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愛人や愛人の子に相続権はあるの? 不意に現れたときの対処法を税理士が解説

愛人や愛人の子に相続権はあるの?不意に現れたときの対処法を相続専門税理士が解説

「父が亡くなってしばらくしてから愛人を名乗る女性が現れた!」

このようなケースはテレビの中だけでなく現実に起こっています。愛人との間の子供、いわゆる隠し子が現れることもあります。

原則として愛人に相続権はありません。しかし生前の対策があれば、愛人も遺産をもらうことができます。さらに、愛人の子は認知されていれば遺産相続ができます。

この記事では、愛人や愛人の子が現れたときに本来の相続人はどのように対処すればよいか、相続専門の税理士が解説します。

たとえ「愛人に遺産をすべて継がせる」という遺言があったとしても、遺産のいくらかは取り戻すことができます。あきらめずにこの記事を参考にしてください。

なお、法律上の婚姻によらない男女関係として「愛人」のほか、「内縁関係」や「事実婚」といったものがあります。この記事では、一方あるいは双方に戸籍上の配偶者がいて、互いに婚姻の意思がない交際関係にある人を「愛人」と呼ぶことにします。

1.愛人は遺産を相続できない

原則として愛人に相続権はなく、遺産を相続することはできません。配偶者として遺産を相続できるのは、婚姻届を提出した戸籍上の配偶者に限られます。

したがって、愛人を名乗る女性が現れて遺産を要求してきたとしても、原則では遺産を渡す義務はありません。

しかし、次の章でご紹介するような遺言死因贈与契約があれば拒絶することができなくなってしまいます。

2.遺言があれば遺産は愛人のものになる

「愛人に遺産をすべて継がせる」というように、愛人に遺産を渡すという内容の遺言死因贈与契約があれば、遺産は愛人のものになってしまいます。

ただし、戸籍上の配偶者・子であれば遺産をいくらか取り戻すことができます。また、配偶者がいるのに愛人と交際するのは公序良俗に反するとして遺言を無効にできる場合もあります。

2-1.遺産が愛人のものになる2つのケース

遺産の相続権がない愛人に遺産が渡るケースとしては次の2つの場合があげられます。

  • 愛人に遺産を継がせると遺言に書かれていたケース
  • 愛人と死因贈与契約が結ばれていたケース

死因贈与とは「私が死亡したら愛人に財産を渡す」といった内容の贈与契約です。遺言ではいわば一方的に遺産を渡すのに対し、死因贈与は遺産をもらう人と生前に合意することが特徴です。

いくら故人の遺志とはいえ、愛人に遺産を継がせることは妻子にとって受け入れがたいものです。しかし、遺言や死因贈与契約が法的に有効であるなら、一度は愛人に遺産を渡さなければなりません。

厳密には遺産ではありませんが、愛人が生命保険の受取人になっていた場合も愛人にお金が渡されます。ただし、現在は愛人を保険金の受取人にすることは難しいため、詳しい解説は省略します。

2-2.愛人に渡った遺産は取り戻せる!(1)遺留分減殺請求

遺言や死因贈与契約で愛人に遺産が渡ってしまっても、戸籍上の配偶者や子など本来の相続人は遺産を取り戻すことができます。

愛人から遺産を取り戻す方法の一つめは「遺留分減殺請求」です。本来の相続人に保障された取り分である遺留分を主張して、遺留分に満たない分を愛人から取り戻す手続きです(2019年7月1日から制度が改正され、「遺留分侵害額の請求」に変わります)。

遺留分の割合は基本的には法定相続分の2分の1です。妻子がおらず両親が相続する場合は3分の1となります。

たとえば、相続人が妻と子1人の場合は、妻と子の遺留分の割合はそれぞれ4分の1ずつとなります。遺留分についての詳しい内容は「【図解で解説】遺留分権利者の範囲と遺留分の割合」を参照してください。

遺留分減殺請求で愛人から遺産を取り戻すためには、内容証明郵便で愛人に対して意思表示をします。ただし、愛人が素直に応じることは少なく、家庭裁判所での調停に持ち込むケースも少なくありません。スムーズに解決したいのであれば弁護士に相談することをおすすめします。

2-3.愛人に渡った遺産は取り戻せる!(2)遺言の無効を訴える

愛人から遺産を取り戻す方法の二つめは、遺言の無効を裁判所に訴えることです。愛人に遺産を継がせるという内容の遺言を無効にすれば、遺産を取り戻すことができます。

具体的には、次のいずれかあるいは両方のポイントで遺言の無効を訴えます。

  • 公序良俗に反するとして無効を訴える
  • 形式の不備による無効を訴える

自分だけで遺言の無効を裁判所に訴えることは難しいため、弁護士に相談して対策を考えることをおすすめします。

2-3-1.公序良俗に反するとして無効を訴える

遺言で愛人に遺産を渡す行為は、それが交際を維持する目的であって妻子の生活が脅かされるのであれば、公序良俗に反するとして無効になります。

一方で、愛人の生活を保障する目的で妻子の生活を脅かすほどでない場合は有効となることもあります。

2-3-2.形式の不備による無効を訴える

遺言は民法で形式が細かく定められていて、形式に合わない遺言は無効になります。たとえば押印がない、日付があいまい、筆跡が違うといったことが形式の不備にあたります。

もし遺言に形式の不備があれば、裁判所に訴えて遺言を無効にできる可能性があります。遺言が無効になる具体例は「遺言書が無効になる事例と無効にならないための対策」を参照してください。

遺言で保険金の受取人が変更されることも!

遺言で気をつけなければならないのは、遺産の配分だけではありません。遺言では、故人が加入していた生命保険の保険金受取人を変更して愛人にお金を渡すこともできます。

保険会社では保険金受取人を被保険者の2親等以内の血族に限定していることが多く、第三者である愛人を受取人にすることは極めて難しいのが実情です。そこで契約を容易にするため、加入時は2親等以内の血族を受取人にして、遺言で受取人を愛人に変更することがあります。

このような方法で愛人に保険金が渡された場合でも、遺言が無効になれば保険金を取り戻すことができます。

3.認知していれば愛人の子は遺産を相続できる

遺産相続が一段落した頃に、愛人ではなく愛人との間に生まれた子、いわゆる隠し子(婚外子)が現れるケースもあります。相続のために戸籍を調べると隠し子が見つかったというケースもあります。

愛人に相続権はありませんが、愛人との間に生まれた子には相続権があり、遺産を相続することができます。ただし、故人がその子を認知していたことが条件です。

故人に認知されている愛人の子は法定相続人であり、戸籍上の配偶者との間に生まれた子と同等の割合で遺産を相続できます。

配偶者との間に生まれた子と愛人の間に生まれた子は同等の相続権を有する

愛人の子だからといって遺産分割協議から除外することはできず、その子も含めて遺産分割の話し合いをしなければなりません。

話し合いの結果、愛人の子が相続放棄をする可能性もないわけではありませんが、妻や実子が愛人の子に相続放棄するよう強要することはできません。

愛人の子がいる場合の相続については「婚外子がいる場合の相続や相続税について徹底解説」も参照してください。

愛人の子の認知は死後に行われることもある

子の認知は父親と子の関係を確定する手続きです。愛人の子については、生前に認知することをためらって遺言認知される傾向があります。また、認知をしないまま死亡したことで、愛人の子または母親である愛人が死後認知を訴えることもあります。

遺言認知をするには、遺言書に子を認知する旨、母親の名前、子の住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍筆頭者を記載します。

認知の手続きは遺言で定められた遺言執行者が行います。遺言執行者が定められていない場合は、相続人が家庭裁判所で遺言執行者の選任手続きをしなければなりません。詳しくは「遺言で子供を認知することができる遺言認知とは?」も参考にしてください。

死後認知をするには、父親の死後3年以内に子(未成年者の場合は母親)が検察官を相手に死後認知請求の訴えを起こします。訴える相手が検察官になるのは、本来相手となるべき父親が死亡しているからです。死後認知の裁判では、DNA鑑定を用いて親子関係が立証されます。

死後認知では認知されるまでに数か月から数年かかることもあります。認知されるまでに遺産分割が終わってしまった場合は、認知された子は他の相続人に対して金銭の支払いを求めることになります。

4.まとめ

戸籍上の配偶者とは異なり、愛人には遺産相続が認められません。遺言や死因贈与契約があれば愛人に遺産が渡ってしまいますが、遺留分減殺請求で一部を取り戻すことができます。また、遺言の無効を訴えることもできます。

一方、認知された愛人の子には、戸籍上の妻との子と同等の相続権があります。愛人の子を遺産分割協議から除外することはできず、話し合いによって解決することが必要です。

遺産相続のときに愛人や愛人の子が現れた場合は、自力での解決が難しい場合もあります。できるだけ早く遺産相続に詳しい弁護士に相談しましょう。

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