相続財産とは?相続税がかかる財産・かからない財産をご紹介

相続財産とは。絶対に知っておきたい相続財産の定義と具体例 サムネ

遺産相続では、どのようなものが遺産(相続財産)になるのか、どの財産に税金がかかるのかなど疑問に思われることもあるのではないでしょうか。

あなたが相続した財産が相続財産に該当し課税対象になるのかどうかを知るためには、相続財産とはそもそも何かという定義を知る必要があります。

ここでは相続財産の定義から具体的な相続財産の例までご紹介しています。

定義を飛ばして具体的な財産をすぐに見たい場合は、「2.相続税がかかる財産」からチェックしてください。
「相続税」のことが初心者でも分かる重要ポイントについては、こちらの記事をご確認ください。
【相続税のキホン】基礎控除・計算方法・税率・非課税枠を徹底解説

1.相続財産とは

相続財産とは大きく2種類に分けて定義されます

①相続税がかかる財産
②相続税がかからない財産

法律に則り、相続財産の定義とは何か、条文で定められている定義を見たのちに、相続税がかかる財産とかからない財産の具体例をそれぞれ詳しく見ていきます。

1-1.相続財産の定義

相続財産の定義をまず最初にご紹介します。
民法では、相続について以下のように定められています。

「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

【引用元】e-Gov-民法第八百九十六条より

民法では“被相続人(死亡された方)の財産のすべて”が相続財産と定義されています。ただし、被相続人その人のみを対象にした権利義務は、誰かが引き継いだり処分したりできないため、相続財産とはなりません。
一方、相続税法によると、相続財産は以下のように定義されています。

「~その者が相続又は遺贈により取得した財産の全部に対し、相続税を課する。」

【引用元】e-Gov-相続税法第二条より

税法では“相続や遺贈で得た財産”が相続財産と定義されています。

この条文を見るだけでは、得た財産すべてに相続税が課税されると捉えられますが、そうではありません。

ここからさらに相続税が課税される財産と課税されない財産に分けることができます。

相続税がかかる財産とかからない財産について詳しく見ていきましょう。

2.相続税がかかる財産

一体どのような財産に相続税がかかるのか、国税庁のタックスアンサーから引用します。

*タックスアンサーとは、国税庁が運営している税に関するインターネット上の相談室で、ここで得られた回答は正式な税務の定義と位置づけされています。

2-1.相続税がかかる財産の具体例

国税庁タックスアンサー No.4105によると相続税がかかる財産は

「金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのもの」

引用元:国税庁-No.4105 相続税がかかる財産

と定義されています。

具体的には、現金・有価証券・宝石・土地・著作権などの権利がこれに該当し、以下の3つも相続税の課税対象になる財産として定義されています。

(1) 相続や遺贈によって取得したものとみなされる財産
死亡退職金、死亡保険金などは、被相続人(死亡された方)の財産でなく、受取人があらかじめ指定されていますので、相続したものではありません。
しかし、被相続人の死亡によって発生した財産なので、実質的に相続財産とみなし、相続税の課税対象になります。
*このように相続財産ではないが、相続財産としてみなされる財産を“みなし相続財産”といいます

みなし相続財産の詳細につきましてはこちらの記事をご確認ください。
税理士がわかりやすく解説!知っておきたい”みなし相続財産”の全て

(2) 被相続人から死亡前一定期間内に贈与により取得した財産
被相続人(死亡された方)の死亡前3年以内に、現金や土地などを受け取っていた場合は、それも課税対象になります。なお、この“3年以内”という期間は令和9年から段階的に延長され、令和13年以降は“7年以内”となります。

(3) 相続時精算課税の適用を受ける贈与財産
相続時精算課税とは簡単にいうと、生前の贈与について一時的に課税せず将来に先送りし、その先送り分は相続が発生した際に課税するというものです。

相続税がかかる相続財産をまとめると以下のようになります。借金などの債務も対象ですが、プラスの財産から控除します。

<相続財産になるもの>

プラスの財産マイナスの財産
不動産(土地・建物)
戸建て・マンション・農地・店・貸地
借金
銀行や人からの借入金
不動産上の権利
借地権など
現金・預貯金・有価証券
小切手・株券・貸付金・国債など
その他
未払の医療費などの債務
その他
ゴルフ会員権・著作権など
動産
車・骨董品・宝石など

2-2.課税対象となる意外な相続財産

土地や銀行に預けているお金に相続税がかかるのはなんとなく想像がつくと思いますが、ゴルフ会員権著作権も相続税がかかる相続財産になります。

また、相続税がかかる相続財産として意外に思われるものには以下のようなものがあります。

  • 名義預金
  • 被相続人(死亡された方)の口座から直前に引き出した現金
  • 借地権

聞きなれない単語も多いと思いますので、それぞれ詳しくご説明します。

2-2-1.名義預金

名義預金は、子ども名義の口座だけど実際に使っているのは父といった財産です。
名義が他の人でも実際に使っていたのが被相続人(死亡された方)であれば、その財産は被相続人が持っていたものとされるので課税される相続財産とみなされます。

2-2-2.被相続人(死亡された方)の口座から直前に引き出した現金

死亡前一定期間内の贈与財産と同じように、被相続人の死亡する直前に引き出したものは、実質的に相続された財産とみなされますので相続税の課税がされます。

2-2-3.借地権

持家の一軒家に住んでいるが土地は他人のものだったという場合、その土地の権利(借地権)に相続税が発生します。

これらの財産は相続税がかからないと思っていたのに、いざ相続が始まると相続税がかかることが発覚するため、突然の課税に多くの方は混乱します。

「自分の家は普通の家庭だし、特に財産もない。相続税は大丈夫だろう」と思われている方こそ、上記のような相続税がかかる財産を多数相続し、相続税を申告しなければいけないということがあります。

3.相続税がかからない財産

相続税がかからない財産とは、タックスアンサーより以下のように定められています。

1 墓地や墓石、仏壇、仏具、神を祭る道具など日常礼拝をしている物
ただし、骨とう的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税がかかります。
2 宗教、慈善、学術、その他公益を目的とする事業を行う一定の個人などが相続や遺贈によって取得した財産で、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの
3 地方公共団体の条例によって、精神や身体に障害のある人またはその人を扶養する人が取得する心身障害者共済制度に基づいて支給される給付金を受ける権利
4 相続によって取得したとみなされる生命保険金のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
(略)
5 相続によって取得したとみなされる退職手当金等のうち、500万円に法定相続人の数を掛けた金額までの部分
(略)
6 個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産で一定の要件を満たすもの
なお、相続人のいずれかが引き続きその幼稚園を経営することが条件となります。
7 相続や遺贈によって取得した財産で、相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附したもの、あるいは、相続や遺贈によって取得した金銭で、相続税の申告期限までに特定の公益信託の信託財産とするために支出したもの

【引用元】国税庁-No.4108 相続税がかからない財産

タックスアンサーの相続税がかからない財産の定義でほとんどイメージがつくと思いますが、中でもよく間違えやすく、ご相談をお受けする財産を以下にご説明いたします。

3-1.相続税が課税されそうで課税されない相続財産

先ほどのタックスアンサーの引用と重複する部分はありますが、特にご相談も多く間違いやすい財産なので注意するべき相続財産としてご紹介させていただきます。
相続財産とは2

それぞれ詳しくご説明します。

3-1-1.墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚

日本の風習としてある「先祖を崇拝する」ことに配慮して、墓地などには原則相続税が課税されません。

ただし、骨董的価値があるなど投資の対象となるものや商品として所有しているものは相続税の課税対象になります。

例えば「徳川家康が使った仏壇」などの骨董的価値が高いものや、商売として仏具を仕入れたりした場合です。

3-1-2.損害賠償金

自ら起こした事故ではなく、不慮の事故で死亡した場合、生命保険金のほかに事故を起こした相手より損害賠償金が遺族に支払われます。
損害賠償金は遺族の精神的苦痛に対する賠償として支払われたので相続財産になりません。

3-1-3.弔慰金

会社から受け取る弔慰金は相続財産になりません。
ただし、その金額が世間一般の常識的な金額の範囲内である必要があります。

「常識的な金額」の判断は、業務中に死亡したか、業務外で死亡したかによって変わります。

・業務中に死亡した場合の「常識的な金額」
被相続人の死亡当時の普通給与の3年分に相当する額

・業務外で死亡した場合の「常識的な金額」
被相続人の死亡当時の普通給与の半年分に相当する額

普通給与は手取りではなく、額面で計算します。

3-1-4.相続財産を取得しない人が得た贈与財産

相続税は相続された財産に課税されるものですので、そもそも相続をされていない方に税金の支払いは必要ありません。

4.相続財産と間違えやすいもの

ここまで、被相続人の財産が相続財産になるのか、課税対象になるのかを見てきました。

最後に、被相続人の死亡によって取得する財産で相続財産とはならないものをご紹介します。
これらの財産は受け取れる人が決まっているため、他の相続人は受け取れると思っていても実は受け取れないということが起こります。

4-1.相続財産と間違えやすいものの具体例

相続財産と間違えやすいものは主に次の2つです。

  • 受取人の決まっている死亡保険金
  • 受取人の決まっている死亡退職金

例えば、相続人が兄と弟の2人だとしても、死亡保険金の受取人が兄であれば保険金は全て兄が受け取ります。死亡保険金は受取人固有の財産であり、弟が不服を申し立てても受け取れるわけではありません。
もし、保険金の他に財産がなければ、相続人であるはずの弟は1円も相続できずに終わることになります。ただし、保険金の他に土地、建物、預金といった財産があれば、兄と弟で分割することができます。

5.相続財産かどうかの判断を誤ると大変なことに

相続財産とは経済的な価値があるもの全てを指し、具体的には土地や預金、ゴルフ会員権などがあり、借金といったマイナスの遺産も相続財産に含まれることも注意するべき点でした。

ただ相続財産の中にも、相続税がかかる財産」「相続税がかからない財産があり、この判断を誤ると相続税の計算を誤ることになります。相続税の計算を間違えると、本来払わなくても良いペナルティがかかる可能性もありますのでご注意ください。

そうならないためにも、相続税がかかる可能性のある方は、相続専門の税理士に早めに相談されることをお勧めします。

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【参考URL】
国税庁-No.4105 相続税がかかる財産
国税庁-No.4108 相続税がかからない財産

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