#59 不動産投資で確定申告が必要なケースとは?経費にできる支出や申告方法を解説

2021.11.19

確定申告とは、1年間で得た収入(売上)や必要経費から所得税を計算して、申告・納税する手続きです。サラリーマンの場合、給与から所得税が天引きされ、年末調整による精算を経て勤務先が代わりに納税してくれるため、基本的に確定申告は必要ありません。しかし不動産投資をする場合、サラリーマンであっても確定申告が必要となる場合があります。

確定申告が必要であるにも関わらず申告をしないでいると、重いペナルティが課せられかねません。そこで今回は、不動産投資で確定申告が必要となるケースや申告方法、経費と認められる支出の範囲などを分かりやすく解説していきます。

不動産投資で確定申告が必要なケース

不動産投資で確定申告が必要となるのは、不動産所得がある場合です。家賃収入から必要経費を差し引いた金額は「不動産所得」となります。不動産所得が発生した場合、給与所得や一時所得などと合算した金額に、所定の税率をかけて所得税を計算し、確定申告をして納税します。

不動産所得と所得税の計算方法は、以下の通りです。

◆不動産所得の計算方法
不動産所得=年間の家賃等の収入-年間で支払った経費

◆所得税の計算方法所得税額=(合計所得金額-所得控除)×税率

所得控除とは、個人の状況に応じて一定の金額を税金の計算から控除してくれる制度です。年間の合計所得金額が2,500万円以下の人が適用できる「基礎控除」や、年収が一定以下である配偶者がいる方が適用できる「配偶者控除(配偶者特別控除)」、生命保険や医療保険などに加入している人が適用できる「生命保険料控除」などです。

「合計所得金額-所得控除」で計算される金額は「課税所得」といい、所得税の税率は課税所得の額によって5〜45%となります。ただし所得税は「超過累進税率」で計算するため、課税所得が一定の金額を超える場合、その超過した金額にのみ高い税率が適用されます。

なお賃貸マンションや賃貸アパートを売却して利益(譲渡所得)が発生した場合も、確定申告が必要です。譲渡所得や税額の計算方法は「相続前に不動産を売却しても良い?収益物件を売却したときの税金や諸費用を解説」で解説しておりますので、あわせてご確認ください。

確定申告が不要なケース

サラリーマンの場合、給与以外の所得が年間20万円以下であれば確定申告は不要です。ただし住民税については20万円以下の申告が不要のルールがないため、、自治体にて申告手続きをしましょう。また医療費控除や初年度の住宅ローン控除などを受けるために確定申告をする場合、給与以外の所得もあわせて申告する必要があります。

不動産所得がマイナスであった場合、確定申告は必要ありません。しかし給与所得をはじめとした他の所得と相殺(損益通算)して、所得税や住民税の税負担を軽減するためには、確定申告が必要です。

不動産投資の確定申告で経費はどこまで認められる?

不動産所得は、家賃収入から必要経費を差し引いて計算します。では、どのような支出が経費と認められるのでしょうか? ここでは、不動産投資において経費と認められる支出と、認められない支出を解説します。

不動産投資における経費

不動産投資において経費と認められる例は、以下の通りです。

● 固定資産税や都市計画税などの税金
● 管理費、建物や設備の修繕費
● 共用部分の光熱費・維持費
● 損害保険料(火災保険料・地震保険料など)
● 不動産投資ローンの利息
● 通信費・交通費・接待交際費 など
● 減価償却費

不動産投資に関係のある費用や税金は、基本的に経費と認められます。また投資用の不動産を購入した年は、印紙税や登記費用、不動産取得税なども経費に計上が可能です。不動産投資ローンを組んだ場合に支払う事務手数料や保証料も、経費計上にできます。

減価償却費とは、建物部分が経年劣化したことで失われたと考えられる価値を、経費に計上する会計処理です。減価償却費の額や経費に計上する期間は、建物の構造に応じた法定耐用年数に応じて決まります。

建物だけでなくエレベーターや給水施設などの建物附属設備も、減価償却の対象です。ただし土地のように、経年劣化しない固定資産は減価償却の対象になりません。

経費にならない支出

一方で以下の支出は、基本的に経費と認められません。

● 不動産投資ローンの元本部分
● 所得税・住民税
● その他不動産投資とは関係のない支出

所得税や住民税など個人的に支払う税金や、不動産投資とは関係しない費用は、経費と認められません。経費と認められるかどうかは「不動産投資で家賃収入を得るために必要な支出であったか」がポイントです。支出が経費となるか判断できない場合は、税理士に相談しましょう。

≪経費計上のコツを解説≫

確定申告には「白色申告」と「青色申告」がある

確定申告には、白色申告と青色申告があり、以下の通り事前申請の有無や税制メリット、帳簿の付け方などが異なります。

青色申告

白色申告

事前申請

必要

不要

帳簿の付け方

単式簿記または複式簿記

単式簿記

特別控除

あり

(10万円・55万円・65万円)

なし

確定申告時の提出書類

青色申告決算書

収支内訳書

 

青色申告をするためには「開業届」と「青色申告承認申請書」を、以下の期日までに提出する必要があります。青色申告を申請しなかった場合は、白色申告となります。

● 申告の対象となる年の3月15日
● 事業開始から2ヶ月以内
※1月16日以降に新規事業を開始した場合

ただし「不動産所得」「事業所得」「山林所得」のいずれかがある人でなければ、青色申告を選択できません。

青色申告は節税メリットが大きい

青色申告を選択すると、以下のような税の優遇を受けられます。

● 最大で65万円の特別控除(青色申告特別控除)が受けられる
● 30万円未満の固定資産を一括で経費に計上できる
● 家族に支払った給与を経費に計上できる
● 赤字を3年間繰り越せる

青色申告をすると、所得税や住民税を計算するときに所得から最大65万円を控除できるため、所得税や住民税の負担を軽減できます。

パソコンやデスクなど事業で利用するための固定資産は、価格が10万円以上である場合、減価償却をして少しずつ経費に計上するため、購入した年に一括で経費に計上できません。青色申告であれば、30万円未満の固定資産までは減価償却が不要となり、一括で経費に計上できます。

青色申告では「青色事業専従者給与」という制度があり、事前に届け出をしていると、生計を一にする一定の要件を満たす家族に給与や賞与を支払えます。支払った給与や賞与は、経費に計上が可能です。

また青色申告では、赤字を最長で3年間繰り越せるため、翌年や翌々年の利益と相殺して税負担を軽減できる可能性があります。

青色申告で65万円控除を受けるための要件

青色申告で65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 複式簿記で帳簿を付けている
2. 賃貸経営が事業的規模である
3. 「e-Taxで期限内に確定申告をする」または「電子帳簿保存をしている」のどちらかに当てはまる

上記の1または2を満たしていない場合、控除額は10万円となります。また1と2を満たしていても、3を満たしていない場合、控除額は55万円です。

複式簿記は、取引ごとに借方と貸方にわけて帳簿に記入する方法です。白色申告と同じく「単式簿記」で帳簿をつけると、特別控除額が10万円となってしまいます。単式簿記とは、家計簿のように1つの取引について収入と支出だけを記録する方法です。

事業的規模と認められる目安は「5棟10室」です。戸建て住宅に投資をしているのであれば5棟、賃貸アパートや賃貸マンションに投資している場合は10室が、事業的規模の目安となります。ただし5棟10室を満たしていなくても、投資する物件の規模や家賃収入によっては事業的規模と認められることがあります。

e-Taxとは、インターネット上で確定申告ができるシステムです。e-Taxで確定申告をするためには、マイナンバーカードもしくは事前に税務署で発行してもらったID・パスワードが必要です。

会計ソフトを利用すれば、会計の知識がなくても複式簿記で帳簿が付けられるだけでなく、e-Taxにも対応しています。不動産投資の規模が「5棟10室」を満たしているのであれば、65万円の特別控除を受けるために、会計ソフトを利用して帳簿を付けe-Taxで確定申告をすると良いでしょう。

不動産投資の確定申告の流れ

確定申告の流れは以下の通りです。

1. 書類の作成に必要な書類を揃える
2. 提出書類を作成・準備する
3. 期限までに申告書類を提出する

申告書類の作成に必要な書類を揃える

確定申告の書類を作成する際は、不動産投資における収入や経費などがわかる書類を集める必要があります。必要書類の例は、以下の通りです。

◯申告書類の作成に必要な書類の例
● 不動産売買契約書
● 賃貸借契約書
● 送金明細
● 売渡精算書
● 固定資産税や不動産取得税などの納税通知書
● 不動産投資ローンの支払明細書
● 火災保険や地震保険の保険料が分かる書類
● 管理費や修繕費など経費の額が分かる書類
● 源泉徴収票

会社員や公務員の場合、確定申告書類に、給与所得を記載する必要があるため源泉徴収票を準備しましょう。なお申告時に、源泉徴収票の原本を添付する必要はありません。

提出書類を作成・準備する

確定申告をする際は、以下の書類を作成・準備します。

● 確定申告書B
● 収支内訳書または青色申告決算書
● 所得控除を申請するための書類
● 本人確認書類

確定申告書には、A様式とB様式の2種類があります。不動産所得や譲渡所得がある人はB様式を作成します。白色申告をする方は収支内訳書、青色申告をする人は青色申告決算書を作成しましょう。これらの申告書類は、最寄りの税務署や国税庁のホームページで入手が可能です。

申告書類は、国税庁のホームページから「確定申告書作成コーナー」にアクセスして作成するとよいでしょう。PCの画面に表示される指示にしたがって必要事項を入力すると、所得額や税額などが自動で計算されるため、申告書や決算書を作成しやすいです。

所得控除を申請するための書類には、生命保険料控除の申請に必要な「生命保険料控除証明書」や、医療費控除を受けるための「医療費控除の明細書」などがあります。医療費控除とは、年間で自己負担した医療費が一定の金額を超える場合に利用できる所得控除です。

確定申告をするときは、身元と個人番号(マイナンバー)が確認できる本人確認書類の写しを添付しなければなりません。本人確認書類は、以下のどちらかです。

● マイナンバーカード
● 身元確認書類(運転免許証・パスポートなど)+番号確認書類(マイナンバー通知カード・住民票など)

なお譲渡所得がある場合は「申告書第三表(分離課税用)」を作成して提出する必要があります。

税務署に確定申告書類を提出

確定申告の書類が準備できたら、期限内に税務署へ提出しましょう。提出方法は、以下の通りです。

● 税務署の窓口へ持参
● 税務署へ郵送
● 「e-Tax」で電子申告

確定申告の期限は、例年2月中旬〜3月中旬です。なお2020年と2021年については、新型コロナウイルスの感染拡大により、提出期限が4月中旬へと延長されました。

期限内に申告しなければ「無申告加算税」というペナルティが課せられる恐れがあります。
たとえ期限内に申告をしたとしても、納税額が本来よりも少なかった場合は「過少申告加算税」、申告を偽ったり故意に所得を隠したりした場合は「重加算税」が課せられることがあります。

また所得税の納付が遅れた場合は「延滞税」が課されます。不動産投資をしている方は、期限内に正しく申告をすることが大切です。

 

まとめ

不動産投資をして家賃収入を得た場合は、多くの場合で確定申告をすることになるでしょう。会社員のような給与所得を得ている人は、給与所得以外の所得が年間で20万円以下であれば確定申告は不要ですが、住民税の申請・納税は必要です。

確定申告をする際は、事前に必要書類を集めたうえで申告書類を作成し、期日までに申告手続きを済ませなければなりません。確定申告について不明点がある場合は、早めに最寄りの税務署や税理士に確認しましょう。

 

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