#30 コロナ禍の「在宅勤務普及」で「郊外物件に人気がシフト」は真実か?

2021.03.25

少子高齢化に伴って日本の人口はすでに減少に転じているものの、東京都の人口は今後もしばらく増加傾向を示すものと推察されています。ところが、新型コロナウイルスの感染拡大を機に、その見通しに狂いが生じつつあるとの指摘も耳にするようになりました。

感染拡大を防ぐために企業は否応なくテレワーク(在宅勤務)へのシフトを迫られ、人々はプライベートにおいても外出を極力避けるという「ステイホーム」を求められるようになりました。こうして新しい生活様式が一般化するに従って、住まいに対するニーズにも変化の兆候がうかがえると言われているのです。

果たして、それは真実の話で、不動産市場にも少なからず影響を及ぼすことになるのでしょうか?目の前で生じている動きについて、冷静に分析してみたいと思います。

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コロナ感染拡大を機に、東京都内区部の人口が流入から流出に転じた!?

2015年国勢調査をもとに東京都が算出した推計によれば、都内区部の人口は2030年まで増加傾向を続けるものと目されています。ところが、実は同じく東京都が公表している月次の推計値には異変が見られます。都内区部の人口は、2020年に最初の緊急事態宣言が解除された頃から若干ながらも減少傾向を示しているのです。

コロナ感染拡大を機に人口流入から人口流出へと転じたとも受けとめられるわけです。こうしたことから、日本経済新聞は2021年1月3日に掲載した記事中で、「移住先として浮かぶのは主に東京都心から50~100キロメートル圏内。コロナ禍が東京一極集中に変化をもたらしつつある」と指摘しています。

大手不動産物件サイトにおいて千葉県や栃木県などの中古物件の閲覧数が飛躍的に増えていること、スマートフォンの位置情報をもとに東京から他の地域に移住した人たちの動向を調べたことがその記事の根拠となっていました。大きな潮流の変化とまでは言いがたい規模ですが、一部には地方移住の動きが見られているのは確かだと言えるでしょう。

在宅勤務の普及で居住性の高い東京郊外に移り住む人たちが増えている?

このような変化を促したのは、テレワーク(在宅勤務)の急速な普及だと考えられています。通勤の必要がなくなる一方で、在宅時間の長期化や仕事スペースの確保などが住まいに対するニーズに変化をもたらしました。

今まで勤務地へのアクセスのしやすさを重視してきた人たちの間でも、居住環境の充実を優先したいという思いが強まってきた様子がうかがえるのです。その結果、同じ家賃水準であっても、より広い間取りで居住性の高い物件が見つかりやすい郊外に移り住む人が増えていると考えられています。

では、このような動きはさらに多くの人たちへと拡大し、東京からの人口流出が顕著になっていくのでしょうか?パーソル総合研究所が2万人規模で実施した調査によれば、東京都内における正社員を対象としたテレワークの実施率は2020年11月18日~11月23日に45.8%で、4月の緊急事態宣言下(49.1%)や2020年 5月29日〜 6月2日の調査時(48.1%)を下回っていました。

新年を迎えてから再び緊急事態宣言が発出され、それに伴って実施率が高まった可能性は十分に考えられるものの、それでもまだ過半の企業はテレワークを導入していないのが実情です。その中には、テレワークだけではビジネスが成り立たないケースも少なからず含まれていることでしょう。

むしろ20代の在宅勤務者は、よりアクセス面を重視し始めている!?

ごく一部には本社機能の地方移転を決定・検討する動きも見られますが、依然として多くの企業は東京に本拠を構えており、テレワークが驚異的な実施率に達しない限り、多くの人々にとって仕事の場はもっぱら都内となりそうです。だとすれば、テレワークへの完全移行に伴う東京郊外への移住という動きは、あくまで一部の層においてうかがえる現象にとどまる可能性が高いかもしれません。

また、東京郊外への移住を考えたり、実行したりしているのは、もっぱらファミリー層であるとも推察されます。「ステイホーム」で日中に家族が勢揃いするケースが増え、手狭さを痛感して引っ越しに踏み切るというパターンが多いように思われるのです。

実は、意外な調査結果も判明しています。学情という企業が20代の社会人にアンケート調査を実施したところ、勤務先がテレワークを実施している回答者の約7割(69.7%)が「通勤時間を(今まで以上に)短くしたい」と回答していたのです。

 

 

結局、大半の人の勤務地は都心に位置しているのが現実でしょう。単身世帯の場合は在宅勤務が日常化しても、公私ともに関わりの深い都心にアクセスしやすいことが住まい選びの優先事項となってくるようです。

このように依然として、単身者の間では職場だけでなくショッピングや娯楽のスポットにもアクセスしやすい都心の物件が人気の中心のようです。したがって、都心の人気エリアにある単身者向け賃貸物件の需要は、今後も安定的に推移する可能性が高いでしょう。

ここまで検証してきたように、ファミリー層をターゲットとした物件については、足元で一部に郊外移住の動きも観測されるため、手放しの楽観視は禁物かもしれません。しかし、もともと安定的な賃貸需要が見込まれる東京都心の単身者向け物件については、今後もコンスタントなフロー(家賃収入)を期待できると言えそうです。

まとめ

在宅勤務が急速に普及し、通勤時間という束縛から解き放たれて東京の郊外へと移り住む人が増えていると言われます。とはいえ、冷静に状況を観察してみると、そういった動きは一部に限られているものであるうえ、単身者においては今まで以上に都心へのアクセスを重視する傾向も…。

これらの事実を踏まえると、都心の人気にある単身者向け賃貸物件を投資対象としているものにフォーカスを当てるのが賢明でしょう。

 

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