#52 もう迷わない!不動産は相続と贈与のどちらで引き継ぐべき?

2021.09.30

配偶者や子供へ不動産を引き継ぐ方法には、相続と贈与があります。不動産を相続した場合は相続税、贈与した場合は贈与税の課税対象です。

相続と贈与のどちらが有利かは、引き継ぐ不動産の種類や引き継ぐ人によって異なります。本記事では、不動産を相続と贈与のどちらで渡したら良いのか、判断するときの基準を分かりやすく解説していきます。

相続税と贈与税の違いとは?

相続税は、財産を相続した人に課せられる税金であり、贈与税は、他人から財産を贈与された場合に課せられる税金です。相続税と贈与税は、どちらも取得した財産の価値を評価した金額に所定の税率をかけて計算します。

不動産は、相続と贈与のどちらであっても、土地は「路線価」、建物は「固定資産税評価額」で価値が評価されます。路線価は、土地の時価の8割程度、固定資産税評価額は、建物の時価の約7割です。現金や株式などの金融資産は、そのままの価値で評価されるのに対し、不動産は時価よりも低く評価されます。

また相続税と贈与税の最高税率は、どちらも55%です。しかし税率の決まり方や、税額の計算方法は、相続税と贈与税で異なっています。

相続税の税率は、各相続人が引き継いだ相続税の課税対象となる遺産の評価額に応じて決まります。相続税の課税対象となるのは、遺産の評価額から相続税の基礎控除や生命保険の非課税金額などを差し引いた金額です。相続税の税率は、以下の通りです。

法定相続分に応じる取得金額 税率
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15%
5,000万円以下 20%
1億円以下 30%
2億円以下 40%
3億円以下 45%
6億円以下 50%
6億円超 55%

※出典:国税庁

相続税は、 超過累進税率が採用されています。超過累進税率とは、課税の対象となる遺産の評価額が一定額を超えるたび、超過した部分にのみ高い税率が適用する方法です。

たとえば、遺産の取得金額が2,000万円である場合、1,000万円以下の遺産については10%、1,000万円超〜2,000万円以下の遺産については15%の税率が適用されます。

贈与税の税率は、1月1日から12月31日までに贈与された財産の金額から、基礎控除額である110万円を差し引いた金額によって変わります。以下は、父母や祖父母が贈与する年の1月1日時点で20歳以上である子供や孫などに贈与した場合の税率です。

 

基礎控除を差し引いたあとの金額 税率
200万円以下 10%
400万円以下 15%
600万円以下 20%
1,000万円以下 30%
1,500万円以下 40%
3,000万円以下 45%
4,500万円以下 50%
4,500万円超 55%

※出典:国税庁

贈与税についても相続税と同様に、超過累進税率で税額が計算されます。

税率の表のみを比較すると、贈与税のほうが相続税よりも税負担が重くなるように感じられうるかもしれません。しかし相続は1回しかできないのに対し、贈与は存命中であれば何回でもできる点が異なります。贈与税の基礎控除額110万円の範囲内で、毎年贈与をしていく行為を「暦年贈与」といい、相続対策の1つとして多くの方が活用しています。

基本的に不動産は相続したほうが税負担は軽い

アパートやマンションなどの不動産は、基本的に相続で引き継いだほうが税負担は軽くなります。相続税の計算時には、税負担を軽減できるさまざまな制度を適用できるだけでなく、引き継ぐコストも低く済むためです。

小規模宅地等の特例を適用できる

小規模宅地等の特例とは、亡くなった人が居住していたり貸し付けたりしていた土地や建物を相続する場合、一定の要件を満たすと土地の評価額が最大80%減額される制度です。

亡くなった人が居住していた土地を相続した場合、330㎡まで土地の評価額が80%減となります。また亡くなった人が賃貸アパートや賃貸マンションなどを営んでいた貸付用の土地を相続した場合、200㎡まで土地の評価額が50%割り引かれます。ただし、特定居住用と貸付事業用宅地は限度面積を併用できません。

例えば、賃貸マンションが建っている土地の評価額が6,000万円、面積が200㎡である場合、小規模宅地等の特例が適用されると評価額が3,000万円に減額されるのです。一方で、小規模宅地等の特例は、贈与税の計算時には適用されないため、このマンションを生前贈与する場合には評価額が6,000万円のまま税額が計算されます。

ただし賃貸アパートや賃貸マンションを相続しても、小規模宅地等の特例が適用されるとは限りません。小規模宅地等の特例を適用するためには、相続税の申告期限まで貸付用の土地を所有し、かつ事業を継続している必要があります。また相続が開始される3年以内に貸付事業の用に供された土地は、小規模宅地等の特例の対象外となる場合があります。

配偶者の税額軽減を適用できる

不動産を配偶者に引き継ぎたいと考えている場合は、贈与よりも相続のほうが税負担を抑えられます。なぜなら配偶者が相続によって財産を取得する場合、「配偶者の税額軽減」が適用されるためです。

配偶者の税額軽減とは、配偶者が相続で取得した財産の額が「配偶者の法定相続分相当額」と「1億6,000万円」のどちらか多い金額まで、相続税が課税されない制度です。

法定相続分とは、法律によって定められた相続する財産の割合の目安を指します。例えば、相続人が配偶者と子供である場合、配偶者は遺産の1/2、子供は遺産の1/2(全員合計)が法定相続分となります。

例えば、遺産の価格が4億円であり、相続人が配偶者と子供であった場合、配偶者は相続した遺産の額が2億円を超えない限り相続税はかかりません。配偶者の税額軽減が適用されることで、配偶者は子供や父母よりも相続税がかかりにくくなっています。

不動産を配偶者に贈与すると「贈与税の配偶者控除」を適用できる場合があります。贈与税の配偶者控除とは、婚姻期間20年以上の夫婦間で居住するための不動産を贈与した場合に、贈与税の基礎控除110万円とは別に2,000万円までの財産が非課税となる制度です。

一方、夫婦間で相続が発生すると、配偶者の税額軽減が適用されて最低でも1億6,000万円まで相続税がかかりません。また贈与の場合は、小規模宅地等の特例が適用されないため、配偶者に不動産を贈与すると、かえって税負担が重くなる可能性があります。

配偶者に不動産を引き継ぐ場合は、配偶者の税額軽減が適用される相続のほうが税負担を軽減しやすいといえます。

不動産を引き継ぐコストが少ない

不動産を取得した人は、不動産取得税や登録免許税を支払わなければなりません。相続で不動産を取得したときのほうが贈与で取得したときよりも、不動産取得税と登録免許税の負担が小さくなります。

不動産取得税とは、土地や建物などの不動産を取得した際に支払う税金です。贈与で不動産を取得した場合「固定資産税評価額の3〜4%」の不動産取得税がかかります。一方、相続で不動産を取得した場合、不動産取得税は非課税です。

登録免許税とは、不動産登記をする際に支払う税金です。相続や贈与で不動産の持ち主が変わる場合、不動産登記の1種である所有権移転登記をしなければなりません。相続と贈与のどちらで取得したかによって、登録免許税の税率は以下の通り異なります。

● 相続:土地と建物それぞれの課税標準(不動産の価額)×0.4%
● 贈与:土地と建物それぞれの課税標準(不動産の価額)×2%

贈与で不動産を取得すると、相続で取得したときの5倍の登録免許税を支払わなければなりません。

配偶者や子供に不動産を贈与すると、不動産取得税が課せられるだけでなく、登録免許税の税額も高くなりコストが増えてしまいます。より金銭的な負担を抑えたいのであれば、不動産を相続で引き継ぐほうが良いでしょう。

不動産を贈与したほうが良いケース

不動産を贈与する場合では、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などが適用されません。しかし不動産の種類によっては、相続よりも贈与を選択したほうが良い場合があります。

なお相続よりも贈与のほうが有利となるのは、贈与税の税率が相続税の税率よりも低いときです。不動産の引き継ぎ方を考える際は、税理士に相談のうえ、相続と贈与それぞれの税率や税額を確認すると良いでしょう。

収益不動産を贈与する場合

アパートやマンションなど、家賃収入が得られる収益不動産は、贈与するほうが良い場合があります。収益不動産から得られる家賃収入によって、相続する財産が増えてしまう可能性があるためです。

収益不動産からの家賃収入によって相続する財産が増えてしまうと、相続税額も増える可能性があります。アパートやマンションを配偶者や子供に贈与すると、物件から得られる家賃収入が贈与された人のものとなるため、相続税額の増加を抑えられるのです。

またアパートやマンションなどの賃貸物件が建っている土地(貸家建付地)は、贈与税や相続税の計算時に一定割合の評価額が減額されます。建物が他人に貸し出されている場合、建物部分の評価額についても、一定割合が減額されるのです。

不動産を生前に贈与する場合、相続時精算課税制度を使う方法があります。相続時精算課税制度とは、60歳以上の父母や祖父母から、20歳以上の子供や孫に対して贈与が行われた場合、最大2,500万円まで贈与税が非課税となる制度です。2,500万円を超える贈与については、一律で20%の贈与税が課せられます。

相続時精算課税制度を利用して贈与された財産は、相続税の課税対象となります。しかし物件から得られる賃料収入は、贈与された人の財産となるため相続税は課せられません。安定した家賃収入が得られる収益不動産は、相続時精算課税制度を使って贈与するのも方法の1つです。

ただし相続税を計算する際、相続時精算課税制度で贈与された財産は、相続が発生したときの価値ではなく、贈与されたときの価値で評価される点に注意が必要です。

不動産は、一般的に経年劣化によって価値が減少します。相続税を計算するときの不動産の価値が贈与時より下がっていた場合、かえって損をする恐れがあるため、将来的に価値の上昇や維持が見込める物件を贈与することが大切です。

価値の上昇が見込める不動産を贈与する場合

将来的に価値の上昇が見込める不動産を所有している場合、相続時精算課税制度を使って贈与しておくのも方法です。相続税を計算するとき、相続時精算課税制度を利用して贈与されたときの評価額が用いられるためです。

例えば、現在の価値が2,000万円である不動産があり、10年後に3,000万円に上昇するとしましょう。価値が2,000万円であるうちに相続時精算課税制度を使って贈与すると、10年後に亡くなったとき、不動産の評価額は3,000万円ではなく2,000万円として計算されます。

一方で、相続の発生時に価値が1,500万円に下がっていても、相続税を計算するときは2,000万円で計算されてしまいます。将来的に価値が下がってしまうと、相続税の負担が増えてしまう点には注意が必要です。

不動産の将来の価値は誰にも分かりませんが、価値の上昇が見込める物件を所有しているのであれば、贈与を検討してみると良いでしょう。

不動産を贈与する場合は相続税の3年内加算に要注意

相続時精算課税制度を利用しない場合であっても、相続開始前の3年以内に贈与された財産は、相続税の課税対象となってしまいます。例えば、亡くなる2年前に2,000万円の不動産を贈与していた場合、2,000万円が相続税の課税対象となるのです。ただし、贈与時に支払った贈与税については、相続税額から控除されます。

贈与した不動産が、相続税の3年内加算の対象になってしまうと、取得したときに支払った不動産取得税や登録免許税がムダになってしまいます。

ただし孫のような法定相続人以外の人にした贈与は、相続税の3年内加算は適用されません。不動産を贈与する際は、 贈与する人や贈与するタイミングに注意しましょう。

まとめ

不動産は、基本的に相続で引き継いだほうが金銭的な負担が少なくて済みます。相続税の計算時には「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などが適用できるだけでなく、相続のほうが不動産取得のコストも低いためです。ただし収益不動産や価値の上昇が見込める不動産は、生前に贈与したほうが良い場合もあります。

不動産を相続すべきか贈与すべきかは、土地や建物の評価額、想定される税額などが計算できなければ判断できません。そのため所有する不動産の引き継ぎ方は、税理士など相続のプロに相談すると良いでしょう。

 

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