です。相続税については『税理士法人チェスター』へ相談するとよいでしょう。

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3.親の会社を継ぐメリット

親の会社を継ぐメリット

親の会社を継いで経営者になれば、従業員に受け入れられながら自由度の高い働き方を実現できます。会社を売却できる可能性もあるため、大金が手に入るかもしれません。仕事を継ぐと決めることで得られる代表的なメリットと注意点を紹介します。

3-1.自分らしい働き方ができる

事業承継をするというのは、経営者になることです。会社をどのように運営するか、全て自分で決められます。勤務時間や休日はもちろん、事業展開の方向性についても自由自在です。

例えば朝早めに出勤し、夕方には帰宅するといったスケジュールで仕事をしてもよいでしょう。現場の仕事は優秀な部下に一任し、経営に専念することも可能です。

会社員として働いているだけでは、ここまでの自由はなかなか得られません。親の会社を継ぐからこそのメリットといえます。

3-2.従業員に受け入れられやすい

企業の中には親族以外を後継者にするケースもあります。役員や従業員のモチベーションアップを目的に、ある程度以上の規模がある企業で採用される方法です。

中小企業は、経営者の親族による事業承継が当たり前と考えられている場合も多くあります。そのため『経営者の子どもなら』と、従業員・取引先・金融機関などにも納得してもらいやすいでしょう。

理解を得やすく反発が起きにくいため、新しい経営体制へスムーズに移行しやすいはずです。

3-3.売却することもできる

会社を引き継いだ後は売却もできます。自分の手腕で会社を大きく成長させれば、M&Aで数億円にのぼる利益を得られるかもしれません。将来を見据えた経営をすることで、大きなお金を手にできる可能性があります。

希望金額で売却するには、買い手企業との条件交渉をうまく進めることが大切です。自社の魅力が存分に伝わるよう、細部までしっかり伝えます。

また自社の状況を正しく把握し、会社の価値を向上させることも欠かせません。税務の状況を詳しく知るには『税理士法人チェスター』へ依頼するとよいでしょう。

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4.親の会社を継ぐための準備

親の会社を継ぐための準備

事業承継を決めたなら、少しずつ準備を始めましょう。会社や事業、現場で進められている仕事について、よく知っていなければならず、従業員をまとめ上げるリーダーシップも必要です。すぐに身に付くものではないため、決意したときから意識して進める必要があります。

4-1.今の会社の状況を把握しよう

会社を継ぐときには、状況の把握が欠かせません。そのためには代表的な資産である『ヒト・モノ・カネ』の流れを知ることです。会社の現状を表すさまざまな数値を明確にした上で、客観的に見つめ直します。

カネの流れを知るには『財務諸表』を確認しましょう。10年間の保管義務がある書類のため、必ず社内にあるはずです。まずは直近5年分を確認しておくと、大体の流れがつかめます。

数字として客観的に状況を知ることで、今抱えている課題や、今後取るべき方針が見えてくるでしょう。

4-2.経営スキル、リーダーシップを身に付ける

経営者として会社のかじ取りをするには、単に事業や現場の仕事に精通しているだけでは十分ではありません。会社を運営するにあたり、最適な行動の選択や、必要なシーンでスピーディーな決断が求められます

組織のトップとして常に決定を下さなければいけないため、ふさわしい『経営スキル』が必要です。同時に『リーダーシップ』の発揮も欠かせない要素といえます。

経営手腕に優れていて決断力があったとしても、周囲の信頼を集められなければ目的を遂行できません。従業員をまとめ上げる力も問われます。

4-3.現場で数年経験を積む

中小企業では『現場感覚』を身に付けることも大切です。そのため、後継者だからといきなり高いポジションに就くのではなく、最初の数年間は現場を経験しましょう。

一社員として現場で働くことで、自社の事業について理解を深め、技術も身に付けられます。現場で学ぶ姿勢や、経験豊富な従業員を先輩として敬う姿を見せることで、事業承継後に現場から反発を受ける可能性も減らせるはずです。

5.親の会社を継ぐデメリット

親の会社を継ぐデメリット

働き方も経営方針も自分で決定できる自由がある事業承継ですが、メリットばかりではありません。決断する前には、デメリットについてもよく知った上で検討しましょう。

5-1.連帯保証がある場合は引き継いでしまう

親の会社を継ぐ際には、親が資金調達時に『連帯保証』を負っていないか確認が必要です。会社の承継においてはあらゆる資産を引き継ぐため、マイナスの資産である連帯保証も含まれます

会社の経営が順調で、毎月決まった返済を続けられている間は問題ありません。しかし会社が破産すると、連帯保証を負っている経営者は、会社の借入を個人で返済する義務が生じます。

経営者個人に大き過ぎる負担がかからないよう『経営者保証に関するガイドライン』も定められました。ただし現段階では自発的に尊重することが求められている程度で、法的な拘束力はありません。

5-2.経営がうまくいくとは限らない

承継した会社の経営が順調で成長させられれば、大きな利益を得られる可能性があります。しかし必ずしもうまくいくとは限りません。判断を誤れば業績の悪化もあり得ます。

どれだけ業績が好調な企業を引き継いだとしても、赤字に転落しないとは言い切れません。判断ミスが重なったり、景気悪化の影響を受けたりすれば、経営破綻や倒産に陥る場合もあります。

6.継ぐと決めたらやるべきことは多い

継ぐと決めたらやるべきことは多い

事業承継をすると決めたら、準備するべき項目はたくさんあります。後継者の教育期間に10年ほどかかっているケースもあるため、早い段階で現場の仕事に携わることや、会社の現状を把握することが大切です

特に『事業承継税制』の特例措置には期限があるため、利用を検討しているなら期限に間に合うように進めなければいけません。また相続トラブルが発生しないよう、遺言書の作成といった準備が必要です。

事業に必要な資産を後継者へ確実に引き継ぐためには、経営者から後継者へ資産を売却する方法も検討します。さまざまな準備を進める中で、税務に関する相談が必要な場合は『税理士法人チェスター』へ相談しましょう。

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『親の会社の承継』については下記もご覧ください。

個人事業を行っているお父さんから息子さんへの、事業承継の4つのポイント

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