#27「不動産小口化商品」を活用した相続対策②「公平な財産分与」

2021.02.12

とかく相続対策においては、節税ばかりに目が向けられがちです。もちろん、相続税の負担をできるだけ抑えることは重要なテーマですが、その対策が資産価値の保全に結びつき、同時に“争族”を防ぐ内容であることも見逃せないポイントとなってきます。

そして、節税資産価値の保全、さらに“争族”を避ける公平な財産分与という3つのポイントを押さえた相続対策を進めるうえで有効な選択肢となってくるのが「不動産小口化商品」です。今回は、その理由や活用の実例などについて述べていくことにしましょう。

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公平に分けやすく、節税もできる「任意組合型」の「不動産小口化商品」

不動産小口化商品」はいくつかの種類に分類されますが、ここでは相続対策を進めるうえでメリットの多い「任意組合型」にスポットを当てて説明を進めます。このタイプは、複数の投資家が賃貸マンションの「組合持分権」を購入し、出資額に応じてその物件から得られた収益が分配されるという仕組みになっています。

組合持分権」は1口=100万円などといった比較的小口の単位で購入できるので、先々で法定相続人となる人の数に応じて複数保有しておけば公平に分与しやすいことがメリットの1つです。加えて、「任意組合型」の「不動産小口化商品」には通常の不動産と同様の税制が適用されるため、相続税の節税を図ることが可能となります。

相続税の計算を行う際に、現金・預金は額面通りの評価額となりますが、土地は時価(実勢価格)、建物は実際の建築費よりもかなり割り引かれた評価額となります。しかも、賃貸マンションのように第三者に貸し出している不動産は、さらに相続税評価額が減額されるようになっています。

その結果、同じ資産価値の現金・預金と比べて、不動産に課される相続税ははるかに軽くなります。「任意組合型」の「不動産小口化商品」も然りで、こうした節税効果を享受できるのが2つ目のメリットです。

相続財産がすべて現金・預金だった場合の税負担は非常に重くなる!

「任意組合型」の「不動産小口化商品」を用いた相続対策の効用について、具体例を挙げて検証してみましょう。①遺産は現金・預金のみ②遺産は自宅のみ③自宅と複数の「不動産小口化商品」を所有している−−という3つのケースを見比べることにします。

3つのケースにおける法定相続人はいずれも妻(配偶者)と3人の子どもで、総額の資産価値(実勢価格)は同等の3億円であることを前提条件とし、各相続人は法定相続分に応じた資産を取得するものとします。

まず、①の現金・預金のみのケースでは、先に述べたように額面通りの評価となりますから、「基礎控除(3000万円+600万円×法定相続人の数)」を差し引いた金額に相続税が課されます。具体的には、「3000万円+600万円×4=5400万円」を控除後の2億4600万円が課税対象(課税遺産総額)です。

その課税遺産総額を法定相続分で相続したものとした金額に相続税率を乗じて、相続人全体の相続税額(相続税の総額)を計算します。今回の事例の場合、相続税の総額は5080万円となります。

その相続税の総額を取得財産の割合で按分します。妻の法定相続分は遺産の2分の1なので、妻の取得財産額は3億円×2分の1=1.5億円となります。その取得財産の割合で按分しますと妻の納税額は5080万円×1.5億円/3億円=2540万円となります。ただし、相続税における「配偶者控除」を適用できれば、この負担を免れることは可能です。

この「配偶者控除」とは、配偶者が相続した課税対象資産の評価額が1億6000万円までであれば相続税が課されないという優遇措置です。また、相続した課税対象資産が1億6000万円を超えていても、配偶者の法定相続分(相続財産の2分の1)以内であれば課税されません。

とはいえ、二次相続のことも念頭に置けば、むやみに「配偶者控除」をフル活用するのは考えものでしょう。やがて3人の子どもたちが母の遺産を分け合う際に、税負担が重くなりがちだからです。

一方、3人の子どもの法定相続分はそれぞれ「遺産の2分の1×3分の1」なので、子ども3人それぞれの取得財産額は3億円×2分の1×3分の1=5000万円となります。その取得財産の割合で按分しますと、子ども1人当たりの納税額は5080万円×5000万円/3億円=約846万円となります。

現金・預金は相続人の数に応じて分割が容易である反面、このように税負担が重くなるのが致命的な難点なのです。

相続財産が自宅だけの場合は、分け合うのが難しく“争族”も誘発しがち

続いて、②の自宅のみ(実勢価格が3億円)のケースを見てみましょう。相続税の計算を行う際に、不動産は実勢よりも割安な評価となります。

建物については、自己利用の場合が「固定資産税評価額=相続税評価額」とみなされ、一般的には建築費の6割程度に相当します。しかも、その建物が賃貸アパートや賃貸マンションであったなら、「自己利用家屋の相続税評価額×70%」に評価が下がります。

土地については「路線価」に基づいて評価され、一般的には実勢価格の80%程度で算定されています。そして、こちらも他者に貸し出していた場合は、自己利用のケースの7割程度の評価額となります。

そのうえ、正方形や長方形に区画整理されていない形状の「不整形地」であったり、「幅4m以上の道路に2m以上接している」という建築基準法上の大前提に合致していなかったりすると、新たな建築を行ううえで成約が生じるため、相続税の評価額がさらに下がるようになっています。

更に居住用又は貸付用として使用している土地については、所定の条件を満たすと「小規模宅地等の特例」という規定の適用により、自宅の土地部分の相続税評価額が8割減、貸している土地部分の相続税評価額は5割減になります(共に面積制限があります)。

このように、もともと相続税制において不動産の評価が実勢よりも割安となることに加えて、個々の物件によって課される相続税にかなりの違いが生じるのが実情です。したがって、②のケースも「実勢価格が3億円の土地」という条件だけでは相続税の評価額を算定するのは困難です。

そこで、実勢価格の3割程度まで評価額を下げられる物件だったと仮定すると、「3億円×30%=9000万円」から「基礎控除(3000万円+600万円×4=5400万円)」を差し引いた3600万円が課税対象(課税遺産総額)で、相続税の総額は400万円となります。3億円の遺産がすべて現金・預金だった①のケースと比べて課税遺産総額、相続税の総額が大きく減っていることから、税負担がかなり軽くなるのは容易に想像できるでしょう。

しかしながら、②のケースにおいて大きな課題となるのは「どのように分け合うか?」です。法定相続分に応じて分割所有した場合、3人の子どもの「法定相続分に応ずる取得金額」は「9000万円÷2÷3=1,500万円」で、1人当たりの税負担は約66万円(400万円×1,500万円/9,000万円)ですが、細かく区分してしまった不動産の実勢価格は下がってしまうことになるでしょう。

これに対し、「配偶者居住権」を設定すれば、自宅の「居住権」と「所有権」を分割でき、
夫に先立たれた妻が遺産分割のために住み慣れた自宅を手放す必要がなくなります。妻が死去した後は「居住権」が消滅し、前の相続で「所有権」を得ていた3人の子どもが自動的にその不動産に関わる権利をすべて所有できます。

もっとも、思わぬ落とし穴が潜んでいるのも確かです。最初の相続において「配偶者居住権」を設定した時点で、自宅の「所有権」を3人の子どもが共有することになるからです。二次相続では自宅を売却してその代金を分け合う約束になっていたとしても、兄弟・兄妹・姉弟・姉妹間で不動産を共有することは揉め事の火種となりやすく、極力避けるべきです。

自宅以外にはほとんど資産がなく、①のケースのように実勢価格が億単位になるような場合には、相続が発生する前にあらかじめ対策を講じておくのが賢明でした。たとえば、自宅を担保に融資を引き出し、子どもたちが相続できる賃貸マンションを購入するなどといったプランを進めておくというのがその一案です。

「不動産小口化商品」は複数の相続人の間で分けやすく節税効果も大!

残る③のケースについては、実勢価格が1億5000万円相当の自宅と、1口=100万円の「不動産小口化商品」を150口保有しているとの資産構成だったと仮定しましょう。法定相続分に従って分け合ったなら、妻が自宅、3人の子どもたちが「不動産小口化商品」を50口ずつ受け継げば、誰からも不満が出ないでしょう。

②のケースと同じく実勢の3割程度に相続税評価額を下げられたことを前提とすれば、1億5000万円の自宅は4500万円、1口=100万円の「不動産小口化商品」は30万円とみなされます。その結果、課税対象(課税遺産総額)は「4500万円+4500万円(30万円×150口)−5400万円(基礎控除)=3600万円」で、相続税の総額も②のケースと同じく400万円となります。

妻は前述した「配偶者控除」を適用すれば200万円(400万円×2分の1)の税負担を回避できる一方、子どもたちはそれぞれ約66万円(400万円×6分の1)ずつの税負担となります。

このように、「不動産小口化商品」を活用すれば通常の不動産と同様の節税を図ることが可能であるうえ、相続人の数が多くても分割が容易になります。また、1つしかない土地を分割して分け合うケースなどと比べれば、資産保全という観点からも有益だとも言えそうです。

まとめ

万全の相続対策を進めるうえでは、「節税効果」とともに「円滑で公平な財産分与」と「資産保全」というポイントも重要となってきます。これら3つの観点に立っても、「不動産小口化商品」は非常に有効な選択肢となってくるでしょう。

 

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