3通あると便利!相続の手続きで印鑑証明書が必要になる4つの場面

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あなたは今、初めての相続を経験する中で兄弟から印鑑証明書を用意して欲しいと依頼され、印鑑証明書は何の用途に使うのか心配でないでしょうか。
遺産の分け方もまだ決めていない中、渡してしまうと不利になるかもしれないと考えているはずです。

日頃印鑑証明書を使う機会は少ないですが、基本的に相続の手続きでは印鑑証明書が必要となる場面が4つあります。
この記事を読めば印鑑証明書の用途と必要になる対象の方が誰なのかがわかるようになり、さらに取得の費用を抑えるコツも解説しますので参考にして下さい。

1.相続が起きた後に印鑑証明書が必要になる4つの場面

①相続人で財産を分けるとき
②不動産の名義を替えるとき
③金融機関・証券会社で手続きをするとき
④相続税の申告をするとき

それでは、実際に必要となる場面ごとに説明します。

1-1.相続人で財産を分ける場面

まず、具体的な説明の前に亡くなった方の財産を分ける方法は、「遺産分割協議」と「遺言」と2つの方法があります。遺言書があれば、遺言書の内容に沿って遺産をどのように相続するかが決まるため、相続人同士での話し合いは必要ありません。

逆に遺言書がない場合には、相続人間での話し合いで財産をどのように相続するのかを決める必要があります。これを遺産分割協議といい、決まった内容を遺産分割協議書という書面にして取り交わしを行います。

どちらの方法で財産を分けるかによって印鑑証明書が必要かどうか異なります。

相続人が2名以上で遺産分割協議を行う場合は相続人全員の印鑑証明書が必須

相続人の間で亡くなった方の財産をどのように分けるのかを決めて遺産分割協議書を作成するときには、相続人全員の印鑑証明書の提出と、実印での押印が必要となります。

実務上では書類収集の手間を省くために、便宜上印鑑証明書を先に用意して渡して欲しいと他の相続人から依頼を受けることもあります。
遺産分割協議書は印鑑証明書と対になって効果を証するため、遺産分割協議書への署名・押印をしていない状況で印鑑証明書を渡しても原則問題は生じません。
ただし、世の中には印鑑証明書の印影から別の印鑑を作成して遺産分割協議書を偽装するようなケースもあるようです。
遺産分割協議への押印が終わってから渡すようにすれば、このような心配も回避できます。

相続人が1名または遺言書がある場合は印鑑証明書が不要

相続人が1名のときはすべての財産を相続することになり、遺産分割をする必要がないため遺産分割協議書の作成も印鑑証明書も不要になります。また、遺言書があるときも遺産分割協議を行う必要がないため、印鑑証明書は不要となります。

1-2.不動産の名義を替える場面

原則、不動産の名義を替える相続登記を行うときには印鑑証明書が必要になります。
不動産を引き継ぐ相続人だけでなく、相続人全員の印鑑証明書が必要となりますので注意が必要です。

ただし例外もあり、「相続人が1人の場合」、「遺産分割協議はせずに遺言書がある場合」、「調停調書・審判書」がある場合には、印鑑証明書が不要となります。

相続登記で必要な印鑑証明書に有効期限はなし!

金融機関での相続手続きの場合には、「印鑑証明書の有効期限は取得日から3ヶ月以内」と定められているため、相続登記も同様だと考えられがちです。
実は相続登記で必要な印鑑証明書に有効期限はありません。何十年も前の印鑑証明書でも使用できます。
例えば遺産分割協議書の取り交わしはしたものの、不動産の名義替えまで行っていなかった場合にも、当時の遺産分割協議書と印鑑証明書があれば名義替えの手続きが可能となります。

法務局から印鑑証明書を還付することができる!

通常、不動産の名義替えを行う際には法務局に印鑑証明書を提出することになり手元には戻ってきません。
けれど手続きを行う際に、印鑑証明書の原本とコピーを提出し所定の手続きをすることで、相続登記完了後に原本を返してもらうことができます。
同様に不動産の名義替えに必要となる、戸籍謄本、(除)住民票なども原則としてすべて原本還付が可能となります。還付を受ければ他の用途でも使用できるため、同じ書類を何通も取りに行く必要がなくなりますので知っておくと便利です。

1-3.金融機関、証券会社で払い戻し手続きをする場面

財産の分け方の方法によって、誰の印鑑証明書が必要になるかが変わってきます。
大きく分けると3つに分類されます。

・遺言書がある場合または、相続人が1人の場合:預金を相続する方の印鑑証明書

・遺産分割協議書がある場合:相続人全員の印鑑証明書

・家庭裁判所による調停調書、審判書がある場合:預金を相続する方の印鑑証明書

概ね上記のような取扱をしている金融機関が多いですが、詳しくはお取引先の金融機関に確認ください。

また、金融機関や証券会社で使用する印鑑証明書は「取得後3ヶ月以内」と有効期限が指定されています。
払い戻し手続きに必要な印鑑証明書は、財産の分け方が決まった後に用意をすれば、せっかく用意した書類が期限切れで使えなくなったというようなことを避けられます。

1-4.相続税の申告を行う場面

印鑑証明書が必要かどうかは、「1-1.相続人で財産を分ける場合」と同様になります。

・相続人が2名以上で遺産分割協議を行う場合は相続人全員の印鑑証明書が必須

・相続人が1名または遺言書がある場合は印鑑証明書が不要

税務署に提出する印鑑証明書は原本の還付をしてもらうことができないため、税務署提出分を用意する必要がございます。

コラム:取得費用の節約

①相続登記②相続税申告の順番で手続きすると印鑑証明書1通で対応可能

相続税申告が必要な方は、相続する財産の中に不動産があることが大半です。よって、相続登記と相続税申告のどちらも手続きをすることになります。
相続登記と相続税申告で提出する公的書類はほとんど同じ書類です。
公的書類の原本還付が可能な相続登記を先に行い、戻ってきた資料を相続税申告で税務署に提出を行うと必要な書類は1通で対応できてしまいます。

相続税の申告期限は10ヶ月以内という決まりがあるため、申告期限まであとわずかという場合にはこの方法を用いることはできませんが、時間の余裕があるお客様の場合には弊社でも行うことがあり、相続人の方の費用負担や手間を軽減しています。

2.印鑑証明書がない場合

2-1.未成年の場合は特別代理人の印鑑証明書が必要

遺産分割をする場合において親と20歳未満の子が相続人の場合には、子供の代理人として家庭裁判所に特別代理人の選任を請求する必要があります。

その際の相続手続きでは、未成年者の代わりとして選任された特別代理人の印鑑証明書が必要となります。

2-2.海外居住者はサイン証明書が必要

相続人の中に海外居住者がいる場合には印鑑証明書が発行されないため、海外にある日本大使館または領事館において発行されるサイン証明書が必要となります。

実はこのサイン証明書ですが取得する際の方法を間違えると、その後の手続きに大変苦労します。
なぜかというと、相続登記を行う際に提出するサイン証明書を取得する際には、日本大使館や領事館に遺産分割協議書を添付して発行してもらう必要があります。

ですので、サイン証明書の発行依頼を行う際において遺産分割協議書が完成していないといけません。

また、金融機関や証券会社の手続きでも同様に遺産分割協議書と綴じ合わせて1つにしたサイン証明書でないと手続きができないところが多いので、相続人の中に海外住まいの方がいる場合は注意してください。

3.相続放棄の手続きに印鑑証明書は不要

相続放棄の手続きでは印鑑証明書が必要になることはありません。
手続き自体は家庭裁判所で行うことになりますが、申し立てを行うに際に印鑑証明書は不要となります。

ただし、遺産分割協議によって相続財産を取得しないと決めた場合には、遺産分割協議書への押印と印鑑証明書が必要となります。
同じような意味合いなので、相続人の中には「法律上の相続放棄」と「遺産分割により財産を取得しない場合」を一緒のものと誤解していることがあり、準備する資料が異なりますので注意が必要となります。

4.結局、何部用意すればよいの?

最後にここで紹介した印鑑証明書が必要な4つの場面をもう一度確認しましょう

①相続人で財産を分けるとき
②不動産の名義を替えるとき
③金融機関・証券会社で手続きをするとき
④相続税の申告をするとき

印鑑証明書は本人しか取得することのできない重要な書類になります。
相続の方法等により必要な枚数は異なりますが、取扱については慎重に判断してお手続きしてください。

なお、特に相続税申告が必要な方については、まずは、相続専門の税理士に依頼することで、その税理士事務所が主導し手続き関係についてもアドバイスをしてくれます。印鑑証明についても、手続き完了までの時期や内容によって使い回すこともできますので、税理士事務所の指示に従って必要通数の準備をするようにしましょう。

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