【FP解説】相続税対策に不動産投資は有効?メリット・デメリットと注意点も

2021.05.12

「不動産投資で相続税対策を」「節税には不動産投資」などの謳い文句を見て「本当に不動産投資で節税できるの?」「そもそも相続税対策は必要?」と疑問を抱く方もいらっしゃることでしょう。

2015年の税制改正により相続税の基礎控除額が減り、実質税金が引き上げになった事から相続税を納める人の割合は増加傾向にあります。「相続税対策」はもはや富裕層だけの問題ではなく、遺産を子供や親戚などに引き継ぎたい方、親などから遺産を引き継ぐ予定の方と配偶者など私たちの生活に身近な課題となってきています。

本記事では相続税対策が必要である理由、相続税対策として不動産投資を行うメリットデメリット注意点をお伝えしていきます。

相続税対策としての不動産投資に興味のある方だけではなく、相続税が気になる方や投資に興味のある方もぜひご覧ください。

 

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相続税対策はなぜ必要?相続税を納める人が増えた理由とは

2015年の税制改正により、相続税が実質引き上げとなった結果、相続税を納める人の割合と税額は以下のように増加しています。

(引用)総務省 相続税の改正に関する資料 「相続税の課税件数割合及び相続税・贈与税収の推移」

上図の平成27年(2015年)に制度改正となり、相続税の課税件数割合(相続税を納める人の割合)は前年が全体の4.4%に対し2015年は8%まで上昇、以降は8%台で推移しています。

(参考)国税庁 令 和 元 年 分 相 続 税 の 申 告 事 績 の 概 要

相続税は基本的に「基礎控除額」を超えた場合に税金が課されますが、改正で基礎控除額が引き下げられたことにより税金が課されるケースや負担割合などが増加しました。

 

改正前と改正後の基礎控除額
改正前:5000万円+(1000万円×法定相続人の数)
改正後:3000万円+(600万円×法定相続人の数)

 

 

例えば4人家族で夫婦と子供2人世帯の場合、父親又は母親が亡くなった時の基礎控除額は改正前が8000万円(5000万円+(1000万円×3))ですが、改正後は4800万円(3000万円+(600万円×3))となっています。

(※基礎控除以外の控除で税金が課されない可能性があります)

相続税は税金の対象となる金額が大きければ大きいほど税率が上がる累進課税制度で、現在の税率は8段階の10~55%となっています。特に税金の対象となる遺産が6億円超の方は半分以上の価額に税金を課される仕組み(税率が55%)となっていますので、「相続税対策をしておいたほうが良い」という結論になります。

将来相続人になる予定がある方の中には、「うちはそんなにお金持ちではないから大丈夫」「親の遺産は基礎控除額内におさまる予定」という方も多いですが、相続人が把握していない遺産が存在する可能性があります。

加えて最高裁判所の司法統計によると、「遺産分割事件」として申し立てられた件数は年々増加しています。事件のうち約8割は5000万円以下の遺産額となっており、金額に関わらず遺産分割でトラブルが起こりやすくなっている事が分かります。

予期せぬ相続税を支払う事例や遺産分割でのトラブルを防ぐためにも、相続税対策はあらゆる世帯で必須となっていくでしょう。

 

相続税対策として不動産投資を行うことのメリット3つ

相続税対策としては第一に相続税の対象となる価額が大幅に圧縮され、年々マンションの価格が上昇している「不動産投資」が挙げられます。

不動産は形のある資産(現物資産)ですので、不況に強く資産の価値が落ちにくいといったメリットも存在します。

1.税金の対象となる価額が大幅に圧縮される

相続税対策として不動産投資を行う最大のメリットは税金の対象となる金額(課税額)を圧縮できることです。課税額を圧縮できる背景としては、①相続の際に不動産は相続税評価額で評価される、②小規模宅地等の特例という2つの制度があります。

相続税の計算において不動産は建物が「固定資産税評価額」と同額の時価の約7割程度の価額、土地は主に路線価方式により時価の約8割程度で評価されます。

加えて「小規模宅地等の特例」は、一定の条件を満たした事業用又は居住用の土地のうち200㎡~400㎡を要件に応じて50~80%減額できる制度となっています。

建物が5000万円、土地が5000万円(ともに時価)、合計1億円の不動産の相続を行う場合、相続税における財産評価額は、建物は固定資産税評価額と同額の3500万円(時価の約7割)、土地は4000万円(時価の約8割)で評価され、課税評価額を7500万円まで圧縮する事が出来ます。

更に小規模宅地等の特例が適用され80%減額される場合には課税額は4,300万円となり、時価の約4割となります。

相続における評価の段階でも2500万円の課税額を圧縮できていますが、小規模宅地等の特例により5,700万円の減額ができますので、小規模宅地等の特例は相続税対策において強力な味方と言えます。

小規模宅地等の特例の適用条件には相続開始の直前において被相続人の居住用の土地の他に、事業用として利用されている土地、不動産貸付業等として使われている土地などで一定の条件を満たすものが該当します。

不動産投資は購入した不動産貸付業であり、小規模宅地等の特例の適用要件の1つとなりますので相続税対策に効果があると言われています。

2.不況に強くインフレに対応できる

日本の消費者物価指数は緩やかに上昇中であり、2019年12月に内閣府が発表した「月例経済報告主要経済指標」によると、2015年を100とした場合2019年度は101.7となっています。新型コロナ感染症拡大以降は指数が下落していますが、2014年には2.6%跳ね上がった時期があり、今後の経済回復によっては物価上昇が起こる可能性があります。

2021年4月14日時点で日本銀行が発表した定期預金の平均金利は1千万円以上で5年預けた場合でも0.003%となっています。

(参考)預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について

預貯金だけではインフレに対応できず実質目減りしてしまう可能性がありますので、金融庁でも不動産投資やNISA制度など投資で資産形成を促す施策を後押ししています。

日本の地価は首都圏を中心に上昇傾向にあり、コロナ禍で商業地は下落傾向にありますが住宅地では変動幅が小さくなっています。過去の指数推移から日経平均株価と不動産価格は連動することが分かっていますので、不動産はインフレに対応できる資産であると言えるでしょう。

さらに住宅は「なくてはならないもの」であり、他の現物資産(金や貴金属など)と違い経済的に苦しい状況でも手放すのは最終的な段階である事から「不況に強い」と言われています。

3.マンション価格は上昇傾向。特に東京が人気

不動産経済研究所が発表した「全国マンション市場動向~2020年のまとめ~」によると、全国、首都圏、東京都区部の2011~2020年のマンション価格推移は以下のようになっています。

<単位:万円>

(図版)不動産経済研究所「全国マンション市場動向~2020年のまとめ~」より作成

マンションの価格は緩やかに上昇しており、2020年にはコロナ禍にも関わらず東京都区部の価格は前年に比べ5.8%上昇、1㎡当たり11.4%上昇しました。全国的にも3.8%上昇していますが、表で比較すると東京都区部の伸びが顕著である事が分かります。

2020年の1~9月期には東京の不動産投資額が約193億ドル(約2兆円)と、世界の都市で初めてトップになりました。海外の投資家からは物流施設や賃貸マンションへ投資が多い傾向にあります。

(参考)SankeiBiz「東京の不動産投資額が世界首位 コロナで海外資金流入

海外投資家にも評価されている東京の不動産、特に賃貸マンションは資産として価値が上昇傾向であり相続対策として非常に有効であると言えます。

 

相続税対策として不動産投資を行うことのデメリット3つ

不動産投資は課税額を大幅に圧縮できる可能性があり、年々マンション価格が上昇していることから相続税対策として有効ではありますが、デメリットも存在します。

例えば将来遺産を引き継ぐ予定の方が不動産相続を希望していない場合は処分に困る事になり、相続の際の登記などの手続きが負担になってしまう可能性があります。

1.相続人が不動産相続を希望していない

子供や兄弟姉妹など相続人が不動産相続を希望していない場合には、たとえ家賃収入が定期的に入り資産として価値の高い「財産」でも、不動産の処遇に困る結果となってしまいます。相続人に不動産の知識が無いと、資産価値や需要の高いマンションを相場より割安の価格で手放してしまうケースも存在します。

不動産を購入する前に、相続人となる予定の方と不動産相続についてよく話し合ってみましょう。

2.手続きが負担になることも

不動産を相続する際には法務局で所有権移転の登記など手続きを行う必要があります。

不動産の価額を評価するために不動産会社に査定を依頼、各相続人への分割方法を考えるなどの作業もあり相続人にとって負担になってしまう可能性があります。

あらかじめ固定資産税評価証明書や登記事項証明書などの書類を準備しておく、遺言書を残し分割方法・割合を指定しておくなどの方法で、相続人にとって負担の少ない相続を心がけましょう。

3.物件によっては「負動産」になってしまう可能性も

相続税対策として購入し、相続人に家賃収入が入ることを想定して選んだ物件が思わぬ負債となる「負動産」になってしまうケースがあります。

例えば地方のアパート一棟投資は利回りが高いですが、需要が少ないエリアの場合空室率が高くなり実際の利回りは数%低いという事例があります。

また中古の物件は「修繕費がかさむ」というデメリットがあり、キャッシュフロー(手元に残るお金)が予想より少なくなってしまう可能性があります。

相続対策として安定した家賃収入を見込める物件として購入しても、選び方を間違えると相続後に利益が少ない事態や赤字となってしまう可能性があります。

物件を選ぶ際には都心で需要の高い新築マンションを選ぶと空室率が少なく、資産としての価値が高いため相続人にとってメリットとなる可能性が高いです。

 

不動産投資を相続税対策として行う際の注意点

相続税対策として不動産投資を行う際には、①都心の物件を選ぶ②不動産小口化商品を検討する事の2点に注意しましょう。

日本の人口は少子高齢化の影響で減少していますが、東京は2025年まで上昇すると推測されており、賃貸においても安定した需要を見込む事が出来ます。

また現物不動産の購入が難しい場合には、「不動産小口化商品」により相続税対策を行うという選択肢があります。

人口が増加している都心の物件を選ぶ

相続対策として不動産を購入する場合には、東京の物件を選ぶ事をおすすめします。

東京都政策企画局が発表した「2060年までの東京人口推計」によると人口は、全国的に減少傾向にありますが、東京都は2025年まで増加傾向を示しています。その後ピークを迎えるものの、全国と比較すると緩やかな減少となる見込みです。

(引用)東京都政策企画局「2060年までの東京人口推計

今後の日本の賃貸経営においては少子高齢化の影響で物件所在地のエリア人口が減少し、空室率が増加してしまうというリスクがあり、不動産業界の課題となっています。ただし東京は利便性が高い、企業の本社が多いなどの理由で人口が減りにくく賃貸需要が安定しています。

物件を選ぶ際には、人口が増加傾向にあり需要が安定している東京の物件を選びましょう。

不動産小口化商品という選択肢も

相続人となる予定の方が不動産の相続を希望していない場合や、不動産を購入する事に抵抗のある方には「不動産小口化商品」という選択肢があります。

不動産小口化商品とは不動産を1口当たり数万円~1000万円程度で販売し、家賃収入や売却で得た利益を投資家に分配する金融商品です。

「匿名組合型」と「任意組合型」という2つのタイプがあり、匿名組合型は投資家が出資したお金を「事業者」が賃貸運営を行う仕組みで、任意組合型は複数の出資者が共同で事業を行う形態となっています。運用はプロが行うため、手間や時間をかけずに不動産経営を行う事が可能です。

任意組合型で「現物出資」という出資方法を選んだ場合、相続の際には相続税評価額で評価されますので、現物不動産と同様の価額圧縮効果を期待できます。

さらに小口化されている事から分割しやすいという利点もあり、現物への不動産投資と組み合わせて相続対策として利用する方もいらっしゃいます。

≪募集中≫東京のおすすめの不動産小口化商品

まとめ

相続税対策として不動産投資を行う事で、税金の対象となる価額を圧縮でき、不況やインフレにも対応できるというメリットがあります。

一方で相続人が不動産相続を望んでいないため処遇に困る、物件選びに失敗し「負動産」となってしまうというデメリットも存在します。

相続人となる予定の方とよく話し合い、都心の新築マンションを選ぶ事でリスクやデメリットを回避していきましょう。不動産小口化商品も併せて検討する事で、より効果の高い相続税対策が期待できます。

 

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