#76 同じ価格帯の不動産小口化商品と区分投資の違いとは?

2022.07.22

少額から不動産投資をはじめたいと考えて、マンションの区分所有を検討されている方も多いのではないでしょうか。

たしかに区分所有であれば、一般的に数千万円ほどの資金で始められます。加えて相続人の数だけ区分マンションを購入すると、遺産分割時に家族が揉めずに済むかもしれません。

一方で区分所有には、デメリットもあります。そこで検討したいのが区分所有のマンションと同じ価格帯で購入が可能な「不動産小口化商品」です。この記事では、価格帯が似ている不動産小口化商品と区分所有のどちらで相続対策をすべきかわかりやすく解説します。

そもそも不動産小口化商品とは

不動産小口化商品とは、賃貸マンションや商業施設などの所有権が小口化されたうえで販売される金融商品です。一口当たり数万〜1,000万円程度で購入できます。不動産小口化商品のうち相続対策で用いられるのは、投資家と事業者が任意組合契約を結んで共同で事業をする「任意組合型」です。

任意組合型は、相続税や贈与税を計算するとき、マンションやアパートなどの現物不動産と同じ方法で評価されるため、相続税評価額の圧縮効果が期待できます。現物不動産の場合、相続税評価額は土地と建物のどちらも、以下の通り時価より低く計算されます。

● 土地部分の評価額:主に時価の8割程度である「路線価」をもとに算出
※路線価がない地域については、土地の固定資産税評価額に所定の倍率をかけて評価額を計算

● 建物部分の評価額:時価の7割程度である「固定資産税評価額」をもとに算出

また、土地の上にマンションやアパートなどを建てて人に貸していると、相続税評価額がさらに減額されます。減額割合は、土地部分は2割程度、建物部分は3割程度です。

加えて亡くなった人が事業を営んでいた土地や、居住していた土地を相続する場合「小規模宅地等の特例」を適用できると、土地部分の評価額が50%または80%減額されます。

株式や投資信託などの金融商品は、相続税を計算するときに時価で価値が評価されます。一方、任意組合型の不動産小口化商品は、金融商品でありながら評価額の計算方法は現物の不動産と同じです。資産を現金から不動産小口化商品にシフトすることで、評価額の圧縮効果が期待できるのです。

少額から相続対策をはじめたいなら不動産小口化商品のほうが良い理由

現物不動産である区分マンションと、任意組合型の不動産小口化商品は、評価額の圧縮効果が期待できる点で共通しています。一方、相続対策という視点で考えると、区分マンションよりも、不動産小口化商品を選ぶ方がメリットは多いと考えられます。理由は、以下の5点です。

1. 投資金額を調整しやすい
2. 相続や贈与がしやすい
3. 区分マンションと同一の金額帯でより有利な物件に投資できる
4. 圧縮率が高い都心部の優良物件に投資できる
5. 空室リスクを抑えられる

1.投資金額を調整しやすい

区分マンションは、少額から投資ができるとはいえ、投資額を自由に決められるわけではありません。市場で流通している区分マンションは、個別に販売価格が設定されているためです。また、購入時に支払う諸費用の金額も、物件や購入先によって異なるため、投資額の調整は困難でしょう。

不動産小口商品は、口数単位で販売されています。1口あたりの金額は、数万〜1,000万円程度と商品によって異なるものの、予算に合わせて購入する口数を調整できるため、投資額を調整しやすいといえます。

2.相続や贈与しやすい

区分マンションは、相続や贈与の際に分けることが困難です。例えば、区分マンションを1室しか所有していないにもかかわらず、相続人が3人いると誰が相続するか揉めてしまうかもしれません。

マンションを共有名義にし、複数の相続人が所有権を持つのも方法です。しかし共有物件は、売却やリフォームなどをする際は共有者全員の合意が必要です。そのためマンションの取り扱いをめぐって、共有人同士で揉めてしまうことがあります。

相続人の数だけマンションを購入する方法もありますが、多額の資金が必要です。またマンションによって立地や間取りなどの条件が異なるため、家族に引き継いだときの価値は同じであっても将来的には差が生じているかもしれません。

その点、不動産小口商品は、相続人や贈与する家族の人数に応じた口数を購入することで、相続時や贈与時に分けやすくなります。

例えば、相続人が長男、長女、次男の3人であるとしましょう。一口500万円の不動産小口化商品を30口購入すると、相続が発生したとき一人当たり10口5,000万円相当を平等に分けられます。投資対象の不動産も同じであるため、3人の相続人に対して公平に分けることができます。

3.区分マンション投資金額と同一金額でより良い条件の物件に投資ができる

同額の投資資金で、優良物件に投資しやすいのも不動産小口化商品のメリットといえます。

不動産投資をするときは、一棟マンションに投資するのが望ましいです。一棟マンションは、高い収益が期待できるだけでなく、複数の部屋があり空室リスクも低いためです。たとえ一部屋で空室が発生しても、他の部屋が埋まっていれば家賃収入が大幅に下がってしまう心配はありません。

しかし、一棟マンションを購入するためには、数億円程度の資金が必要になる場合があります。仮に投資資金が3,000万円である場合、都心部の一棟マンションに投資するのは現実的ではありません。不動産投資ローンを組んで資金を準備することもできますが、これから不動産投資を始めようと考える方にとっては簡単に手が出せるものではないでしょう。

不動産小口化商品の投資対象は、一棟マンションや商業施設、オフィスビルです。そのため区分マンションを購入できるほどの資金で、優良な物件に投資が可能です。

4.圧縮率が高い都心部の優良物件に投資できる

東京都心にある物件が投資対象である不動産小口化商品は、圧縮率が大きい傾向にあります。圧縮率とは、相続税評価額が下げられる割合を数値で表したものです。圧縮率が高ければ高いほどに、相続税評価額は時価よりも低くなっていきます。

東京都心にある不動産の圧縮率が高い理由は、実勢価額と相続税評価額の差が大きい傾向にあるためです。厳密に言えば土地の相続税評価額は、国が算定する「公示価格」の80%を目安に設定されます。地方都市の場合、公示地価は公示地価の1.0〜1.1倍程度です。それに対して東京をはじめとした都市部の公示価格は、公示価格の1.5〜2.0倍に達することがあります。

区分マンションといえど、都心部にあると価格が高くなりやすいです。そのため地方都市にある区分マンションに投資しようと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし相続対策の点から考えると、不動産小口化商品で都心部の優良不動産に投資した方が、相続税評価額の圧縮効果は高まると考えられます。

5.空室リスクを抑えられる

区分マンションに投資をすると、空室が発生した場合に家賃収入が途絶えてしまいます。また、空室である間も管理費や修繕積立金などの維持費は、支払っていかなければなりません。そのため空室が発生したときは、早急に次の入居者を見つけなければ、貴重な財産を食い潰してしまうでしょう。

投資対象が1棟マンションである不動産小口化商品は、たとえ一口の購入であっても、複数のお部屋に投資をしていることになります。空室が発生したとしても、他の部屋から得られる家賃収入でカバーできるため、区分と比較すると空室リスクは低いといえます。

不動産小口化商品の注意点

不動産小口化商品には、多くの優れた点があります。しかし、その一方で区分マンションよりも劣っている点や注意すべき点もあります。1つずつみていきましょう。

1.融資を利用できない

区分マンションを購入するときは、銀行を始めとした金融機関から不動産投資ローンを融資してもらえます。不動産投資ローンを融資してもらえると、自己資金以上の物件への投資が可能です。その結果、投資効率が高まり、自己資金のみを投資したときよりも利回りが高まる「レバレッジ効果」が働きます。

一方で不動産小口化商品は、あくまで金融商品であるため、購入時に不動産投資ローンを融資してもらうことはできません。そのためレバレッジ効果を働かせて、自己資金以上の利回りを得ることもできないのです。

2.換金性が低い

不動産小口化商品は、一部または全部を譲渡して換金できます。ただし換金するためには、商品の譲渡先を探さなければなりません。

現在、不動産小口化商品には株式のような流通市場がないため、自分自身で譲渡先を探すか、業者に頼んで探してもらう必要があります。売主と買主が当事者同士で、価格や売買数量などを決めて取引することになるため、交渉が折り合わないなどの理由で譲渡先が見つかるまでに時間がかかることがあります。

なお不動産小口化商品の売主と買主を仲介できるのは、所定の許可を得た不動産特定共同事業者です。不動産特定共同事業者でない不動産会社の仲介は、法律で禁止されています。

3.損益通算ができない

不動産小口化商品は、基本的に運用期間が決められており、期間終了時に投資対象の物件は売却されます。ただし不動産小口化商品は、元本が保証される金融商品ではありません。市況によっては、不動産の売却価格が購入価格を下回り損失が発生することがあります

区分マンション投資をしていると、年間の家賃収入が必要経費を下回って赤字になった場合「損益通算」をすることで、給料をはじめとした他の所得と相殺が可能です。その結果、所得税や住民税の負担を軽減できることがあります。しかし不動産小口化商品は、損失が発生したとしても他の所得と相殺することはできません。

4.投資経験を積めるわけではない

不動産小口化商品の投資対象となる不動産を管理するのは、不動産特定共同事業法の下で許可を受けた事業者です。投資家自身が不動産を管理するのではありません。

不動産の管理をする手間や時間を省けるという点では、メリットといえます。その一方で建物や設備の修繕をメンテナンスしたり、入居者を増やすための施策を考えたりするのも事業者であるため、投資家自身は不動産投資の経験を積めません。

投資先の不動産を増やして事業を拡大していきたいのであれば、現物不動産にも投資をして投資家としての経験を積むのも方法でしょう。

相続対策なら不動産小口化商品を選ぶのがおすすめ

相続対策をするために不動産投資をするのであれば、区分マンションではなく不動産小口化商品を選ぶのが良いでしょう。

不動産小口化商品は口数ごとに販売されているため、投資金額を調整しやすく、相続や贈与のときに分けやすいです。また都心部にある優良な不動産に、少額から投資が可能です。

相続対策を考えている方は、注意点やリスクを確認のうえ不動産小口化商品の購入を検討してみてはいかがでしょうか。

 

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