大きな期待を抱いて不動産を購入したものの、思い描いていたような成果を得られていない人たちの失敗を教訓に、相続対策として不動産投資を成功させる秘訣について探ってみたいと思います。もちろん、ここで指す相続対策とは、節税面だけには偏らず、中長期的な資産形成も果たすためのものです。
今回は【利回り】の観点から失敗理由と注意点を紹介していきたいと思います。
(本記事は、税理士法人チェスター監修 株式会社フェイスネットワーク蜂谷二郎著書『不動産活用で資産を守る 相続対策50の新常識』の中から一部を抜粋・編集した記事です)
目次
特に多い失敗は、利回りの高さを物件選びの基準としていること
特に多くの人たちに見られる失敗として筆頭に挙げられるのは、利回りの高さを物件選びの基準としていることでしょう。単純に、その数値の高さだけに注目しているのです。
賃貸不動産の収益性を計るモノサシである利回りには、「表面利回り」と「実質利回り」という2つの種類があります。まずは、これらの違いをきちんと認識しておくことが大前提です。
「表面利回り」は手取りの数値ではなく、販売価格が安い物件ほど高くなる
「表面利回り」と「実質利回り」の違いは以下の通りです。
無論、収益性の実態を表しているのは手取りの金額で計算している「実質利回り」のほうです。あくまで「表面利回り」は、見かけの数字にすぎません。
しかも、同額の賃料設定だったとしたら、購入価格の安い物件のほうが「表面利回り」はおのずと高くなります。東京の人気エリアにある物件は全国的に見て購入価格が高くなる一方で、地方都市の物件は相対的に安くなっています。
また、中古の物件も新築物件と比べれば、購入価格はかなり安いと言えます。そうなると、地方の物件や中古の物件は東京都心のものと比べて「表面利回り」の高さが際立つようになりますが、だからといって本当に魅力的だと言えるのでしょうか?
あくまで表示されている利回りは、満室が続いた場合の数値にすぎない
ここで、先に述べた「表面利回り」の計算式を今一度思い出してください。式の中で注視すべきは、「1年間を通じて満室状態が続いた場合に得られる家賃収入の合計」を用いていることです。
もしも、空室が発生してしまったとしたら、利回り通りの収益性は期待できないという話になります。もちろん、空室はどこでも発生しうるものですが、次の中で新たな入居者が最も見つかりやすいのは、地方の物件、中古の物件、東京都心の新築物件のいずれでしょうか?
当然ながら、空室は出てもすぐに埋まる可能性がより高いのは、安定した賃貸需要が見込まれる東京都心というロケーションです。そして、その中でも新築物件は特に人気を集めやすいはずです。
こうして冷静に捉えると、「表面利回り」が高い(設定された家賃収入に対して購入価格が割安な)物件でも何らかのマイナス材料を抱えていて空室が発生しやすい可能性もあるということです。
次の入居者がすぐ見つかる物件は、資産価値も低下しにくい
入居者から支持されやすい物件は、おのずとその資産価値も低下しにくく、先々で売却することになった場合も不当に安く買い叩かれる恐れは少ないでしょう。
選定の際には、利回りの高さだけに目を奪われず、入居者から支持されやすい物件かどうかをしっかりと判断することが肝心です。
入居者から支持されやすい物件は、おのずとその資産価値も低下しにくく、先々で売却することになった場合も不当に安く買いたたかれる恐れは少ないでしょう。