#44 株式を相続した時の手続きや評価方法とは?相続対策に有効な不動産投資と株式の比較

2021.07.30

相続財産の中に株式が含まれている時、「評価額はどうやって決める?」「手続きはどうすれば」と戸惑う方は少なくありません。

株式の評価方法は上場株式と非上場株式で異なり、手続きも遺言又は遺産分割協議書の有無によって証券会社に提出する書類が変わってきます。

スムーズに手続きを行うためには、あらかじめ相続の流れを知っておくことが重要となります。

なお相続財産は「相続税評価額」により納める税金・税率が変わりますが、2015年の税制改正により相続税を納付する方が増加しています。相続税を抑えるためには一体どのような方法があるのでしょうか?

本記事では、相続の流れと株式相続の手続き、相続対策に有効な不動産投資と株式の比較などをお伝えしていきます。

株式の相続とは?相続の流れと手順

株式を相続するまでには、株式を含む遺産の相続開始から死亡届の提出や遺言書の有無の確認、遺産の調査・評価などのステップを踏む必要があります。最終的には遺産分割協議で株式を含む遺産の分割方法・割合などを相続人全員で話し合い、相続する財産が決定します。

相続放棄や被相続人(亡くなられた方)の準確定申告など期限がある手続きは早急に済ませる必要があり、並行して株式の評価や他の遺産の調査などを行います。
スムーズに各種手続きを行うためにも、相続の流れや方法を知っておきましょう。

まずは相続開始から遺産分割協議までの流れを紹介していきます。

相続開始から遺産分割協議までの流れ

相続開始~遺産分割協議の流れは以下の通りとなります。

1.  被相続人が亡くなり、相続開始

2.  役所に死亡届を提出(7日以内)

3.  遺言書の有無を確認

4.  遺産の調査・評価

5.  相続放棄・限定承認(3ヶ月以内)

6.  準確定申告(4ヶ月以内)

7.  遺産分割協議

8.  遺産分割協議書を作成する

被相続人が亡くなったことにより、相続開始となり7日以内に役所に死亡届を提出します。遺言書の有無を確認した後、遺産をすべて把握するため調査を行います。

被相続人と取引のあった銀行や証券会社・不動産会社などに連絡し、全ての遺産を把握しておきましょう。評価を行った後に、場合によっては相続放棄や限定承認の手続きを行います。
被相続人が残した財産に債務・借金が多い場合などには相続放棄や「相続する財産の範囲内で債務を受け継ぐ」手続きである限定承認を家庭裁判所に申し立てます。
なお遺産の総額が明らかにならない時には、手続きの延長を求める申し立てを行う事が出来ます。

被相続人が亡くなった年の1月1日から亡くなる日までの所得税を申告・納付する準確定申告は相続開始から4ヶ月以内と定められています。

遺産分割協議では、基本的に相続人全員で話し合いを行い、未成年者や判断能力の乏しい方(精神障害や認知症の方など)には後見人を立てる必要があります。

遺産分割協議で話がまとまった時には、話し合った内容を明記した遺産分割協議書を作成します。協議で相続人同士の話がまとまらず全員の合意が得られない時には、家庭裁判所に調停を申し立てます。

証券会社又は証券保管振替機構に連絡を

被相続人が株式投資を行っていた、会社経営をしており株式を保有していたケースでは株式が遺産に含まれます。

被相続人が取引していた証券会社が分かる場合には証券会社に、分からない場合には証券保管振替機構 に取引のある証券会社を尋ねましょう。

例えば法定相続人が開示請求を行う 場合、証券保管振替機構に開示請求書(ホームページからダウンロード可能)・法定相続人の本人確認書類(健康保険証や免許証など)・法定相続情報一覧図(又は相続人と被相続人の関係を示す戸籍謄本などの書類)・被相続人の住所の確認書類に加え1件につき6050円の開示費用 が必要となります。

証券会社 に関しても、相続の際には被相続人・相続人の戸籍謄本や本人確認書類などが必要となり、多くの証券会社では遺言書・遺産分割協議書の有無によって提出書類が異なります。

証券会社に電話をかけ問い合わせる、ホームページをよく確認するなどの方法で必要書類を調べ集めていきましょう。

株式の評価方法とは

預貯金と異なり、株式は毎日価格が変動しますが一体どのように評価したら良いのでしょうか?

株式は上場株式と非上場株式で評価方法が異なります。

非上場株式は上場されていない株式であり、被相続人が経営者や取締役だった場合に保有している可能性があります。親族が経営している非上場企業の株を保有している、勤務先の企業の従業員持株会で株を購入しているケースもあります。

上場株式の評価方法

上場株式に主に以下の4つの評価方法があります。

1.  課税時期(相続日)の最終価格

2.  課税時期(相続のあった月)の毎日の最終価格の平均額

3.  課税時期(相続があった前月)の毎日の最終価格の平均額

4.  課税時期(相続があった前々月)の毎日の最終価格の平均額

4つの価額のうち最も低い価額で評価を行います。なお、相続の時期に最終価格がない場合や株式の権利落などがある場合には、一定の修正をする決まりになっています。

株式市場は毎日取引があるため、相続のある最終価格と過去3ヶ月の最終価格の月平均と幅を持たせるよう設定されています。

非上場株式の評価方法

被相続人が非上場株式を保有していた場合、4つの評価方法から会社の規模・株式の保有率に応じて方法を選択し、計算する事になります。

例えば支配株主(株式の50%以上を保有している)で従業員数が70人以上の会社は類似業種比準価額方式、零細株主(支配株主ではない従業員株主など)は配当還元価額方式などの方法となります。

計算するためには専門知識が必要になりますので、税理士などの専門家に評価を行ってもらったほうが良いでしょう。

非上場株式の相続税・贈与税の納税猶予・免除制度

会社の後継者が現在の経営者から自社株を相続や贈与によって取得した場合、一定の要件を満たすことで相続税・贈与税が免除または猶予される制度があります。

親族で会社を経営している場合や、被相続人が企業の経営に関係しているケースでは適用される可能性があります。

上場株式・非上場株式の評価額は上記の方法で計算しますが、相続税がどのくらいかかるか気になる方も多い事でしょう。

相続税の算出に用いられる「相続税評価額」は一体どのように計算するのでしょうか?
具体的なケースで見てきましょう。

株式の相続税とは?相続税評価額をシミュレーション

株式を含め相続財産は、基礎控除額を超えた場合に一定の相続税が課されます。
基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」ですが、2015年に引き下げられたことにより相続税の課税件数(税金を支払った件数)が増加しています。

財産を残す側も受ける側も「相続税対策」は身近な課題となっています。

相続税は相続税評価額を元に計算しますが、株式の相続において相続税評価額は具体的にどうやって計算するのでしょうか?

父・母・子供3人の家庭の父親にあたる被相続人Aさんが、上場企業の株式を10,000株保有していた場合でシミュレーションしてみましょう。
Aさんの保有していた株式
上場企業A社 10,000株

不動産や預貯金などその他の財産の合計価額:7000万円

 

Aさんの保有していた株式

上場企業A社 10,000株

不動産や預貯金などその他の財産の合計価額:7000万円

 

A社

1.   課税時期の最終価格:3870円

2.   課税時期の月の毎日の最終価格の平均額:3965円

3.   課税時期の前月の毎日の最終価格の平均額:3650円

4.   課税時期の前々月の毎日の最終価格の平均額:3873円

→最も低い額は2の3650円

評価額

3650×10,000=36,500,000円

 

合計は3650万円となり、他の遺産と合わせると計1億650万円となりました。
相続税の基礎控除額は「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」となりますので、Aさんの場合は法定相続人が4人(2400万円)で計5400万円です。基礎控除額を超えた5250万円分が税金の対象となります。
配偶者控除などでさらに控除される可能性もありますが、3人の子供には課税される可能性があります。
株式の場合、「相続の評価方法・価額が税制面で有利となるわけではない」という結果となりました。
それでは「相続税対策」の例として挙げられる機会の多い不動産投資ではどうなるのでしょうか?

株式と不動産投資・不動産小口化商品との比較

相続対策として不動産投資・不動産小口化商品 を行った場合の相続税評価額を計算し、株式と比較してみましょう。

1.不動産投資との比較

不動産投資の場合では、被相続人の保有していた不動産は建物が時価の約7割の固定資産税評価額、土地は主に時価の約8割の路線価方式(相続税評価額)で評価されます。
土地に路線価が設定されていない地域では倍率方式という方法で評価が行われます。

さらに賃貸事業用又は居住用の土地で一定の要件を満たした際は「小規模宅地等の特例」が適用され、評価額が50~80%減額されます。

例えばAさんの資産約9000万円のうち7500万円で一棟マンション(土地4500万円、建物3000万円)を購入した場合でシミュレーションしてみましょう。

 

土地:時価4500万円

相続税評価額3600万円

小規模宅地等の特例で80%減額→720万円

建物:時価3000万円

固定資産税評価額2100万円

評価額の合計:2820万円

圧縮される価額:4680万円

 

4680万円が圧縮され、時価7500万円の不動産が2820万円で評価されます。

残り1500万円と合計すると4320万円となり、基礎控除額内におさまります。相続税を納める必要はなくなるという結果になりました。

 

2.不動産小口化商品との比較

不動産小口化商品は不動産を1口当たり数万円~1000万円程度に小口化した金融商品です。

【不動産小口化商品の基礎知識はこちら】

複数の出資者が共同で事業を行う「任意組合型」と事業者に対して出資する「匿名組合型」という2つのタイプがありますが、任意組合型では金銭などで出資した場合、「相続税評価額」で評価されます。

実際に不動産を保有することなく相続対策を行う事が可能で、相続の際にも分割しやすい点がメリットとなります。

上記のAさんが生前に相続税対策として総資産約9000万円のうち7000万円分を不動産小口化商品を保有した場合、圧縮率70%となる2100万円の評価となります。残り2000万円と合わせると4100万円となり、評価額を4900万円減らすことができました。

 

不動産小口化商品の場合

評価方法:相続税評価額(圧縮率70%)

価額:7000万円

評価額:2100万円

圧縮される価額:4900万円

 

株式は上場株式の場合、3ヶ月以内の最終価格のうち最も低い価額で評価されます。
20年運用した場合、日経平均株価は2000年5月1日の終値 は18403.8円で2020年5月1日の終値は 19615.35円となっていますのでプラス1211.55円、約7%上昇しています。

7000万円を20年間運用し7%上昇と仮定すると、7490万円となり資産は490万円プラスとなりますが、相続税の課税対象額も上がります。残り2000万円と合わせて9490万円が課税対象額となってしまいます。

加えて「購入後もしくは相続後に必ずしも株価が上がるとは限らない」「今まで通り順調に株価が上がるわけではない」という点にも注意が必要です。

 

不動産投資・不動産小口化商品が相続対策に有効

相続の流れや株式の評価方法、不動産投資や不動産小口化商品との比較などをお伝えしてきました。

被相続人が株式を保有していた場合には証券会社又は証券保管振替機構に連絡を行いましょう。上場株式と非上場株式で評価方法は異なり、上場株式は3ヶ月以内の終値のうち最低額で評価を行います。非上場株式は税理士などの専門家に評価を依頼しましょう。

不動産小口化商品や不動産投資は株式と異なり圧縮効果が高いため、相続対策として有効と言われています。
不動産を活用したい方は不動産会社に連絡してみましょう。

 

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