#14 相続対策で賃貸不動産を法人所有にする5つのメリット

2020.09.11

相続対策として、「1棟マンション」をはじめとする賃貸不動産を所有するケースがよく見受けられます。確かに、賃貸不動産は現金・預金などよりも「相続税評価額」が大幅に低くなり、相続税の節税を図ることが可能です。

ただ、個人名義で所有するケースよりも、法人名義で所有するケースのほうが他にも様々なメリットを享受できるのも事実です。法人所有とした場合の主なメリットとして、5つのポイントについて説明します。

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メリット1:そもそも法人税は個人の所得税よりも負担が軽くなっている!

相続対策で賃貸不動産に投資する際、個人名義ではなく法人名義で所有するという発想があります。プライベートカンパニー(資産管理会社)を設立し、その法人が物件を購入するという形式を採るのです。

個人名義の場合、所有している賃貸不動産から得られた家賃収入には所得税が課されます。これに対し、法人所有の場合は法人税の課税対象となります。

言い換えれば、家賃収入は法人が得たものとなるわけです。しかしながら、資産管理会社の役員となってその報酬を受け取れば、実質的には個人所有のケースと同様に家賃収入が手元に入ってくることになります。

賃貸不動産を法人所有にするメリットの1つは、個人所有のケースで課せられる所得税よりも法人税の負担が軽くなる可能性が高いことです。所得税は収入が多いほど税率が高くなる累進課税となっており、その最高税率は45%に達しています。さらに、所得税とともに住民税(課税所得金額×10%)も納めることになります。

一方、法人税の税率は資本金1億円以下の普通法人の場合、年間800万円以下の所得に対して15%、年間800万円を超える所得に対して23.20%となっています。加えて、地方法人税(10.3%)、法人住民税(東京都23区の場合で7.0%)、法人事業税(東京都内の場合で年間400万円以下の所得には3.5%、年間400万円超〜年間800万円以下の所得には5.3%、年間800万円超の所得には7.0%)もかかってきますが、トータルの税負担(法人実効税率)は25~35%程度となるケースが主流です。

メリット2: 家族間の所得分散で、家賃収入にかかる税金を節税できる!

しかも、個人の所有では家賃収入が名義人単独の所得とみなされますが、法人の所有なら前述したように家族に役員報酬を支払うという形式にできます。そうすることで、結果的に家族間で所得(家賃収入)の分散ができるのです。

分散できれば、累進課税となっている所得税の適用税率はおのずと低くなり、個人所有のケースよりも節税を図れます。

また、法人所有にすると個人所有のケースよりも経費として認められる金額が大きくなるので、その点も節税に結びつきます。たとえば、法人所有なら届け出不要で家族への役員報酬を経費に計上できます。

生命保険の保険料についても、法人のほうが所得税において認められている生命保険料控除額よりも大きな金額を経費に計上できます。そのうえ、法人なら役員などに支払った退職金も経費に参入できます。

経費と言えば、減価償却に関しても法人所有のほうが有利です。個人所有の場合は毎年定められた金額を償却するようになっていますが、法人所有の場合は償却額を任意に設定できます(上限額はあります)。

メリット3:相続人を役員にして報酬を支払えば相続税負担を抑えられる!

法人所有にすれば、役員報酬を通じて家族間で所得(家賃収入)の分散ができることについて指摘しましたが、それは所得税の節税のみならず、相続対策にも結びつきます。将来、法定相続人となる家族を役員にしておけば、報酬の支払いを通じて着実に所得移転を進められるのです。

個人所有の場合、存命中に受け取った家賃収入はすべて名義人の所得となり、使わなければ相続財産が増えていくことになります。しかし、法人所有なら相続人となる家族に役員報酬を通じて所得分散を進められ、その分だけ相続税の課税を抑えられます。

しかも、単なる生前贈与の非課税枠(基礎控除)は、贈与される側1人につき年間110万円となっていますが、役員報酬の支払いによる所得移転ならこうした制限がありません。こうしてあらかじめ受け取っていた所得をプールしておけば、相続が発生する際の納税資金に充てることも可能です。

メリット4:他の所得と損益通算を行う場合も法人所有のほうが有利に!

赤字が発生した場合にその損失分を他の所得から差し引くことができる損益通算についても、法人所有のほうが個人所有のケースよりもはるかに有利です。個人所有ですと、損益通算の対象となるのは不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得に限定されていますし、賃貸不動産の売却に伴う損失(売却損)も対象外です。

その点、法人所有なら特に対象が限定されることなく、賃貸不動産で生じた損失を他の所得と通算できます。売却損に関しても、やはり他の所得から差し引くことが認められています。

通算した結果、トータルでも赤字となった場合はその損失を翌年以降の利益から差し引くことができる繰越控除においても、個人所有のケースよりも法人所有のケースのほうが優遇されています。個人では繰り越せるのが3年間に限られていますが、法人では最長10年間となっているのです。

メリット5:贈与税の負担を抑えながら賃貸不動産を生前贈与できる!

空室が発生しにくい優良な賃貸不動産への投資には相応の資金が必要となりますから、たいていの人はローンを活用しています。もしも、こうして借入金がまだ残っている賃貸物件を相続人にうっかり生前贈与してしまうと、税負担が重くなってしまいます。

債務を引き継ぐことを条件に資産を贈与する「負担付贈与」とみなされ、土地や建物が時価で評価されて贈与税額が決定するからです。同じ賃貸不動産を相続によって受け継いだ場合には、時価よりもはるかに割安な「相続税評価額」となるだけに、個人所有でローンがまだ残っている賃貸不動産の生前贈与は禁物だと言えるでしょう。

しかし、法人所有のケースなら話は別です。法人による借入金で賃貸不動産を購入し、同社の株式を生前贈与するという方法が考えられます。そうすれば「負担付贈与」には該当せず、賃貸不動産は「相続税評価額」によって評価され、それに基づいて贈与税額が計算されます。

このような生前贈与を行わなかった場合も、法人所有のケースは有利に働きがちです。法人の株式に対する相続税評価額は、個人所有の賃貸不動産を相続したケースよりも低くなることが多いからです。

法人で取得後3年以内に相続が発生すると、かえって不利になる場合も!

ただし、法人所有の負債付き賃貸不動産を生前贈与するスキームには注意点もあります。「相続税評価額」で贈与税額を計算できるのは、取得後3年超が経過している不動産に限定されているのです。

また、生前贈与を行わなかった場合も、法人が所有している不動産が取得後3年以内なら、その評価を時価で行ったうえで株式の「相続税評価額」を算定します。したがって、法人で不動産を取得してから3年以内に相続が発生すると、むしろ不利になってしまう可能性も出てくるわけです。

まとめ

個人の所得税と比べて法人にかかる法人税は相対的に負担が軽くなるケースが多いですし、所有不動産を法人名義にすれば、家族間の所得分散も容易です。さらに、相続の発生前から所得移転を進められ、賃貸不動産の生前贈与も可能となってきます。

法人の設立には相応の費用がかかりますが、個人所有のケースと比べて何かと有利であることは間違いないでしょう。不動産を取得して3年以内に相続が発生した場合は不利に働く恐れもありますが、法人での所有を検討する価値は十分にあるでしょう。

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