このように会計ソフトを利用するに当たり、マネーフォワードとfreeeのどちらを選ぶべきか迷っている個人事業主の方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
マネーフォワードとfreeeの会計ソフトは「クラウド型」と呼ばれるタイプで、インターネット環境さえあれば場所や端末を選ばずに利用できるのが特長です。
従来の会計ソフトのように端末にインストールをする必要がなく、複数人で同時にアクセスしたり、クラウド上のサーバーにデータを保存できたりするため大変便利ですよ。
マネーフォワードとfreeeはどちらも人気の会計ソフトですが、それぞれ料金や使い勝手、サポート内容などが異なるので比較してご自身に合った方を選びましょう。
そこで本記事では、個人事業主向けにマネーフォワードとfreeeの違いを10項目で比較します。
また個人事業主の方がマネーフォワードとfreeeを比較する際によくある疑問にも回答するので、ぜひご参考にしてくださいね。

福留 正明
1.マネーフォワードとfreeeはどっちが良い?向いている人の特徴
マネーフォワードとfreeeはどちらも個人事業主におすすめの会計ソフトですが、ソフトの仕様や機能面などに大きく違いがあるため、それぞれ向いている方が異なります。
以下の表は、会計ソフト別に向いている個人事業主の特徴をまとめたものです。
ソフト名 | 向いている個人事業主の特徴 |
---|---|
マネーフォワード | ・ある程度の簿記の知識がある方 ・自分で確認しながら記帳したい方 ・導入コストを抑えたい方 ・バックオフィス業務を効率化したい方 |
freee | ・簿記の知識が少ない方 ・家計簿感覚で記帳したい方 ・領収書やレシートでの取引が多い方 |
マネーフォワードはある程度の簿記の知識があり、日々の取引をご自身で確認しながら記帳したい方に向いています。
請求書作成や経費精算、給与計算、電子契約などのサービスが料金プランに含まれているので、バックオフィス業務を一つのソフトでまとめて行いたい方におすすめです。
freeeよりも利用料金が安いため、導入コストを抑えられるのも魅力といえるでしょう。
対してfreeeは簿記や会計の知識が少ない方でも簡単に操作できるように設計されているのが特長で、初めて会計ソフトを使う方や会計業務に慣れていない方に向いています。
現金での取引などで手入力をする場合にも、家計簿のような感覚で登録すれば正しい形式で記帳されるので安心ですよ。
またスタータープランを除く全てのプランで、月に10GBまで領収書やレシートの画像をアップロードすることができるので、紙の書類が多い方にうってつけです。
ご自身の簿記の知識や事業の規模、使いたい機能、取引の方法などを踏まえて判断することが大切ですよ。
2.【個人事業主向け】マネーフォワードとfreeeを10項目で比較
マネーフォワードとfreeeはどちらも個人事業主におすすめの会計ソフトですが、導入するならよりご自身に合う方を選びたいものですよね。
そこでこの章では、個人事業主向けに以下の10項目を比較します。
比較1 料金プラン
マネーフォワードとfreeeの会計ソフトで個人事業主に適したプランを以下にまとめました。
ソフト名 | プラン名 | 料金(税抜) | 主な機能 |
---|---|---|---|
マネーフォワード | パーソナルミニ | 年払い:10,800円(月換算900円) 月払い:1,280円 |
・確定申告書類の作成 ・確定申告書類の提出(電子申告) ・銀行、クレジットカード明細の自動取り込み ・キャッシュフローレポートの利用 ・仕訳への証憑(しょうひょう)を1,000件まで保存 ・メール、チャットサポート(操作方法) |
パーソナル | 年払い:15,360円(月換算1,280円) 月払い:1,680円 |
・パーソナルミニの全ての機能 ・消費税申告(インボイス制度対応) ・レシート撮影枚数無制限(※月6枚以上のファイルを仕訳に添付する場合、6枚目以降は1枚当たり税抜20円のオプション料金が発生する) ・電子ファイルの保存数の上限なし ・請求書作成、メール送付の一括操作 ・経営状況のレポートの確認 |
|
パーソナルプラス | 年払い:35,760円(月換算2,980円) ※月払いなし |
・パーソナルの全ての機能 ・電話サポート(操作方法) |
|
freee | スターター | 年払い:11,760円(月換算980円) 月払い:1,780円 |
・確定申告書の作成 ・確定申告書の提出(電子申告) ・銀行口座やクレジットカードとの同期 ・損益レポート、現預金レポート、貸借対照表・損益計算書の確認 ・請求書の作成 ・領収書、レシートの画像アップロード(月5枚まで) ・メール、チャットサポート |
スタンダード | 年払い:23,760円(月換算1,980円) 月払い:2,980円 |
・スターターの全ての機能 ・農業所得の確定申告 ・領収書、レシートの画像アップロード(月10GBまで) ・消費税申告(インボイス制度対応) ・経営状況のレポートの確認 ・メール、チャットサポートの優先対応 |
|
プレミアム | 年払い:39,800円(月換算3,316円) ※月払いなし |
・スタンダードの全ての機能 ・組織管理機能(経費精算、カスタム権限管理、仕訳承認、部門階層、配賦計算) ・仮締め・月締め ・電話サポート ・税務調査サポート補償 |
マネーフォワードとfreeeの最安のプラン・真ん中のプラン・最も料金が高いプランをグレード別に比較すると、マネーフォワードの方が安く利用できることが分かります。
「安い方が良いんじゃない……?」と思った方もいらっしゃるかもしれませんが、利用料金だけで選ばないよう注意が必要です。
同じグレードのプランでも会計ソフトによって付帯する機能は異なります。
ご自身の業務に必要な機能がないと、「せっかくコストをかけたのにもかかわらず、思ったよりも会計業務を効率化できなかった……」と後悔する可能性がありますよ。
比較2 記帳と仕訳の方法
マネーフォワードとfreeeには、記帳や仕訳を自動化したり、入力作業を大幅に効率化したりする機能がありますが、その仕様には違いがあります。
以下にマネーフォワードとfreeeの記帳と仕訳の方法をまとめました。
ソフト名 | 手動仕訳登録 | 自動仕訳 | 記帳の完全自動化 | 領収書・レシートのアップロード枚数 |
---|---|---|---|---|
マネーフォワード | 〇 | 〇 | – | 〇 ※パーソナルミニは月5枚まで、パーソナル、パーソナルプラスは月6件以上で1枚当たり税抜20円のオプション料金が発生 |
freee | 〇 | 〇 | 〇 | 〇 ※スターターは月5枚まで、スタンダード、プレミアムは月10GBまで |
マネーフォワードはAI(人工知能)が提案した勘定科目から、利用者が適切なものを選択して仕訳をする仕様になっているので、ある程度の簿記の知識がある方には扱いやすいといえます。
一方、freeeは簿記の知識がなくても無理なく使える設計になっているのが特長です。
手入力の際にも家計簿を付ける感覚で記帳ができますよ。
なおマネーフォワードとfreeeには、どちらにも銀行口座やクレジットカードなどと連携するだけで明細を自動で取得・仕訳する「自動仕訳機能」が搭載されています。
またレシートや領収書をスマートフォンで撮影するだけで日付や金額を読み取り、仕訳データとして取り込む機能がありますよ。
比較3 確定申告の方法
マネーフォワードとfreeeはどちらも「e-Tax(国税電子申告・納税システム)」に対応しています。
さらに専用のアプリをダウンロードしておけば、スマホから確定申告をすることも可能です。
比較4 他のサービスとの連携性
マネーフォワードとfreeeを比較する際には、銀行口座やクレジットカード、電子マネー、POS(販売時点情報管理)レジなど、日々の業務で使っているサービスと連携できるかどうかをチェックしておくことをおすすめします。
なおマネーフォワードでは2,300以上、freeeでは1,000以上のサービスと連携できますよ。
またマネーフォワードでは家計簿アプリ「マネーフォワードME」との連携が可能です。
比較5 書類の作成
マネーフォワードとfreeeではどちらも請求書や見積書などの書類の作成が可能です。
しかし作成できる書類の種類や郵送代行費などが異なるのでチェックしておきましょう。
以下の表に各ソフトの書類の作成機能についてまとめました。
ソフト名 | 作成できる書類 | 請求書の郵送代行費(税抜) |
---|---|---|
マネーフォワード | ・見積書 ・納品書 ・請求書 ・領収書 ・請求書の自動作成 ・合算請求書 ※パーソナルミニは取引先の登録数が15件まで。パーソナルミニは請求書の自動作成と合算請求書の作成ができない |
1通当たり210円 |
freee | ・見積書 ・納品書 ・請求書 ・領収書 ・定期請求 ・合算請求書 ※スターターは定期請求と合算請求書の作成ができない |
1通当たり170円 |
マネーフォワードとfreeeのどちらも見積書や納品書、請求書、領収書の作成が可能です。
さらに、期日を設定しておくと自動的に請求書を作成してくれる機能や、複数の見積書を1枚に合算して請求できる機能も備わっていますよ。
ただしマネーフォワードのパーソナルミニのプランでは取引先の登録数が15件までに制限されていて、請求書の自動作成と合算請求書の作成ができません。
freeeのスターターでは定期請求と合算請求書の作成ができないので注意が必要です。
またどちらも請求書の郵送代行を利用できますが、マネーフォワードでは1通当たり210円(税抜)、freeeでは170円(税抜)と料金に差があります。
比較6 ユーザーサポート
マネーフォワードとfreeeにはどちらもユーザーサポートがありますが、プランによって以下のように内容が異なります。
ソフト名 | プラン名 | チャット | メール | 電話 | その他のサポート |
---|---|---|---|---|---|
マネーフォワード | パーソナルミニ | 〇 | 〇 | – | ・会計データ移行サポート ※オプションで利用可能 |
パーソナル | 〇 | 〇 | – | ||
パーソナルプラス | 〇 | 〇 | 〇 | ||
freee | スターター | 〇 | 〇 | – | – |
スタンダード | 〇 | 〇 | – | ・サポートの優先対応 | |
プレミアム | 〇 | 〇 | 〇 | ・サポートの優先対応 ・乗り換えサポート ・税務調査サポート |
どちらの会計ソフトでも、全てのプランでチャットとメールでの問い合わせができますが、電話でのサポートは最上位のプランのみが対象です。
マネーフォワードでは他社のソフトからの乗り換え作業を代行する「会計データ移行サポート」をオプションで付けられます。
freeeでは、問い合わせをした場合にスタンダード以上のプランの利用者を優先的に対応していますよ。
またfreeeのプレミアムのサポートは手厚く、無料で乗り換えの作業をしたり、税務調査の対象になった場合に依頼する税理士の立ち会い費用を最大50万円まで負担したりするサービスがありますよ。
比較7 分析レポート
マネーフォワードとfreeeでは会計ソフトに入力した日々の取引のデータをもとに分析レポートが作成され、経営状況を可視化することが可能です。
ただし、以下のように作成できる分析レポートに違いがあるので確認しておきましょう。
ソフト名 | 分析レポートの種類 |
---|---|
マネーフォワード | ・キャッシュフローレポート ・収益レポート ・費用レポート ・得意先レポート ・仕入先レポート ・ローカルベンチマーク分析 ・貸借対照表 ・損益計算書 ※パーソナルミニはキャッシュフローレポートのみ |
freee | ・入金管理レポート ・支払管理レポート ・収益レポート ・費用レポート ・損益レポート ・現預金レポート ・資金繰りレポート ・カスタムレポート ・貸借対照表 ・損益計算書 ※スターターは損益レポートと現預金レポートのみ |
マネーフォワードでは、取引先ごとの売り上げや仕入れの状況を確認できるレポートなどがある他、経営の状態や課題をチェックできる「ローカルベンチマーク分析」も可能です。
事業の方針を立てるときに役立ちますよ。
一方、freeeでは毎日の資金の動きを可視化するレポートが充実しているのが特長です。
お金の入ってくるタイミングや支払いの予定を把握できるので、現金や預金の管理に強いといえますよ。
また日付や勘定科目など2軸(二つ)の情報をクロス集計して独自のレポートを作成できる「カスタムレポート」機能を活用すれば、より自由度の高い分析も可能です。
なお、どちらの会計ソフトにもプランによって作成できないレポートがある点には注意が必要ですよ。
比較8 スマホアプリ
スマホアプリでどんなことができるのかも比較しておきたいポイントの一つです。
以下の表では、マネーフォワードとfreeeのスマホアプリの主な機能を比較しました。
主な機能 | マネーフォワード | freee |
---|---|---|
対応OS | iOS/Android | iOS/Android |
帳簿付け | ○ | ○ |
自動仕訳 | ○ | ○ |
レシート撮影 | ○ ※パーソナルミニは月5枚まで、パーソナル、パーソナルプランは月6件以上で1枚当たり税抜20円のオプション料金が発生 |
○ ※スターターは月5枚まで |
レポート表示 | 〇 ※収益レポートと費用レポートの表示が可能 |
○ |
確定申告書の作成 | ○ | ○ |
確定申告書の提出(電子申告) | ○ | ○ |
消費税申告書の作成 | – ※PCで作成する必要がある |
〇 ※スタンダード以上で利用が可能 |
消費税申告書の提出(電子申告) | ○ ※パーソナル以上で利用が可能 |
〇 ※スタンダード以上で利用が可能 |
マネーフォワードとfreeeのスマホアプリは、どちらも帳簿付けや自動仕訳、レシート撮影、レポート表示、確定申告書の作成・提出といった基本的な機能に対応しています。
ただし、プランによって一部の機能に制限があるため注意が必要です。
例えばレシート撮影の利用に制限があったり、使える機能が限られていたりする場合がありますよ。
また消費税申告書の作成をする際、マネーフォワードではPCでの対応が必要ですが、freeeではスマホアプリのみで作成から提出までを行うことが可能です。
比較9 法令改正への対応
法令改正などがあった場合、マネーフォワードとfreeeでは新しいルールにのっとったシステムが自動でアップデートされる仕組みになっています。
ユーザー側で特別な対応をしたり、追加料金を支払ったりする必要はありません。
「制度の改正に気付かなくて、確定申告の際にミスがあった……」と困ることもなく、常に最新の状態で利用できるなら安心ですよね。
また適格請求書等保存方式(インボイス制度)や電子帳簿保存法の改正には、どちらも対応済みです。
比較10 業界シェア
マネーフォワードとfreeeを比較する際、業界シェアをみて各ソフトがどのくらいのユーザーに選ばれているかを確認しておくと良いでしょう。
MM総研による2025年3月末時点の調査において、クラウド会計ソフト市場での導入率の1位は弥生で55.4%、2位がfreeeで24%、3位がマネーフォワードで14.3%という結果が出ています。
この調査結果から、マネーフォワードとfreeeは、多くのユーザーに支持される業界シェアの大きな上位のクラウド型会計ソフトであることが分かりますね。
3.マネーフォワードとfreeeについて個人事業主によくある疑問
会計ソフトの導入を検討するなかで、まだ分からないことがあって決めかねている個人事業主の方もいらっしゃるでしょう。
そこでこの章では、マネーフォワードとfreeeを導入する際によくある疑問について回答します。
Q1 会計・簿記の知識がなくても使いやすいのは?
会計や簿記の知識がない方にはfreeeがおすすめです。
freeeは会計業務が初めての方でも迷わず操作できるように設計されていて、税理士に頼らずに確定申告を行いたい方にも使いやすいのが特長です。
例えば、「会社から給与を受け取りましたか?」などの質問に○×で答えていくだけで確定申告に必要な書類が自動で作成されます。
確定申告が初めてでも手順通りに進めるだけで良いのが魅力です。
一方、マネーフォワードは、実際に帳簿を付けるように仕訳業務を行うので、簿記の知識がある程度ある方や会計ソフトの利用経験がある方に向いているといえますよ。
Q2 他社の会計ソフトからの乗り換えは可能?
どちらの会計ソフトも他社からの乗り換えに対応していて、ご自身でデータを移行することが可能です。
とはいえ、「自分でデータを移すのは不安」「操作に自信がない」と思う方もいらっしゃるでしょう。
マネーフォワードでは全てのプランにおいて乗り換え作業を有料オプションで依頼することが可能です。
またfreeeのプレミアムプランであれば、乗り換え代行サービスが含まれています。
Q3 バックオフィス全体をまとめて管理する場合にコスパが良いのは?
バックオフィス業務の効率化を重視するならマネーフォワードがおすすめです。
マネーフォワードでは確定申告書の作成や記帳・仕訳はもちろん請求書作成などが可能で、その他にも給与計算、勤怠管理、電子契約など、バックオフィスに関わる11種類のサービスとの連携が基本的に全ての料金プランで可能です。
事業の成長に応じて柔軟に管理体制を構築できますよ。
一方、freeeでもバックオフィス関連を管理する機能はありますが、人事労務や電子契約などの一部のサービスを利用するには別途料金が発生します。
Q4 税理士に依頼する場合の注意点は?
会計ソフトを導入しても、記帳や確定申告を税理士に依頼したいと考える個人事業主の方もいらっしゃるでしょう。
マネーフォワードとfreeeはどちらも他の会計ソフトにデータを共有できますが、依頼する税理士の会計ソフトに対応しているかどうかは事前に確認しておく必要があります。
4.まとめ
マネーフォワードとfreeeは、どちらも個人事業主に人気のクラウド型会計ソフトですがそれぞれ特徴が異なるため、しっかり比較してご自身に合う方を使いましょう。
ある程度の簿記の知識があり、自分で仕訳したりや帳簿を管理したりしたい方には、マネーフォワードがおすすめです。
事業の成長に合わせてバックオフィス業務を効率的に管理でき、請求書作成や経費精算、契約管理など複数の機能をプラン内で使えるためコスパに優れていますよ。
一方、簿記の知識が少ない方や、税理士に頼らずに確定申告をスムーズに進めたい方には、質問に答えるだけで確定申告書類が作成できるfreeeが適しているでしょう。
マネーフォワードとfreeeの会計ソフトには無料のお試し期間があります。
迷う場合には実際に使って比較してみましょう。