#67 生命保険と不動産投資はどちらが相続対策になる?それぞれのメリットを比較

2022.01.21


相続対策をするために、生命保険への加入や不動産への投資を考えている方もいるのではないでしょうか。

生命保険と不動産は、どちらも相続対策に有効ですが、得られるメリットが異なります。相続対策をする際は、それぞれのメリットを理解したうえで、ご自身や家族にあった選択をすることが大切です。

本記事では、生命保険と不動産のどちらが相続対策として有効なのかを比較して検証していきます。

≪相続税負担を抑える「生前贈与」「生命保険」「不動産」について≫

≪知っておきたい相続の常識≫

生命保険で相続対策をするメリット

まずは、生命保険と不動産で相続対策をするメリットをみていきましょう。

生命保険は、保険の対象となる人(被保険者)が亡くなったときや、保険会社が定める高度障害状態になったときに死亡・高度障害保険金(以下、死亡保険金)が支払われます。相続対策として活用されることが多いのは、保険料を一括で支払う「一時払い終身保険」です。終身保険とは、解約しない限り一生涯の保障を得られる保険です。

生命保険で相続対策をするメリットは、以下の3点であると考えられます。

● 「500万円×法定相続人の数」までの保険金が非課税
● 保険金は受取人固有の財産となる
● 受取人が請求するだけですぐに保険金を受け取れる

「500万円×法定相続人の数」までの保険金が非課税

以下の契約形態で生命保険に加入すると、保険金に課せられる相続税が「500万円×法定相続人の数」まで非課税となります。被相続人とは、亡くなった人のことです。

● 保険契約者(保険料を負担する人):被相続人
● 被保険者(保険の対象となる人):被相続人
● 保険金受取人:相続人(配偶者・子供など)

例えば、契約者と被保険者が夫、保険金受取人が妻や子供である生命保険に加入すると、支払われた死亡保険金のうち「500万円×法定相続人の数」まで相続税がかかりません。

法定相続人が配偶者と子供3人の合計4人であった場合、非課税となる保険金額は500万円×4人=2,000万円となります。相続人が受け取った死亡保険金の合計額が1億円と仮定すると、2,000万円を超える部分の8,000万円が相続税の課税対象です。

相続税には「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除があります。仮に法定相続人の数が4人であるとき、3,000万円×600万円×4人=5,400万円まで非課税です。相続税の課税対象となる死亡保険金と、他の財産の課税価格が合計で5,400万円以内であれば、相続税はかかりません。

ただし、養子縁組をしていない孫など相続人以外の人が受け取った死亡保険金は、全額が相続税の課税対象となります。

保険金が受取人固有の財産

生命保険の死亡保険金は「みなし相続財産」として相続税の課税対象にはなりますが、受取人固有の財産となるため遺産分割協議の対象にはなりません。

また、相続人が相続放棄をしても生命保険の死亡保険金は受け取れます。例えば、契約者と被保険者が夫、保険金の受取人が妻であったとします。亡くなった夫が多額の借金を抱えていたために、妻は相続放棄をしたとしても死亡保険金は受け取れます。

ただし、相続放棄をすると、受け取った保険金のすべてが相続税の課税対象となる点には注意が必要です。

受取人が請求するだけですぐに保険金を受け取れる

生命保険の死亡保険金は、契約するときに決めた受取人に支払われます。被保険者である人が亡くなったあと、保険会社に請求することで受取人はすぐに死亡保険金を支払ってもらえます。他の相続人の同意を得る必要はありません。

死亡保険金が迅速に支払われることで、受取人は当面の生活費や相続税の納税資金などに充てることができるでしょう。

不動産で相続対策をするメリット

一方、不動産で相続対策をするメリットは、以下の3点です。

● 相続税の計算時に時価よりも低く見積もられる
● 一定の要件を満たすと「小規模宅地等の特例」を適用できる
● 賃貸アパートや賃貸マンションではさらなる評価減が適用される

ひとつずつみていきましょう。

相続税の計算時に時価よりも低く見積もられる

相続税を計算するときは、財産がどの程度の価値があるのかを示す「相続税評価額」が用いられます。不動産は、土地部分の価値は「路線価」、建物部分の価値は「固定資産税評価額」を用いて、相続税評価額が計算されます。

路線価は時価の8割程度、固定資産税評価額は時価の7割程度です。例えば、土地5,000万円、建物5,000万円、合計1億円の不動産を現金で購入したとしましょう。1億円の現金は、相続税評価額も1億円です。一方で1億円の価値がある不動産では、路線価が土地の時価の8割、建物の固定資産税評価額が時価の7割であるとき、相続税評価額は、以下の通りです。

● 土地部分の評価額
=5,000万円×80%
=4,000万円
● 建物部分の評価額
=5,000万円×70%
=3,500万円
● 土地+建物の評価額
=4,000万円+3,500万円
=7,500万円

現金をそのまま相続したときと比較して、相続税評価額が2,500万円圧縮される結果となりました。資産を現金から不動産にシフトすると、相続税評価額が圧縮されることで相続税の節税効果が期待できるのです。

「小規模宅地等の特例」を適用できると評価額を大幅に減らせる

小規模宅地等の特例は、一定の要件を満たす土地を相続したときに、評価額に一定の減額が適用される制度です。評価額の減額割合や減額が適用される限度面積は、以下の通り亡くなった人が土地をどのように利用していたかで決まります。

例えば、亡くなった人が賃貸経営をしていたマンションを相続した場合、要件に該当すると200㎡までの土地について評価額が50%減額されます。土地部分の評価額が4,000万円であると、小規模宅地等の特例を適用できると評価額が半分の2,000万円に減額されるのです。

アパートやマンションの場合はさらなる評価減

賃貸マンションや賃貸アパートなど、人に貸している不動産を相続した場合、土地部分の相続税評価額は貸家建付地として計算されます。貸家建付地の相続税評価額は「自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」で計算します。

例えば、自用地評価額2,000万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%(満室)である場合、相続税評価額は2,000万円×(1-60%×30%×100%)=1,640万円です。

また賃貸物件の場合、建物部分の相続税評価額は、「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で計算されます。固定資産税評価額3,500万円、借家権割合30%、賃貸割合100%(満室)であると仮定すると、建物の相続税評価額は、3,500万円×(1-30%×100%)=2,450万円となります。

土地と建物の相続税評価額を合計すると、1,640万円+2,450万円=4,090万円です。この金額と他の遺産の課税価格を合計した金額から、相続税の基礎控除額を引いた金額に相続税が課せられます。

相続対策をするなら生命保険よりも不動産といえる理由

結論をいえば、生命保険よりも不動産のほうが相続対策に向いているといえます。理由は、主に以下の2点です。

● 生命保険は節税効果が限定的
● 分割のしにくさは「不動産小口化商品」で解消できる

生命保険は節税効果が限定的

生命保険は「500万円×法定相続人の数」まで死亡保険金が非課税となるため、法定相続人の数が多いほど相続税の節税効果は高まっていきます。一方で、生命保険の死亡保険金額が高くなっても、法定相続人の人数が同じであれば節税効果は高まりません。

例えば、法定相続人が3人であれば、生命保険の非課税金額は1,500万円です。相続人が受け取った死亡保険金額が合計5,000万円であれば、5,000万円−1,500万円=3,500万円が相続税の課税対象となります。保険金額が1億円に増えても、法定相続人が3人であれば非課税金額は1,500万円のままであるため、8,500万円が課税対象となります。

一方で不動産は、土地と建物それぞれの資産価値から一定割合が減額されて相続税評価額が計算されることで、相続税の負担が軽減される仕組みです。そのため、高額な不動産に投資するほど、高い節税効果が期待できます。

相続対策をするために生命保険に加入するのであれば、「500万円×法定相続人の数」の枠内で十分でしょう。相続税の節税効果を高めたいのであれば、不動産を活用することが大切です。

分割のしにくさは「不動産小口化商品」で解消できる

不動産の難点は、遺産分割がしにくい点です。例えば、 相続人が4人いるにもかかわらず、遺産がマンション一棟とわずかな現金のみであれば、遺産分割時に揉めてしまうでしょう。相続人が複数おり、遺産分割時に揉めないようにしたいのであれば「不動産小口化商品」を検討する方法があります。

不動産小口化商品は、特定の不動産を数万〜1,000万円程度に小口化して販売されている金融商品です。不動産小口化商品の一種である「任意組合型」では、実物の不動産と同様のルールで相続税評価額が計算されます。

例えば、1億円の財産を4人の相続人に分けるとしましょう。一口100万の任意組合型の不動産小口化商品を100口購入すると、4人に対して25口(2,500万円相当)ずつ分けることができます。

都市部にある収益物件では、相続税評価額が時価の3割程度になる場合があります。仮に相続税評価が時価の3割である不動産小口化商品を1億円分購入すると、相続税の計算時には3,000万円と評価してもらえるのです。

不動産は資産形成の手段として優秀

不動産投資では、需要が見込める物件に投資をすることで安定した収益が期待できます。物件から得られた家賃収入は、より豊かな老後生活を送るために活用できるだけでなく、相続したあとは家族の生活も支えてくれるでしょう。人気のエリアにある物件に投資をしていれば、引き継いだ家族は物件を売却してまとまった資金を得ることも可能です。

人々の生活に、住居の存在はかかせません。家賃収入が途絶える「空室リスク」や、建物の修繕費用が発生する「修繕リスク」などのリスクに適切に対処すれば、不動産投資は安定した利回りが期待できます。

不動産投資で相続対策をするときの注意点

不動産投資で相続対策をするときは、以下の2点に注意しましょう。

● 安定した収益物件が得られる物件を選ぶ
● 家族の意向を確認する

相続対策のためとはいえ、安定した賃貸需要が見込めないエリアの物件を購入するのはおすすめできません。多数の空室が発生し、赤字が続くと貴重な財産を食いつぶしてしまう恐れがあるだけでなく、相続した家族が物件の管理や処分に困ってしまうこともあるためです。

また相続対策をするために不動産を購入するときは、将来的に相続する家族の意向を確認することが大切です。相続人に配偶者が含まれる一次相続は円滑に終えられたとしても、配偶者が亡くなったときの二次相続では、子供同士や兄弟同士で揉めてしまうケースもあります。

相続対策を検討する際は、二次相続やそれ以降の相続も見越して家族で話し合いをしたうえで、もっとも最適と考えられる手段を選ぶことが大切です。不動産で相続対策をする同意が得られたのであれば、人口が増加しており安定した賃貸需要が期待できるエリアの物件を購入すると良いでしょう。

 

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