#48 資産を不動産に変えるときの5つの注意点【対策も解説】

2021.08.27

賃貸マンションや賃貸アパートなどの収益物件は、 相続税を計算する際に現金や有価証券よりも価値が低く評価されます。そのため相続税の負担を抑える目的で、資産の一部を収益物件に変える方は珍しくありません。

しかし収益物件を購入し相続税の負担を軽減できても、物件の選び方や賃貸経営の仕方を間違えるとかえって損をする恐れがあります。また相続財産のうち不動産の占める割合が増えると、遺産分割の際に揉めやすくなるのです。

そこで今回は、相続対策をするために不動産投資をしようと考えている人が、知っておくべき注意すべき点と対策を解説します。

注意点1:物件の資産価値が下がると損をする恐れがある

相続対策として収益物件を購入するときは、資産価値が大幅に下落しない物件を選ぶことが大切です。節税できたとしても、物件の売却時に価値が下がっていると損をする恐れがあるためです。

例えば、相続税の負担を軽減するために、2億円の賃貸アパートを購入し、相続税を2,000万円節税できたとしましょう。賃貸アパートを売却するときに価値が2億円から1億5,000万円まで低下していた場合、相続税を2,000万円節税できたとしても、5,000万円-2,000万円=3,000万円損してしまいます。

また不動産投資ローンを借り入れて収益物件を購入していた場合、価格の下落によってローンだけが残ってしまうかもしれません。

安定した需要が見込めるエリアを探す

売却時に価値が大幅に下がらないようにするためには、安定した需要が見込める物件を探すことが大切です。特に物件の立地は、需要に大きく関係します。

安定的な賃貸需要が見込めるエリアの条件の1つは、通勤したり遊びに出かけたりするときに便利なことです。例えば、主要ターミナル駅にアクセスしやすい場所は人気があります。具体的には、城南3区(世田谷・渋谷・目黒)は、都心に近いだけでなく、住環境も良く治安も良好であるため、安定した賃貸需要が見込めるでしょう。

他にも「バス停」「スーパー、コンビニ」「病院」「学校(大学)」などの位置関係も、物件の需要に影響します。

需要が見込めるエリアに物件があれば、空室が発生してもすぐに入居者が見つかりやすいため価値が下落しにくいです。需要が見込めないエリアに土地を所有している方は、土地を売却して、需要が見込めるエリアに収益物件を購入するのも方法の1つでしょう。

ただし大学や商業施設の移転によって、物件の需要が大きく低下するケースもあります。収益物件を購入する際は、不動産会社の営業担当者や市役所の担当部署に、購入を検討しているエリアの開発状況を確認するのがおすすめです。

注意点2:物件の購入後は適切に賃貸経営をする必要がある

相続対策は、賃貸物件を購入した時点で終了するわけではありません。賃貸アパートや賃貸マンションを購入したあとは、適切に賃貸経営を行う必要があります。

いくら立地が良く需要が見込める物件を購入しても、家賃収入が減って賃貸経営が赤字になってしまった場合、貴重な財産を食いつぶしてしまうかもしれません。

また築年数が経過し建物の劣化が進むと、物件の魅力が低下するため空室率は上昇してしまいます。物件の周辺に新築の収益物件が建っていくと、家賃を下げなければ入居者は付きづらくなるでしょう。

空室率の増加や家賃の下落を防ぐためには、建物の修繕や設備の交換、お部屋のリフォームなどを適切に実施する必要があります。メンテナンスを適切に実施している物件は、築年数の経過を感じさせず、空室率の上昇や家賃の下落が発生しにくくなるのです。

信頼できる不動産管理会社を選ぶ

新規の入居者募集や建物の修繕、入居者の対応など、すべての管理業務をオーナーだけで行うのは困難です。そのため不動産オーナーの多くは、物件の管理業務の一部またはすべてを不動産管理会社に委託しています。

収益物件を選ぶのと同じくらい、管理を依頼する管理会社の選定は重要です。管理会社の対応が不適切であると「物件が適切にメンテナンスされない」「入居者が見つからず空室が続く」などの支障が発生してしまうためです。

物件が適切に管理されており、困ったことがあっても管理会社が親身に対応してくれる物件は、入居者が自然と長く住みたくなるため退去者が発生しにくくなります。不動産投資をする際は、物件だけでなく管理会社も入念に選びましょう。

注意点3:遺産分割で揉める恐れがある

財産を相続人のあいだで分割する際、分割方法で揉めてしまう「争族」となるケースは珍しくありません。相続財産に含まれる不動産の割合が高いほど、争族は発生しやすくなります。なぜなら不動産は、現金や有価証券と比較して分割しにくいためです。

遺産の分割方法には、現金や不動産、有価証券などの遺産を、そのままの形で分割する「現物分割」の他にも「換価分割」や「代償分割」があります。

換価分割とは、遺産分割しにくい不動産を売却して現金に変え、相続人で分ける方法です。例えば、実勢価格が1億円の不動産を3人の相続人で相続するとしましょう。不動産が1億円で売却でき、諸経費が400万円かかった場合、9,600万円を3人で分けるため、1人あたり3,200万円ずつ相続できます。

代償分割とは、相続人のうちの一人または数人が不動産など現物の資産を相続して、他の相続人に代償金(または代償財産)を支払う形で遺産を分け合う方法です。例えば、9,000万円の価値がある不動産を3人で相続する場合、1人が不動産を相続した場合は、代わりに残り2人の相続人に対し3000万円ずつ支払います。

しかし換価分割をするためには、不動産を売却しなければなりません。相続税は、被相続人が亡くなったことを知った日から10ヶ月以内に申告が必要です。それまでに不動産を売却し、遺産分割協議を済ませなければならないため、売り急いでしまって相場よりも安価で売却してしまう場合があります。

また代償分割をする場合、不動産を相続しない相続人がまとまった現金を用意しなければなりません。相続財産に含まれる現金が少ない場合、代償分割をするための資金を相続人自らの貯蓄で支払う必要があります。しかし数千万円の現金を自身で準備するのは、一般的に困難であるため、代償分割を選択できないことがあるのです。

他にも、不動産を共有名義にして相続人全員の所有物とする方法もあります。しかし不動産を共有名義にすると、所有者間の意見が合わずに揉めてしまうかもしれません。例えば兄弟で1棟のマンションを相続した場合、兄が売却したいと考えていても、弟の同意がなければ売却できず揉める原因となりやすいです。

そもそも相続人が不動産の相続を希望しない可能性もあります。相続対策として不動産を購入する場合は、相続人となる予定の家族と生前に、遺産の分割方法について話し合っておくことが大切です。

不動産小口化商品の活用も検討する

不動産小口化商品とは、アパートやマンション、商業施設などの所有権を、複数の持分権に向けて販売する金融商品です。不動産を購入する場合、数千万〜数億円の資金を準備する必要があるのに対し、不動産小口化商品は1口あたり数万〜1,000万円程度で購入できます。

不動産小口化商品のうち「任意組合型」は、相続税を計算する際に現物の不動産と同じ方法で評価されるため、相続税の節税効果が期待できます。任意組合型とは、複数の投資家が収益物件の組合持分権を購入し、家賃収入や売却益などが発生した場合出資額に応じて分配される不動産小口化商品です。

例えば、1億2,000万円の不動産を購入する代わりに、1口100万円の不動産小口化商品(任意組合型)を120口購入するとしましょう。相続人が長男と次男、長女の3人である場合、不動産小口化商品を40口ずつ平等に相続できます。現物の不動産を相続する場合とは異なり、換価分割や代償分割をする必要がないため遺産分割で揉めにくくなります。

 

また不動産小口化商品の所有者は、物件を管理する必要がありません。そもそも不動産投資に興味が無い方や、管理会社を探す手間を省きたい方は不動産小口化商品の購入も検討してみるとよいでしょう。

注意点4:相続税を納める現金が不足する

相続財産の大半を不動産が占めており現金が少ないと、財産を相続した人の貯蓄から相続税を納める必要性が生じます。そのため不動産を購入するときは、不動産投資ローンを活用して相続人が相続税を支払えるだけの現金を残しておくと良いでしょう。

例えば手持ちの現預金が2億円であり、購入を検討している収益物件が1億8,000万円であったとしましょう。

手持ち資金のすべてを使って収益物件を購入してしまうと、現金は2,000万円しか残りません。相続人が複数人いた場合、相続財産の中から相続税を納めるのが困難となる恐れがあります。

そこで1億円の不動産投資ローンを借り入れて、8,000万円の現金と合わせて収益物件を購入すると1億2,000万円の現金を相続でき、相続税の納税資金を確保しやすくなります。

また現金を多く相続することで代償分割を選択しやすくなるのも、不動産投資ローンを借り入れるメリットです。

注意点5:税務署から否認されるリスクがある

不動産の購入が相続対策となるのは、相続時に不動産の価値が時価ではなく「路線価」や「固定資産税評価額」で評価されるためです。しかしあからさまな相続対策で不動産を購入すると、路線価や固定資産税評価額での評価が税務署から否認され、時価で再評価したうえで相続税を納めるよう指示されることがあります。

令和元年8月末の東京地方裁判所の判決では、路線価や固定資産税評価額で相続財産を評価するのが「著しく不適当」であるとして、収益還元法で物件を評価する こととされました。※収益還元法は、 物件が将来的に生み出すと考えられる収益をもとに価値を算定する方法

決め手となったのは「被相続人が相続直前にマンションを2棟続けて購入している」ことで「ローンを融資した銀行の稟議書に”相続税対策”と書かれていた」などです。

相続対策として不動産を購入する際は、相続税に詳しい税理士に相談をし、税務署から「著しく不適当」とみなされないようにすることが大切です。

まとめ

相続税対策を目的に不動産を購入する際は、以下の5点に注意する必要があります。

1. 物件の資産価値が下がると損をする恐れがある
2. 物件の購入後は適切に賃貸経営をする必要がある
3. 遺産分割で揉める恐れがある
4. 相続税を納める現金が不足する
5. 税務署から否認されるリスクがある

相続税を節税するために不動産投資を始める場合は、上記の注意点を把握し必要に応じて対策することが大切です。ご自身の力だけで対策が困難である場合は、遺産相続に詳しい不動産会社や税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

 

合わせて読みたい記事