#73 生命保険と不動産小口化商品の相続対策における役割の違い

2022.03.11

生命保険への加入や不動産への投資は、どちらも相続対策に有効な手段です。近年では、富裕層を中心に少額から不動産投資が始められる「不動産小口化商品」で相続対策をする方も増えてきました。

このうち生命保険と不動産小口化商品は、相続対策における役割について、似ている部分もあれば異なる部分もあります。相続対策を検討するときは、生命保険と不動産小口化商品それぞれの特徴を理解したうえで、ご自身に合った方法を選ぶことが大切です。

本記事では、生命保険と不動産小口化商品が相続対策に有効である理由やそれぞれの役割、活用方法などをわかりやすく解説します。

不動産が相続対策に最適と言われる理由とは?

 

生命保険と不動産小口化商品が相続対策に有効な理由

そもそも、なぜ生命保険と不動産小口化商品が相続対策で活用されるのでしょうか。まずは、生命保険と不動産小口化商品が相続対策に有効な理由をみていきましょう。

生命保険を相続対策に活用できる理由

生命保険は、保険の対象となる人が亡くなったとき、あらかじめ指定した人に対して死亡保険金が支払われる金融商品です。生命保険は、下記のように契約をしたとき「500万円×法定相続人の数」までの死亡保険金について相続税が非課税になるという特徴があります。

● 保険契約者(保険料を負担する人):被相続人
● 被保険者(保険の対象となる人):被相続人
● 保険金受取人:相続人(配偶者・子どもなど)

例えば、契約者と被保険者が父親、保険金の受取人が妻である生命保険に加入したとしましょう。父親が亡くなったときの法定相続人が4人である場合、500万円×4人=2,000万円までの死亡保険金が非課税となります。

また、生命保険の死亡保険金は、受け取った人の財産とみなされて遺産分割協議の対象に含まれないため、他の相続人に取られる心配はありません。

不動産小口化商品を相続対策に活用できる理由

不動産小口化商品とは、賃貸マンションや商業施設などの所有権が、1口当たり数万〜1,000万円小口化されたうえで販売される金融商品です。

不動産小口化商品のうち「任意組合型」は、現物の不動産と同じ方法で評価されるため、相続税の節税効果が期待できます。任意組合型とは、投資家と事業者が任意組合契約を結び、共同で事業をするタイプの商品です。

任意組合型では、投資家が投資対象となっている不動産の「組合持分権」を購入します。自分名義の登記をして、賃貸マンションを所有することになるため、相続が発生したとき不動産小口化商品は現物の不動産と同じ方法で相続税評価額が算出されるのです。

現物の不動産の相続税評価額は、土地部分は基本的に「路線価」で、建物部分は「固定資産税評価額」で評価されます。路線価は、地域にもよりますが土地の時価の8割程度です。一方の固定資産税評価額は、建物の時価の7割程度です。

また土地の上にマンションやアパートを建てて人に貸していると、土地は2割程度、建物は3割程度の減額となります。さらに亡くなった人が事業を営んでいた土地を相続したとき、「小規模宅地等の特例」を適用できると、土地部分の評価額が一定の面積まで50%または80%減額され、相続税負担を大幅に軽減できる可能性があります。

一方で現物の不動産は、相続時に分けにくいのが難点です。例えば、法定相続人が複数人いるにもかかわらず、遺産の大半が一棟マンションであると、分け方で揉めてしまいかねません。かといって、相続人の数だけ一棟マンションを購入するとなると、多額の資金が必要になります。

不動産小口化商品であれば、一口100万円といった単位で購入が可能であるため、相続人の数に応じて複数口を購入することで公平に分けやすくなります。

相続対策において生命保険と不動産小口化商品の役割はどう違う?

生命保険と不動産小口化商品は、相続人の数に応じて公平に引き継ぎやすい点が共通しています。一方で両者には、相続対策における役割に違いがあります。

相続対策における生命保険の役割

生命保険の死亡保険金は「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠があります。
相続対策においては、この非課税枠を生かす程度で充分でしょう。

生命保険のうち相続対策としてよく用いられるのは、保険料を一括で支払う一時払いの「終身保険」です。終身保険は、解約をしない限り死亡と高度障害に対する保障が一生涯にわたって続く生命保険です。

例えば、法定相続人が4人である場合、生命保険の非課税限度額は500万円×4人=2,000万円となります。公平に資産を残したいときは、死亡保険金額が500万円である終身保険を4本契約し、受取人をそれぞれの相続人に指定します。すると2,000万円の資産を4人の相続人に公平に分けられるだけでなく、死亡保険金に相続税は課せられません。

一方で、法定相続人の数が同じであれば、死亡保険金額を増やしたとしても相続税の節税効果は高まりません。仮に生命保険の死亡保険金額が合計で1億円に増えたとしても、法定相続人の数が4人であれば非課税枠は2,000万円のままです。よって、8,000万円の死亡保険金が相続税の課税対象となってしまいます。

多くの資産を持つ人にとっては、生命保険での相続対策では不十分でしょう。生命保険を相続対策に活用するとしても、非課税枠の範囲内にとどめておいたほうが懸命なのです。

相続対策における「不動産小口化商品」の役割

任意組合型の不動産小口化商品は、時価から一定割合が減額されて相続税評価額が計算されることで、相続税の負担を軽減できます。法定相続人に応じた一定の非課税枠がある生命保険とは異なり、遺産に占める不動産小口化商品の割合が多くなるほど、相続税の節税効果も高まっていきます。

都市部にある収益物件では、相続税評価額が時価の3割程度にまで減るケースがあります。例えば、1億円の現金資産で1口100万円の不動産小口化商品を100口購入したとしましょう。

相続人が長男、次男、長女、次女の4人であった場合、25口ずつ公平に相続できます。また不動産小口化商品の相続税評価額が、実勢価格の3割で評価されたとしたら、相続税を計算するときの価値は3,000万円と見なされます。1億円の現金をそのまま相続したときよりも、相続税の負担を大幅に軽減できる可能性があるのです。

このように多額の資産を持っている人は、不動産小口化商品を活用することで、相続税を節税しつつ公平に遺産を分けて円満な相続を実現しやすくなります。

生前贈与における役割の違い

生きているうちに相続の対象になる資産を贈与して減らしておくのも、重要な相続対策です。生命保険と不動産小口化商品は、生前贈与においても使い道が異なります。

生命保険を活用した生前贈与による相続対策

相続の対象になる財産を減らしつつ相続税を納める資金を確保するために、生命保険を用いた生前贈与が行われることがあります。

例えば、契約者と保険金受取人を子ども、被保険者(保険の対象となる人)を父親にして生命保険に加入するとしましょう。このとき、1年間で支払う保険料を贈与税の基礎控除額110万円以内にします。そして父親は、保険料に相当する金額を子どもに贈与して支払いに充ててもらいます。

このようにすると、父親が亡くなったとき子どもに支払われる死亡保険金は、相続財産とはなりません。父親の死後、保険会社に請求するとすぐに死亡保険金を受け取って、相続税の納税資金に充てられます。年間で払い込む保険料を110万円以内にしておけば、贈与税が課税される心配もありません。

ただし契約者と保険金の受取人が同じであると「死亡保険金−払い込んだ保険料の総額」が50万円を超えると所得税が課せられます。納税資金を確保するために生命保険を活用するときは、死亡保険金額と払込保険料の総額の差が、50万円を超えていないか確認しておくと良いでしょう。

不動産小口化商品を活用した生前贈与による相続対策

多くの資産を持つ人は、生前贈与で相続対策をするときも不動産小口化商品の活用が有効です。不動産小口化商品であれば、現金よりも短期間で多くの財産を贈与できる可能性があるためです。

贈与された不動産に課す贈与税を計算するときは、相続税の計算時と同じく土地と建物を分けて評価します。よって任意組合型の不動産小口化商品を贈与したときも、同じように評価額が計算されるのです。

例えば、父親から20歳以上の子ども2人に、贈与税を計算するときの評価が実勢価格の3割となる不動産小口化商品を贈与するとしましょう。

1,000万円の現金で子ども1人につき500万円相当の不動産小口化商品を購入し、それぞれに贈与すると、贈与税の計算時には500万円の3割である150万円と評価されます。贈与税の基礎控除110万円を差し引くと40万円のみが課税対象となり、1人当たりの税額はわずか「40万円×10%=4万円」に抑えられます。子ども2人分を合計しても、税額は10万円以下です。

一方で、子ども2人に現金をそのまま500万円ずつ贈与すると、500万円−110万円=390万円が贈与税の課税対象です。子ども1人当たりの贈与税は「390万円×15%-10万円(控除額)=48.5万円」であり、2人分を合計すると100万円近い税負担が生じます。そのため現金ではなく不動産小口化商品を贈与したほうが、贈与税の負担を減らせる可能性があります。

また1,100万円の現金資産を、贈与税の基礎控除110万円の範囲内で生前贈与すると10年かかります。それが、1,100万円の現金を実勢価格の3割で評価される不動産小口化商品にシフトして贈与すると、贈与税の計算時には330万円と見なされます。よって1,100万円の資産を、わずか3年で贈与できます。

生命保険と不動産小口化商品を活用して相続対策をしよう

生命保険と不動産小口化商品は、どちらも相続税の負担を抑えつつ、相続人に資産を公平に分けやすい点が共通しています。一方で生命保険は、相続税の節税効果が「500万円×法定相続人の数」で計算される非課税枠の範囲内にとどまります。それに対し、不動産小口化商品であれば資産が多いほど、相続税の節税効果は高まっていきます。

とはいえ、相続対策において大切なことは、相続税の負担を軽減することだけではなく、優良な資産を次の世代へ引き継がせることです。相続税専門の税理士にも相談のうえ、ご自身の希望や資産状況に合った相続対策を考えましょう。

 

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