#54 相続税の計算時に用いられる路線価と固定資産税評価額とは?

2021.10.15

 

相続税や贈与税を計算するとき、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で価値が評価されます。路線価や固定資産税評価額の確認方法を知っておくと、相続税や贈与税の計算に用いる土地や建物の評価額の目安が分かるのです。

本記事では、路線価と固定資産税評価額の内容や確認方法などを、わかりやすく解説していきます。

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相続した土地の価値は「路線価方式」で計算する

日本にある道路に面する土地1㎡あたりに付けられた価格を「路線価」といいます。路線価方式とは、路線価を用いて土地の価値を評価する方法です。

遺産が預貯金や投資信託のみであれば、それぞれの残高を集計するだけで評価額が計算できます。一方で専門知識のない人が、土地の時価を正しく把握するのは困難です。不動産鑑定士に価値の評価を依頼する方法もありますが、手間や時間がかかります。

そこで誰でも簡単に土地の価値を評価できるように、国税局は毎年7月に全国の民有地における1月1日時点の土地の価格を「相続税路線価」として公表しているのです。

路線価方式で相続税評価額を求めたとき時価の約8割となるよう、相続税路線価は設定されています。これは相続税路線価が、実際の時価を上回ってしまい、相続税の過払いが発生するのを防ぐためであるといわれています。

なお土地や建物の価値を時価で評価して、相続税を計算することも可能です。特に相続税の節税が目的でタワーマンションのような不動産を購入した場合、路線価方式ではなく時価で評価するように求められるケースがあります。

路線価の調べ方

路線価は、国税庁が運営する「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」から検索できます。路線価の調べ方は、以下の通りです。

1. 都道府県を選択
2. 土地関係、路線価図を選択
3. 路線価を調べたい市区町村を選択
4. 地名の横にある路線価図のページ番号を選択

では、実際に路線価はどのように表示されているのでしょうか?以下は、2022年(令和3年)における東京都世田谷区の路線価図です。

地図上の道路上に記載された数字が路線価であり、1,000円単位で記載されています。矢印は路線価が適用される範囲、路線価の数字の右側にあるのは借地権割合です。

借地権とは、持ち主から借りた土地に、建物を建てられる権利です。借地権割合は、土地の評価額のうち借地権が占める割合を表しており、以下の通りA〜Gの記号で表示されます。

● A:90%
● B:80%
● C:70%
● D:60%
● E:50%
● F:40%
● G:30%

◯で囲まれた数値は、番地です。例えば、世田谷4丁目16番の土地の下側の路線価を見ると「550C」と記載されています。これは、路線価が1㎡あたり55万円であり、借地権割合が70%であることを表しています。

路線価方式で相続税評価額を計算する方法

路線価方式での相続税評価額は、土地の種類によって計算方法が異なります。

他人が使用する権利がない土地である「自用地」の相続税評価額は、路線価に土地の面積(地積)を乗じて算出します。

例えば、路線価が1㎡あたり30万円、地積が100㎡である場合、土地の相続税評価額は30万円×100㎡=3,000万円です。

第三者が住宅を建てるために借りた宅地である「貸宅地」の場合、自用地よりも評価額が低くなります。宅地とは、建物が建っている土地または建物の敷地のために使われる土地です。土地をそのまま貸している場合は、宅地ではなく更地とみなされ、自用地と同じ計算方法で価値が評価されます。

貸宅地の相続税評価額の計算方法は、以下の通りです。

 貸宅地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合)

自用地評価額が3,000万円、借地権割合が60%である場合、貸宅地の相続税評価額は、3,000万円×(1-60%)=1,200万円です。

土地のうえに賃貸物件を建てて他人に貸している「貸家建付地」の場合、相続税評価額は、以下の計算式で求めます。

  貸家建付地の評価額=自用地評価額×(1-借地権割合×借家権割合×賃貸割合)

借家権割合は、全国一律で30%です。賃貸割合は、建物にある住戸のうち借手がいる住戸の割合です。

例えば、自用地評価額3,000万円、借地権割合60%、借家権割合30%、賃貸割合100%(満室)の場合、相続税評価額は3,000万円×(1-60%×30%×100%)=2,460万円となります。

なお路線価方式で土地の評価額を求める場合、以下のような使い勝手の悪い土地については、補正が適用されて相続税評価額が低くなることがあります。

● 角地
● 三角地
● 斜面を含む土地
● 間口に対して奥行きが深くすぎる土地 など、

また災害が発生すると、臨時的な調整が行われる場合もあります。より詳細に土地の価値を把握したい方は、相続税の専門家に相談すると良いでしょう。

路線価がないエリアでは「倍率方式」で価値が算出される

路線価が設定されていない場所は「倍率方式」を用いて、土地の相続税評価額を計算します。倍率方式とは「固定資産税評価額」に一定の倍率をかけて、相続税評価額を計算する方法です。固定資産税評価額については、後ほど詳しく解説します。

倍率は全国一律ではなく、エリアごとに定められています。倍率方式で用いる倍率は、路線価と同じく「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で検索が可能です。

相続した建物の価値は「固定資産税評価額」で計算する

固定資産税評価額とは、固定資産税や不動産取得税などを計算する際に用いられる評価額です。総務大臣が定める一定の基準にもとづいて各市区町村が個別に決めており、3年に1度見直されます。また固定資産税評価額は、一般的に再建築価格や建築費の7割程度です。

建物の相続税評価額は、固定資産税評価額がそのまま用いられます。例えば、建物の固定資産税評価額が3,000万円であった場合、相続税評価額も3,000万円です。

また固定資産税評価額を知っておくと、不動産を取得・保有する際のコストを把握するのに役立ちます。固定資産税評価額は、以下の通り不動産を所有する際に支払う税金の計算に用いられるためです。

● 固定資産税:毎年1月1日時点で土地や建物を所有している人が支払う税金
● 都市計画税: 市街化区域内に土地や建物を所有している人が支払う税金
● 不動産取得税:土地や建物を取得したときに支払う税金
● 登録免許税:不動産登記をする際に支払う税金

以上の税金は、固定資産税評価額に所定の税率をかけて計算します。

固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に記載されている「価格」の欄を見ると確認が可能です。他にも市町村役場に行き「固定資産評価証明書」を発行してもらったり、「固定資産課税台帳」を閲覧したりすると、固定資産税評価額を確認できます。

またアパートやマンションを購入する前である場合、不動産会社に尋ねると固定資産税評価額を教えてくれる場合があります。

貸家の固定資産税評価額

アパートやマンションなど人に貸している「貸家」は、固定資産税評価額×(1-借家権割合 × 賃貸割合)で相続税評価額を計算します。借家権割合は、基本的に30%です。

例えば、固定資産税評価額2,000万円、賃貸割合100%(満室)である場合、相続税評価額は、2,000万円×(1-30%×100%)=1,400万円となります。

他人に貸している建物には入居者がおり、所有者の意思だけで自由に処分できるわけではないため、自らが所有し居住する建物よりも低く評価されます。

小規模宅地等の特例が適用されるとさらに評価額が減少する

小規模宅地等の特例とは、財産を残す人(被相続人)が住んでいた土地や事業を営んでいた土地などを相続した場合、土地の相続税評価額が最大80%減額される制度です。

小規模宅地等の特例の対象となる土地は 「特定居住用宅地等」「特定事業用宅地等または特定同族会社事業用宅地等」「貸付事業用宅地等」に分かれています。それぞれの土地において、小規模宅地等の特例が適用できる限度面積や減額割合は以下の通りです。

賃貸アパートや賃貸マンションなどを相続した場合、要件に該当すると200㎡までの相続税評価額が50%減額されます。例えば、土地の相続税評価額が3,000万円、土地の面積が200㎡である貸付事業用宅地等に、小規模宅地等の特例が適用された場合、評価額が半額の1,500万円に減額されるのです。

小規模宅地等の特例は、亡くなった人が貸付事業をするために用いられた土地だけでなく、亡くなった人と生計を共にしていた親族が貸付事業をしていた土地でも適用できます。

ただし貸付事業用住宅等を引き継いで小規模宅地等の特例を適用する場合、以下の要件を満たす必要があります。

◯被相続人の貸付事業の用に供されていた宅地等
1. 被相続人の貸付事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、申告期限まで貸付事業を行っている
2. その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

◯被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族の貸付事業の用に供されていた宅地等
1. 相続を開始する前から相続の申告期限まで貸付事業を行っていること
2. その宅地等を相続税の申告期限まで保有していること

また、相続開始前3年以内に、新たに貸付事業のために用いられた宅地等(3年以内貸付宅地等)の一部は、小規模宅地等の特例の対象となりません。

小規模宅地等の特例とは?

まとめ

相続した不動産の価値について、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」を用いて算出します。路線価は土地の地価の約8割、建物は再建築価格または建築費の7割程度が目安です。

路線価は「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で検索できます。固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書や固定資産評価証明書などに記載されており、専門的な知識がなくても確認が可能です。

ただし実際には、土地の相続税評価額を算出する際に補正が適用される場合があります。また小規模宅地等の特例の適用要件は、専門家でなければ理解しにくい部分があるため、より詳細な相続税評価額を知りたい方税理士に相談すると良いでしょう。

 

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