#38 実例を紹介!不動産小口化商品で相続税を大幅節税

2021.06.09

国際的に比較しても、日本人の金融資産は預貯金に偏っている傾向があると指摘されてきましたが、そのままの状態で放置していると、相続が発生した場合の税負担が重くなるケースも出てきます。そこで、実質的な価値が同等であっても預貯金と比べて相続税の負担が軽減される不動産に資産の組み替えを進めておくのが相続対策の王道だと言われています。特に、不動産小口化商品を活用するとより柔軟な対応が可能となります。具体例で検証しながら、不動産小口化商品による相続対策の有効性について確認してみましょう。

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現金と不動産、相続税にはどのような違いが?

相続税を計算する際、税務署は各々の資産の特性を考慮してその価値を査定します。それが「相続税評価額」と呼ばれるもので、換金しやすくて分けるのも容易な預貯金は額面通りの評価であるのに対し、すぐには現金化しづらい不動産は時価よりも割安になります。

土地の部分は地価公示価格の約8割である「路線価」をもとに判断し、実勢価格の8割程度になるのが通常です。建物の部分についても、自宅に用いている場合で建築費の6割程度に該当する「固定資産評価額」と同価値とみなされます。

さらに、土地の部分については「小規模宅地等の特例」という制度が設けられており、その適用条件を満たすと大幅な減額となります。例えば、財産を遺した人と同居していた建物が建つ土地を相続すると、一定の条件のもと330㎡までの広さまで評価額を80%減額するというものです。

 

自宅と預貯金だけだと、多額の相続税が発生しかねない

こうした税制になっていることを念頭に置きながら、実例に注目してみましょう。東京都在住Sさん一家は妻と2人の子どもという家族構成で、実勢価格で約1億8000万円(土地が1億4000万円、建物が4000万円)の自宅と1億円の預貯金を保有していました。Sさんにもしものことがあった場合、現状の資産に対してはどの程度の相続税がかかってくるのでしょうか?

まず、Sさんの自宅には「小規模宅地等の特例」を適用でき、敷地330㎡以内にとどまっていたので全面積に対して80%減額が可能だったことから、その「相続税評価額」は「1億1200万円×20%=2240万円」となります。そして、建物の部分は「4000万円×60%=2400万円」で、不動産の「相続税評価額」は「2240万円+2400万円=4640万円」となる一方、預貯金は額面通りの1億円で、合計額は1億4640万円です。

相続税には「3000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」という「基礎控除」が設けられており、相続財産からその金額を差し引くことが可能です。Sさんの場合は「3000万円+600万円×3=4800万円」を控除後の9840万円に税金が課されることになります。

もしも、Sさんの妻が自宅を相続し、2人の子どもが1億円の預貯金を均等に分け合ったとしたらどうなるでしょうか? その場合、「配偶者控除」を適用すればSさんの妻には相続税がかかりません。

「配偶者控除」とは、配偶者が相続する遺産の「相続税評価額」が1億6000万円までなら相続税が課されないという税制上の特典です。1億6000万円を超えていた場合も、民法が定めた配偶者の法定相続分(相続財産の2分の1)の範囲内なら非課税となります。しかしながら、2人の子どもは約485万円ずつ相続税を納める必要が生じます。

 

1つの不動産を分け合うと、トラブルの火種にも…

現金や預貯金と比べて相続税負担が軽くなるという話を小耳に挟んだSさんは、1億円で不動産を購入することを検討し始めました。では、子どもたちが分け合うのが1億円の賃貸マンション1棟だった場合、その税負担はどうなるでしょうか?

第三者に貸し出している不動産は、建物の部分が「自宅として用いている家屋の相続税評価額×70%」と評価されます。そして、土地の部分も時価の約4割減となります。

Sさんが建物の建築費3000万円、土地の価格7000万円の賃貸不動産を所有していたと仮定すれば、その「相続税評価額」は「1260万円(建物)+4200万円(土地)=5660万円」です。すると、やはりSさんの妻は「配偶者控除」の適用で税負担がゼロとなる一方、2人の子どもは約185万円ずつの税負担に軽減されます。

ただし、ここで立ちはだかってくるのは、1棟のマンションをどうやって2人の子どもが分け合うかという問題です。うっかり共有名義にすると、仲のいい兄弟姉妹であっても今後の方針を巡って意見が対立し、険悪な関係になるケースが少なくありません。

2人で分けることを想定して5000万円の区分マンション2つ購入する手があるものの、個々の収益性や資産価値は1億円の一棟物件と比べて低下してしまうのも確かです。むしろ、自宅を担保に融資を受け、1億円の一棟マンションを購入するというプランのほうが得策だと言えるでしょう。

1億円の融資を受けてまだ完済していない時点で相続が発生したら、その残高を相続資産から差し引けるからです。「相続税評価額」が5660万円の一棟マンションに対して1億円の借入が残っていたとしたら、2人の子どもの税負担はそれぞれ12万円にまで軽減されます。

 

不動産小口化商品なら不動産と同等の相続税評価に

専門家に相談して2棟のマンションを購入することを提案されたものの、Sさんは融資を受けることにどうしても抵抗を感じてしまい、もっと手軽にできる対策を希望しました。そこで、代案として勧められたのが不動産小口化商品の購入です。

不動産小口化商品とは、大勢の投資家が集まって共同で賃貸不動産に共同で投資するというものです。不動産小口化商品の購入を通じて集められた資金をもとに賃貸不動産に投資し、その物件から得られた家賃などの収益が保有口数に応じて分配されます。

通常の不動産と違って1口100万円といった単位から購入可能ですから、相続人の数が多くても分けやすいのが第一のメリットです。しかも、「任意組合型」と呼ばれるタイプの不動産小口化商品は、先述したような賃貸不動産に対する「相続税評価額」の減額も適用されるので、節税効果も期待できます。

 

不動産小口化商品は「生前贈与」で有効!

また、不動産小口化商品は相続対策の一つである「生前贈与」の手段としても有効だと言えるでしょう。「生前贈与」とは、贈与税の「基礎控除」枠の範囲内で存命中に資産の継承を進めていくものです。

贈与税には1人(財産を譲り受ける人)当たり年間110万円という「基礎控除」が設けられており、この枠を超えた分に対して最高税率55%の税金が課されます。そして、現金の場合はその額面通りの評価額で税金が計算されるのに対し、「任意組合型」の不動産小口化商品は前述した相続税制と同じ考え方に基づいて評価減が行われます。

たとえば、2人の子どもに年間400万円ずつ現金で生前贈与を行うと、それぞれ「400万円−110万円=290万円」が課税対象で、1人当たり33.5万円の税負担となります。ところが、1人つき4口(1口100万円)ずつ不動産小口化商品を贈与すると、土地と建物が相続税のケースと同じように減額され、その課税評価額が150万円だったと仮定すると、「150万円−110万円=40万円」が課税対象で、1人当たりわずか4万円に税負担が抑えられるのです。

こうした「生前贈与」を繰り返し行っていった場合、さらにその差は軽視できない規模になってきます。現金のケースでは「基礎控除」の枠内にとどめることを心掛けると、10年間で2人の合計で2200万円(1人当たり1100万円)しか譲り渡すことが叶いません。

これに対し、10年間にわたって1人つき4口ずつ不動産小口化商品を贈与することを繰り返すと、2人の合計で8000万円(1人当たり4000万円)の「生前贈与」を実行でき、贈与税の負担も1人当たり40万円にとどまります。現金の「生前贈与」と同じペースで継続すると1人当たり335万円の税負担となるので、まさにその差は一目瞭然です。

8000万円が不動産小口化商品の購入に充てられた結果、預貯金の残高も2000万円に減少しています。もしも、その時点で相続が発生し、預貯金を2人の子どもが均等に分けたとしても、それぞれの相続税負担は39万円にとどまります。

 

まとめ

融資を受けて1億円の賃貸マンションを2棟購入するというプランと比較すれば、先述した「生前贈与」のシミュレーションにおける子どもたちの相続税負担は増えるように思われます。しかしながら、この「生前贈与」プランでは借入(負の遺産)が残っていないのも事実ですし、すでに譲り受けていた不動産小口化商品から定期的な収益も得られてきたはずです。

このように、不動産小口化商品は効率的に「生前贈与」を進めていくうえで非常に有効な手段です。保有している資産の規模や構成などに応じて、不動産小口化商品の活用を検討しているのも一考でしょう。

 

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